2022年8月15日‐19日のFXと暗号資産の予想

EUR/USD: インフレ率の低下がドル安に

  • EUR/USD は、三週間以上も1.0100-1.0270方向での横ばいです。下値支持線突破は、毎回、失敗しています。8月の第一週に発表された米国労働市場からの非常に明るいデーターでもドルを支えられませんでした。米国内の失業率は3月から3.6% にとどまっており、非常に良い指標であることを思い出してみてください。7月は、さらに低く3.5%でした。非農業部門新規雇用者NFPのような重要な指標は、予想の250,000件に対し、実際は528,000件でした。一ヵ月前は、372,000件だったにもかかわらずです。

    横ばいの推移は8月10日(水)まで続き、1.0270水準がレジスタントからサポートに変わって急騰しました。なお、ここでのポイントはユーロ高ではなく、ドル安です。米国のインフレレポートの発表の後、ドルの立場は弱くなりました。7月の消費者物価指数 (CPI) の予想は0.2%でしたが 0.0% (一ヵ月前は1.3%)の水準に変わりました。年換算では9.1%から 8.5% (予想8.7%)の低下です 。見通しの0.5%に対して、7月のベースCPIはわずか0.3% (一ヵ月前は0.7%)でした。

    これらの数字すべては、FRBが立ち上げた戦いでインフレ率が明らかに下がっていることを示すものです。もちろん、これが最終的な勝利ではありませんが、米国の中央銀行が成功していることは明白です。このため、いくらか金融政策を緩め、この二カ月間におこなわれていたような積極的な利上げはないかもしれません。

    FOMC (連邦公開市場委員会) の 7 月会合の終わりに、FRB のジェローム ・パウエル議長は、規制当局がタカ派のままであることを人々に納得させようとしていました。なお、必要に応じて利上げペースを早めることができるとのことです。しかし、この時も市場はパウエル議長を信じず、株式市場に目を向ける反応をしました。そして、今は、インフレデーターによりFOMCが9月に0.75%ではなく、0.50%だけ金利を引き上げ、11月には完全に利上げを止め、2023年には量的緩和政策に完全に戻すという別のテーマがあります。

    もちろん、これは、ただの予想でしかありません。もう少し、厳密に言うなら、予想でもなく期待です。しかし、S&P500、ダウ・ジョーンズ、ナスダックを押し上げ続け、未だに1.0000.のパリティにEUR/USD が下がらないのはこのためです。

    EUR/USD は1.0100-1.0270.での中期的な横ばいに戻り、先週は1.0260で終了しました。アナリストの45% は、さらに下落して下値支持線を突破する見方です。35% が上向き- 20%は横ばい支持です。D1のオシレーターでは、, 40%が赤、40% が緑、20%がニュートラルグレイです。トレンドインジケーターでは、完全にバランスがとれています: 50% は下向き、50% は上向き。

    このペアの直近のサポートは、1.0220で、その後は、1.01500-1.0200 と1.0095-1.0120です。弱気筋のメインターゲットは、もちろん、1.0000。この重要な水準に到達できれば、弱気筋は7月14日の安値0.9950、さらに下回る強力な2002 年のサポート/レジスタンスの 0.9900-0.9930を目標とするでしょう。強気筋の重要な課題は1.0270方向への上値抵抗線の突破、そして、1.0364-1.0368圏内の先週の高値、次の目標は1.0400-1.0450圏内に戻り、それから、1.0520-1.0600 と1.0650-1.0750です。

    来週は、いろいろな経済統計の発表があります。16日(火)はドイツのZEW 景況感指数の発表日です。8月17日(水)は、ユーロ圏GDP (第2四半期) の前期比データーと米国小売売上高があります。前回のFOMC会合の議事録も同日に公表されます。 8月18日(木)はヨーロッパインフレデーター(CPI)、 米国では労働市場、住宅販売、製造業の活動に関するデーターの予定があります。

GBP/USD: GDP は下がり、引き続き厳しい見通し

  • GBP/USD は8月10日(水)に発表されたインフレデーターに反応して、200ポイント前後の急伸で1.2276の高値をつけました。しかし、そこで終わらず、取引終了の鐘は1.2135.前後で鳴りました。世界的なリスク感情が高まったこともポンドの助けになりませんでした。主な原因は、イギリス経済の見通しが厳しく、イングランド銀行の予想もこれに劣らず暗いからです。

