EUR/USD: ウクライナで決まるユーロの命運
- 先週のマクロ統計は様々でした。しかし、現時点でこれに注意を払う人はほとんどいません。欧州通貨の動きは、現在2週目になるウクライナ動向で決まります。ロシアとウクライナの紛争が激化すれば、リスクのない資産への需要は高まります。なお、このような資産はドルであり、欧州通貨ではありません。
FRBとECBの金融政策の違いが、2021年と2022年1月‐2月にEUR/USD を押し下げました。ここ数日の惨事は、さらなる下げを推し進めたに過ぎません。ウクライナ南部にあるヨーロッパ最大のザポリージャ原子力発電所地域へのロケット弾の攻撃に市場はどんな反応ができるのでしょうか? 発電所からそれほど離れていない場所の火災は消火されましたが簡単ではありませんでした: チェルノブイリはヨーロッパで未だに過去のものではありませんし、誰も何百万人もの命を奪うかもしれない別の新たな原発事故を望んでいません。
ウクライナ支援のためのEUのロシアに対する非常に厳しい経済制裁は悲観的な見通しを強めています。EUへのロシアエネルギー供給に関する大きな問題となり、産業貿易の厳しい制限、銀行部門への引き締めとなっています。このような状況で、ECBが金融刺激策を縮小して利上げをすることは想像しがたいものです。米国連邦準備制度理事会に関しても、計画を断念するとは思えません。
3月2日(水)の公聴会でFedのジェローム・パウエル議長は米国通貨の利点を挙げました。まずは、ウクライナ情勢によりドルのような安全通貨への投資家のリスク回避です。そのほかの切り札としては、ヨーロッパ諸国の金融政策相違や米国経済の成長が含まれます。ちなみに、米国非農業部門新規雇用者件数(NFP) はパウエル議長の言葉どおり、予想の400K(1ヵ月前481K) に対して、実質678Kの伸びを示しています。
米国中央銀行もウクライナ情勢とコモディティ市場におけるロシアの影響で以前の予想よりも高いインフレ率になるという見方です。そして、これは、ジェローム・パウエル議長の言ったとおり、より高い利上げが必要となります。つまり、2022年末には市場の予想よりもさらに高くなる可能性があるのです。
先週の予想は、EUR/USD が1.1100のサポートを再挑戦後、弱気筋が1.1000台の境をめざすだろうという見方でした。2月25日では、この予想は非常に大胆であり、とても信じがたいものでした。しかし、上述の情勢によりこのペアは簡単に"強固"な1.1000のサポートを突破、1週間で385ポイントを下げ、1.0885に暴落しました。小さな調整後、最終の鐘は1.0932のレベルで鳴りました。
政治的緊張の高まる中、ユーロは2月10日以降、対ドルで600ポイント以上の下落、2020年の安値に急接近しています。また、1:1に近いところまできています。現在の状況で安値予想は、非常に困難です。2020年は1.0635付近、2016年には1.0325まで下落しました。おそらく、このあたりがサポートレベルになるでしょう。
強気筋についてボラティリティの大きさに関して言えば、当面の目標は1.1000圏内に戻ることであり、その後、1.1100-1.1125エリア、それから1.1485エリアでの1月13日と2月10日の高値です。しかし、このペアがこれを達成するには、紛争を終了するか、少なくとも落ち着いた停戦状態になるしかないでしょう。多くのアナリストはベストを望んでいます: 65% はEUR/USD が少なくとも3月に1.1200 に戻ることを支持しています。しかし、D1のトレンドインジケーターとオシレーターは全く違っています。:すべてが赤で後者については25%が売られ過ぎ圏内です。
経済統計では、3月7日(月)にドイツの小売売上高、火曜日にユーロ圏のGDPが発表されます。3月10日(木)はECBの理事会が開催予定です。金利は、0%で据え置きの可能性が高いので、続いておこなわれる政府運営陣の記者会見により注目が集まるでしょう。同じ日に、米国の消費者市場データー、週終わりの11日(金)にはドイツの調和消費者物価指数と米ミシガン大学消費者信頼感指数が明らかになります。
GBP/USD: イギリスも同じヨーロッパ
