2022年6月13日‐17日のFXと暗号資産の予想

EUR/USD: FRBの会合を前にして

  • EUR/USD の5月23日から6月9日までの推移は1.0640-1.0760の横ばいとみなすことができます(両方向でのいくつかのブレークダウンの誤りは含みません)。しかし、この比較的穏やかな状況は6月9日の欧州中央銀行理事会の後に終わりました。市場が動きだし、このペアは急落、金曜日のお昼までには200ポイント以上下がり米国のインフレデーターの予想は凍り付きました。

    ECB の会合は、間違いなく、直近というだけはなく、この数週間の注目のイベントでした。投資家は6月の主要金利が0%に据え置かれると想定していました(実際に据え置きでした)。ただ、投資家は、特に5月にインフレ率が8.1%となり、今後3年間のインフレ率の予想が大幅に引き上げられたことから、中央銀行のクリスティーヌ・ラガルド総裁が7月に0.50%の利上げを発表すると考えていました。しかし、このような決定の措置の準備が整っていないことが明らかになり、0.25%の利上げにとどまりました。追加の0.25%の利上げに関して、ECBは、可能性について早ければ9月に検討するでしょう。

    ECBは、急激な利上げはロシアのウクライナへの武力侵攻によりエネルギー価格の上昇や供給障害などで既に苦境に立たされているユーロ圏の経済状態に悪影響を及ぼすと懸念しています。

    つまり、6月9日(木)はECBの立場がもはやハト派でなくても、FRBのようなタカ派にはほど遠いことを示しました。インフレ率が予想以上に高くなるのと対照的に金利は低くなります。こうした状況が市場心理に悪影響を及ぼし、一般的な欧州通貨の下落につながりました。

    この週のもう一つの大きなイベントは米国の消費者市場(CPI)に関するデーター発表でした。インフレ率は労働市場の状況とおなじく、今ではFRBの政策決定のための重要な指標です。つまり、消費者物価の先行きは非常に大きな課題です。物価上昇やインフレ率が8.3%で止まるならば、米国中央銀行の金融政策が、特にユーロ圏のインフレ見通しが急上昇していることから正しかったことが裏付けられます。

    なお、6月10日に発表されたデーターによると、5月の食品・エネルギー価格を除く消費者物価指数(CPI m/m)は0.6% (予想の0.5%より高いですが)で据え置き、CPI (g /d) は予想の5.9%に対して 6.2%から6.0%の減少でした。これはドルにとっての良いシグナルだと市場に受け入れられEUR/USD はさらに下落、1.0520で今週の取引を終えました。

    来週の6月15日(水)は、おそらくECBの会合よりも重要なイベントが予定されています。これは、米国の連邦準備制度理事会のFOMC (連邦公開市場委員会)です。そこで フェデラルファンド金利の次回の引き上げが決定されます。先ほど政府が新たに0.5%まで引き上げようとしていることは述べましたが、市場は既にこれを相場に盛り込んでいるようです。しかし、会合の後のFRB幹部の発表や記者会見を待っているところです。その間、投資家は米国中央銀行の将来的な計画に関して新たに何か知ることができます。総じて言えば、関心は続きます。

    一方、6月10日の夕方、専門家の意見は等しく分かれています: 50% が強気、50% - 弱気。D1のインジケーターでは、赤が完全に支配しています。トレンドインジケーターでは100%です。オシレーターも同じですが、25% は既に売られ過ぎのシグナルを示しています。直近の強いレジスタンスは1.0600。突破すれば、強気筋は 1.0640のレジスタンスを抜けてから1.0750-1.0760まで上昇に向かい、そして、次の目標は1.0800となります。 弱気筋については、まず、1.0500 付近のサポートを超えることであり、次に1.0460-1.0480、そして、5月13日の安値1.0350の更新です。成功すれば、2017年の安値1.0340に向かい、その下は20年前の目標があるだけになります。

