EUR/USD: 今週の2つの出来事
- 先週は2つの大きな出来事がありました。一つは、EUR/USD が9月6日(火)に再び20年ぶりの安値を更新で0.9863にまで下落したことです。そして、次に欧州中央銀行が9月8日(木)に政策金利を今までにない75ベーシスの1.25%に引き上げ、これにより非常にタカ派的発言をしたことです。
どちらも想定外の出来事ではなく、全般として前回のレビューの予想どおりと言わざるを得ません。ECB の決定を受けて為替レートが上昇に転じたことも驚くべきことではありませんでした。およそ250 ポイントまでの上昇で9月9日には1.0113 までになりました。その後は、上昇調整があり、このペアは1.0045で終了しました。
このようなタカ派の動きにもかかわらず、ECBは米FRBとはかけ離れている状態のままです: 現在のドル金利は2.50%で、ユーロ金利のちょうど2倍の高さです。しかし、これだけではありません。欧州当局の9月の会合は終わりましたが、米国はこれからです。そして、FRBのFOMC(連邦公開市場委員会)が9月21日にもう一度利上げをするとなると、ドルはさらにリードすることになります。おそらく、100%近くこのような措置が取られるでしょう。
来月、10月の両銀行がどのような動きをするか予測するのは、難しい状況のままです。ただ、ECBは、しばらくの間、利上げが与えるインフレや経済の影響を把握するためにタカ派的態度を弱めそうです。反ロシア制裁によるヨーロッパのエネルギー危機の要因がユーロを不利にさせています。しかし、EUの指導者は冬を前にしてロシアからのエネルギー依存を減らすために積極的な措置をとっています。9月7日に発表されたユーロ圏のGDP成長率が前回と予測(3.9%に対して4.1%)を共に上回ったことからスタグフレーションは避けることができるかもしれません。
このレビュー執筆時点の9月9日(金)のアナリストの意見は次のとおりです。アナリストの55%はEUR/USD は近いうちに下落を続けるとした立場で、30%が上昇のユーロ安、残り 15% が1.0000のピボットポイントに沿った横ばい傾向の予想です。D1のインジケーターは定まっていません。 トレンド系の比率は50対50%。オシレーター系では、50%でやや緑が多く、35%が赤、15%はニュートラルグレイです。
この3週間の主な取引幅は0.9900-1.0050。両方向のブレイクダウンを考慮すれば、0.9863-1.0113とやや広くなります。0.9860の次の強力なサポートは、0.9685前後。強気筋のレジスタントとターゲットは次のとおり: 1.0130、そして、 1.0254、ターゲットは 1.0370-1.0470。
来週は、大きなイベントがかなり多くあります。9月13日(火)は、ドイツと米国の消費者物価指数(CPI)が発表される予定です。CPIは8月のインフレと財及びサービスの価格水準の推移を反映させた指標です。ドイツの9月ZEW景況感指数も同日発表される予定です。9月14日(水)と15日(木)には、米国の生産者物価指数(PPI)、小売売上高、失業率のデーターといった一連の経済統計があります。週の取引の終わり9月16日(金)は、ユーロ圏のCPIとミシガン大学消費者信頼感指数が発表されます。
GBP/USD: 英ポンド安値更新
- GBP/USD の前回のレビューのタイトルは"37年ぶりの低水準に至る"でした。2020年3月の安値 (1.1409-1.1415)は37年ぶりの安値であったことを振り返りましょう。そして、今回、ポンドの攻めの予想が現実となりました: 2020年の安値更新、9月7日に1.1404 の安値をつけました。その後、ユーロがドルに対して高くなり、ポンドを含んだほかの通貨が上昇させました。その結果、GBP/USD は1.1647に上昇して、1.1585で5日間を終えました。
8月7日の重要なイベントはイギリスのインフレレポートのヒアリングとイングランド銀行アンドリュー・ベイリー総裁が率いる金融政策委員会のメンバーによる講演でした。予想通り、政府関係者は金融引き締め策(QT)の取り組みを再度、断言しました。この発言は9月の会合で1.75%から2.50%の利上げの可能性があるという市場予想を強めました。この会合は、当初、来週の木曜日に予定されていました。しかし、エリザベスⅡ世の追悼のため1週間延期となり、米連邦準備制度理事会の利上げ決定後の9月22日となりました。