- 制裁前のEUのロシアからのガスの依存度は、およそ45-50% でした。EU諸国とは異なり、イギリスはロシアのガス供給からは独立しています: この数値は3%以下です。ロシアとの貿易収支も極めて低いものです。また、地理的にもロシアとウクライナの武力紛争地帯から約2,000kmも離れています。
これらの要因でGBP/USD は数日間横ばい傾向で推移しました。しかし、ザポリージャ原子力発電所周辺の出来事に対して、持ちこたえることが出来ず、2月24日の安値を更新して1.3201の水準まで下がりました。今週は1.3246で終了しまた。
来週のこのペアのアナリスト予想は次のとおり: 50%が上向き、 25%がさらなる下落、残りの25%が横ばい傾向を支持です。EUR/USD ペアのD1読み取り値は完全一致です。強力なサポートは1.3170(2021年12月安値)で、その後、2020年のサポートが控えています。レジスタンスレベルは、1.3270-1.3325、1.3400、1.3485、1.3600、1.3640 。
来週のハイライトは、3月8日(火)のイギリスの小売売上高と3月11日(金)のイギリスの生産高とGDPの発表です。
USD/JPY: 円それともドル: どちらが、より安全?
- 日本はイギリスより、はるかに遠く、 8,000 キロも離れています。ロシアに対する制裁に加担したとはいえ、投資家にとって安全通貨に変わりありません。つまり、文字通りヨーロッパで熱くなっていることは、 USD/JPY の推移に影響しません。先週は115.00 台の推移が続き114.65-115.77範囲での動きでした。そして、下値支持線近くの114.81で週5日の取引を終えました。この下落は、ザポリージャ原子力発電所への砲撃ではなく、米国債利回りの下落によるものです。
つまり、ドルがユーロやポンドに対して上昇すると円に対しては下落となります。この2つの安全通貨の争いは来週も、やはり、続くことになるでしょう。75% のアナリストがこのペアは上限に向かって戻るという見方をしているのに対して、25% はさらに下落するという見方をしています。このような場合、大抵、インジケーターは、すぐに、一致しなくなります。D1のトレンドインジケーターは、65%が売り、35%が買いです。オシレーターでは、20%が買い、 25% がニュートラル、55%が売りの支持ですが、同時に4分の1がこのペアの売られ過ぎのシグナルを示しています。直近のレジスタンスゾーンは115.00-115.25、それから115.70。強気筋のメインゴールは、116.34の高値を更新で2017年以来の上昇です。サポートレベルと圏内: 114.40-114.65、114.15、113.75、113.45、113.20、112.55および112.70。
3月9日(水)のGDPデーターのほかは、来週は特に日本経済に関する重要なマクロ統計の発表はありません。
暗号資産: 制裁、ビットコイン、そして、ロボットが選ぶもの
- ウクライナ紛争でロシア銀行の資産凍結直後、2月28日(月)にビットコインの取引量が急増し、コインの価格も17%近く( $37,840 から $44,220)に急騰しました。1,000 BTC 以上の残高のあるビットコインアドレスは6% 以上増加で2,226アドレスです。これは2021年3月以来の水準です。100 から1000 BTCのアドレス数も2月28日に増加しましたが、注目されませんでした。1日で1.3%増加し、15,929 アドレスでした。これはGlassnode(グラスノード) サービスにより明らかになったものです。
このようなビットコイン・クジラの急激な増加は、ロシアのエリートたちが制裁回避のために資産を引き出そうとして、暴落するルーブルから暗号資産へ換えたことによると一部のアナリストは指摘しています。
ブルームバーグによると、ホワイトハウスの国家安全保障会議と米財務省は、世界最大の中央集権的取引所の運営者に対し、ロシアに課せられた制裁回避を阻止するように要請していたといいます。ホワイトハウスの報道官は、暗号資産はロシアで幅広く使用されている米ドルの代替えにはならないと述べました。しかし、米国当局は、悪用には対抗する姿勢です。欧州中央銀行のクリスティーヌ・ラガルド総裁もユーロ圏でのデジタル資産の規制強化を呼びかけました。
