EUR/USD: FRBはドル高、ECBはユーロ安を求む
- 前回のレビューでは、先週の最も重要なイベントとして8月18日(水)の米連邦準備制度委員会の発表を挙げていました。この議事録で金融刺激策(QE)の縮小タイミングに関する状況が明らかになると考えられていました。もちろん、100%は明らかになりませんでした。 FRB幹部の中には、未だ、早くても2022年春から徐々に終焉向けて始めるべきだと考えている人がいます。しかし、年末までに刺激策を終了とする反対意見もあります。そして、これにより、投資家のリスク選好が再び下がり、さらなるドル高を招くことになりました。
株価指数 - ダウ・ジョーンズ、S&P500、ナスダック総合指数は、週明けから下落、議事録の発表でさらに下がりました。そして、下げに生じるたびに買戻しの波がありますが、市場は株式ではなくドルを好むといった、依然、下方トレンドにあります。DXY インデックスは、主要6通貨バスケットに対するドルに続き、週を通して1.3パーセント増の92.500から93.700へ上昇しました。
刺激策の早期開始予想に加え、新種のデルタ株ウィルスのニュースも、株式と商品市場に圧力をかけています。新たなロックダウンが予期される中、投資家は世界経済とそれを引っ張る米国経済の命運を懸念しています。保健省によると、新規感染者数は、8月17日の一日だけで、268,000人を上回り、今年初めのピーク時に匹敵します。
そうは言っても、米労働市場は、かなり良い感じです。少なくても、今のところはです。つまり、今週の失業保険の新規件数は、377,000件数から48,000件数に減少しており、予測の363,000件を下回っています。これは、当初以来の良い指標であり、ドルに恩恵をもたらしています。
米国債と外国債利回りの幅広いスプレッドの拡大もまた、USDの支持材料でした。外国人投資家がドルを支持し、米国債購入のために今後のドル需要を支えるでしょう。
上記の要因により、先週の結果は、ユーロに対しドル高で130 ポイント上げました。月曜日に 1.1795から始まったEUR/USD は、週終わりまで1.1665で底を探り、1.1700で5日間を終えました。
手に負えないインフレにおける投資家を安心させるために、FRBはドル高を必要としています。つまり、刺激策縮小に関する新しい明確なシグナルを当局から期待されることができます。しかし、ECBが、さらなるユーロ安にまったく反対していないことは、クリスティーヌ・ラガルド総裁が繰り返し述べていたことです。つまり、多くの専門家によれば、EUR/USD の下方傾向は、中期的に続くことでしょう。
現在、このペアは2021年4月1日の安値1.1704を下回っており、突破が確認できれば、次のターゲットは、昨年秋の安値1.1600-1.1610 圏内になります。この壁を乗り越えれば1.1450 と 1.1240圏内のターゲットへの道が開けるでしょう。300-400 ポイントへは、1ヶ月あるいは2か月を要することになりそうです。しかし、FRBが刺激策終了の発表をすれば、このペアは飛躍的に上昇するでしょう。この展開には、専門家の65% が支持しています。
残りの35% は、ドルは上昇を止め、EUR/USD は、暫くは1.1700-1.1900範囲に戻るとしています。 直近のターゲットは、 1.1750 と1.1830です。
テクニカル分析に関しては、トレンドインジケーターのD1 が100%とオシレーターの 75% が赤です。オシレーターの25%は、売られ過ぎのシグナルを出しています。
来週は、8月23日(月)のMarkitのドイツとユーロ圏のPMI に並んで8月25日(水)の米国の耐久財受注の発表に注目しましょう。 木曜日は、米国GDPの速報値が公表されます。 さらに、8月26日から28日まで毎年恒例のシンポジウムがジャクソンホールで開催されます。金曜には、そこで、FRBのジェローム・パウエル議長の発言もあります。
GBP/USD: ポンド離れ
