2022年5月9日‐13日のFXと暗号資産の予想

EUR/USD: 数年ぶりの記録が多かった週

  • セントルイス連邦準備銀行のブラード総裁のように、すぐにでも0.75%の利上げが出来ると考えるせっかちな人々もいましたが、すべては市場の想定どおりでした。5月4日の会合後、FOMC(連邦公開市場委員会)は、フェデラルファンド金利を0.5%引き上げて1.0%としました。この22年間、米中央銀行は0.25%刻みで金利を変更してきたため、2000年5月以来の大幅な利上げとなります。

    米国連邦準備制度理事会によると、労働市場は、かなり堅調で基準金利は上がり続け、インフレ率は40年ぶりの高水準となります。政府は6月1日から“量的引き締め”の開始を決定しました。 FRBのバランシートの縮小ペースは、6月の350億ドルから7月には650億ドル、そして8月からは最大で月950億ドルにまで拡大する可能性があります。

    同時にFRBジェローム・パウエル議長は発言の中で今後の会合で0.75%の利上げについては積極的には検討しないと述べました。この発言により、金融引き締めペースの加速に対する懸念が緩和され、国債利回りは高値更新となりました。市場はFRBがかなり積極的ではないと感じ5月5日の米国証券取引所は上昇で取引を終えて、それに引きずられ暗号資産相場も上昇となりました。

    しかし、リスク資産を選好する人々の喜びは束の間でした。翌日、すぐに、5月6日の朝にはDXYドルインデックスが104.00を超える数年ぶりの高値をつけたのです。前回のここまでの上昇は20年前です。

    株式市場や債券市場で大規模かつ広範囲な売りが始まりました。特に、ハイテク関連株式は大きな打撃を受けました。S&P 500が2021年5月以来の安値水準で4% に落ち込む一方で、ナスダック総合指数は5%以上の下落となりました。同時に、10年債利回りは2018年以来の高水準となり、3%を超える上昇となりました。

    アナリストの一部からは、この現象について"FRBのより積極的な動きを望む債券市場とFRBのより緩やかな動きを望む株式市場の綱引き"だと述べられています。

    DXYインデックスの上昇にもかかわらず 、EUR/USD は非常に静かな推移でした。4月27日以降、1.0470-1.0640 の横ばいの推移で、定期的に 1.0500-1.0580と狭まっています。既に、相場に反映されていたFRBからの想定されていた決定に加えて、5月6日のジェローム・パウエル議長の発言、労働市場からのデーターを受けて回復の可能性はありました。ただ、非農業部門新規雇用者数 (NFP)のような重要な指標は先月と変わらず、 428,000人でした。その結果、このペアはやや迷いを見せ、チャンネル中央値: 1.0540水準で5日間の取引を終えました。

    米国の中央銀行の元幹部は、以前、フェデラルファンドの金利が最終的には一連の利上げの後、5.0%にとどくことを示唆していました。 もし、市場がこれを判断すれば、ドル高が続き、ユーロと1:1 のパリティになる可能性があります。一方で、アナリストの意見は次のように分かれます: 75%はドル高が続くとした一方で、25%だけが反対の意見です。D1のトレンドインジケーターの90% とオシレーターの85% は赤のドル高で、緑はそれぞれ10%と15% です。直近のサポートは1.0500で、続いて4月28日の安値1.0470、EUR/USDの弱気筋の次なるターゲットは2016年の安値1.0325。直近のレジスタンスゾーンは1.0570-1.0600、その後1.0750-1.0800、1.0830-1.0860、1.0900-1.0935、1.1000。

    来週は、あまり、重要なイベントはありません。5月11日(水)と5月13日(金)にドイツと米国の消費者市場のデーターが予定されています。また、米国の失業給付申請件数の推移も週の終わりに判明します。なお、EU圏内に隣接するウクライナ紛争の激しさやEUによる現在のロシアへの制裁に対する “サプライズ” も忘れてはいけません。

GBP/USD: スコアは 1.0-1.0。次は?