    8月12日(金)は6月と第2四半期のイギリスのGDPのデーター発表がありました。6月の縮小幅は予想の-1.2%より: -0.6%で低いことが明らかになりました。4-6月期のGDPは、第1四半期の-0.2%、+0.8%という予想に対して、-0.1%の減少でした。したがって、年間では2.8%、第1四半期では8.7%の予想に対し、2.9%でした。これらすべてのデーターは予想よりも若干良い結果でした。しかし、これにもかかわらず、景気後退への経済の流れは明らかに見られ、残りはこの景気後退の深刻さと期間が問題となっています。

    55%のアナリストによると、先週のポンドは好材料がなかった為、下落が続くとのことです。反対の意見は15% のアナリストのみで、残り30%は中立の立場です。D1インジケーターは次のとおりです。トレンドインジケーターは85%対 15%で赤優勢。オシレーターは25% が弱気筋側、35% が上昇を示しており、40% はニュートラルな立場です。

    直近のサポートは1.2100に続き、1.2045-1.2065、1.2000、1.1875-1.1925 、1.1800。下には、 7月14日の安値1.1759、そして、1.1650、1.1535 と2020の3月の安値圏1.1400-1.1450。強気筋については、1.2160-1.2200、1.2275-1.2325 、1.2400-1.2430でレジスタンスに直面するでしょう。

    来週の主なイベントは8月17日(水)のイギリスのインフレデーター(CPI)の発表となりそうです。イギリスの労働市場データーが公表される8月16日(火)や7月小売売上高が明らかになる8月19日(金)も注目されるでしょう。

USD/JPY:: 希望はあるが遠い未来

  • 先週のUSD/JPY の推移は、EUR/USD を反対にしたものです(ここではドルが基軸通貨から決済通貨となるため論理的です)。8月8日(月)に 135.00で始まり、10日(水)に米国のインフレ統計をきっかけに急落、8月11日には安値131.72 をつけ、反転、133.45で取引を終了しました。

    長期的なポジションを開こうとする人には、おそらくオーストラリアの4大銀行の一つであり、ニュージーランドでは2番目に大きな銀行のWestpac銀行のアナリスト予想に興味があることでしょう。こちらの予想ではUSD/JPY の現在の水準は理にかなっていると考えられています。日本は、アジアでの経済成長とエネルギー価格の下落傾向が続いているため支持されています。Westpacのアナリストによると、米連邦準備制度理事会の金融緩和政策の可能性からこのペアは2023年末までに123.00 の下落もあり得るとのことです。

    2023年の年末までは、16 ヶ月もあり、かなり先になります。直近の予想についてのアナリストの意見は次のようになります。アナリストの45% は上向き予想、25%が円高で下落傾向、残りの 30%は横ばい支持です。D1のインジケーターでは、若干描写が異なります。トレンドインジケーターとオシレーター65%対35%で赤優勢。オシレーターでは、15% が上向き、40%が下向き、残り45% は横ばいです。

    このペアのサポートは、133.00、132.50-132.85、131.75-132.00、131.00、130.40、128.60、 126.35-127.00。レジスタンスは、134.00、134.40-134.60、135.30-135.60、136.35-137.00、137.45、137.90-138.40、138.50-139.00と最終的には7月14日の高値139.38。

    来週のイベントでは、8月15日(月)に明らかになる日本のGDPの2022年第2四半期前期比データーが注目でしょう。予想では、マイナスの-0.1% から +0.6%上昇が見込まれています。これは、この国の経済の成長率もしくは衰退率を評価する市場活動の主なマクロ経済指標です。通常、上昇は自国通貨にとってプラスの強気材料です。

暗号資産: 826: カレンダーにある恐ろしい日

  • 暗号資産コミュニティでは暗号市場は底を打ったのか、それとも、新たな価格崩壊が待ち受けているのか疑問を抱いたままです。予想の前に、いくつか統計を見ていきましょう。

