EUR/USD: 今回は、ECBからのサプライズ
- 両サイドから攻められると抵抗するには厳しいものがあります。先週、ドルは2つのパワフルな一撃を受けました: 一つは、イングランド銀行、もう一つは、ECBであり、抵抗できませんでした。USD DXY インデックスは下落しました。1月28日は97.36 水準でしたが、2月4日には95.14まで下がりました。もちろん、ノックダウンとはいきませんが、すぐには、回復できないでしょう。イングランド銀行は、さらに25ベーシスポイント(bp)引き上げの0.50%にしましたが、これは予想どおりでした。しかし、ECBの金融政策の方向転換には市場にとってサプライズでした。市場は、年末に向けてのこのような方向転換の議論がはじまることを待っていました。しかし、これが、かなり、早くなることがわかりました。春には、既に始まる可能性もあります。
ユーロ圏の失業に関するデーターは、7.0%に下がり、すべての予想を上回りました。しかし、これだけではありません。1月の消費者物価の上昇が5% から5.1% の加速で歴史的な高さを更新しました。多くの人が逆を予想していたにもかかわらずでした。例えば、ブルームバーグの専門家は、インフレ率が4.4%に減速すると予測していました。
失業とインフレが現在の状況における政府の金融政策決定の主な要因となることは知られています。
また、ECBのクリスティーヌ・ラガルド総裁は最近まで、同行はFRBのマネはしないと述べていましたが、2月3日(木)の記者会見で "状況は本当に変わってしまった "と認めざるをえなくなりました
“インフレ率の高さが当初の想定よりも長く続きそうです” と総裁は述べています。 “12月の予想と比べると、現在のインフレリスクは右肩上がりです。特に、短期的には”。
ECBの総裁は、 2022年の利上げの“非常に低い可能性” についてのマントラを繰り返すことはしませんでした。また、基準金利は、前回の会合で0% の据え置きでしたが、情報筋によれば、銀行側は年末の利上げ余地について話しあっているとのことです。一部の専門家によれば、40、または、さらに50 bp に上昇する可能性があるとしています。
つまり、どうやら、ヨーロッパ政府は忍耐の政策を放棄し、米連邦準備制度理事会やイングランド銀行と共に、金融政策引き締めの"タカ派" レースに参加したようです。クリスティーヌ・ラガルド総裁の今回の発言とアメリカのジェローム・パウエル議長の2021年6月の発言を類推するのがいいでしょう。FRBの議長が、当時、似たような発言をした後、ドルは急騰してユーロから1135 ポイント奪い返し、EUR/USD は、1.2255から1.1120へと下落しました。今は、ユーロが失ったポイントを取り戻す時のようです。
さらに、イングランド銀行とECBの正面からの一撃のほかに、米ドルは“国内” のFRBからの裏切りにもあいました。先週、少なくとも6人の米中央銀行代表のコメント発表がありましたが、FOMC(連邦公開市場委員会)が3月の会合で直ちに50bpの利上げする可能性について誰も言及しませんでした(市場はこれを期待していましたが)。
そして、ドルにとっての痛手となった今週の出来事がユーロの強さを印象付ける結果となりました。EUR/USD はパンデミックのはじめ以来の見ることがなかった活発な上昇を示しました: 一週間で1.1140から1.1483の343 ポイントの上昇です。
確かに、ドルは今週末終わりの2月4日の米国の統計によって、わずかに支持されました。非農業部門の新規雇用者数 (non-farm payrolls) のような重要な指標は、市場予想の150,000を下回り467,000でした。結果として、ドルはやや上がり、このペアが1.1453の時に終了の鐘がなりました。
D1のインジケーターは、5日間を終わるまでに上向きになりました。トレンドインジケーターでは、85% (15% は、依然、赤)、オシレーターでは、- 80%で、残りの 20% は中立の立場です。専門家の間では、意見はほぼ半分にわかれていますが、強気筋が、やや優勢のままです: 45%は上昇が継続 、35%が下落に推移、20%が横ばいの意見です。