  • 先週は、FRBだけでなく、イングランド銀行も記録を定着させました。5月4日(木)の会合で25ベーシスポイント引き上げの1.0%で2009年以来の高水準となりました。しかも、銀行のMPC(金融政策委員会)の委員のメンバー9人のうち3人が、1.25%への利上げをすぐに賛成しました。利上げ反対の委員はゼロでした。さらに、イギリス政府が経済危機後に購入した国債の売却を検討していることが明らかになり、これは現在のところ、8500億ポンドをやや下回る金額になります。

    イングランド銀行も2022年のインフレ予測を5.75%から10.25%に大幅に引き上げました(3月にインフレ率は1992年以来のピークとなり、目標水準の2%に対して7% (前年比)を思い出しましょう)。主な理由は、燃料費と輸送費の価格高騰です。4月だけでもイギリスの燃料費は54%も急騰しており、これは上限ではありません。さらに、ブレグジットやコロナウィルスの大流行に加えて、ウクライナ侵攻に対するロシアへの制裁や中国でのコロナウィルスの新たなロックダウンもあり、状況は悪化しています。2023年のインフレ予測も悪化へ変更となりました: 2.5%から3.5%。

    経済予測も投資家を喜ばせるものではありませんでした。イングランド銀行は、今年のGDP成長率の予想(+3.75%)のままにしましたが、第4四半期から景気後退が予想されます。イギリスの中央銀行は、2023年のGDPを、従来計画の1.25%の増加から0.25%の減少を予測しています。新たな予想によると、2024年のGDPは1.0%ではなく、0.25%の成長にとどまります。

    米国の連邦準備制度理事会とイングランド銀行の金利は、現時点で同じ1.0%の水準にとどいています。しかし、ドル金利が来年のはじめに3.0-3.5% または、これ以上になると、イギリス政府は2023年の半ばまでに、ポンドのレートを2.5%に引き上げ、予想の3年の期間の終わりには 2.0%に下げると示唆しています。このように金融引き締めのペースの違いが英ポンドに圧力をかけ続けるそうです。ただし、FRBも6月にインフレ予測の見直しがあり、状況は変わることもあります。

    その一方で、GBP/USD は下落を続け、2020年6月水準に戻り、1.2275で局地的安値をつけました。取引終了の鐘は1.2340で鳴りました;

    55%が英ポンドのさらなる下落、 30% が上方調整、15%が – 横ばいの意見です。D1のインジケーターについては、赤が優勢のままです: トレンドインジケーターとオシレーター共に100%下向きで、後者の10%が買われ過ぎ圏内です。 弱気筋の直近ターゲットは1.2250のサポートの克服、そして、1.2075、このペアの強いサポートポイントは心理的重要なレベルの1.2000。強気筋については、主導権を握ることができれば、1.2400、1.2470-1.2570、1.2600-1.2635、1.2700-1.2750、1.2800-1.2835および1.2975-1.3000でレジスタンスに直面することになります。

    イギリスの経済関連の統計では、5月12日(木)に発表されるGDPデーターが最も注目されるでしょう。

USD/JPY: 強気筋のターゲットは135.00

  • 米国10年国債とUSD/JPY の相関関係は崩れていません。債券利回りが上昇すれば、日本円に対しドルは上昇します。これについては、先週も確認されました。このペアは5月6日に130.80の高値をつけ、現在は20年ぶりの高値である1.3125を目指しています。国際金融グループのNordea のストラテジストは年内に135.00 をつけると予想しています。同氏によると、円高とこのペアの下落は2023年後半しか期待できません。

    日本銀行により観測されている生鮮食品を除いた主要な指標である日本の消費者物価は4月に2.1%の上昇で、久しぶりに目標の2.0%を上回りました。BNPパリバのアナリストによれば、日本円が1ドル140円を突破すれば、日本のインフレ率は3.0%になります。しかし、日本銀行の黒田東彦総裁は物価上昇に対する国民の不満にもかかわらず、日銀は金融緩和政策を遂行すると繰り返し述べています。