ポンドの利上げ予想が現実となれば、既に懸念されているイギリス経済への負担は大きくなります。イギリス商工会議所(BCC)によると、イギリスは既に景気後退に向かっており、今年、インフレは14%に達します。 ゴールドマンサックスによると、2023年の末には22%になる可能性もあり、長引く経済不況と3.5% 以上の経済縮小を引き起こすことになります。イギリスのガス電力市場監督局Ofgem は既にイギリスの年間電気料金の平均が世帯あたり10月から80% 値上がりすると発表しています。ファイナンシャル・タイムズでは、燃料不足に陥る世帯が1月に2倍以上の1200万世帯になるとしています。
もちろん、投資家はリズ・トラス新首相が国内経済の嘆かわしい状況について対処できるかどうか非常に懸念しています。ブレグジットとCOVID-19の大流行から完全には復活できなかったイギリスは、かつてないほどのインフレ、国民の支払い力の低下、自国通貨の大暴落に直面しています。
来週の平均予想は、かなり中立のようです。三分の一のアナリストが強気筋、別の三分の一が弱気筋、残りの三分の一が中立です。D1インジケーターのほとんどは赤です。トレンド系では、70%対 30%で赤が優勢です。 オシレーター系では65%が下向き、35%が横向きです。オシレーター系では、上向きはありません。
強気筋では1.1600、1.1650、1.1720、1.1800、1.1865-1.1900、1.2000、1.2050-1.2075、1.2160-1.2200でレジスタンスに直面するでしょう。直近のサポートは、1.1475-1.1510 の範囲を除けば9月7日の安値1.1404。このペアの今後の下落水準については推測しかできません。ボラティリティが大きいことから、ラウンド、フィボナッチ、もしくはグラフ分析の数字に注目することは、おそらく意味がないでしょう。
イギリスの経済統計については、9月12日(月)にGDP と生産高、9月13日(火)は国内の賃金水準と失業件数が発表されます。消費者物価指数 (CPI)が9月14日(水)、イギリスの小売売上高は9月16日(金)に明らかになります。 これらのデーターは国家統計局よるものなのでエリザベス女王Ⅱ世の追悼に伴い、発表に変更が生じる可能性があります。
USD/JPY: 宇宙飛行ペア
- USD/JPY は9月2日に140.79に上昇して 24年ぶりの高値でした。大半のアナリストが先週から高値更新を待っていました。そして、まさに、現実となりました: 9月7日(水)に144.985まで、このペアは上昇しました。今週の終了の鐘は、やや下げた142.65で鳴りました。
この理由を説明するには、キーボードでコピーとペーストを使えば、かなり簡単です。この2年間のレビューを参考にするだけで十分です。つまり、今していることです。すなわち、理由は同じ: 日本銀行 (BOJ) と特に、米連邦準備制度理事会をはじめとしたほかの中央銀行との金融政策の違いです。アメリカのタカ派と違い、日本の規制当局は量的緩和(QE)とマイナス金利(-0.1%)で国内経済に刺激を図ることを目的とした超緩和政策を取り組んだままです。この違いが円安の主な要因でUSD/JPYは上昇しています。なお、この状況は日銀が利上げをするまで変わらないでしょう。
日本の中央銀行が利上げすべき理由は? GDP (Q2)は非常に良好のようです: 指標は、予想の0.7%に対して、0.5% から0.9%に上昇しました。もちろん、日本のインフレ率が目標の2%を超えていることは良くないことです。しかし、アメリカ、ヨーロッパ、イギリスのインフレ率とは比べものになりません。つまり、ここでは、あまり心配する必要はありません。なお、鈴木俊一財務大臣は金融引き締め策で物価上昇を抑えるのではなく、逆に55億の予備費を活用すると述べました。さらに、大臣は"為替動向を緊張感をもって見守る"、 "安定な推移が重要" 、"急激な為替変動は好ましくない"と発言しました。
日本銀行の黒田東彦総裁は、9月9日(金)の岸田文雄首相との会談後、文字どおり、ほぼ同じことを述べました。主に次のとおりです: "岸田総理と為替市場について話した"、 "急激な為替変動は好ましくない"、"為替相場の推移を注視していく"