    まず、ビットコインの価格ですが6月18日に$17,597 まで下落、2020年の12月水準に並び$68,918の史上高値から75%前後下回っています。2022年の年明けの1月1日にビットコインは$47,572 で始まり、6月18日には63%まで下落しました。その後、 BTC/USD は、ゆっくり上昇していき、8週間で安値と高値の一連を示しました。しかし、チャートを見てみると、$24,000を超えると、弱気筋の抵抗が強まり、上昇の勢いは急激に衰え始めています。つまり、週高値は7月20日の$24.264 、7月29日の$24.435 、最後は8月11日の $24.891 です。したがって、この3週間で 2.5% 前後しか上昇していません。

    この執筆時の8月12日金曜日の夕方、暗号資産の時価総額は1兆1550億ドル(1週間前は1兆8900億ドル)、Crypto Fear & Greedインデックスは42ポイント(31週間前)のレベルで、恐怖の範囲のままです。BTC/USD は$24,100の取引で年明けの時よりも50%前後下落しています。

    この価格の下落にもかかわらず、残高が1 BTCのアドレスは2022年がはじまってから 9.4%増加しています。インジケーターでは7月末に史上最多の891.009 となりました。1 ETH 以上の残高のアドレスになると、さらに著しく、7カ月で15.7% も増加しています。例えば、分析リソースのThe Balanceによると、米国の投資家の39% が暗号資産にさらに投資をして貯蓄を維持したいとしています。

    今、ビットコインを購入する価値はあるのでしょうか? ブルームバーグ・インテリジェンスのシニアストラテジストのマイク・マクグローン氏は、ビットコインは長引く強気相場でかなり割安で現在、取引されているとした見方をしています。 “ビットコインは100週移動平均線と比較すると7月は最安値でした” と同氏は説明しています。

    Morgan Creek Digitalのマネージングパートナーのマーク・ユスコ氏も現在のビットコインの価格は適正ではなく、$30,000前後であるべきだと発言しています。なお、スカイブリッジ・キャピタルのCEO、アンソニー・スカラムッチ氏によると、現在のBTCの“適正価格”は $40,000前後になります。 以前人気のあったStock-to-Flow モデルのクリエイターであるPlanBは、さらに高く$55,000台です。

    こちらのインフルエンサーたちは、独自のモデルや独自の根拠があります。ただ、一つ、“適正価格” が相対概念であることを気に留めておく必要があります。そして、おそらく、最も適正な価格が現在の相場です。 つまり、現在、ある資産に対して売り手が売却準備のできている金額と買い手が購入準備できている金額ということです。.

    一部のオン‐チェーンインジケーターでは降伏期間は過ぎ7月の投資家感情が改善したことを示しています。これはForkLogの分析レポートで記載されました。 安定とその後のスムーズなビットコインの価格の回復の状況からPuell Multipleインジケーターは売られ過ぎ圏内から 抜け始めました。The Net Unrealized Profit/Loss (NUPL) metric は希望/恐怖の圏内に移動して楽観的方向に向かっています。MVRV Z-Scoreは、7月28日の0.1で売られ過ぎ圏内の境界を超えました。これは、市場サイクルの"底"打ちのもう一つのシグナルです。

    FTX暗号取引所のCEOであるサム・バンクマン・フリード氏によると、暗号資産の冬はおそらく終わろうとしていて、春が直ぐそこまで来ています。 “既に最悪な状況を見てきたと思っています” とSBFで知られるビリオネアは述べています。“ビットコインのマイナーの中には問題を抱えているかもしれませんが、合計数十億ドルではなく、数億ドルの痛みについて話しています”

    ただ、SBFの暗号資産の春の予想には、“しかし”がなかったわけではありません: “ナスダックがさらに 25%の下落、FRBの7%の利上げ、2年半の景気後退があれば[…] 、ビットコインは$15,000あるいは $10,000に下落するかもしれません” とFTXのCEOは述べています。

    ブルームバーグ・インテリジェンスのマイク・マクグローン氏も米中央銀行に対して慎重な見方をしています。同氏は、2022年に積極的な利上げを推し進める米中央銀行の主な役割を強調しています。これは、暗号資産や株式を含んだリスク資産の弊害となる可能性があります。同時にマイク・マクグローン氏はFRBと闘わないようにと促しています。

