EUR/USD: 米国連邦準備制度理事会のサプライズ
- 米国連邦準備制度理事会(連邦公開市場委員会)の会合とそれに続く運営陣の記者会見が先週のメインイベントであることは明らかでした。JPモルガンのアナリストは、米中央銀行のジェローム・パウエル議長のスピーチが議長の在任期間中で最も “タカ派” であったと述べていました。
今年に入りはじめてのフェデラル・ファンドの利上げ は、サプライズではありませんでした: 予定通り、3月に実施されそうです。確かに、ジェローム・パウエル議長は、25ベーシスポイントなのか50ベーシスポイント(bp)なのか、引き上げ程度に関しては答えていません。しかし、同時に、FRBが、これから、かなり “機敏” で“難しい”存在になることを明らかにしています。どうやら、政府は、もはやコロナウイルスのオミクロン株にも株価指数の暴落にも気にせず、インフレ抑制に焦点を絞るようです。
2022年のリファイナンス・レートの引き上げ回数は、市場にとっては、まさにサプライズでした。パウエル議長のスピーチで、市場は6月までの3回の引き上げ確率を45%から60%に上げました。合計で、年内に5回、あるいは、6回の可能性があります。例えば、ドイツ銀行の専門家によれば、3月、5月、6月に25bpの利上げと、年末までには2回以上あるとしています。また、同業のBNPでは、6回の引き上げに照準を合わせています。下半期もインフレが高水準で続くようであれば、7回になる可能性さえあります。つまり、FRBの議長が、インフレに抵抗する主な手段がフェデラル・ファンドレートであると明らかにしているのです。
また、米国中央銀行は量的緩和(QE)プログラムの縮小ペースを倍増することが決定しました。国債の買い戻しは来月から毎月200億ドル(現在は100億ドル)、住宅ローンは100億ドル(現在は50億ドル)減少させる予定です。
これらのタカ派的なシグナルすべてが政府の姿勢が厳しくなっていることを示し、デリバティブ市場に大きな影響を与えました。国債利回りとDXYドルインデックスの直接的な相関関係が戻り、インデックスは97.35を上回る急伸でした。
ユーロがDXYの世界6通貨バスケットの一つであり、57.6%を占めていることを思い出しましょう。つまり、ユーロは、現在、インデックスの上昇とドル高の主導な役割を果たしました。FRBのタカ派的姿勢とECBのハト派的姿勢の違いは繰り返し述べられてきました。欧州中央銀行が2023年に利上げを開始しようとする一方で、海の向こうでは、この政策を既に終了させるでしょう。このような乖離は、世界的に歴史のある通貨にとって、よい兆候ではありません。
EUR/USD は、先週だけで、高値から220ポイント以上下げており、この7カ月で記録的なものでした。局地的安値は、1月28日(金)の1.1121レベルであり、その後、わずかながらの調整が入り、1.1148で終了しました。
もちろん、米連邦準備制度理事会が非常に強硬な金融引き締めをすれば、消費者需要の急激な減少につながり、さまざまな問題を引き起こすでしょう。しかし、これは、いまのところ、起きていません。また、仮に起こったとしても、このポジションを柔軟にすることは可能でしょう。そのため、このペアが1.1000へ下落する可能性は、非常に高くなります。これは、Internationale Nederlanden GroepやCanadian Imperial Bank of Commerceのストラテジストからの予想でも聞こえる数字です。
執筆時点では、D1のトレンドインジケーターとオシレーターの100%は赤ですが、後者の30%は売られ過ぎゾーンです。専門家の間では、多く (60%) がドル高支持で、40%は、ユーロが、まだ、すべてを失ったわけでなく、一時的に中期的な横ばい傾向の1.1220-1.1385の境界に戻ると考えています。直近のレジスタンスゾーンは1.1185で、1.1220、1.1275、1.1355-1.1385、1.1485が控えています。直近のサポートゾーンは、1.1075-1.1100、そして1.0980-1.1025。
来週のイベントでは、2月3日(木)のECB理事会に注目が集まりそうです。特別なサプライズはなく、金利も変わらずの0%水準で推移すると思われます。しかし、ヨーロッパ政府の金融政策に一定の変更が加えられる可能性はあります。そこで、投資家は最終的な記者会見で、これらについてわかることになるでしょう。
全体的に、マクロ統計の多い週になります。1月31日(月)はユーロ圏のGDPとドイツの消費者市場のデータの発表予定です。火曜日はドイツの小売売上高、米国の製造業ISM景況指数、欧州の銀行セクターの調査結果が発表される予定です。水曜日は、ユーロ圏の消費者市場に関する統計と米国の民間部門の雇用水準の発表があります。米国のサービス業におけるISM景況指数は木曜日にわかります。ヨーロ圏の小売売上高データーに加え、2月4日は、毎月第一金曜日の非農業部門の新規雇用者件数などの一部米労働市場の統計データーが恒例で控えています。
GBP/USD: イングランド銀行の対応は?