政府の発言のどこが前向きかなのかはわかりませんが、メディアが報じたことで、円は支持され、現在はアナリストの45%が円高になることを支持しています。 同じく45%が中立で、10%だけが、さらなる USD/JPYの上昇を期待しています。D1 インジケーターは、もちろん、緑が優勢。オシレーター系では100%、トレンド系では - 90%で 10% だけが赤です。
直近のレジスタンスは143.75。 強気筋の課題No.1は9月7日の高値更新で145.00を超えての足固めです。このペアの上昇分析をした春を振り返ると、予想では9月には150.00になる可能性があると予想していました。 そして、これは現実となりつつあります。このペアのサポートは、142.00、140.60、140.00、 138.35-139.05、 137.50、135.60-136.00、134.40、 132.80、 131.70。
今週、日本経済の重要なイベントは予定されていません。
暗号資産: カレンダーのメインの週
- 先週は、売りの波が押し寄せました。ビットコインの相場は、6月19日の安値($17,600)に迫り、9月7日に$18,543 に下落しました。同じく、イーサリアムは重要なサポート/レジスタンスレベルの$1,500を下回り、$1,488の安値をつけました。この推移は、主に、FRBのタカ派的な発言を受けたドル高によるものです。しかし、その後のECB の会合により、両方のコインは下げ幅を完全に取り戻して大幅上昇でした。このレビューの執筆時の9月9日(金)の夕方、取引は次のとおり: BTC/USD は$21.275、ETH/USDはt $1,715。暗号資産市場の時価総額は1兆ドルをわずかに上回り、1兆4200億ドル(1週間前は976億ドル)です。Crypto Fear & Greedインデックスは、7日間で3 ポイントを下げて25から22ポイントの非常に恐怖のゾーンです。
TradingView サービスによるとビットコインに対するイーサリアムの比率が2022年最大となりました。9月6日の午後に0.0843となりました。 前回、このような水準になったのは2021年12月です。1 BTC は、現在、およそ12.4 ETH の価値となります。
ETH コミュニティでは、この伸び率を来週のネットワーク統合と関連付けました。多くのユーザーがこの一年近く、遅かれ、早かれ、このタンデムで革命が起きると話題にしていました。そして、イーサリアムは資金と価値の面でビットコインを追い抜くことになるでしょう。イーサリアムネットワークの更新が9月13日から20日に予定されていることを思い出してください。この統合は、暗号通貨業界における2022年の最も重要なイベントである可能性が高くなります。これは、ネットワークの仕組みにいくつかの重要な変更がもたらされるためです。主に、エネルギー消費の99.99%削減とETH コインの放出量の減少です。
多くのアナリストによると、Ethereum 2.0 ネットワークの移行とProof-of-Stakeメカニズムの導入が予定通りであれば、このコインは急騰して、特に競争相手であるビットコインと共に市場全体を引き上げる可能性があります。 しかし、すべてが計画通りにスムーズにいけばです。もしかしたら、そうならないかもしれません。なお、Bellatrix のアップデート後の9月7日(水)にイーサリアムネットワークに問題が発生したことが明らかになりました。ブロックチェーンではネットワークが取引認証予定のブロック処理で失敗した“ミスブロック数,”が著しく増加しているようです。その数は約1700%にも増加しています。Bellatrixのアップデート前は0.5%ぐらいでしたが、後では9%に増加しています。
CoinSharesの最高戦略責任者であるメルテム・デミラーズ氏は投資家がETHのPoSメカニズムへの移行に関する大きな宣伝で市場の全体的な状況を無視していると考えています。また、イーサリアムネットワーク自体には統合のメリットがあるにもかかわらず、このことが投資資金を十分に惹きつけるかどうかは定かではありません: “統合で暗号資産コミュニティにはかなりの意気込みがあり、急激に供給量を減らし、需要を増やす可能性もありますが現実はもっと平凡です: 投資家は相場やマクロ指標を懸念しています。私は、ETHに新たな多額の資金が流入される可能性は低いと考えています。噂で買い、ニュースで売るという理由で統合は利用されるため、市場にはある種のリスクが伴います。このようなリスクは、どのようにして展開されるのでしょうか?可能性として最も高いのは投資機関や直接資産購入をしないオプション取引によるものです”
