EUR/USD: カオスとパラドックスの絡み合い
- 前回のEUR/USD レビューは、市場はクレイジーなのかという質問を投げかけたものでした。多くのアナリストが3月のFedの会合後、金融市場は少なくても非論理的であるという見方で一致していました。それは、ただ、見当すらつかないとしか言いようのないものでした。
米国政府の積極的な金融引き締め策、Fedの動きやロシアへの制裁による米国経済の成長の鈍化、中国の新型コロナウイルスの感染拡大の悪化にもかかわらず、株価指数は上昇しています。特にS&P500は3月15日以降10%近く上昇しており、新型コロナウイルスのパンデミックがはじまってから2年で2倍以上です(より正確には108%の上昇)。
この現象の説明は困難です。最も論理的に聞こえる古典的な説明だと、市場が期待に応えて上昇していることになります。投資家は、パンデミック当初の動揺後、株価指数が急速に回復したことを思い出して同じようなことがすぐに起こると判断したのです。すなわち、高値更新に跳ね上がる前の今が買い時なのです。
EUR/USDについても同じように非論理的な推移です。市場はFedとECBの金融政策の違いにより大きく押し下がることを予想していました。しかし、その代わりに1.1000 付近で固まり完全に一週間前にアナリストや指標の当たり障りのない予想と一致しました。
どうやら、投資家はFedの急激な利上げはインフレを阻止するものの米国産業に深刻な問題を引き起こすことになるという見方をしているようです。しかし、ヨーロッパでは第3四半期と第4四半期に経済の上向きが期待できるかもしれません。
アメリカのジョー・バイデン大統領は先週の欧州訪問の前にロシアのエネルギー供給の完全禁輸を含めたロシアに対する新たな制裁を実現させたいと述べていました。しかし、これについては実現せずにユーロを支えることになりました。ウクライナでの武力紛争が終了するか、せめて激化から停戦状態となれば、ユーロはさらに上昇する可能性があります。米国よりも良好なヨーロッパ経済の原動力であるドイツの債券市場の状況もまた、EUR/USD の下支えとなっています。
並行してマクロ統計は、かなり対照的で現状の評価をさらに混乱させています。ユーロ圏の事業活動は今月、55.5から54.5へと減少しました。しかし、それでも予想の53.7ポイントよりはましです。また、米国では事業活動の総合指数が55.4ポイントの予想に対して55.9から58.5に急上昇しました。そして、もう一つのパラドック:ロシアへの制裁が大西洋を挟んで経済に圧力をかけて燃料価格が急騰しているにもかかわらず、どうして、このようなことが生じるのでしょうか?
プーチン大統領のルーブルによるエネルギー供給でさらなる混乱が混沌としました。確かに、これは非友好国のみの適用ですが、米国、EU諸国に並んでイギリス、日本、オーストラリア、ニュージランド、カナダ、スイスが含まれています。
国連貿易開発会議は既に2022年の米国のGDPの予想を3.0% から2.4%へ引き下げています。また、ユーロ圏のGDPについても見直され、より大きく、その数字は半分の1.7%です。これは、ユーロ圏が戦乱のウクライナに隣接しており、ロシアの石油やガスに大きく依存しているからのようです。そして、ルーブルでの購入方法を知る人はいません。今までこのようなことは世界で起きたことがありませんでした。そのため、おそらく、北アフリカや中東などの仲介国を通じて購入することになるのでしょうが、さらなる価格上昇につながるでしょう。
先週の EUR/USD は1.0960-1.0965 のサポートに依存して取引は1.0982で終了しました。多くのアナリスト(60%) は、このペアが1.0900圏のサポートを突破して3月7日の安値1.0805を再び試みるとした見方です。その後、運が良ければ2020年の安値1.0635 や2016年の安値1.0325と続くでしょう。 戦略的目標は1.0000レベルのパリティです。残りの40%のアナリストは、この筋書きとは反対の見方で強気予想です。こちらの直近目標は1.1050付近のレジスタンゾーンの突破です。その後に、1.1100-1.1135、1.1280-1.1350 の圏内と1月13日の高値と2月10日の高値である1.1485付近と続きます。並行して、週間から4月全体の中央値予想に切り替えてみると、今月のピボットポイントは現在のように1.1000付近となります。
D1のオシレーターは混在: 35% が赤、30% が緑、残りの35% はニュートラルグレイ。トレンドインジケーターは100% が赤。
来週は、重要な経済統計の発表がたくさんあります。ドイツの消費者物価指数は3月30日(水)、翌日には同国の小売売上高が知らされます。ユーロ圏の消費者物価統計は4月1日(金)に公表されます。ヨーロッパの統計に加えて、民間部門雇用と米国GDPのデーターが3月30日、通常どおり金曜日に景況感指数(ISM)や非農業部門雇用者数を含んだ米国の労働市場の一部発表があります。
GBP/USD: 先の読めない中での狭い値幅
