EUR/USD: 来週: 嵐と津波の5日間
- 先週は世界中で中国の春節のお祝いのようでした。もちろん、多くの主要ペアでは多少のボラティリティはありましたが、ほぼ横ばい傾向で終わりました。旧正月の重要性については否定しませんが、小休止の状態だったのはこれだけが理由ではなく、やはり、来週、重要なイベントを控えているためです。
ヨーロッパでは深夜、アジアでは明け方の2月1日に米連邦準備制度理事会の政策金利決定の発表と当局の運営陣による今後の金融政策についての発言(少なくてもヒント)があります。欧州中央銀行では数時間後の2月2日(木)に金利決定があります。
しかし、予想の前に、この5日間の出来事について振り返ってみましょう。1月26日(木)に発表されたデータでは米国経済が予想以上に好調であることを示しています。第4四半期のGDPは、予想の2.6%増に対して速報値で前年同期比2.9%増でした。また、1月21日までの一週間の失業保険の新規申請件数は18.6万件(予想は 20.5万件、 前回19.2万件)でした。これは、2022年4月以来の週間値の最低水準です。耐久財受注も予想の-0.2%減を下回り-0.1%減でした。新築住宅販売件数も好調で11月の60万2千戸から12月は61万6千戸に増加しました。
これらの数字を見ると全てがそれほど悪くなく、アメリカの景気は後退していないと結論づけられます。しかも、FRBの2022年の積極的な金融政策(QT)が経済に締め付け効果を及ぼしていません。つまり、緩和(QE)へ移行できます。しかし、一部のエコノミストは消費需要の勢いが失いつつあると指摘しています(予想の2.9%と前四半期の2.3%に対して第4四半期は2.1%)。これらのことから、緩やかな景気後退の可能性が残っていると推論できます。
今のところ、市場はFRBが25ベーシスポイント (bps) の利上げをするとした見方です。現在4.50%であり、市場コンセンサスでは2023年に4.90-5.00%の水準でピークに達すると示しています。3月に25 bpの追加利上げをする可能性は 85%とされています。アナリストの中にはピークは4.75%付近ではないかという見方もあるようですが。その上、2023年末までに4.25-4.50%へ利下げされる可能性さえあります。このような動きは明らかにドルにとっては有利にはなりませんが、DXY バスケットのほかの通貨やリスク資産を押し上げることになります。
ユーロに関しては、市場はECB が 2 月 2 日に50 bpの利上げをすると確信しています。しかし、アナリストによれば、 USDとEURの利上げ差は既に市場相場で考慮されているため、1.0845-1.0925の範囲での推移です。直近の今後の予想ではFRBとECBの指導者たちの会合後のコメントやメッセージに左右されることになるでしょう。
1月23日(月)に1.0855 で始まったこのペアは1.0875で先週を終えました。この予想の執筆時点(1月27日金曜日夕方)、強気筋と弱気筋は、ほぼ半々です。アナリストの50%はさらなるユーロ高でこのペアの上昇を期待しています。45% は米ドルが下げを取り戻すと予想しています。残りの5%のアナリストは、 中央銀行の会合を控えているので予想が全くつかないとしています。D1のインジケーターでは異なります: オシレーター系の90%が緑、5%が買われ過ぎ、5%がグレーを示しています。トレンド系では、80% が買い推奨、20% が売り推奨です。直近のサポートは1.0835-1.0845、その後は、1.0800、1.0740-1.0775、1.0700-1.0710、1.0620-1.0680、1.0560 、1.0480-1.0500。強気筋は1.0895-1.0935、1.0985-1.1010、1.1130でレジスタンスに直面して、1.1260-1.1360の足場を固めようとするでしょう。
来週は明らかに嵐のようにイベントが目白押しです。FRBやECBの会合に加え、1月30日にGDPデータ、1月31日に失業率とインフレ率(CPI) 、2月1日にドイツの製造業購買担当者景気指数 (PMI)の発表があるので注目です。 2月1日(水)は、ユーロ圏の消費者物価指数 ( CPI ) や米国の購買担当者景気指数 (PMI)も明らかになります。 また、2月1日、2日、3日には、失業率や非農業部門新規雇用者数 (NFP)を含めた米国の労働市場からの重要な統計も通常通り控えています。
GBP/USD: ポンドの未来は濃い霧の中
- 2月2日(木)はイングランド銀行(英銀) でも金利決定があります。FRBとECBの利上げがほぼ100%だとするとポンドには全てが単純とはいきません。一部アナリストによれば、英銀は金融引き締めを一時的に止めて鈍化させ、市場を驚かせるかもしれません。
停止とはいかないまでも、QEの代わり新たにQTが始まることを目にするでしょう。1月27日にイギリスのジェレミー・ハント財務大臣は、“パンデミック後の公共部門の回復の遅れが改革の必要性を高めています” 、そこで “今の一番の減税はインフレ率を低くさせることです” と述べています。ほかの海外諸国のように、インフレに対する一番(一つだけでないにしても) の方法は利上げになります。
ポンド強気筋はイングランド銀行がポンド金利を50bp引き上げ、夏までに現在の3.50%から少なくとも4.50%に上がることを期待しています。弱気筋については、経済の低迷に脅かされ、中央銀行は景気後退により現在の25 bps以上の利上げができずに、後にも先にも、高いインフレ水準にも関わらず、金融緩和を余儀なくされると考えています。