u.today ポータルのアナリストもマクロ統計に言及しています。9月13日がイーサリアムネットワークの統合だけでなく、重要な日になる可能性があると指摘しています。要因は、もう一つあります。上述のとおり、同日は、最新の米国の消費者物価指数 (CPI) が公表されます。アナリストによると、この情報はインフレにより国内で生じていることを投資家に理解させ、暗号資産を含めた金融市場に直接的な影響を及ぼします。ネットワークのアップデートによるボラティリティ、流動性、セキュリティに問題なく、CPI がインフレ率の低下を示せば、強気勢力の見通しができ、そうでなければ、暗号資産市場の下落は続くことになります。
グラスノードがBTC のさらなる下落を考慮して$17,000前後のサポートにしました。アナリストは、投機筋(この155日間に取引した人)の"収益性がない"コインの手放しが増えたことによる売り圧力を否定していません。これは96% (324万BTCのうち311万BTC)まで昇りました。6月19日から8月15日までの弱気筋の巻き返しが止まったことで状況は悪化しました。$25,000に価格上昇の後、わずか数日で下落して投機筋のコインの半分が “収益性がない”と分類されました。
短期的には、オンチェーンをしている多くが投機筋なので、市場での投げ売り決定は投機筋のストレスによるものです。現在の下落傾向のこのような3つの出来事が短期計画による売却を早め、これに続く安値のフォームを導きました。
アナリストのケビン・スウェンソン氏は、グラスノードの警告的見通しに同意しています。同氏もビットコインの下落の可能性について警告していました。米ドルが20年ぶりの高値水準に上昇する一方で、ビットコインは$17,600の6月の安値から何とか保っていた斜め支持線を下回ったとスウェンソン氏は述べています。同氏は、DXYドル指数が依然として強い上昇トレンドにあることから、ビットコインのさらなる弱気シナリオを認めています。
もう一人、ナイム・アスラム氏は、下落が$18,000 や $15,000ではなく、さらに下の$12,000前後であるという見解です。
暗号資産アナリストのニコラス・メルテンは、ビットコインがすぐに$12,000-14,000水準の強力なサポートレベルを突破することも除外していません。同氏のこの予想は、BTC保有者のポジションの状態を示す正味未実現損益(NUPL)によるものです(NUPL が0を上回れば、投資家にはプラス。下回れば、マイナス)。
一方で、メルテン氏は金融政策の引き締めと金利の引き上げ時で取引されたことがないため、BTCの推移は予測不能である可能性があると考えています。同氏は、米連邦準備制度理事会による量的緩和(QE)が間もなく再開されることについても疑いを抱いています。 “注目していきたい”というのは、 “BTCが取引所で取引されているこの10年間に50% の景気後退、不況調整、弱気株式市場がなかったことです。典型的な弱気市場は20%ぐらいで、その後、FRBが登場して助けてくれました。しかし、今回、FRBは同じようにはいきません。紙幣を増刷させ危機を脱出しようとすれば、インフレ問題を非常に悪化させる可能性があります”。
レビューの最後はポジティブな意見です。暗号資産市場の時価総額は減少しており、多くの巨大プロジェクトが破産しているにもかかわらず、ビットコインのハッシュレートは過去最高に迫っています。ビットコインが最高値から70%下落して、マイニング企業の株式が暴落と矛盾しているような状況です。しかし、マイナーは新たな設備導入を続けています。アナリストは、一部の楽観主義企業と企業が市場の混乱に対する準備だと捉えています。これに、ホドラーの処分コインの増加が観測されるグラースノードのデーターを付け足すと、仮想通貨の冬の後は、やはり、春の訪れが期待できます。
NordFX Analytical Group
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