EUR/USD: FOMC 会合結果: ドル安と株価上昇の理由
- さて、7月27日(水)は米連邦準備制度理事会(FRB)のFOMC(連邦公開市場委員会)の会合がありました。政策金利の引き上げについては疑いの余地はありませんでした。しかし、どのくらいでしょうか?1981年以来なかった100 ベーシスポイント(bp)でしょうか、それとも、75bpでしょうか? 市場は、前者を期待していたようですが、FRBは後者のややソフトな選択をしました。その結果、EUR/USD は1.0000台の新たな攻撃ではなく、上昇で7月19日からの推移であった1.0150-1.0270 へ戻りました。その後は、弱気筋による下値支持線突破が失敗 (理由については後ほど、GBP/USDのレビューで説明します) して1.0221の水準で終わりました。
FRBのパウエル議長は、会合の終わりに規制当局がタカ派のままであることをすべての人に説明しようとしました。議長は、労働市場と一部の業界が好調のままなので景気後退について認識していないと述べました。そして、高いインフレ率が続くリスクの方が、景気後退のリスクよりも、さらに大きいということ。また、必要であれば、利上げペースを早めることができること。
しかし、市場はパウエル議長を信じず、株式市場へ向かうと共にFOMC の会合結果に反応しました。DXY ドルインデックスは0.7%の下落でしたが、株価指数は上昇しました: S&P500は 2.6%、-ダウ・ジョーンズは 1.4%、-ナスダックは4.1の上昇でした。原油先物も3.4%上昇しました。
金融規制により政策金利は年末には3.4%、2023年末にはさらに高い3.8%と以前は予想されました。 現在、市場では米中央銀行が11月に利上げを完全に止め、2023年には量的緩和政策(QE)に戻るのではないかという噂が広がっています。大きな理由としては、パウエル議長が穏やかに断言しているにもかかわらず、利上げや財政赤字の削減によりインフレへの抵抗がGDPにはマイナスの影響を与えるからです。そして、これが労働市場の状況を悪化させる可能性となります。
今、述べたことは、7月28日(木)に発表されたマクロ統計で確認されています。2022年第2四半期の米国GDPの速報値は、予想の+0.3% から +0.5%に対してマイナス0.9%でした。
つまり、毎回の会合で、FRBが75 bpを下回る、より慎重な引き上げをする可能性があるため、 GDPの減少は、ドルに対して働きかけることになります。CMEグループのFedWatchツールによると、規制当局が9月に公定歩合を50bpだけ引き上げる確率は、ほぼ80%です。米国10年国債利回りが着実に下げていることもドル対して影響しています: わずか一ヵ月で3.4%から 2.68% に下落です。このことが、市場参加者にインフレはコントロールされており、量的引き締め策(QT) が予定よりも早く終わる可能性があるという根拠を与えています。
その一方で、ヨーロッパも順調とは言い難い状況です。ロシアからの天然エネルギー資源供給の問題が続いていることや停止がヨーロッパに影響しています。クレムリンからのエネルギーの脅しに対して、欧州委員会のウルスラ・フォン・デア・ライエン委員長は、EU諸国にロシアからのガス供給の完全停止に備えるように呼びかけました。委員長の意見では、ロシアからのエネルギー依存の低い国でも、大きな崩壊を避けるためには資源の節約をしなければなりません。
ドイツ連邦ネットワーク庁(Bundesnetzagentur)の責任者であるクラウス・ミュラー氏は、ガス不足の脅威が今後2回の冬にあり、電気料金は8月に再び上昇すると思っています。
ユーロ圏といえば、7月29日(金)に発表された経済指標がそれほど脅威ではないことに注目しましょう。一方でインフレ率は上昇を続けています: 消費者物価指数(CPI)は、前回と予想の8.6%に対して、実際のところ7月は8.9% の上昇でした。同時に、ユーロ圏の GDP (前期比、第2四半期)は 予想の5.4% から3.4%の減少に対して4.0% の減少でした。ドイツの労働市場の状況も良好で、失業者数は前月の13万2千人から4万8千人に減少でした。
近い将来の EUR/USDに関しては、このレビューの執筆時の7月29日夕方では、アナリストの45% が上昇支持で下落が45% と横ばいが10% を示しています。D1のインジケーターもはっきりしたシグナルではありません。トレンドインジケーターについては、50%が下向き、50%が上向きです。 オシレーターの35%は弱気筋、65%が強気筋で、そのうち 25% は、このペアの買われ過ぎのシグナルを示しています。