- 1月24日に発表されたイギリスのマークイットサービス業PMIは、予想の55.0に対して53.3と下回る結果でした。さらに、FRBによる利上げ予想で、2021年第4四半期の米国GDP速報値がドル側へ作用しました。だれも予想していなかった上昇を示しました: 予想の5.5%に対して6.9% 、前回は2.3%。どうやら、米国経済はCOVID-19の影響から回復しただけでなく、経済成長率は2019年の数値さえも上回るほどのようです。
これらすべては、もちろん、イギリス経済への恩恵にはなりません。また、ボリス・ジョンソン英首相の辞任要求があり、これも市場では弱気材料とみなされました。その結果、GBP/USD は、1.3357の安値で固め、2週間で約400ポイントも下落しました。
米国FRBのタカ派的スタンスにもかかわらず、ポンドは、また、上昇できるのでしょうか? この質問の答えは、すぐにわかりそうです。つまり、ECBの会議に加えて、2月3日(木)にはイングランド銀行の会合もあります。アメリカに、どのような対応ができるのでしょうか? もちろん、利上げを早くすることで: 多くの予想では、ポンドのレートは、さらに0.25bp引き上げられ、最大0.50%になる可能性があります。
イギリス通貨は、どのくらいの期間支持されるのでしょうか? 多くのアナリストは、イングランド銀行の動向が市場の期待に応え、今年のFRBと同じように積極的になることについて疑っています。これを踏まえ、オランダ第2位の銀行であるラボバンクのエコノミストは、GBP/USD が今年の中頃には1.3000 を下回る下落を排除できないとしています。
現在の状況としては、1.3400 レベル(正確には、1.3360-1.3415範囲) は、とても強いサポート/レジスタンス圏内で、このペアの急伸の踏み台としての支えになります。30%の専門家が、この展開を支持しています。このペアの次のレジスタンスレベルには、1.3440、1.3500-1.3525、1.3575、1.3650、1.3700、1.3750 が控えています。
アナリストの70% は、このペアのさらなる下落を支持しています。サポートは、1.3360、そして1.3275、1.3200 、そして、12月の強いトレンドの反転圏内1.3160-1.3185が続きます。
D1インジケーターは、次のようになります: オシレーターの10%だけが上向き、残りの90% が下向き、そのうち20%は売られ過ぎのシグナルです。トレンドインジケーターでは、100% すべて下向きです。
イングランド銀行の会合に加え、来週は事業活動データー (PMI)に注目してください: 2月1日は製造業セクター、2月3日はサービスセクター、2月4日はイギリスの建設業セクターです。
USD/JPY: 円は何も答えない
- イングランド銀行が米連邦準備制度理事会に対応するものがあるとすれば、これとおなじようなことを永遠に続くマイナス金利(マイナス0.1%)の日本銀行からは期待できません。安全通貨としての円は、たいてい、投資家の資産リスクからの逃亡先として支持されています。しかし、現在、ドル高と米国債が彼らの行く手を拒む大きな障害となっています。そして、日本銀行は、確かに、強い自国通貨を必要としていません。
その結果、多くの専門家(60%) は、USD/JPY が再び急騰すると予測しています。確かに、1月4日の高値116.35には至りませんでしたが、この上昇は非常に印象的でした。1月24日(月)に113.46レベルで、今週の取引の終わりの高値は115.68 でした。5日間取引の鐘は、115.22のところでした。
この執筆時点では、D1のインジケーターのほとんどが上向きです。オシレーターに関しては、90% (このうち10%は買われすぎのシグナル)になり、残りの10%が赤です。トレンドインジケーターでは100% が買い推奨です。専門家は、インジケーターに同意です: 70%が強気、 20%が弱気、10% が中立。サポートレベルは115.00、114.45、114.00、113.75、113.45、113.20、112.55、112.70。直近のレジスタンスゾーンは115.50-115.70、強気筋の直近の重要なターゲットは、5年ぶりの高値となる116.35。