    フィッチ・レーティングスによると、中銀が引き締めに踏み切った場合、GDPに対する公的債務の比率を安定させ減らすことが難しくなります。フィッチ・レーティングスによれば、この割合は2021年の会計年度では248%に達し、投資適格国の中では最も高く、主な日本の信用力の弱さになります(ちなみに、イタリアは2位で150%)。

    日本の金融政策委員会の最近の会合のレポートが来週、より正確には5月9日には公表されます。しかし、ドル円のパワーバランスに影響を与えることは少なそうです。USD/JPY の上昇を続けるシナリオにアナリストの65%が賛同しており、 35% が下落を待っています。D1のトレンドインジケーターとオシレーターの100% が上向きであり、オシレーターの15% がこのペアの買われ過ぎを指しています。直近のサポートは129.70-130.15、続いて、128.60-129.30、127.80-128.00、127.00、 126.30-126.75、126.00、125.00。強気筋のターゲットは4月28日の高値131.25の更新。強気筋のその後の目標設定はむしろ占いのようなものです。一つだけわかっていることは、2002年1月1日の高値である135.19が目標であるということです。 この調子で上昇が続けば、6月に早ければとどくことになるでしょう。

暗号資産: すべてはFRB次第

  • 分析会社のDappRadar の最近のレポートでは米国、ロシア、ウクライナにおける暗号資産の動きは活発とのことです。暗号資産の需要の増加が後者の2国の制裁や人道的な大惨事によるものであれば、アメリカの仮想通貨のグローバルな受け入れがトレーダーや暗号資産関連企業を増加させたことになります。同時に、DappRadar のアナリストは暗号資産の人気は上記の国だけでなく、世界中の国々でも増加していると指摘しています。例えば、世界的なインフレの脅威を背景に、ブラジルとインドでは仮想通貨の需要がそれぞれ40%、45%増加しています。一部の専門家によると、暗号通貨の利用者数は今後10-20 年で5倍に膨らみ、10億人以上になります。

    専門家は、現時点でビットコインに大きな下落がないのは、将来の上昇を信じ続けている小口投資家によるものだと指摘しています。つまり、0.1 BTC から10 BTCの残高のウォレットの所有者が4月だけでも2倍になり、保有総額を 250万BTC にしたのです。

    機関投資家(投資額が100万ドル以上)については、ここでの推移は逆で、主に米国の連邦準備制度理事会の動向次第になります。中央銀行が2020年春以降、3分の1以上のドルを増刷してバランスシートは9兆ドルで2倍となりました。FRBが市場に価値の低い紙幣を大量に流し込む一方で、投資家がその多額の資金をリスク資産に投資したことで株式や暗号資産市場が支えられました。現在、金融引き締め策を実施する時期となりましたが、これらの資産に影響を与えずにいられません。その結果、暗号資産資金の投資流失は14,327 BTCと史上最高となっています。さらに、特にアメリカの投資家は、ビットコインの処分に積極的で一ヵ月で投資数量の11% を減少させました (トレーダーや暗号資産関連企業が増加しているにもかかわらずです)。

    このレビュー執筆時点、5月6日金曜日の夕方、暗号市場の時価総額は1兆6570億ドル(1週間前は1兆7520億ドル)です。Crypto Fear & Greedインデックスの値はやや悪くなりました: 23ポイントから22ポイントで1ポイント下げ、非常に恐怖のゾーンで足場を固めています。BTC/USD は、$36.100前後の取引で、週安値は$35.280で落ち着きました。

    FRBのバランシートの処分、DXYドルインデックスの上昇、国債利回りを伴った利上げは、リスク資産相場への圧力をかけ続けることになります。流通しているすべてのBTCの50% が週半ばに保有者に利益をもたらしていれば、相場が下がり続けるにつれてこの数字は小さくなっていくでしょう。つまり、$33,000レベルではコインの40% だけが利益をもたらすため、パニック増加の雪崩の原因になる可能性があります。

