2022年4月25日‐29日のFXと暗号資産の予想

EUR/USD: 言葉がトレンドを動かす

  • 先週の主要な原動力はECBやFRSの要人発言でした。しかし、5日間のはじめは比較的静かでした: 週末のイースターの影響です。アメリカとは異なり、ヨーロッパは4月15日(金)だけでなく、18日(月)も休日でした。ドルはアメリカの政府関係者の声明で若干支持されました。アトランタ連邦準備銀行のラファエル・ボスティック総裁によると、基準金利は2022年の年末までには1.75%程度に上昇する可能性があり、シカゴ連邦準備銀行のチャールズ・エヴァンス総裁は2.25-2.50%になるという見解です。そして、セントルイス連邦準備銀行のジェームズ・ブラード総裁は、5月のFOMC(連邦公開市場委員会)で直ぐに基準金利が0.75%に上がる可能性があると公表しました。

    火曜日に状況は一変しました: EUR/USD は反転して17ポイント上昇、4月21日(火)は1.0935 の高値でした。今回の欧州中央銀行政策理事会のタカ派発言で支持されたのはドルではなくユーロでした。 それは、ラトビア中央銀行のマルティン・カザクス総裁が水曜日にECBの利上げが早ければ7月に実施される可能性があると述べたことでした。同じく、ベルギー国立銀行のピエール・ウンシュ総裁も翌日のブルームバーグのインタービューで年内にプラス金利になる可能性があることについて言及しています。ECBのルイス・デ・ギンドス副総裁もこの可能性に同意しており、副総裁によると量的緩和政策(QE)が7月に終了した後に利上げの道が開かれます。

    このペアのほかの原動力はリスク感情の改善と米国債の利下げです。これにより、DXY ドル指数は火曜日に2年ぶりの高値をつけた後、1% 下落しました。

    木曜日の午後は状況が3度変わりました。ドルは米国債10年利回りの2018年12月以来の最高値水準である2.974%の上昇に助けられ新たな攻防となりました。これはジェローム・パウエル議長が影響しています。国際通貨基金の春の会合でFRBの議長は5月3‐4日の次回のFOMCの会合で0.5%の利上げの可能性が高いことについて認めています。パウエル議長は米国の労働市場が既に“過熱”しているので、こうした動向が検討されていると述べました。議長は6月にさらなる0.5%の利上げの可能性についても否定しませんでした。

    同じくIMFの会合でECBのクリスティーヌ・ラガルド総裁は、7月のユーロの利上げの可能性についてのコメントを控えました。 “経済の動向次第による” とした漠然とした発言の後、EUR/USD は下落しました。

    ECBの総裁は会合最終日である4月22日に立場をやや引き締めることを決めました。欧州中央銀行の買い入れプログラムが第3四半期はじめに終了する可能性があることを否定せず、早ければ2022年に利上げの可能性を付け加えました。総裁の発言は木曜日に比べてタカ派的のようでしたがユーロを助けませんでした。このペアは1.0770での底値となり、その後は、やや上昇調整の1.0800で終了しました。

    ユーロはフランスのエマニュエル・マクロン大統領と野党のマリーヌ・ルペン党首のテレビ討論の結果でやや支持されました。世論調査によると現職の大統領がライバル候補より説得力があったとした回答が56%を占めました。

    フランス大統領選挙の第2回投票は4月24日(日)に実施されます。第1回投票ではエマニュエル・マクロン氏が27.84% の投票率での勝利でした。極右政党のマリーヌ・ルペン党首は23.15%を獲得しました。党首が欧州懐疑主義派に属しており、2017年は欧州中央銀行からのほぼ離脱について呼びかけていました。こちらの党首の力が勝っていれば、アナリストによるとEUR/USD は、1.0500水準、あるいは、それ以下に落ち込むかもしれません。

    このレビューの執筆時点では投票結果がわかっていないため、大半のアナリスト (50%)は予想を出していません。35%はドル高が続くとした見方です。反対の見方は15%だけです。D1のトレンドインジケーターとオシレーターはすべてが赤ですが、後者では、このペアの売られ過ぎのシグナルが出ています。直近のサポートは1.0770。EUR/USD の次の弱気派のターゲットは4月14日の安値、1.0757。このサポートを突破すれば、2020年の安値1.0635、2016年の安値1.0325を目指すことになります。当面のレジスタンスゾーンは1.0830-1.0860、次いで1.0900、4月21日の高値1.0935と1.1000。

    マクロデーターの発表では米国の耐久受注財が4月26日に発表されます。GDP データーとドイツやユーロ圏の消費者市場の状態が4月28日(木)と29日(金)に公表されます。これに加え、前年同期比の米国GDPの速報値が木曜日に発表されます。

GBP/USD: 1.3000 のバトルは失敗。反撃はあるのでしょうか?