1.0200を除いたEUR/USD の最も近いサポートは、1.0150-1.0180、その後は 1.0100 ともちろん、1.0000水準です。これを突破すれば、弱気筋のターゲットは7月14日の安値0.9950、それより下は強力な2002年のサポート/レジスタンスの0.9900-0.9930となります。強気筋にとっての次の重要な課題は1.0250-1.0270 のレジスタンスを突破して 1.0400-1.0450に戻り、 1.0520-1.0600 と1.0650-1.0750 と続くことです。
今後のイベントでは8月1日(月)にドイツと米国の製造業における景況指数(ISM)の発表が予定されています。同日にドイツの小売売上高の発表もあります。ユーロ圏の小売売上高と米国のサービス部門の企業活動(ISM)統計は8月3日(水)に発表予定です。Ф 失業率やNFP(米国非農業部門新規雇用者数)などの重要指標を含んだ米国の労働市場のデーターは、週終わりの8月5日(金)です。
GBP/USD: イングランド銀行の決定がセンセーショナルを巻き起こす恐れあり
- 先週、FRBの慎重な決定、ジェローム・パウエル議長の慎重なコメント、期待外れの第2四半期の米国経済成長データーがGBP/USD の上昇を促しました。その結果、強気筋は7月29日に今月の高値1.2245 をつけることに成功しました。同日の午後は一時的に1.2062 まで下げました。米国の個人消費支出(PCE)のデーターを受けてドルとなりました。このインフレに対する月の上昇率は0.6% (前回の0.3%の2倍であり、予想の0.5%を上回り)となりました。これが市場心理に影響を及ぼし、米ドルは回復に転じました。さらに、7月29日は月末の営業日であり、ポンドの上昇により利益確定をする投資家も多くいました。しかし、ドル高は長くは続かず、1.2176で今週の取引終了の鐘が鳴り響きました。
来週のイギリスからのマクロ経済ニュースについては、8月3日(水)のサービス部門購買景気指数PMIに注目できます。 しかし、今週の大きなイベントは、8月4日(木)のイングランド銀行(BOE)の会合であることは間違いありません。
こちらの規制当局は、6月16日の前回の会合で金利を1.00%から1.25%に引き上げました。25bpというのは、FRBの利上げ75 bps の3分の1だけなのですが、その後、ポンドは急騰しました。英ポンドはたった数時間365ポイントも上がり、GBP/USD は1.2405の高値となりました。
今回はどうなるか、この高値まで戻ることができるのか見ていきましょう。もしくは、これを上回ることになるのでしょうか? 予想によれば、結局のところ、イングランド銀行は捨て身の覚悟で、一気に150 bps の利上げをする可能性があり、そうなると、2.75% となり、現在のドル金利2.50%を上回り、英ポンド高支持の十分な根拠となります。,
今のところ、アナリストの35% は英ポンドが下がり続けると見ており、反対に上昇に転じると見ているアナリストが35% 、残りの30% が中立にとどまっています。D1 インジケーターでは次のとおり。トレンドインジケーターについては、50% 対 50%。オシレーターでは、 弱気サイドが10% だけで、90%が上昇を示しており、そのうち15% が買われ過ぎ圏内です。直近のサポートは1.2045、続いて1.2000 と1.1875-1.1915 が控えています。この下は、1.1800、7月14日の安値1.1759、そして、1.1650、1.1535 と2020 年の3月の安値圏内1.1400-1.1450。強気筋については、1.2200-1.2245、 1.2300-1.2325 、1.2400-1.2430でレジスタンスに直面するでしょう。
USD/JPY: 記録的な 500 Dowピップスの下げ
- 円の上昇は、先に述べて理由と同じです。7月27日の米連邦準備制度理事会の会合の前夜のUSD/JPY は、137.45の高値でしたが、2日も過ぎないうちに500ポイント近く下げ、既に6週間ぶりの安値132.49です。7月14日に24年ぶりの安値を更新した円高が、こうした急落を促進させた可能性もあります。