全体的に将来が霧に包まれています。ただ、この国の経済が大きな課題を抱えていることは、かなり明らかです。その証拠に、購買担当者景気指数 (PMI)が予想の49.3増に対して 49.0 から47.8ポイント下落しました。
イングランド銀行のアンドリュー・ベイリー総裁は、最近、ブレグジット後のイギリス経済はEUからの労働力の停止により300,000人以上の労働者不足に直面していると述べました。このようなマイナスが賃金の値上げを伴ってインフレ抑制の障害となっています。また、エネルギー価格の高騰や供給不足と同じようにウクライナ侵攻に対するロシアへの制裁もイギリス経済への圧力となったままです。
GBP/USD の相場は、この5日間であまり変わっていません: 1.2395で始まり終値となりました。今後の中央値予想についても不透明なようです: アナリストの35% はこのペアの下落、ちょうど同数が上昇、残りの30% が横ばい予想です。D1のオシレーター系では、85% が緑、15% がこのペアの買われ過ぎを示しています。トレンド系では100%が緑です。サポートは1.2360、1.2300-1.2330、 1.2250-1.2270、1.2200-1.2210、1.2145、1.2085-1.2115、1.2025、 1.1960、1.1900、1.1800-1.1840。上昇すれば、1.2430-1.2450、 1.2510、1.2575-1.2610、1.2700、1.2750、 1.2940がレジスタンスになるでしょう。
今後1週間のイギリス経済関連の予定にはイングランド銀行の会合のほか、2月1日と3日に購買担当者景気指数(PMI) の発表があります。
USD/JPY: 今後はFRB次第
- 日本銀行(日銀)は1月18日の会合で、他の国々とは異なり政策金利をマイナス水準の-0.1%に据え置きました。 次回の会合は、暫く後の3月10日です。現在の黒田東彦日銀総裁の最後の会合となります。現総裁の権限は4月8日に終了となり、4月28日の会合は後任の中央銀行総裁によって開催されます。これにより、市場は日本の金融政策変更を連想します。その一方で、市場関係者は米連邦準備制度理事会に注目しています。
先ほどのペア同様で、先週、129.57 でスタートしたUSD/JPY は129.85で終わり、あまり動きは見られませんでした。アナリストの予測では、次回のFRB会合まで助言を控えています: 50% が強気、40%が弱気、 10% が一切の予想を控えています。D1のオシレーター系では、 10% が上昇、35% が下落、55% 横ばいを示しています。トレンド系では、15%が上昇、 85% が反対の下落です。直近のサポートは、129.50 、これに続き、128.90-129.00、127.75-128.10、127.00-127.25、126.35-126.55、125.00、121.65-121.85。レジスタンスは、130.50、131.25、132.00、132.80、133.60、 134.40、そして 137.50。
今週は日本経済に関する重要なイベントの予定はありません。
暗号資産(仮想通貨): 新たな取引戦略: 中国の春節
- ビットコインは2月1日のFRBの会合を控えてS&P500、ダウ・ジョーンズ、ナスダックよりもかなり冷静な推移です。もちろん、双方に相関関係はあるままですが、ビットコインのボラティリティは非常に小さくなっています。しかし、これは嵐の前の静けさの可能性がとても高いですが。いつもと同じで、この嵐は金融政策やUSDの政策金利を伴った米国政府の調整ということです。
Ark インベストのキャシー・ウッドCEO によると、暗号資産市場は2023年に新たな局面を迎えます。ビットコインを始めとする仮想通貨の上昇は、今年後半のFRBの金融緩和によるものになるでしょう。この動きこそが株式市場や暗号資産を試そうとする投資家の動機付けとなります(ブルームバーグのストラテジストであるマイク・マクグローン氏は以前、同じような見解でBTC が$30,000に上昇する見込みを示しています)。
暗号資産企業のB2C2の最高リスク責任者であるアダム・ファーシング氏は、ビットコインが上昇を続けるには、重要なレベルである$25,000付近を突破する必要があると述べています。 “これを克服するのは難しいでしょう” と自身の意見をシェアしています。同氏によれば、このマイルストーンを過ぎれば、市場に戻りたがっている人々の注目が戻ってきます。
しかし、ブローカレージのバーンスタインは、この業界への“新たな投入”の兆しがないため、現時点ではそのような上昇の見込みは低いと確信しています。ただ、暗号資産が益々規制対象分野となるため、今年は機関投資家が暗号資産に興味を示しはじめるだろうと見解しています(レビューでは以前から規制と暗号資産の主な考え方に伴った矛盾についての話題も取り上げてきました)。