  • 前回のレビューでは強気派と弱気派のバトルが続き、1.3000圏内を超えられるかについてであったことを思い出してください。1.3000は3月15日の安値だけでなく、2021-2022年の安値でもあり、重要なサポート/レジスタンスレベルです。

    そして今、強気派はこのバトルに負けたと言わざるを得ません。GBP/USD は1.3090の高値上昇後、最終的には下落でした。局所的安値は金曜日の1.2822 で最終的な取引終了の鐘が僅かに高い1.2830で鳴りました。

    このポンドの崩壊理由は大西洋の両サイドにあります。一方は米国連邦準備制度理事会(FRB)のタカ派的な立場と米国債利回りの上昇です。もう片方は、イングランド銀行(BoE) の慎重な発言とイギリスの弱いマクロ統計です。

    イギリスのアンドリュー・ベイリー総裁は木曜日の経済状況の発言でイギリスのインフレーションによる打撃は米国よりもユーロ圏と共通することが多いと述べています。なお、総裁は"インフレ予想の変化に期待すべきではない"と付け加え、 "インフレへの対抗と実質所得における打撃の影響は非常に厳しい線引きがある"ことに対処していることを繰り返し述べました。

    イングランド銀行総裁の発言の翌日は国家統計局がポンドに追い打ちをかけました。3月の小売売上高は1.4%減と発表されました。この指標は0.5%の2月の下落に続いて0.3%の減少にとどまるはずだったという予測を大幅に下回る結果でした。

    このような非常に悪い結果は投資家にショックを与える可能性が高くなり、イギリス通貨購入意欲の回復には時間がかかることになります。弱気筋はこの成功を糧にGBP/USDをさらに押し下げました。 アナリストの65% はこの展開を支持、残りの35% は上昇調整されることを期待しています。

    D1インジケーターでは赤が総体的に優勢: トレンドインジケーターとオシレーターの100%。 確かに、後者は三分の一が売られ過ぎ圏内です。弱気筋の直近目標は1.2800のサポートの克服、1.2760付近での2020年の安値更新、1.2685-1.2700圏内で2020年の9月の安値への道を開くことです。このペアの下落に関するより高い目標は、1.2400、1.2250、1.2085、1.2000のレベル。弱気筋に関しては、主導権を握り1.3000の攻防戦と再びなるでしょう。しかし、これには. 1.2860 と1.2915 のレジスタンスを克服する必要があります。1.3000の取り組みに成功すれば、レジスタンスレベルは1.3100、1.3150、そして1.3190-1.3215圏内が控えています。

    来週は、イギリス経済の重要なデーター発表はありません。唯一注目するデーターは4月29日(金)の同国の住宅市場に関するデーター発表です。

USD/JPY: 日本銀行は固守できるのでしょうか?

  • 日本円は今までとは違った動きを次から次へとしており、先週の今までとは異なる推移の予想は的中でした。USD/JPY は4月20日(水)に129.39で高値更新でした。この高値は2002年5月が最後でしたので、つまり、20 年前になります。

    円安理由は同じ: 米連邦準備制度理事会との金融政策の相違。日本の世論の多くが円安の反対にもかかわらず、日本銀行は基準金利の利上げ、ゼロ金利さえ反対のままで金融刺激策縮小を望んでいません。政府はインフレ対策よりも経済活動の維持がはるかに重要であると考えています。

    日本の中央銀行の会合が4月28日(木)、来週、開催されます。シンガポールのUOBグループ(ユナイテッド・オーバーシーズ銀行)のストラテジストによると、政府は今一度金融政策のパラメーターを据え置くつもりです。“確信している” と“そして、日銀は、2022年内は現在の金融政策を変更せず、少なくても2023年の会計年度内は大規模な刺激策を維持したままである” とUOB のエコノミストは記述しています。