7月29日(金)に米国個人消費支出の発表があり、USD/JPY は一時的に134.58の高値まで反発しましたが、その後は下落トレンドが再開して、このペアは133.31で5日間の取引を終えました。
日本円の見通しについては、ほかのこれまでの通貨ペアと同様、アナリスト予測は極めて中立的です。アナリストの45% は新たな上昇への突破口を待ち、45% は下落トレンドの継続、残り10% が横ばい支持です。D1インジケーターだとやや状況が異なってきます:トレンドインジケーターでは65% 対35% で赤が多く、オシレーターでは25% が上向きで75%が下向きですが、3分の1は、このペアの売られ過ぎを示しています。
このペアのボラティリティが非常に大きいため、サポート/レジスタンスの範囲が急に大きくなりました。サポートは、132.50-133.00、 131.40、128.60、 126.35-127.00。 レジスタンスは134.20-134.60、135.00-135.55、136.30-137.45、137.90-138.40、 138.50-139.00、続いて、7月14日の高値139.38 と強気筋のターゲット140.00 と142.00。
暗号資産: ビットコインは上昇するかもしれない。しかし、すぐにではない。
- 7月27日の米連邦準備制度理事会の会合での利上げが1.0%ではなく、0.75%だったことは主に株式市場でリスク資産を 強力にサポートしました。非常に極端なアナリストの中には規制当局が早ければ11月中に利上げを止め、2023年には量的緩和政策(QE)に戻して資産購入とバランスシートの拡大を再び始め、市場に価値の低いドルを溢れさせる可能性があると述べる人もいます。S&P500、ダウ・ジョーンズ、ナスダック株式指数は、投資家が嬉しくなるくらいに上昇して、ビットコインやその他の暗号資産のようなリスク資産もこれに続きました。
ビットコインの価格は 2 週間にわたって$20,000 以上を維持しており、投機家の大きな関心を集めています。グラスノードによると、あきらめたホドラーから"新たな" 楽観視する購入者たちへコインが移動したことによる結果です。専門家は$30,000 から$40,000の需要も投機家によりあったことを強調しています。
多くのアナリストによると、ホドルムードの中でクジラ(1000+ や 10000+ BTC保有する投資家) が下落傾向でのビットコインの購入を続けたことも一因です。BTCの保有量の少ない投資家の動向も注目されています。 例えば、保有量が0.01+ BTC のアドレス数は、10,543,548と過去最高を記録しました。
グラスノードは安定した基盤を固めるには、まだ、時間がかかると警告しています。このことは、URPDのような長期的な指標によっても明らかです。 相場反転の可能性が高くなるには、投機コインが“長期間投資家によって保有” (言い換えるなら、コインが購入から155日以上“経過” していることが必要)のカテゴリーに移行することが重要です。
暗号資産アナリストのニコラス・メルテン氏は現状では弱気筋には大きな驚きになる予想外の相場急騰があり得ると考えています。“ビットコインは昨年7月に1ヵ月足らずで$29,000から $53,000に急騰しました。今、市場は再び上昇して以前の調整付近である$30,000になるでしょう。 この先には大きなレジスタンスはなく、移動平均線は、このポイントに向かっており、ビットコインを大きな上昇へのチャンスに導くことになるでしょう。多くの人々は、この可能性を信じていませんが、デリバティブの量が過剰な市場での大きな上昇に驚くかも知れません”。
なお、メルテン氏はBTCが短期的に上昇することを否定していませんが、既に底を打ったことについては疑念を抱いているので注意しましょう: “多くの人は底値が7月18日だと考えています。もちろん、大きな売りと素晴らしいリバウンドでした。市場も暗号資産の投機のためのかなりの借入金を排除しました。しかし、暗号資産の長期投資を制限させ続けるマクロ市場の影響が続いている現実を無視することはできません。”
アナリストのアーロン・チョムスキー氏も同様の考えを示しました。同氏はBTC/USD が横ばいから上値抵抗線を抜けることはさらなる価格を下落させるきっかけにしかならないと考えています。同氏は反転して$17,500をターゲットにした下値支持線を突破することを予想しています。同時に、また、アナリストのアーロン・チョムスキー氏は$10,000 の目標もまた、かなり現実的だと考えています。 “明らかに私たちは暗号資産の長い冬の中にいるようです” と同氏は述べています。“ビットコインは$5-7000をターゲットにしていますが、現在のように遅れているようであれば、最終目標を下方修正しなくてはなりません”。