- ユーロと同様にGBP/USD の強気筋も弱気筋も完全に行き詰まりです。理由は同じ: 投資家の世界的なリスク選好という奇妙な増加とエネルギー源における先の読めない状況です。その結果、週を通して横ばいの推移で1.3120-1.3220の狭い値幅で身動きがとれない状態です。5日間の途中で1.3300台を突破しようとした上昇の動きがありましたが大失敗に終わり、このペアは1.3180の取引幅の中央値で終了しています。
GBP/USD の来週のアナリスト予想は次のとおり: 50% は上昇、25% が下落、残りの25%は横ばい傾向の見方です。この執筆時点でのD1 のオシレーターは、70%が上向き、30%が下向きです。 トレンドインジケーターでは逆の結果: 80% は下向き、20%が上向きです。
直近のサポートは、1.3150付近、その後は1.3080-1.3100圏内と3月15日 (同じく2021-2022)の安値1.3000、2020年のサポートと続きます。レジスタンスレベルは、1.329-1.3215、そして1.3270-1.3325、1.3400、1.3485、1.3600、1.3640。
イギリスの経済関連のイベントでは、3月28日(月)にあるイングランド銀行のアンドリュー・ベイリー総裁のスピーチと3月31日(木)の2022年第4四半期のイギリスのGDPの公表に注目です。
USD/JPY: 最近の記録に反した日本通貨
- 先週の円安は6年ぶりの安値で1ドルあたり119.15 円でした。今週、記録更新: 3月25日(金)に122.43 水準。
このような円安は超金融緩和を変えたくない日本銀行によるものです。日銀の立場はFed、イングランド銀行、さらにECBの計画や動向と非常に対照的です。刺激策の時期尚早な巻き戻しは、効果がでるよりも害の方が大きいとした変わらぬ見方をしています。確かに、これには理由があります。この国の2月のインフレ率は年換算で1月の0.5%に対し、2月は0.9%に過ぎませんでした。この指標は、2019年4月以来の高水準ですが、イギリスや39年ぶりの高水準である7.9%のアメリカとは比べものにもなりません。
このハト派的立場は、3月22日の日本銀行の黒田東彦総裁の量的緩和政策(QE)の縮小の可能性や利上げの議論をするには時期尚早であるとした発言で再確認されました。長期のマイナス金利‐マイナス0.1%を思い出してみましょう。
ほかにも3つの材料で円は押し下げられ、USD/JPY が上昇しました。一つは、投資家の安全通貨からリスク資産への流れ。二つ目の材料は、Fedの議長の言い回しがよりタカ派的になっていること。3月21日の全米企業エコノミスト協会でジェローム・パウエル議長は必要であれば米中央銀行がより積極的になることを発言しています。この発言で市場は2023年の終わりまでにFedが10-11回の利上げをおこなう可能性がある見方をしました。このような見通しで10年米国債利回りは2.146%から2.282%へ上昇、2019年5月以来の最高水準となりました。そして、ご存知のように日本通貨の為替レートは従来、このような国債と相関関係があります。10年国債利回りが上昇すれば、USD/JPY は上昇します。先週見てきたことがこれにあたります。
そして、最後の3つめの材料はルーブルによるガスの支払いを導入したロシアの指導者の決定。鈴木俊一財務大臣は “ロシアの意図ややり方はよく分からない” と3月23日の国会で述べています。
多くのアナリストは、この2週間、上昇が終わる見方をしていましたが、今のところ、起きていません。逆に、USD/JPY は700ポイントのプラスです。そして今、この70-80%の "多数" が50%に"縮小" しました。週間から月次予想になると、このペアの下向きへの反転と少なくても117.00-118.00に下落するとした見方は依然として多く85%にもなります。
D1のインジケーターでは、力強く上に突き抜けた後は完全一致です。トレンドインジケーターとオシレーターの100% は上向きですが、オシレーターの35% は既に買われ過ぎのゾーンです。
前回の強気予想では目標として119.80-120.20圏内でしたが、現在は大きく下回っています。 現在の状況では新たな目標を示すことは困難です。おそらく、プラス/マイナス15-20ポイント戻した後に続くラウンドレベルに注目することになるでしょう。このアプローチは、122.08で終了した先週に確認されました。また、非常に大きいボラティリティによりサポート圏内の幅が広くなっています。120.60-121.40、119.00-119.40、118.00-118.35 圏内。
今週の経済指標カレンダーでは、4月1日に日本銀行により公表される全国企業短期経済観測調査が注目です。これは、国内の輸出向け大企業の一般的な業績を反映させる重要な指標です。
暗号資産: 反騰を前にして
- 株価指数の上昇要因となった投資家のリスク選好は暗号通貨市場をじわじわ引張っています。ビットコインは3月25日(金)の夕方には今年5回目となる重要なレジスタンスレベルの$45,000になりました。 この水準で足場を固めることができるかどうかについては、まだ、疑問が残るとことです。過去4回は失敗; BTC/USD は引き戻しました。しかし、チャートに上昇ウエッジが明らかに表示され、次のドローダウンが段々小さくなっています。すなわち、ビットコインは1月24日に$32.945に下落して、一か月後には $34.415 、そして3月7日の底値は$37.170 となりました。