    来週の経済動向については、FRBのFOMCの会合に加えて、6月14日(火)のドイツの消費者物価指数とZEW景況感調査と米国の卸売物価指数に注目することを推奨します。米国の小売売上高は6月15日(水)、製造業についてのデーターは翌日に発表されます。最後に、ユーロ圏の消費者物価指数が週終わりの6月17日(金)に明らかになります。

GBP/USD: イングランド銀行の会合を前にして

  • 先週は、ドルに対するポンドとユーロのプラスの相関関係が確認されました。6月9日の欧州通貨の下落に伴い英国通貨も下げました。EUR/USDGBP/USDの両ペアは下向きです。米国の消費者物価データーが 金曜日に、この下落にさらなる拍車をかけました。その結果、取引終了の鐘は1.2311付近で鳴りました。

    FRB会合の翌日、6月16日(木)にはイングランド銀行の会合もあります。前日のFRBの決定を見据えた金利決定となる可能性があります。また、インフレ上昇の見込みから金融引き締め策(量的緩和QEに対するQT)を踏み切る可能性もあります。イングランド銀行/イプソスの今後12ヶ月のインフレ予測は、前回の4.3%に対して4.6%でした。

    アメリカとイギリスの両国の中央銀行の会合を控え、ポンドの予想は非常に不透明です。下落が続くのでしょうか? 40%の専門家はこの問いに肯定的な答えであり、50%が否定的、残りの10%がわからないとのことです。D1のインジケーターについては、EUR/USDと同様に大多数が弱気筋側です。トレンドインジケーターでは、100% が下向き、オシレーターでは、若干少ないだけです: 90%だけが下向きですが、4分の1は既に売られ過ぎ圏内、残り 10% はニュートラルグレーです。サポートは1.2290-1.2300、 1.2200、そして、 1.2154-1.2164 と1.2075。 このペアの強力なサポートポイントは、心理的に重要なレベルである1.2000。上昇するには、1.2400-1.2430、1.2460、1.2500、1.2600、それから、1.2640-1.2665、1.2700-1.2750、1.2800-1.2835、1.2975-1.3000のレジスタンスを克服する必要があります。

    イングランド銀行の会合のほかに、来週は6月13日(月)にGDPのデーター発表と6月14日(火)にイギリスの賃金と失業に関するデーター発表があります。

USD/JPY: 日本銀行の会合に向けて

  • おそらく、誰も待つ必要はないでしょうけど。日本銀行が6月17日(金)の定例会合で再び超金融緩和政策のまま金利もマイナス0.1%に据え置く可能性が高いからです。しかし、会合の後の記者会見で政府が少しでも当面の引き締めの可能性についてほのめかすようであれば、衝撃的で深刻な円高を引き起こす可能性があります。

    しかし、既に述べていますが、この可能性は非常に低いものです。そして、ドル高がUSD/JPY を20年ぶりの高値更新へと押し上げています。先週は134.55 の最高値を記録して、これより若干下げた134.37前後で終了しました。

    現時点では、アナリストの15%だけが135.00を超えての上昇を予測しており、35% が中立、一方、多く(50%) が下落を予測しています(しかし、このペアの強い上昇の動きから、調整のような瞬間がいつまでも延びるかも知れません)。D1インジケーターでは、アナリストの意見と大きく違います。トレンドインジケーターとオシレーターの両方の100% が緑です。確かに、後者はかなり多い40%が買われ過ぎ圏内です。直近のサポートは134.00、これに続いて、133.00-133.35、132.25-132.50、130.45-131.00、129.70-130.20、 128.60、128.00、127.50、127.00、126.00-126.35、125.00。 強気筋の目標は6月9日の高値134.55を更新。次の目標の2002年1月1日の135.19に非常に近づいています (4月の末にペアのこの高値までの上昇に1ヶ月半要すると述べました。そして、この計算が100% 正しかったことが明らかになりました)。