CoinbaseやGeminiなど少なくとも4つの暗号通貨取引所は、規制強化のための措置を講じると述べました。
著名な経済学者でアナリストのアレックス・クルーガー氏によると、ロシアが制裁回避のために暗号資産を利用するなら、米国政府にとって暗号資産を全面的に禁止するのに十分な理由になるとしています。"こうなるとは思わないでください。ただし、慎重に行動してください” と同氏は警告し、政治情勢が悪化しなければ、投資家は直ぐに暗号資産市場の成長を目にすることができるでしょうと付け加えています。
暗号資産のプライベートウォレットと取引所ウォレットの間での動きはデジタル資産市場のさらなる発展に投資家が確信していないことを示しています。これについては、バンク・オブ・アメリカ(BofA)のレポートを参照にしてCoinDesk が記述しています。
アナリストによれば、Fedの政策引き締めとマクロ経済要因で今後6カ月の暗号資産の成長は制限されるでしょう。しかし、バンク・オブ・アメリカは、デジタル資産ユーザーの普及レベルや積極的な開発者の大幅増加によるもので、"暗号資産の冬"のはじまりではないと強調しています。
同行は、景気後退の可能性が拭いきれなければ、デジタル資産市場で現在の価格帯から抜け出すのは難しいだろうとも付け加えています。
2月28日に急騰したBTC/USD は、3月1日-2日は、強力な $45,000のレジスタンス圏内に近づくにつれて勢いが遅くなりました。そして、さらに上昇しようとしましたが上昇できず、その後は反転となりました (この抵抗が1月から2月、既に何度も下落させてきたことを振り返ってみましょう)。
ビットコインがどこかで$45,700 以上になれば、大量の買いの誘発になるため$47,000-50,000 のさらなる上昇が期待できるでしょう。
The Zeberg Reportの著者であり、マクロ経済サイクルの専門家である伝説のトレーダーHenrik Zeberg氏はエリオット波動5で 主要株式と暗号資産の上昇前を示す3つのチャートを示しました。同氏によれば、週チャートで最も重要な株式市場の指標であるS&P500とナスダックが反転して上昇するところまで近づいています。予測が確かであれば、ビットコインは再び株式や指数との相関性を高める可能性があります。
この執筆時点(3月4日夜)、BTC/USD は$39,300付近での取引で市場全体の時価総額が1兆9630億ドルまで上昇した後、1週間前の1兆7550億ドルのところまで戻り、Crypto Fear & Greed インデックスは、わずか6ポイント (27から33ポイント)で恐れのゾーンにしっかり張りついています。
ブルームバーグ・インテリジェンスのチーフストラテジスト、マイク・マクグローン氏は、ビットコインが国際的な準備資産となる過程を着実に進んでいると改めて述べました。同氏は、BTC 価格が2022年に$100,000になるだろうと確信しています。 同氏は、市場が弱気感情であるにもかかわらずビットコインの価格が$30,000を下回ることはないと強調しました。
マイク・マクグローン氏は、ビットコインが最終的に貯蓄を守る手段として確立するためには、ド‐ジコインのようなコインは排除すべきだという見方をしています。
ポルトガルのソフトウェア開発者ティアゴ・ヴァスコンセロス氏が作成したAIロボットアドバイザーが、ブルームバーグ・インテリジェンスのチーフストラテジストの見方を裏付けています。コーダーは"ボットをトレーニング、ルール、ろうそく足、売買の原理、あるいは、何もしないか"です。このボットは利益をだす毎に1ポイントを受け取り、利益がなければ "罰"としてポイントを失います。取引口座残高を増やすために何千/何百万の手順でロボットアドバイザーは、最終的に“ホドリング” の戦略を選択、つまり、ビットコイン蓄積です(ホドルは2013年のBitcointalkフォーラムでのメッセージのやりとりからはじまった“ホールド”という単語のスペルミスでビットコイン界隈ではよく使われるミーム)。
NordFX Analytical Group
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