EUR/USD: 市場はクレイジー?
- 米連邦準備制度理事会の後の市場は"不条理劇"とも言えます。予想通り、3月16日(水)に政府は、2018年以来、はじめて基準金利を0.25% から0.5% に引き上げました。そして、その後は、やはりドル高となりました。しかし、誰もドル高がおよそ1時間半しか続かず50ポイント程度であることを予想していませんでした。それから上昇したのはアメリカではなくヨーロッパ通貨です。結果として、EUR/USD は、翌日、週高値1.1137 となりました。
すべてが反論理的でした。米国のGDP予想の修正がありました。Fedがロシアとの制裁戦争により経済成長が4% から2.8%に2022年は鈍化することを示したのです。 さらに、金利予想についても変更がありました。以前は、年末までに 0.75-1.00% になるだろうと言われていました。この数字は、現在、1.75-2.00%に上がっています。年内の会合は残り6回なので、FOMC(連邦公開市場委員会)では、毎回0.25%ずつ利上げをする必要があることになります。
しかし、これだけではありません。2023年末の予想も1.50-1.75%から2.75-3.00%に引き上げられました。それに加えて、2024年にはさらに数回の金融規制に直面しそうです。つまり、これは単なる予想の修正ではなく、米国の金融政策の急激な引き締めであり労働市場への深刻な打撃となり、大規模な不況につながる可能性があるのです。
このような状況ではドルは堅調な推移となり、S&P500、ダウ・ジョーンズ、ナスダック株価指数は大幅下落となるはずでした。しかし、全てが逆でした: DXYドルインデックスは大幅下落で株価指数は急上昇。
既に述べましたが、これについては論理的な説明がありません。一部では0.5%の利上げではなく、0.25%の利上げにとどまったことが原因という見方があります。別の見方では、政府がFedの貸借対照表の縮小計画を明確にしていないことが挙げられます。 なお、貪欲な作用によるものであるという見方をする人もいます。投機筋がパンデミック初期のショック後に株価指数が急速に回復したことを思い出し、すぐに再び同じことが起きると判断したからです。つまり、10週下落比較的安い今が米国株の買い時なのです。
論理は週終わり近くには市場に戻りはじめました。ドルは再び上昇、EUR/USD は下落、1.1050で終了しました。見通しに関するアナリストの意見が次のようにわかれています: 45% が、このペアの上昇、35% が下落を支持しており、20%は中立の立場です。D1のオシレーターに関しては、混在: 30%が赤、 30% が緑、残りの40% がニュートラルグレイです。トレンドインジケーターでは赤が優勢: 緑の35%に対して赤が65% 。
弱気筋の直近のターゲットは、1.1000のサポートを突破後、1.0900。成功すれば、3月7日の安値 1.0805に再度トライすることが予想されます。その後、2020年の安値1.0635と2016年の安値1.0325が控えています。戦略的目標は、1.0000のレベルでのパリティです。
強気筋の当面の目標は、1.1100-1.1135付近のレジスタンス圏内を突破することです。その後は、1.1280-1.1390、1月13日と2月10日の高値 1.1485になります。
来週は重要なマクロデーターの発表がほとんどありません。3月24日(木)は、ドイツとユーロ圏の事業活動に関するデーターの発表が経済指標カレンダーに記載されています。この日は、米国の耐久財受注も明らかになります。
GBP/USD: Fedより一歩先を行くイングランド銀行
- Fedの会合に対する奇妙な市場反応もポンドを助けました。また、国内の労働市場の明るい統計もイギリス通貨の見方となりました。失業率は予想の4.0%に対して、実際には1月の4.1%から3.9%に減少、2月の失業手当の申請件数は481万件(前月は319万件)と減少でした。平均賃金は3.7%から3.8%に上昇でした。ボーナスの支給も鑑みると、4.8%の上昇で予想の4.6%を上回りました。これらのことにより、イングランド銀行は再度、米国連邦準備制度理事会の一歩先を行き、3月17日(木)の会合で金利を0.50%から0.75%に引き上げることができました。
イギリス政府が金融引き締めを継続して1ヵ月半後の次回の会合でリファイナンス金利の引き上げをする可能性が高くなります。新しいインフレ予想もこれを後押しすることでしょう。米国や欧州の銀行と違い、イングランド銀行は4月には7.25%になる予想があります。 このような状況で目標レベルを2.0% に下げるには少なくとも2年はかかるでしょう。
イングランド銀行の会合後の当初は、米国連邦準備制度理事会と同様に逆説的な投資家の反応でした。上昇予想に反してGBP/USD は、1.3210から1.3087への下落です。 しかし、その後は、ユーロの場合と同様に市場の流れが変わり、このペアは1.3175で5日間の取引を終えました。
GBP/USD の来週のアナリスト予想は次のとおり: 50% が上向き、40% が下向き、残り10%が横ばいの推移予想です。D1のオシレーターについては、このレビュー執筆時点では、70% が下向き、30%が中立の立場です。トレンドインジケーターでは65% が強気で35% が弱気です。