また、“より下方” ついては、クオンタム・ファンドやソロスファンドマネージメントの共同創設者でもあるジム・ロジャース氏によると、ビットコインの価格はゼロになる可能性もあります。こちらのアメリカの有名な投資家は安全な投資として暗号資産を考える以前にこの分野における政府からのサポートが必要であると述べています。BTCは、ただのギャンブルの手法であり、実在するお金ではありません。 ビットコインは投機にはいいかもしれませんが、通貨としては最終的には失敗するでしょう。
ジム・ロジャース氏は欧州連合が BTC を公式通貨として地域の決済システムに導入した場合、BTC の購入を検討するだろうと強調しました。しかし、同氏の発言はEUが今後10年間にそのような措置を取るとは思えないので、皮肉な冗談としか思えません。
もちろん、暗号資産市場を葬ろうとしている懐疑論者とは対照的に、常にビットコインの明るい未来を予測する楽観論者もいます。例えば、リアルビジョングループの共同設立者で元ゴールドマン・サックスのCEOであるラウル・パル氏は、暗号通貨市場は大きなプラスに反転しようとしていると考えています。市場は主に流動性によって動いており、それはM2マネーサプライに由来していると同氏は述べています。このマネーサプライは流通している通貨の総額と相関があり、さらに、簡単に現金に換えることができる流動性の高い非現金資産です。
暗号資産投資家の多くは、2024年5月に予定されている次の半減期でのマイナーの報酬削減が価格を押し上げると考えています。しかし、パル氏はM2の役割は半減期よりも大きいと主張しています: “暗号資産は景気循環によって動いているのではなく、世界的な流動性によります。つまり、ビットコインの上昇の主な指標は、M2の変動率です。マネーサプライが増えるたびに、常に反転したと同氏は述べました。
レビューの冒頭で述べたことを振り返るのがふさわしいでしょう。実際にFRBが量的引き締め策(QT) から量的緩和政策(QE)に戻って市場に余剰資金があれば、投資家のリスク選好は上がります。
多くの投資家が次の半減期より前に暗号資産の価格が大幅に上昇すると予想しているというラウル・パル氏の意見も正しいでしょう。しかも、その根拠は過去にデーターに基づくものです。このシナリオの支持者の一人が、投資会社Midas Touch Consultingのマネージングディレクターであり、ファイナンシャルアナリストのフロリアン・グラメス氏です。彼の意見では、現在の上昇にもかかわらず、暗号通貨の冬は、まだ、過ぎていません。$35,000には、6-12 ヵ月後にならないと上昇しないというのが同氏の考えです。そして、これは将来的に大きな上昇に結び付く可能性のある"上昇の助走" と呼ばれるものです。
グラメス氏は、長期的には楽観視していますが、暗号資産市場は株式市場と直接相関しているため、現在の段階では上向きだけでなく、下向きにそれる準備が必要となると警告しています。
先週、最も楽観的だったのは、Stock-to-Flowモデルを生みだしたPlanBというニックネームで有名なアナリストでした。同氏は米国株とビットコインの両方が史上最高値を更新する日を予測しました。 “マクロ経済、ビットコインと株式市場との関係などを恐れている人もいます” と同氏はツィートしました。 “私の考えでは、S&P 500 は今後5年間で$5,000-$6,000、ビットコインは$100,000 から $1,000,000になると思い。ます
もちろん、予想は素晴らしいものです。しかし、PlanB もフロリアン・グラメス氏も予想を外しました。つまり、これらの予想も、ほかの予想も今は、十分に注意して取り扱わなくてはいけません。 ただ、このレビュー執筆時(7月28日金曜日の夕方)、 ビットコインは$23,900前後での取引を貫いています。暗号資産市場の時価総額は1兆9800億ドル(1週間前は1兆2600億ドル)で、Crypto Fear & Greedインデックスは、39ポイント(1週間前は33ポイント)で恐怖のままです。
NordFX Analytical Group
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