    鈴木俊一財務長官がジャネット・イエレン米財務長官と為替介入について協議したという報道は円相場の支えとなりました。そして、"アメリカ側はこの件についてポジティブにとらえた" ようでした。しかし、鈴木財務長官とイエレン財務長官との協議の詳細についてはコメントを控えた財務省側情報筋では両国間の介入効果の期待を弱めました。

    数年来の高値更新の後、USD/JPY は5日間の後半に少し反落して128.53水準で終了しました。アナリストの40% は、新高値の更新の強気筋を支持、反対の立場が30% 、残り30%が中立です。D1のインジケーターに関しては、トレンドインジケーターの100% が上向き、オシレーターでは90%(三分の一が買われ過ぎ)、残りの10% が下向きです。直近サポートは127.80-128.00に続き、127.45、126.30-126.75、126.00 、125.00。レジスタンスは128.70、129.10、129.39水準。強気筋のこれに続く目標設定は、むしろ占いのようなものです。唯一できることは、2002年の1月1日の高値135.19を非常に高い目標とすることだけです。この7週間で1400ポイント上昇したことを考慮すると、このペースが続けば1ヵ月半でこの高値にとどくことになります。

    今週予定されている日銀会合と金融政策決定会合以外は日本経済の状況に関する重要な情報はありません。

暗号資産: BTC $30,000 から$200,000

  • 2022年を通じてビットコインはピボットポイントで$40,000付近での$50,000にとどくか、$30,000に下落するかの推移です。このような推移の理由には、もちろん、米連邦準備制度理事会が挙げられます。投資家は金融政策の引き締めとドルの利上げを前にして最終判断を決めかねています。その結果、リスク選好が下がって、また、上がっています。まず、はじめに、株式市場にこれがあてはまり、それに続いて暗号資産市場でもあてはまることになります。

    テクノロジー企業と BTC/USD の相関関係については何度も考察してきました。なお、Arcane リサーチによると、ビットコインとナスダック総合指数の相関関係は2020年7月以来の高まりとなりました。ビットコインと金の間での同様の指数では史上最低水準の落ち込みです。金は最近、インフレ対策に用いられ、価格は史上最高値に近づいており、3月8日は1オンス$2.070 でした(最高値の$2.075 は2020年8月2日に記録しています)。

    ビットコイン-ETP (上場取引型金融商品) は資金流失を示しています。現在のペースでいくと、投資家が1万3849BTCを引き出した2021年7月の記録を塗り替えて月末には新記録更新となります。ビットコインネットワークのアクティブアドレスの数は2021年1月の高い時よりも約30%低い1560万に減少しています。グラスノードのデーターによると多くの短期間 (155日以下) の保有者や投機家が既にBTC を手放しました。

    現在の市場を支えているのは長期保有者 (LTH)です。既に記述していますが、長期保有者はビットコインの貯蓄傾向にあります。貯蓄高は排出量の何倍にもなっています。グラスノードによると、中央集権型プラットフォームからのビットコインの流出は月96,200BTCに増加しており、これは歴史的に見ても極めて稀なことです。これに加え、“クジラ”やいわゆる“エビ” (残高が1 BTC以下のアドレス)も貯蓄に励んでおり、市場供給量の14.26% を占めています。

    現時点では長期保有者のおよそ15% が損をしていることになりますが、将来のコインの上昇を見込んで保有を続けています。例えば、分析ソフトプロバイダーのマイクロストラテジーは、自社戦略を“固執” して貯蓄を続ける意向です。これは、マイケル・セイラーCEOが米国証券取引委員会に宛てた書簡の中で記述したものです。Bitcoin Treasuriesによると、マイクロストラテジーは51億7000万ドル相当の12万9218BTCを保有しています。同社では直近で4月の上旬に1億9050万ドルの買い付けをしています。ちなみに、マイクロストラテジーに次いで2位のテスラは約17億ドル相当の43,200BTCを保有しています。

    この執筆時は4月22日(金)の夕方で暗号資産市場の時価総額は重要な心理レベル2兆ドルを下回ったままの1兆8000億ドル(1週間前は1兆8000億ドル)です。Crypto Fear & Greed インデックスはやや上がりました: 22から 26 ポイントで非常に恐怖から恐怖。