    リスク資産は8月末の次の重要な課題を乗り越えなければなりません。アナリストのニックネームGuyは、今月発表される経済予想データーは 暗号資産市場に十分な影響を与えることになると指摘しています。同氏によると、3 つの重要な要因が現在の上昇トレンドを中断する可能性があります。一つは、米国の個人消費支出 (PCE)。“7月のPCEデーターが8月26日に公表されます。 PCEがFRBのお気に入りの指標であるとするなら、この数値が高ければ積極的な利上げで市場崩壊につながります "。

    次の要因は第2四半期の国内総生産です: “8月26日に第2四半期GDP改定値の発表もあります。注目です。この数字が上方修正されれば、つまり、米国は、もはやテクニカルリセッションではないわけで、これがさらなる利上げをFRBに推し進めることになります”。

    そして、最後の三つ目が米国の金融当局が世界経済の諸問題を議論のために毎年開催される経済シンポジウム(ジャクソンホール)です。シンポジウムは、8月25日から27日で先に述べた二つの統計データーの発表日と同じ日にあります。

    これらの要因がFRBのジェローム・パウエル議長の判断に影響を及ぼす可能性があり、連鎖的に暗号資産市場にも影響は及ぶことになります。“統計がたいしたことなく、パウエル議長に喜ばしいことでなければ、暗号資産市場は悪い時期となるでしょう。議長が自身の考えを十分に長期的に持続することができれば、暗号資産市場が上昇回復を継続できるチャンスがあります”。

    最近のカンバーランド機関投資家調査では、回答者の大半が年末までにビットコインが$32,000 に上昇すると予想しています。投資会社ギャラクシーデジタルのCEO、マイク・ノボグラッツ氏はやや少なめの数字を挙げています。同氏の考えだと、ビットコインが近い将来に $30,000水準を超えることはありません。こちらのビリオネア自身はBTCが$20,000 から $30,000の範囲でしばらく止まっていれば “うれしいこと” でしょう。

    今回、最も楽観的な予測をしたのは、InvestAnswersというニックネームの人気アナリストです。アメリカの暗号通貨取引所コインベースと投資会社最大手のブラックロックは先週、提携契約を結びました。現在、ブラックロックは10兆円以上の資産を運用しています。このことから、InvestAnswers はブラックロックの顧客から資金流入がBTC の価格が$773,000に押し上げると考えています。

    “ブラックロックが資産の0.5% をBTCに置き換え、レバレッジを考慮すると、ビットコインの時価総額は 1.05 兆ドル増加、価格が$75,000に上昇することを意味します。この可能性は非常に高いとおもいます。ブラックロックの顧客が手持ちの1% を移すことで、資金は2.1兆円増加、ビットコインは$173,000になるでしょう。ブラックロックが資産の5%を置き換えれば、ビットコインの相場は $773,000になるでしょう。これは、あまりにも積極的だと思いますが、3-5年以内なら可能でしょう” とアナリストは記述しています (ここでの注意は、InvestAnswers の計算が1:21 あるいは、それ以上のレバレッジでの投資した時にのみ正しいことになります)。

    そして、レビューの最後ではビットコインよりかなり早いスピードで回復しているアルトコインのイーサリアムについての一言になります。BTC/USD が、この8週間で40%前後上昇する一方でETH/ USD は120%近く上昇しています。 ほとんどの専門家はコンセンサスアルゴリズムがProof-of-Work (PoW) から Proof-of-Stake (PoS)へ移行することが、この大きな上昇の原因だと考えています。ギャラクシーデジタルの代表、マイク・ノボグラッツ氏は、このことがある前にイーサリアムが$2,200 にとどくと思っていました。しかし、イーサリアムの共同創設者であるヴタリック・ブリテンによると、まだ、最高な状況ではなく、ネットワークがProof-of-Stakeになった後に訪れるとのことです。“実際に、移行されれば、投資家感情は改善されると見込んでいます”と同氏は述べています。 “私の考えでは、[…] ETHの相場の主な影響は 移行プロセスが完了した後になると思います”。

 

NordFX Analytical Group

 

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