直近のレジデンスは、1月13日と2月4日の高値である1.1480 圏内で、次いで1.1525、1.1560、1.1625 。サポート圏内と水準は、1.1365-1.1385、1.1275、1.1220、1.1185と1月28日の安値1.1120 。
来週のイベントでは、インフレに関連するものが最も重要であり、消費者市場に関心が集まるでしょう。2月10日(木)には米国消費者物価指数(食料品、エネルギー関連除く)、11日(金)にはドイツ消費者物価指数、米国ミシガン大学消費者信頼感指数を知ることになります。
GBP/USD:イングランド銀行: まだ、ハト派ではないかが、もはやタカ派ではない
- もちろん、全般的なドル安は、GBP/USD にも影響し、週高値1.3627を記録しました。しかし、前述の通り、イングランド銀行による利上げは誰にとってもサプライズではなく、既に市場の相場に反映されていました。それとは対照的に、ECBのクリスティーヌ・ラガルド総裁の発言は、衝撃的な効果を生みました。その結果、欧州通貨はイギリス通貨に対して非常に優勢で、EUR/GBP は、0.82843 から0.84650へと2.2%以上も上昇しました。GBP/USDは、同じ理由により1.3528 で局所的高値を大きく下回りました。
イングランド銀行委員会のメンバー間の意見の相違にもポンドの強気筋にはがっかりしたようです。50 bps の利上げ賛成者は、9人中4 人だけでした。アンドリュー・ベイリー総裁を含む多くが、経済成長の鈍化を理由に、25ベーシスポイントだけの引き上げに賛成しました。
こちらの政府は、明らかにとてもバランスがとれた方法で実施することがイングランド銀行のチーフエコノミストであるヒュー・ピル氏により裏付けられています。同氏は、ロイターのインタビューで銀行は“すべてが計画通りに進めば、今後数ヶ月のうちにさらなる緩やかな引き締めを実施”するとしており、" 金利水準の設定には注意が必要である"と述べました。
日本のMUFG銀行のストラテジストは、このコソコソとしたスタンスがイギリス通貨の上昇を抑制すると述べています。MUFG は、安定したポンドの上昇を予測しておらず、GBP/USD が1.4000 の推移を続ければ、途中で多くの下落や上昇があると考えています。同業のスコシアバンクは、正反対の見方です。1.3600以上の足場を固めることができないため、イギリス通貨は、当初1.3400まで、場合によっては比較的短期間に1.3200まで下落する危険性があるという見解です。
多くの専門家(55%) は、現時点でGBP/USD 上昇のさらなる余地があるという見方で、残りの45%が反対の立場です。D1のインジケーターでは、このようになります: オシレーターの45% は上向き、10% が下向き、残りの45% が中立です。トレンドインジケーターでは、40%が上向き、60%が下向きです。サポートは1.3500、1.3425、1.3365で、次の強力なサポートは100ピップス低くなります。レジスタンス水準と圏内: 1.3570-1.3600、1.3640、1.3700、1.3750、1.3835、1.3900。
来週の注目は、2月10日(木)のイングランド銀行のアンドリュー・ベイリー総裁の声明、2月11日(金)のイギリスのGDPと鉱工業生産の発表予定が含まれます。
USD/JPY: 平穏、そして、再び、平穏
- G10 のほとんどの中央銀行が利上げやより積極的になる(ECBのように)一方で、日銀のスローガンは、"平穏であり、再び、平穏"。安全通貨は、マイナス金利(マイナス0.1%)が続く限り静かなままです。
日本のインフレ率は、日本政府が設定した2%という目標水準に近づく兆しがないため、ほかの中央銀行に大きく遅れをとることになるでしょう。そして、これについて、CIBCキャピタルマーケットのアナリストは、円に圧力をかけ続けるだろうとみています。
ある時期から日本銀行が年内に金融政策の正常化に動くのではないかという噂が市場に流れ始めました。しかし、1月の会合後の銀行側からの声明で、これは単なる憶測に過ぎないことが明らかになりました。黒田東彦日銀総裁は、インフレ目標の2.0%には、ほど遠いと言い続けているので、日銀側は円安にだいぶ満足しています。.