直近のサポートは1.3080-1.3100の圏内で、その後に、先週の安値(2021-2022と同様) - 1.3000、そして2020年のサポートが控えています。レジスタンスレベルは1.3185-1.3210、その後1.3270-1.3325、1.3400、1.3485、1.3600、1.3640。
来週のイベントについては3月23日(水)のイギリスの消費者市場データーが注目でしょう。国内のサービス業PMI (マークイット社) は翌日の3月24日(木)に発表予定で、先月の60.5から60.7に上昇が見込まれます。
USD/JPY: 円相場6年ぶりの安値に下落
- 前回の USD/JPY レビューの見出しは、 “市場はドルを選択”でした。この一週間は結論を裏付けるのみでした。米ドルがユーロやポンドに対して下落しているにもかかわらず、円に対して堅調に推移。先週の高値は119.40でしたが、やや安く119.15で終えました。USD/JPY のこのような高値での前回の取引は、ずいぶん前の2016/2017になる時でした。
この理由は超ソフト金融政策を変えたくない日本銀行側にあります。日本の立場はFed、イングランド銀行、ECBとは、かなり異なります。ただ、これには確かに一理あります。国内インフレ率は、1月の0.5%に対して2月は年間ベースではわずか0.9%でした。この指標は、2019年4月以降で最も高い水準ですが、イギリスや39年ぶりの高水準で7.9%にもなる米国とは比べものになりません。
また、3月18日(金)の前回の会合で日本銀行はエネルギーや商品価格の上昇によりインフレ圧力が高まるとの見通しを発表しましたが、それでも金利はマイナス0.1%とマイナス水準を維持し、10年国債利回りはゼロに近い水準です。
予想に関しては、アナリストの70% がそろそろ下落する時だろうとした見方であり、20% が反対の見解で10% が様子見といったところです。D1のインジケーターでは上向きで力強く突き抜けた後は、ほぼ一致となります。オシレーターの35% は既に買われ過ぎ圏内ですがトレンドインジケーターとオシレーターの100% は上向きです。
このペアは一週間前に示したレジスタンスレベルを全て簡単に突破したので、現在のプラス/マイナス15-20ポイントでの反発で次のラウンドになる可能性が高くなります。直近は119.80-120.20圏内。サポート水準と圏内は、119.00、118.00-118.35、117.70、116.75、115.80-116.15。
来週のマクロ統計では、3月25日(金)に発表の東京のインフレデーターに注目です。予想では東京のコア消費者物価指数は0.5%から0.4%に低下する可能性があります。日本銀行政策委員会の前回の報告書が前日に発表されます。しかし、既に主な決定は知られているので、この報告書からは特に驚くことはないと思われます。
暗号資産: ビットコインの救いは少額保有者
- Fedの会合の最後におこなわれたジェローム・パウエル議長のスピーチが投資家の関心を株式市場に戻し、2020年4月以来のS&P500インデックスの2日続伸の推進力となりました。ダウ・ジョーンズやナスダックも上昇でした。こうしたリスク選好の高まりが暗号資産の助けにかなりなったとは言い難いですが、少なくともこれ以上の下落を防ぐことになりました。 BTC/USD の強気筋は再度$40,000 以上で足場を固めようとする一方、ETH/USD の強気筋は$3,000に近づけようとしました。
ビットコインは、このレビューの執筆時である3月18日(金)の夜に$41,650 圏内での取引です。市場の時価総額は1週間で1兆7,400億ドルから1兆8,800億ドルに増加しました。なお、Crypto Fear & Greed インデックスは、22ポイントから25ポイントでほとんど上昇せず非常に恐怖でとどまっています。
おそらく、米国の株価指数が伸びたことは、デジタル市場にとっても朗報といえるでしょう。大西洋の向こう側、ヨーロッパ側から、もう一ついい知らせがありました。欧州議会の経済金融委員会(ECON)が暗号資産を規制する法案を採択しました。“暗号資産部門にはいい日です! 欧州議会が世界標準となる革新的な規制となる道を切り開いたのです” と草案者の一人は述べています。また、この法案には事実上ビットコインの禁止を意味するプルーフ・オブ・ワーク コンセンサスアルゴリズムでのマイニングを禁止する修正案が含まれていないことも良いところです。
欧州議会の決定はジョー・バイデン米国大統領が同じ課題で大統領令に署名した数日後でした。この文書が暗号資産の国家安全保障や経済に与える影響を年内に調査して必要な法改正の概要を示すよう連邦政府機関に指示していることを思い出してみましょう。特に、SEC(証券取引委員会)とCFTC(商品先物取引委員会)が業務や国務省から商務省までの政府機関も役割の定義の調整をサポートすることになっています。