今週は、日本からの重要なマクロ経済統計はありません。
暗号通貨: 嵐の後の静けさ
- 暗号通貨について言うなら、1月のFRBの会合では、特に暗号通貨にとっては何もありません。政府が金融政策を引き締め、経済への資金投入を減らすことは既に知られていました。利上げについても同様です。確かに、これはリスク資産への打撃になりますが、まず、最初は株式市場からの資金の引き揚げになります。結局、超投機的資産である暗号通貨にまで及ばない可能性があります: かなり少ない量でしょう。
FRBがパンデミックを火種にして、紙幣増刷による資金の流し込みで暗号通貨は飛躍的に上昇しました。この資金が流れ込むことは、もう、ありませんし、暗号通貨の新しいブームを期待することも無駄でしょう。機関投資家は、非常に冷静になるでしょうが、ビットコインやイーサリアムを急いで手放すこともないでしょう。売りたい人は、既に売ってしまっています。保有したい人は、長期投資として保有しています。
もちろん、この業界では、何があるかわかりません: 嬉しいことも、そうでないこともあります。一方で、暗号通貨市場は、FRBの会合前に生じたパニックから回復しています。1月24日(月)の$32.945に下落したBTC/USD は少しずつ上昇して、この執筆時の1月28日(金)夕方には$37,000 圏内で取引されています。市場の時価総額は、1兆5100億ドルから1兆7000億ドルに上昇し、Crypto Fear & Greed インデックスは、わずか 24 ポイント(1月23日の安値では11ポイント)上昇しており、非常に恐怖の圏内に、しっかり、とどまっています。つまり、回復初期や反転傾向について確信をもって話すことすら時期早々であることは明らかです。さらに、BTC/USD チャートでは、このペアの強いサポートが2020年と2021年共に$29,000-30,000圏内であることを示しています。つまり、下落圏余地があります。
ゴールドバグであり、ビットコインに懐疑的なピーター・シフ氏は、ビットコインの崩壊で$10,000を下回ると思っています。しかし、Galaxy Digital crypto bankの創設者であるマイク・ノボグラッツ氏は、ビットコインは直ぐに持ち直すとし、シフ氏に100万ドルの賭けをもちかけました。同氏は、BTCが年内に$35,000を下回って取引をされるようであれば、この資金を慈善団体に寄付するか、相手の好きなようすると約束しました。
同時に、ノボグラッツ氏は、弱気市場が相当長く続くと思われるため、現在のドローダウンでの買いは勧めないとアドバイスしました。“株式市場が底を打つまでは、暗号通貨の上昇がはじまることは難しいでしょう。それにも関わらず、デジタル資産は既に大きく売られる経験をしており、買い手からのサポートを受けています”と同氏は説明しました。
"金持ち父さん、貧乏父さん"のベストセラー作家であるロバート・キヨサキ氏は$20,000に価格が下がった場合にのみデジタル資産を買い増すと言っており、購入を控えるように勧めています。"利益は、売る時ではなく買う時に生まれます。ビットコインは、崩壊しています。素晴らしいニュースです。私は$6,000 と$9,000でBTCを購入しました。価格が $20,000を試そうとした時にのみ買い増します。リッチになる時期に近づいていますよ”と同氏は記述しています。
思い起こせば、キヨサキ氏は昨年の10月の “巨大な株式市場の崩壊”を予測し、金、銀、ビットコインも同じ運命をたどると警告していました。 これはまさに今、私たちが目にしていることです。
有名なトレーダー、アナリスト、JPモルガンチェースの元副社長のトン・ワイス氏は、近い将来にビットコインの調整が終了することについて排除していません。同氏によれば、暗号通貨は20ヶ月移動平均(MA)にとどき、$34,000の水準です。ワイス氏は、トレンドの反転と資産がまた上昇するのに"完璧なチャンス"だと主張しています。 こちらの専門家によると、反発した場合、ビットコインの価格はすぐに$40,000に戻り、 足固めをするとしています。