暗号資産: 底値を模索するビットコイン

  • S&P500、ダウ・ジョーンズ、ナスダックの強気筋は、6月9日までの2週間で弱気筋の攻撃を見事にかわしました。しかし、ドル高と投資家のリスク資産離れは投機的なロングポジションの積極的な利確の理由となりました。

    $30,000台の動きの BTC/USD の強気筋と弱気筋の最前線での接戦は5週間止まりません。ビットコイン擁護派の功績は株式市場が暴落しているにもかかわらず、僅かに下げたものの$30,000台を維持していることです (6月10日(金)夕方) 。このような横ばいでは、長期投資家は待つだけでなく、このペアの上昇を期待することができます。デイトレーダーは狭い取引幅で利益を得ます。これには、確かなスキルが必要です。

    私たちの考えでは、誰もが自分に合ったベストな取引戦略を自由にできます。人によって経験も違えば、心理状態も違うし、投資できる資金や取引に割ける時間も違います。一般的に人それぞれなのです。例えば、マイクロストラテジーのマイケル・セイラーCEOは 短期的な目標に惑わされないようにすべきであると考えています。同氏によれば、チャートに過剰に注意を払う人は"コーヒーの出し殻で推測"しているのだそうです。 “[ビットコイン]を何年も保有するつもりがないなら、結局は投資家ではなく、トレーダーであり、私からのトレーダーへのアドバイスは:トレードではなく投資をしましょうということです” と同氏はザ・ブロックで述べています。

    2022年4月14 日時点で、マイクロストラテジーは上場企業の中でビットコインの最大の保有企業であったことを思い出しましょう。関連企業と合わせると、129,218 BTCを保有しており、平均価格が$30,700の39億7千ドルで購入しています。つまり、マイクロストラテジーの現状、マイケルセイラー氏の現状が危機なのです。ビットコインの価格が上昇しなければ、こちらの企業はかなり不利な立場になります。なお、多くのアナリストによれば、逆方向へ向かう可能性があります。

    なお、暗号通貨アナリストのジャスティン・ベネット氏は今後数週間の予想で2021年の再来をほのめかしました。同氏によれば、強気筋の直近の防御ラインは$28,600。この水準を下回れば、5月の安値$26,580-26,910が再び訪れる可能性があります。

    同氏によると、2021年の6月通りであるならば、今年の新安値のフォームになります: “急落の場合は、下落の動きが$24,000-25,000圏内へと向かいます。しかし、これは現在のサイクルでの最安値ではないと思います”。

    年初来安値の形成の後、同氏はビットコインのある程度の上昇を予測しています。 “最も可能性が高いのは、マクロ的な高値を下回る短期的な急騰でしょう” 。同氏の計算によると、7月のBTC の価格は短期的な上昇中に$35,000 まで上がる可能性があります。

    しかし、600億ドルの資産のある投資会社ARKのケイティ・ウッド氏はBTCがネットワークのパフォーマンスに基づいてすでに底を形成していると考えています。同氏によると、“短期ホルダーは降伏したので、これは底を打った良い知らせです。長期ホルダーの割合は今までになく高くなっています: 65.7% (BTC の一年以上の保有者)。

    底に到達するために、まだ、従わなければならないことがありますが。ネットワークインジケーターのほかに、ウッド氏はビットコイン先物市場に注目しており、資産のボラティリティが上昇する時期を示唆しています。 “まだ、どちらの方向へ向かうか正確に述べることは難しいですが、上昇方向へ次にはじけるボラタリティの可能性はとても高いと考えています”。

    楽観的な見方もありますが、テラー(LUNA)の破綻には注意を払わなければなりません。 “同時に、警戒しています” ARK インベストのCEOは述べています。テラーの破綻は暗号資産によって大失敗であり、政府は予想していたより厳しい理由を増やせます”。

    ところで、テラーの破綻とこれに続く市場調整について、前述のマイクロストラテジーの代表は起きていることは弱気段階の証であることに間違いないとコメントしています。“これが弱気相場かどうかはわからないが、もしそうなら、この24ヶ月で3回になります” とマイケル・セイラー氏は言及しています。