3月25日の市場の時価総額はピーク時には2.280兆ドルに上昇しましたが、ここで十分に足固めをすることが出来ず、このレビューの執筆時点では1兆995億ドルでの取引です(1週間前は1兆8,800億ドル)。 The Crypto Fear & Greed Index では、ようやく、極度に恐怖から抜け出し25から 47 ポイントに上昇して中立です。
イーサリアムの生みの親であるヴィタリック・ブテリン氏はタイムのインタビューでロシアのウクライナ侵攻を非難しました。同時に、彼の意見によると、この侵攻はデジタル資産の目的が人々に真の利益をもたらすことで暗号資産が権威主義的な政府への対抗手段であり大手テクノロジー企業の “堅苦しいコントロール” を弱らせるものであることを暗号資産コミュニティに思い出させることになります。
BitMEX暗号通貨取引所の共同設立者であるアーサー・ヘイズ氏もブテリン氏と同意見で、ロシアへの制裁によりビットコインは米ドル、そしておそらく金に対して優位に立つとした見方をしています。同氏の見解では、ロシアやほかの諸国への制裁は国民に金やビットコインの投資を促すだけでなくドル離れになります。ヘイズ氏は厳しい経済状況下では国民は供給制限や提供でより確実な資産を持つことになり、お金を貯めるためにより信頼できる方法を検討するようになると説明しました。
BitMEX の共同設立者はロシアが国際決済システムのSWIFTから切り離され、つまり、エネルギーのリーダーの一国の孤立は世界金融システムにとって長期的な悪影響を及ぼすかも知れないと考えています。金はエネルギーや食品の国際貿易に使われるため、しばらくの間は主流となるでしょう。中央銀行が貴金属の貯蓄をはじめて、しばらくすると、このような支払いは益々難しくなってくるでしょう。そして、このことがデジタル通貨の普及に貢献することになってきます。
暗号資産が本当に普及するとなると明らかに規制が必要となります。これは、ビットワイズ・アセット・マネージメントの投資ディレクターであるマット・ホウガン氏の意見です。同氏は、デジタル産業の歴史における現在の段階が今年に始まって来年へと続く上昇への道を開いていると考えています。
ビットワイズのトップマネジャーによると、重要な規制措置の1つは、ジョー・バイデン米大統領の最近の法令でビットコインの価格上昇につながる可能性があるといいます。この法令が年末までに暗号資産が国家安全保障や経済に与える影響を調査して必要な法改正の概要を示すよう連邦政府機関に指示していることを思い出してください。特に、SEC(証券取引委員会)とCFTC(商品先物取引委員会)の業務を調整して国務省から商務省まで、政府機関の役割を定義することになっています。
バンク・オブ・アメリカの暗号資産ストラテジストのアルケシュ・シャー氏も暗号資産市場の規制により信頼性が高まり、時価総額が史上最高額になると考えています。同氏は “最終的にはある程度のガバナンスや信頼性が必要となりますが政府は上手くいかなければ禁止したがります”と説明しました。 そのため、半分散型システムが最適であるというのが同氏の意見です:密かに一元管理されるブロックチェーン。 “暗号資産のエコシステムの半中央集権的な部分に30兆円というのは、かなり現実的な資金だと思います” シャー氏は結論付けました。
予見可能な将来について述べるなら、分析会社の グラスノードがビットコインの高値$69,000の再来を予想しています。コインは、この9週間、200日単純移動平均線(SMA)の下で取引されていますが、上昇を続けています。同様の状況が2021年の蓄積期間でも見られ、史上高値を付けた第4四半期の反発への道を開いています。グラスノードのデーターも長期のホルダーが未だにビットコインを保有しており、取引所のビットコインが減少していることを示しています。同社のスペシャリストは下方調整末期であるとこのデーターを解釈しています。
一部の専門家によると、多くの投資家がBTCのためにETHを購入しているため、現在、若干イーサリアムが優勢です。さらに、コミュニティはイーサリアムメインネットの待望のアップデートを待っています。The Mergeのアップデート がテストネットでのテストの成功に続いてリリースが近づいています。その公開前に、すでに50億ドル以上のETHトークンがバーニングされた結果、流通から引き出されています。バーニングはイーサリアムの供給量を減らすため、価格にプラスの影響となりアルトコインの上昇に貢献することになります。
FXストリートのアナリストは 現在の上昇トレンドでは20%の価格上昇もあり得るとしています。しかし、これが実現するには、ETH/USD が$3,033以上で足場を固める必要があり、これが2021年10月以来の最初の完璧な上昇へと導くことになります。
NordFX Analytical Group
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