アナリストの一部では、ウクライナでの出来事によってホワイトハウスや欧州議会がこのように講じることになったという見方をしています。もう少し詳しく言うなら、ロシア対する制裁回避のために一部の組織や個人による暗号資産の利用に対する懸念からです。
つまり、ロシアの一部の大口投資家たちがスイスの中立性を頼ってスイスの取引所に暗号資産を預けたことが先週知られました。しかし、スイスはヨーロッパの制裁に加わると予期せぬ発表をしました。そして、現在はロシアのオリガルヒが資産を守ろうとしています。例えば、ロイターは暗号資産企業(企業名は非公表)がスイスのブローカーから50億ドル相当の125,000 のビットコインの現金への売り注文を受けたと報じています。
分析会社のエリプティックが制裁されているロシアの高官やオリガルヒに関連とされているデジタルウォレットについての情報を米国側に渡したとブルームバーグは報じています。ロシアに対する制裁措置をサポートするために、エリプティックの社員は暗号資産をルーブルで購入できる仮想資産サービスプロバイダー(ほとんどが取引所)を400以上特定しました (アナリストによれば、プラットフォームの一週間の取引量は3倍)。さらに、同社のスペシャリストたちは、 制裁されている個人や企業関連の数十万件の暗号ウォレットを特定しました。
アナリストの一部では、緊迫した政治情勢やFedの金融引き締め策によりビットコインは再び弱気トレンドに戻る可能性があるといいます。AcheronInsights の編集者クリストファー・イエーツ氏はBTC/USD が$30,000に下落すると予想しています。有名なアナリストのウィリー・ウー氏も同じ懸念を抱いています。同氏の計算によれば、相対コストの計算の上で必要な下げがないことが示されています。同氏の見解によれば、これは、"下げに転じる余地がある"を示しています。
投資家のリスク選好の高まりに加え、ビットコインは10BTCまでのウォレットを持つ積極的な小口購入者によって崩壊が避けられています: 局地的底値の形成を願いながら購入を増やしています。そこで、CoinMarketCapの SMM サービスがサブスクライバーにアンケートを実施したところ、5人中4人が3月末までにビットコインの価格が$50,000 に上昇すると確信しています。
IntoTheBlockのアナリストによれば、ビットコインの保有者は史上最高の: 3,979万アドレスとなりました。今年に入ると新たにおよそ888,0000のビットコインホルダーがネットワークに参入してきました。同時にFinboldによれば、1 BTC以上の残高の小口保有者の著しい増加が観測されます。クジラ (1000 から10,000 BTC)に関しては、増加傾向は見られません。アナリストによると、中期的には大きな上昇が見られないことを示唆しています。
アップルの共同創業者であるスティーブ・ウォズニアック氏のビットコインについての見通しはさらに楽観的です;同氏は、まだ、ビットコインが$100,000に上昇すると信じています。同氏によれば、BTC はデジタルの希少性が認識されるため金にも勝る “最も信じられないほどの数学的ミラクル”です。
暗号資産の世界のほかのインフルエンサーたちもこのマイルストーンに到達できるとしています。Bitbull のJoe DiPasquale CEOは、暗号資産の最大の支援者の一人です。11月以降、ビットコインが下落をしていても待望の$100,000大台になると信じています。
ギャラクシーデジタルのマイケル・ノヴォグラッツCEOはブルームバーグTVでこの5倍の数字を挙げました。同氏はビットコインが5年で$500,000に上昇する可能性があると再度予想で確認しています。そして、これは急騰ではなく堅調な推移となるでしょう。
こちらのビリオネアは2022年初めの暗号資産の失速を正確に予期していました。同氏によれば、2021年のビットコインの急騰は連邦準備制度理事会の“紙幣の増刷永遠に“という恐怖に煽られたからだといいます。Fedが刺激策を縮小している今は、ビットコインの弱気トレンドの真っ只中にいるということです。
暗号資産銀行Abra のBill Barhydt CEOは、イーサリアムに素晴らしい見通しを描いています。同氏は、イーサリアムネットワーク内での手数料の着実な減少が$30,000-40,000圏内への上昇への推進力になるとした見方をしています。今日、イーサリアムネットワークは、ノンファンジブルトークン(NFT)、DeFi分散型金融、ゲームなどの分野で利用されており、業界で最も注目されているネットワークの一つです。イーサリアムの保有者の数は、イーサリアム2.0のスタートやステーキングへの参加で増えていくだけでしょう。
しかし、Bill Barhydt 氏は6月か7月に少額のETHの売却の可能性も排除していません。同氏によれば、これは暗号資産の上昇を背景とした完全に予測可能な調整となります。
NordFX Analytical Group
注意: これらの資料は、金融市場への投資推奨でもガイドラインでもなく、情報提供のみを目的としています。金融市場での取引には、リスクがあるため投資資金を全て失う可能性もあります
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