    長期予想については、通常、異なる方向になります。アメリカの経済学者でノーベル賞の授賞者のポール・クルーグマン氏は、暗号通貨を詐欺と呼び、2008年の不動産危機と比較しました。 Fox ニュースのインタビューで不動産市場の崩壊による2000年代の金融危機を題材にした映画マネー・ショートに触れました。不動産価格は高騰しましたが、人々は止まりませんでした。同じことが暗号市場でも起きているとクルーグマン氏は述べています。

    同氏は暗号資産が将来の金融であると主張する人々を批判しています。クルーグマン氏によると、2009年に登場したビットコインは違法な利用を除いて、何年も、まだ、十分な実用性が見出されていません。

    “暗号資産は大きな資産に分類されるようになり、擁護派の政治的な影響がさらに高まっています。つまり、暗号資産に実質的な価値がないということは多くの人々にとって信じがたいようです。しかし、これは砂の上に家を建てているだけなのです。不動産バブルや住宅ローンの崩壊を覚えているので、大きなショートゲームが大きな詐欺になったと言うことができます” とノーベル賞受賞者は述べました。

    ポール・クルーグマン氏と異なり、ブルームバーグのアナリストであるマイク・マッグローン氏は、反対に大勝負だが、下がらずに、上がると考えています。同氏の予想では、この40年で最も高いインフレ率が始まっており、経済の大崩壊を引き起こし、その後、暗号資産、米国債、金のような資産が前例のないほど上昇するそうです。マッグローン氏は、Kitcoニュースのインタビューで"1929年の結果を連想させるかもしれません。むしろ、2008年の影響、または、1987年の崩壊の影響のようなものかもしれませんが”と語りました。

    マイク・マッグローン氏、ケイティ・ウッド氏、マイケル・セイラー氏のほかに、アメリカの投資ストラテジストのリン・オールデン氏も強気サイドです。同氏は米国が金融債務に見合うために紙幣を増刷したことにより、すぐにはインフレ率を下げることができないのではないかと予想しています。このため、同氏の見解では、ビットコインが今では金や不動産と並んで信頼の高い資産の一つとなっています。

    前回のレビューでは、Invest Answersのアナリストがフィデリティ、ARKインベストなどの企業から選択した予想平均値で導いたビットコインの目標水準を挙げました。よく知られている暗号資産モデルを組み合わせると、ビットコインは1コインあたり2030年までに$1,555,000 になりました。

    しかし、マクロアナリストで投資会社フィデリティのディレクターであるジュリアン・ティマー氏は自身の長期予想を更新しており、今では、はるかに控えめです。ジュリアン・ティマー氏は、PlanBというニックネームのアナリストのかつて人気のあったStock-to-Flow (S2F) を参照して、資産の半減期による供給ショックに基づいたBTCの価格を予測しました。しかし、アナリストはS2F モデルにインターネットと携帯電話の普及率を追跡する二つのモデルを加えました。

    ティマー氏によると、携帯電話の普及率のモデルを基にビットコインは2025年までに$144,753 (次の半減期の約1年後)に急騰するといいます。しかし、BTC がインターネットの普及率のペースに従うと、資産は既にピークに達しており、3年でわずか$47,702 で取引ができることになります。同氏が修正した供給モデルを基礎として導き出した平均値は$63,778です。

    どのアナリストが正しいかは時間が教えてくれるでしょう。一方で、このレビューの執筆時点における6月10日(金)夕方、暗号資産市場の時価総額は1兆1920億ドル(1週間前は1兆2250億ドル)の水準です。Crypto Fear & Greedインデックスは非常に恐怖の範囲にかなり定着しており、 13 ポイント前後です(一週間前は10ポイント)。 BTC/USD は$29.340での取引です。

 

NordFX Analytical Group

 

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