    トレーダーであり、Factor LLC のCEOであるピーター・ブラント氏はビットコインが$28,000 水準なろうとしていると予想しています。同氏はビットコインが今年のはじめから始まったフォームのパターンと下値支持線の突破に着目しました。“弱気筋の流れの終わりは通常、幅と等しい下落なります。この場合、$32,000 あたりが、かなり難しいようですが、私は$28,000だと思います” とブラント氏はコメントしています。

    もう一人、評判の良い暗号資産のトレーダーであるベンジャミン・コーウェン氏も強気の反発がある前にビットコインの大きな下落があるはずだと考えています。同氏によれば、強気の反発の一ラウンドに拍車をかけるでしょう。考えられる下落シナリオでは、コーウェン氏は数年にわたる上昇軌道にBTCを載せるために3つの長期的な移動平均線を指摘しています: 300-、200- 、100-週のSMA。100週のSMAを下回れば、歴史的にも強気筋にとって絶好のチャンスです: “100週SMAは現在、 $36,000前後、これを下回ればいつでもBTCを購入する絶好のチャンスです”とコーウェン氏は述べています。しかし、 下落が強まれば、同氏の意見によると、BTCの価格は、さらに崩壊して、200週移動平均線の水準、$21,600になる可能性もあります“。多くの人は、このようなことが起こるとは考えていません” と同氏は述べ、“ただ、可能性はあります。私は、以前、BTC を$6,000で購入しました。その後、価格は$3,000に下落しました。それから、私はBTCを $7,000と $10,000で購入し、その後、価格は、$3,800へと、また下落しました。つまり、前にあったことは、今も起こりうるのです”

    ビットコインの300週移動平均線は、2020年3月のコロナウィルスの市場の暴落時に一時的に一度だけふれられましたが、同氏は、このようなことが繰り返されることを予測していません

     BitMEXの元CEOで共同設立者のアーサー・ヘイズ氏は、4月にビットコインが上半期の終わりまでに$30,000に下落すると予想しました。同氏はビットコインと強い相関関係にあるナスダック総合指数の下落の可能性が要因と考えています。Arcaneリサーチのアナリストはこの統計関連が2020年7月以来、最も強いものだと確認しています。

    ただ、Finderの調査に参加したフィンテックのアナリストはビットコインが年内には$65,000を超え、その後も上昇を続けると予想しています。 ヘイズ氏自身もビットコインの将来性を疑っておらず、10年後までに100万ドルにまで価格が上昇すると予測しています。

    アーサー・ヘイズ氏やベンジャミン・コーウェン氏とは異なり、アナリストのマイケル・ファン・デ・ポッペ氏は、ネットワークデーターがビットコインの強気な反発のヒントであると考えています。同氏によれば、“BTCのハッシュレートが史上最高を記録しましたが、暗号資産のスぺースでは難しくなっています。 つまり、ビットコインのマイニング需要が伸びれば、ネットワークはより安全になり、資産価格がこれに反映されます”。

    ファン・デ・ポッペ氏によると、ドルインデックス(DXY)の調整の可能性から深刻な不測の波が想定されます。“私の考えだと、特にドル安の場合に大きな上昇の波が起きる可能性がかなりあります” と同氏は述べています。 “FRBが強い金融引き締めを断念した場合、ドル安が進み、これがビットコインの上昇の原動力となります”

    ブルームバーグ・インテリジェンスのシニアアナリスト、マイク・マクグローン氏も同様の期待を寄せています。同氏は、株式市場の急落が米国の連邦準備制度理事会に金融引き締めの姿勢を変えさせ、高いリスク資産への大きな誘因となります “。FRBは一時停止せざるを得ないほど株式市場が下落するまで政策を続けるでしょう。つまり、その時にビットコインやイーサリアム、そしておそらくソラナの上昇がみられるでしょう"。

    “ビットコインやアルトコインの良い否定的な側面を望むなら、フェデラルファンド先物でしょう。これは、市場が1年のうちにFRBから想定するものです。現在は、3%ですが、それ以上に、実際のレートは1% です。この先物の期待値が下がり始めるとすぐに、ビットコインは底を打つと思います” とアナリストは述べています。

 

NordFX Analytical Group

 

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