    BTC/USD は$39,700付近での取引です。この4ヵ月のチャートでは高値と安値が上昇しており、投資家にさらなる価格上昇の期待を与えています。しかし、すべては5月のFRBの会合とリスク感情に左右されます。BitMEX の共同設立者のアーサー・ヘイズ氏がナスダック指数の下落で第2四半期末にビットコインが$30,000 に下落すると予想したことを思い出してください。同じ$30,000 の数字を暗号通貨アナリストでトレーダーのマイケル・ヴァン・デ・ポッペ氏も挙げていますが別の理由です: ロシアのウクライナへの軍事侵攻による東欧の緊迫した政治情勢。

    多くの専門家は中長期的予想で楽天的であるもののBTC/USD の直近については期待していません。暗号資産取引のプラットフォームであるNexo のアンソニー・トレンチェフCEOによるとビットコインの価格は今後12ヶ月で10万ドル以上に上昇する可能性があります。しかし、同氏はビットコインの短期的な見通しには"懸念"しています。同氏の見解は、価格は米中央銀行の金融刺激策の縮小による従来の株式市場の下落に伴うかもしれということです。

    BitfinexのCTOであるパオロ・アルドイノ氏はビットコインについて同様の推移を予想しています。同氏はビットコインが2022年末までに$50,000よりも“はるかに高く”なると考えています。 しかし、近い将来の急落を認めています。 “現時点では暗号資産市場だけではなく、株式市場でも世界的に不透明な状況にいる”と アルドイノ氏は述べています。

    暗号通貨市場のアナリストのアリ・マルティネス氏はビットコインの価格チャートを分析して価格は$27,000へ下落の可能性があると述べました。これを防ぐためには強気筋が重要なサポート水準以上でいることが重要です。フィボナッチレベルによれば、このサポートは$38,530付近です。上手くいかなければ、ビットコインは $32,853 もしくは$26,820まで下落します。多くのアナリストと同じようにマルティネス氏もテクニカル分析に集中するだけでなく、今の世界政治情勢に大きく左右されるのでファンダメンタル分析を捨てるべきではないとする考えです。

    暗号通貨アナリストのベンジャミン・コーウェン氏は、ビットコインが"トレンド方向を決定するポイント" に近づいていると自信を持っています。コーエン氏は、以前の出来事について詳しく説明しています: “2013年にビットコインは最初の安値、その後、2度目、3度目とつけ、そして最終的には上昇しました。2018年には安値が高くなり、2013年と同様なことが起こると予想されましたがビットコインは安値を更新しました”。

    アナリストによれば、上昇トレンドを回復させ下落トレンドの可能性を減らすには、この執筆時点で$47,440 付近であるBTC/USD が200日単純移動平均線を上回って上昇する必要があります。 “ビットコインが200日単純移動平均線を上回る活力を取り戻して$50,000水準となれば、その後は少し楽観的に見えるでしょう。しかし、$30,000 に下落したらどうなるのでしょう。その後、再び上昇するのでしょうか? $40,000 もしくは$43,000に戻すいいチャンスです” とベンジャミン・コーウェン氏は述べています。

    現在、ビットコインが$40,000付近での取引なので、現状ではビットコインが$30,000から$40,000へ戻るということについて投資家はあまり喜べないでしょう。そこで、投資家を喜ばせるためにビットコインが早ければ来年には史上高値更新となると見解する別のスペシャリスト、DataDash のニコラス・メルテン氏を引き合いに出しましょう。同氏によれば、強気筋は現在の市場の推移にもかかわらずコントロールを失っていない状態のままです: “市場は投資家を喜ばせるには現在ほど遠い状態ですが、この状況は蓄積のはじめには常に観察されます。こうしてトレンドの構造は作られはじめます”。

    メルテン氏によれば、ビットコインの安値上昇と高値更新が始まったことで現在の状況がどうであれ強気筋が指導的立場であることが裏付けられています。この状況が続くのであれば、BTC の価格が翌年以内に$150,000、さらには $200,000 になる可能性があると同氏は考えています。

 

NordFX Analytical Group

 

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