- ポンドが2週間前に依然ドルに苦戦していたなら、先週は全てのポジションに譲歩しました。デルタ株の急速な広がりと世界経済回復に与えるインパクトのために、投資家は資産確保に急ぎました。それに加えて、アメリカの刺激策終了の可能性です。また、イギリスの消費者信頼感指数も7月のマイナス7から8月はマイナス8に下がり、コロナウィルスのパンデミックが始まって以来の最低のパフォーマンスです。その結果、GBP/USD は、1.3600の中期サポートまでに約270ポイント下げた1.3622で終了しました。
前回の予測では、ドイツのコメルツ銀行の専門家が、このペアのターゲットを7月20日の安値1.3571としていたことを思い出してください。 僅かながらの反発を考えると、この予測が正しかったことが証明されました。そして、現在、下落の中で、この秋には1.3146の200週移動平均線を試す可能性があると言っています。この過程での最も強いサポートは、1.3480 と 1.3200 圏内です。
D1ではトレンドインジケーターの100%とオシレーターの 65%も、下向きを指しています。しかし、これに同意する専門家は、僅か30 パーセントだけです。残り70% は、イギリス通貨のレジデンスの可能性が尽きるには、まだ、程遠いと考えています。特に、イングランド銀行が積極的な姿勢をとればなおさらです。売られすぎ圏内にあるオシレーターの35%も、また、上向きへ反転する可能性も語っています。直近の
レジデンスは、1.3725、直近のターゲットは、GBP/USD が1.3800-1.3875圏内に戻ることです。直近のレジデンスレベルは、1.3910と 1.3960です。
来週発表の最も重要なマクロ統計の中でも、8月23日(月)のMarkitの英サービス部門指数が注目されるでしょう。
USD/JPY: 円は、ドルを恐れず
- 投資家のリスク回避の背景で、ほかの通貨と異なる安全通貨の円は、ドル高に対する抵抗に成功しました。3月以来、 USD/JPY は、110.00 の横ばいの推移で、108.30-111.00 から外れた取引は、ほとんどありませんでした。今回、109.55 から始まった今週は、ほぼ同じ位置の109.80で終了し、変動の幅は、安値109.10から高値までで、僅か110 ポイントでした。
このペアの動きから、専門家もインジケーターもとても矛盾した予想をせざるを得ません。まず、専門家では、45%が強気、 35%が弱気、 20%が中立のポジションです。D1のインジケーターでは、35%が赤、15%が緑、50% がニュートラルグレーです。トレンドインジケーターでは、60% 対40%の割合で緑が支持されています。
サポートレベルは、109.10、108.70、108.30です。弱気筋の夢は、4月安値107.45を再び試すことです。直近のレジデンスレベルは、110.00、110.55、110.80、111.00、111.65 圏内です。強気筋目標は変わらずで、112.00の高値達成です。
暗号通貨:嵐の前の静けさ?
- ビットコインは、$48,000付近の強力な抵抗レベルを克服しようと、今週中ずっと、ゆっくり静かに近づいてきました。8月14日と16日とも2回の試みは失敗に終わっていますが、その後のBTC/USD は44,000のサポートまで引き戻しています。この執筆時点、8月20日金曜日の終わりですが、再度の挑戦で、レジデンスを突破、薄商いの中、$49,000のレベルに達しました。
暗号通貨の時価総額は、この一週間で、1兆9,700億ドルから2兆4,300億ドル、つまり、わずか4.4%増でした。また、2兆ドル台になったとはいえ、このレベルでの足場固めができる要因が全くありません。BTCネットワークでの取引量は、低いままです。Crypto Fear & Greed Indexも、依然、70ポイントのままです。
この低迷と不安感は、現在、大規模機関投資家が昔ながらの市場に焦点を当てていることが原因かもしれません。しかし、忘れてはならないのは、8月の半ばは、休暇の最盛期なので、多くのトレーダーは月末まで動き出すことはないでしょう。
非常に強力なけん引役が、劇的に市場を押し上げたり、下げたりするには必要です。世界のメディアのレポーターは、タウンホールでの学生に向けたジェローム・パウエル議長のオンラインスピーチに注目しました。FRBの議長は、暗号通貨の益々の高まりを指摘し、米国財務省がデジタル資産で国の準備金の一部を保有することについて検討しているフレーズを紹介しました。このような決定は、文字通り暗号通貨市場を吹き飛ばし、2017年の状況を繰り返すことになるでしょう。ビットコインの価格は、それから、$750 から25倍の $19,270へ急騰し、 “月へ”というスラングで呼ばれました。しかし、今のところ、米連邦準備理事会の責任者が暗号通貨を支持する理由は、理論的なものに過ぎません。