DataDashのアナリストで番組制作者であるニコラス・メルテン氏も暗号資産には 明るい未来がある一方で、現在、世界的に過小評価されていると考えています。同氏の意見では、FTX、Celsius、Three Arrows Capital 、Terraform Labs によって引き起こされた被害は業界に消さない跡を残しました。また、多くの国々で急激なインフレが課題になっていることやコロナウイルスのパンデミック後のサプライチェーンが完全に回復していないことなど、マクロ経済要素も考慮する必要があります。同氏によれば、投資家は長期的な強気トレンドが終わったことを理解しなければなりません。残念ながら、デジタル資産業界は新たなチャレンジに備える必要があり、現在の市場の強気トレンドは弱気トレンドの中での修正の一部に過ぎないのです。
CNBCのジム・クレイマー氏はニコラス・メルテン氏に同意見です。 テレビ番組“Mad Money” の司会者もFTX 破産の件を踏まえリスクに着目しています。同氏は、ほかの業界大手も似たような状況にいつなるかわからないと指摘しています。同氏の意見では、この業界の大手企業が実は何を隠しているか誰も知らないということです。顧客に対して誠実であるかどうかもわかりません。新たなスキャンダルが起きればビットコイン相場は急落、つまり、投資家の資産はリスクにさらされると同氏は述べています。また、DeCarley トレーディングのシニア・コモディティ・ストラテジスト兼ブローカーであるカーリー・ガーナー氏を引き合いに出して、インフレ上昇と経済の混乱を回避するには暗号資産に手を出す代わりに現物の金を選ぶことを勧めています。
アメリカの大手銀行JPモルガンのトップであるジェイミー・ダイモン氏のような権威者も同意見です。CNBCの番組でビットコインの供給量が本当に2100万枚に制限されているのか疑問視していました。 "どうして、わかるのでしょう? 上限の2100万枚になって、サトシの写真が現れた時、みんな大笑いするかも知れませんよ” と同氏は言い出しました。こちらのトップマネージャーは、2022年10月にすでに、ビットコインに組み込まれたコードに関して、公の場で懐疑的な態度を示していました。 当時、ダイモン氏は、“皆さんはアルゴリズムをすべて解読したのでしょうか? これら全てを信じられますか? ”とニヤリと笑いました。
参考までですが、プログラムによる半減期を考えると2141年までに上限の2100万枚に達するはずです。また、専門家によると、ビットコインの排出量の上限は、わずか5行のコードで提供されているといいます。これについては研究のために公開されており、誰もが検証することができます。
そして、ここでも疑問が生じます: ジェイミー・ダイモン氏のビットコインに対する懐疑的な態度がビットコインの成功者を排除したいことであればどうでしょうか? つまり、現在の強気な上昇でビットコインの時価総額は4430億ドル以上となり、この数字は世界的な銀行を含め多くの従来の金融機関を上回っています。例えば、アメリカの銀行大手であるJPモルガン・チェースの時価総額は4064億2000万ドルで、バンク・オブ・アメリカだと2775億6000万ドルになります。また、BTCはアリババ(3170億1000万ドル)、サムスン(3353億7000万ドル)、マスターカード(3659億ドル)、ウォルマート(3851億5000万ドル)といった大手企業にも上回っています。しかし、テスラー(4547億2000万ドル)よりは、やや下回っています。
CompaniesMarketCapによれば、ビットコインは世界で16番目に資産価値があります。トップが金(12兆7700億ドル)で、Apple (2兆2500億ドル)、 サウジアラムコ(1兆9400億ドル)となります。
このレビュー執筆時(1月27日金曜日の夕方)、 BTC/USD は$23,070圏内で取引されています。暗号資産市場の時価総額は1兆600億ドル(1週間前は1兆3800億ドル)です。Crypto Fear & Greed インデックスは、一週間で51 から55 ポイントに上がり、中立から強欲圏内に移動しており、この指標の作成者によれば、ここでの新規ショートポジションは既に危険な域です。
そして、レビューの最後は、忘れかけられているジョーク半分のコラムである暗号資産ライフハックです。今回は、おもしろい観察の一つについてです。もちろん、マネするのであれば、全責任はあなたにあります。万が一、収益を上げた時は、必ず私たちにご連絡ください。そして、お礼を言ってくださいね。
つまり、中国春節の第一日目の終わりにビットコインを買って10日後に売ると平均9%以上の利益を確保できることが明らかになりました。これは、Matrixport のリサーチ戦略ディレクターであるマーカス・ティーレン氏によって導かれました。同氏の観察によると、このスキームでは、2015年から2022年までの8年間で100%の利益を確保しています。この運用で最高利益だったのが2017年: 15%です。前回の暗号資産の冬の状況である2018年でさえ、投資家はわずか1%だけではありますが利益を確保しています。
2023年にこのスキームを取り入れるなら、1月22日にビットコインを購入して10日後の2月1日に売る必要がありました。提案された購入日のビットコインは$22,900 前後での取引でした。ティーレン氏は、価格は2月の初めまでに$25,000 に近づくはずだと予想しています。この現象が正しいかどうかは、すぐに明らかにされます。そして、これから、ティーレンの推奨に従おうとする人のために、次の中国の春節は2024年2月10日(土)に始まることをお知らせします。
NordFX Analytical Group
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