この4カ月間にUSD/JPY に起きたことは、強気感情がやや優勢な横ばい傾向と捉えることができるでしょう。つまり、全般的な従来のドル安は先週の日本円の助けにはなりませんでした:2月2日に114.14に下落したこのペアは、スタート時点と同じ、115.20圏内に週終わりには戻っています。
この執筆時点では、多くの専門家(55%)が、USD/JPY は1月4日に記録した数年ぶりの高値116.3
5に向かって推移を続けると予想しています。残りの45% は、ドル安に押し下がる余地があると考えています。インジケーターでは100%すべてが緑ですが、オシレーターの15%は買われすぎのシグナルを示しています。
サポートレベルと圏内は、115.00、114.55-114.80、114.15、113.75、113.45、113.20、112.55、112.70。直近のレジスタンス圏内は115.50-115.70で、強気筋の直近の真剣な目標としては、5年ぶりの高値となる116.35。
先週も今週も、日本からは重要なマクロ経済データーはありません。ただ、2月11日(金)は日本の休日であることに注意しましょう。この国の建国記念の日で祝日です。日本の初代天皇である神武天皇が紀元前660年のこの日に日本の天皇制と日本国を建国したとされたと言われています。
暗号資産: BTC/USD の担当はどこ? 答え: 米連邦準備制度理事会
- 暗号資産愛好家が何と言おうと、ビットコインはとっくに介入されない資産ではなくなりました。そして、BTC/USD の決定要因はドルです。また、ドル高、ドル安は、米連邦準備制度理事会の政策(一部は、ほかの中央銀行の動向)に左右されます。
暗号資産愛好家の中には、天からの恵みのように機関投資家から資金の流入を切望しています。そして、機関投資家は、政府によるデジタル資産に関する明確な規律の確立を待ちわびています。そのため、ビットコインの相場推移は、個人投資家の感情ではなく、まさに、いくつかの政府や中央銀行の感情に左右されるでしょう(既に、左右されてもいます) 。暗号資産と株式市場の相関関係を見てください。この関係は、ますます強くなり、大口投資家のリスク感情で左右されています。
もちろん、BTC/USD の短期的変動は天候の悪さでテキサスのマイナーが停止したようなことで影響を受けることがあります。しかし、主なトレンドは、マイナーではなく、政府の動向なのです。
ビットコインは、今、"マネー商品"として認識されています。フィデリティデジタルアセットのアナリストは、この結論に至り、ビットコインをテクノロジーとしてだけでなく、お金の完璧なフォームであると言っています。そして、どんな政府が"完璧な" お金の流れにすることができるのでしょうか?そこには、2つの解決策があります:中国のように完全に禁止するか、厳格な管理下におくことです。
ロシアの中央銀行は、中国版に従うことを望んでいました。しかし、ロシアのウラジミール・プーチン大統領は、禁止でなく、流通やマイニングを含んだ暗号資産を規制する財務省の提案を支持しました。ブルームバーグによると、ロシアの住民は約2140億ドル相当の膨大なデジタル資産を保有しているため、これは非常に重大な決定となります。また、ケンブリッジ大学によると、2021年夏、ロシアはビットコインのマイニング量(11.23%)でアメリカ(35.4%)と中国で禁止された後、多くのマイナーが移ったカザフスタン(18.1%)に続いて第3位になりました。
MicroStrategyの創設者であるマイケル・セイラー氏も、暗号資産市場の現在の問題は、まず、規制の不透明性と規制の不確実性によるものだと考えています。セイラー氏よれば、多くの機関投資家は、今、ビットコインのトラッキングをしていますが、投資を急いでいません。
JPモルガンのアナリストによれば、機関が取り上げることを抑制させられる高いボラティリティの固執も障害になっています。
興味深いことに、もう一つ、巨大投資銀行であるゴールドマンサックスは、暗号資産は米連邦準備制度理事会の金融政策のようなマクロ経済からの影響から逃れることはできないようであると同意しています。しかし、暗号資産の大量導入と対照的に、長期的な上昇の機会は悪化するかもしれないと考えています。専門家は、デジタル資産の世界的人気が従来の資産の相関関係をさらに強めると主張しています。これにより、暗号資産のボラティリティは、低くなり、投機的な魅力と投資家のポートフォリオの分散資産としての有利性の両方が少なくなります。
現在の状況としては、90日安値の$32,950から跳ね返ったものの、ビットコインは長い間、$38,000-39,000圏内の強いレジスタンスを克服できませんでした。しかし、2月4日(金)のこの執筆時点で、BTC/USD は突破し、$40,880 をつけました。