ブルームバーグのアナリストであるマイケル・マッグローン氏もまた、最初、“通貨と金融業界のデジタル化” が、ビットコインを大きく押し上げると強調していました。かつては、同様の要因で、米ドルが世界金融分野を支配することができました。アナリストによると、同時に金には、上昇のための強い推進力がないため、リスク回避と富の蓄積のための資産としてこの金属に代わることができるとしています。
マッグローン氏の予測によれば、ビットコインは、中期的は$100,000に達する可能性があります。有名な暗号通貨アナリストであるPlan は、僅かながら少し上回る数字を指しています。彼の見解では、彼が開発したストック・トゥー・フロー (S2F) モデルに非常に近いので、BTC/USD は12月末までには$135,000に届くとしています。
もちろん、これらすべての数字は、専門家の仮説に過ぎません。別の暗号通貨アナリストのベンジャミン・コーウェン氏は、ビットコインは、9月の重大な局面に立たされおり、市場全体の今後の方向性を決定すると考えています。ビットコインは、2017年以降、毎年9月になると、20週移動平均線を試みており、跳ね返されるか、突破しています。今年の9月にも試みれば、これに基づいて2022年4月までの予想が可能になります。 “市場が強気と出るか、数ヶ月後には、上昇が停滞するかわかることになるでしょう”とアナリストは述べています。
20週移動平均線は、現在、$43,500 付近であり、ベンジャミン・コーウェン氏によれば、 BTCがサポートレベルとして、このレベルをサポートできれば、上向きの動きが見られるでしょう。
ウェブデーター分析会社のSantimentが投資家に心強いデーターを報告しました。取引所におけるビットコインの供給量は、2週連続減少です。これは、大量のビットコインがコールドウォレットに流れることを示唆しています。分析会社の Glassnodeも、“ビットコインが、一ヵ月で75,000 から 100,000の割合で、8月も取引所から流れました。この流出は、大量蓄積が優勢だった2020年から2021年の第1四半期の期間に似ています”と同様の見解を示しました。
ビットコインのマイナーも、直近一ヵ月は、コインを手放すことに急いでおらず、彼らの保有量は着実に増えています。これは、彼らもビットコインの価格上昇を期待しているので、今、利益を出したくないのです。
年初以来、ビットコインが占める割合は69.7% から43.8% に減少したにもかかわらず、疑うことなく、このコインは、デジタル市場のメインエンジンです。現時点でのBTCの主な競合相手がイーサリアムであることは明らかです。いくつかの取引所では、既に、取引量ではビットコインを追い抜いています。 また、デベラグループの責任者としてナイジェル・グリーン氏などの一部の専門家からは、数年の間に、ETHがビットコインを2位に落とすかもしれないとしています。
より近い見通しとしては、人気の暗号通貨アナリストでありトレーダーのニックネームDonAlt が急騰直前であり、近い将来、収益面でBTCを抜かす可能性のあるいくつかのアルトコインを挙げています。リストの最初にあったのは、リップルです。こちらのトレーダーによれば、XRP/BTC は、既に、"50 パーセント上昇していますが、依然、レジデンスレベルには程遠い" とのことです。DonAltは、このペアは現在のレベルから 、さらに、185% 上昇する可能性があると分析しています。
NordFX Analytical Group
注意: これらの資料は、金融市場への投資推奨でもガイドラインでもなく、情報提供のみを目的としています。金融市場での取引には、リスクがあるため投資資金を全て失う可能性があります。
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