別の暗号通貨アナリストであるニコラス・メルテン氏は、現在の市況にもかかわらず、ビットコインは年末までにほぼ7倍の$200,000になると予測しています。 メルテン氏は自身のYouTubeチャンネル「DataDash」(登録者数50万2000人)で、ビットコインの時価総額が6,000億ドル以上できれば、今後数ヶ月でビットコインの強気相場が作られると述べています。
こちらの専門家は、調整後にすべての急騰が起こり、非常に割安の価格でビットコインは買われ、拍車がかかると回想しました。大手企業がどのように購入しているかを理解することが、高いボラティリティの暗号通貨をナビゲートする鍵であるとメルテン氏は述べています。
ほかの市場参加者によると、ビットコインは$30,000になり、その後は、反転の可能性が高くなります。暗号通貨投資会社のCaprioleの創設者チャールズ・エドワーズ氏は、NVT (Network Value to Transaction ratio) インジケーターシグナルは、BTCが売られ過ぎであると示している:この状況はあまりないと記述しています。 “私たちは買い圏内に突入しています” とエドワーズ氏は、現在の状況についてコメントしました。
このインジケーターは、有名なアナリストであるウィリー・ウー氏により提供され、積極的に使用されていることを思い出してください。NVT は、ビットコインの時価総額を取引量(USD)でビットコインの市場の時価総額を割って、ビットコインの買われ過ぎか売られ過ぎか評価する人気のインジケーターです。
MicroStrategyの創設者であるマイケル・セーラー氏は暗号通貨市場の現在の2つの調整理由を挙げています。まず、一つは、暗号通貨業界の不透明な規制と規制の不確実性です。2つ目は、暗号通貨業界の不完全さと未熟さです。同時に、ビジネスマンは現在の市場状況を“これまで傍観していた暗号通貨に関心のある機関投資家にとって、絶好のエントリーポイント”であると考えています。
セーラー氏によると、多くの機関投資家は、ビットコインに注目しており、史上高値から40%下回り、強固すると考えています。同時に機関投資家は、ビットコインがビル・ミラー氏、政府、上院や下院の議員のように大手企業にも支持されていることをわかっています。
ソフトウェア開発のMicroStrategyも 124,391 BTCを保有しています。同社は暗号通貨の取得に約37億ドルを費やしています。つまり、平均取得価格は、1コインあたり、$30,100 です。もし、この水準を下回れば、MicroStrategyのオーナーは、数百万または数十億ドルの損失となります。
そして、レビューの締めくくりに2つほど穏やかなコメントを紹介しましょう。一つ目は、トレーダーであり、アナリストであり、ポッドキャストのホストでもあるスコット・メルカー氏が同氏の購読者に現在、市場で起きていることが異常なことではないと促していることです。“人間の記憶力は短いものです。ビットコインは、5月に10日間で$60,000 から$30,000に下落しました。10 日間です!!! すべてが、実際に既に起きたことです。そして、たった8ヶ月前のことです。それなのに、なぜ、そんなに怖がるんですか?"と同氏は書き込んでいます。
二つ目は、ファーストフードチェーンのマクドナルドからで、デジタル資産の保有者に弱気トレンドの間は、ケータリング業界に就職することを提案しました。もちろん、これはジョークです。しかし、よく言われるとおり、ジュークの中に真実があることもあります。マクドナルドのツィートは、コミュニティから高評価で、すぐに、およそ100,000のいいねがつきました。
NordFX Analytical Group
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