今週の時価総額は、若干、上昇しました: 7日前の1兆7000億ドルに対して1兆8500億ドルであり、Crypto Fear & Greedインデックスでは、24ポイントから20ポイントに下がり、非常に恐怖のゾーンにさらに推移しています。
最新のJPモルガンのレポートでは、“先物の建玉と為替収支高が、特に暗号通貨資産の大規模投資家に関しては、昨年5月よりもパニックやポジションの清算が少ないことを示している”と記されています。同時に、銀行のアナリストは、買い手の降伏兆候がない場合でもビットコインのさらなる下落を排除しいません。アナリストは、ビットコインの適正価格を$150,000 から$38,000に慎重に引き下げました。
ビジネスインサイダーによると、JPモルガンのモデルは、ビットコインのボラティリティが金のボラティリティと収束し、投資ポートフォリオにおける両方のシェアが均等になることを想定していたそうです。現在、銀行のアナリストはビットコインと金のボラティリティ比が2022年末までに約2/1に下がるいう以前の予測が非現実的であるため、格下げに至ったと認めています。
45年のキャリアをもつウォール街で有名なトレーダーであるピーター・ブラント氏は、現在、多くの暗号資産愛好家が極めて弱気ムードにあると指摘しています。フラッシュモブのレーザーアイズのほとんどの参加者は、近い将来、ビットコインが$30,000 を下回ると確信しています。専門家によると、これはビットコイン購入のシグナルかもしれないとしています。 “強気筋が目をつけた時が売り時です。強気筋が弱気になった時が買い時ですか?” とブラント氏は回答しています。
フラッシュモブの“レーザーアイズ”は、ビットコインが局所的高値$58,300の時の2021年2月にツイッターではじまったことを思い出したください。その後、多くのビットコイン支持者がプロフィールのアバターに“レーザーアイズ”画像をつけて$100,000の上昇予想に投稿しました。モーガンクリークデジタルの共同創設者であるアンソニー・ポンプリアーノ氏、TV 司会者のマックス・カイザー氏、バイナンス仮想通貨のチャンポン・バオCEO 、テスラのイーロン・マスクCEO などのインフルエンサーたちがフラッシュモブに参加しました。
しかし、$100,000に上昇の代わりに、ビットコインは6月には$29,000に暴落しました。 つまり、弱気筋の "フラッシュアイズ" というピーター・ブラント氏の現在の発言は、明らかに注目に値します。
分析サイトのファインダーによるラウンドテーブルを囲んだ会議結果にも注目です。討論には、33人のフィンテック専門家が参加しており、そのうちの半数は、米国の利上げを背景にしたとしても暗号通貨資産の相場が下落する予想はしていません。会議参加者の平均予想では、ビットコインは年内に$93,717に急騰、2022年末には$76,360、2025年末には$193,000付近です。
暗号通貨資産のベンチャー企業であるパーミッションのディレクター、ヴァネッサ・ハリス氏がこの討論の中で最も楽観視していた人でした。こちらのディレクターは、年内にBTC が$220,000 の高値になると予想しています。最も控えめな数字を示したのは、ビットコインATMネットワーク、コインフリップの創業者であるダニエル・ポロツキー氏です。同氏の見解では、パンデミック時に米連邦準備制度理事会のふくらましたバブルが現在しぼんでいるので、ビットコインが2022年に$60,000 を上回ることはないとしています。
暗号アナリストのジェイソン・ピッツィーノ氏も、BTC の上昇を予想しています。同氏の予想では、ビットコインは中期的には蓄えの期間なので、スマートマネーをもつクジラや投資家は次の強気トレンドを待って投資をはじめるでしょう。ピッツィーノ氏によれば、2022年の後半に新高値更新もありえますが、それは急激なものではなく、一連の推移によるもです。
最後は、サークルのジェレミー・アラーCEOがビジネスインサイダーのインタビューで述べた最も宇宙的な規模の予想です。同氏の見解では、ビットコインの世界的普及がこのコインを100万ドルへの上昇に貢献するとしています。こちらの実業家は、"ビットコイン至上主義"ではないとしながらも、新高値更新を信じています。同時に、同氏はビットコインを金と比較しないことを好んでおり、デジタル資産が貴金属よりはるかに効率的であると考えています。サークルのCEOによれば、お金としての金の価値は現代社会において単純に通用しないということです。
NordFX Analytical Group
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