2023年2月6日‐10日のFXと暗号資産の予想

EUR/USD: 不透明な三週間

  • 中央銀行の会合が予定通りに先週、開かれました。予想通りで政策金利は米連邦準備制度理事会が25 bps (ベーシスポイント)の引き上げの4.75%、欧州中央銀行が50 bps の引き上げで3.00%となりました。この決定は想定外ではないので、市場参加者は政府の今後に注目しました。

    米連邦準備制度理事会の次回FOMC (連邦公開市場委員会)会合までしばらくあります: 次回は3月22日で、ほぼ2ヵ月先です。市場は25 bps の追加利上げの 5.00%の後は、この水準を維持すると予想しています。

    2月2日(木)のDXY ドルインデックスは9ヵ月ぶりの安値更新で100.80でした。これは、連邦準備制度理事会の利上げの波の終盤が明らかになった後に起きました。統計は経済の課題に対する政府の取組を示します: 6月のインフレ率は9.1% (40 年ぶりの高水準)で、12月には 6.5%の下落です。これで量的引締め (QT) にブレーキをかけることができるようになりました。ジェローム・パウエル議長が会合後の会見で"デフレが始まっている" とはじめて認めたことで投資家たちはハト派的と受け止めました。また、議長はピークレートが5.00%を超えないことを前提に米中央銀行が経済への大きなダメージを与えることなくインフレ率の鈍化を実現できると繰り返し発言しました。

    ユーロに関してはインフレ率が1月のデータで示されるように3ヵ月連続で低下しています。ただ、エネルギー価格の下落にかかわらず、基本料金の値上げ幅は同じ水準です。予想によれば、ユーロ圏のインフレ率は2023年に5.9%となり、2024年には2.7% に下落、2025年には、さらに2.1%への下落が予想されます。失業率もさらに下落が予想される一方で、GDP成長率予想は 同じ水準のままです。2月1日(水)に発表された速報値では、2022年のユーロ圏内の経済成長は1.9%で前回 (2.3%)よりは下回りましたが、予想 (1.8%)よりは上回りました。

    前回の会合後でECB のクリスティーヌ・ラガルド総裁は、ユーロ圏の経済成長とインフレの双方に対するリスクのバランスがかなり取れてきていると述べています。しかも、ECBは3月の利上げ後に経済成長を評価することになっています (50 bpsを超えるとも予想されています)。 ラガルド総裁は3月16日以降の追加利上げの可能性の質問には回答を控えています。これがユーロへの下落圧力となり、EUR/USD は1.1031を上回ることなく下落しました。

    2月3日(金)の労働市場からは素晴らしいデータ発表があり、ドルはさらに上昇しました。労働統計局(BLS)のデータでは米国の失業率が予想の3.6%増ではなく、3.5% から3.4%への減少、また、1月の非農業部門雇用者数 (NFP) が予想の18.5万人の2.8倍増の51.7万人増加で、12月の26万人増のほぼ2倍の増加でした。

    その結果、EUR/USD は1.0794で終了しました。1月13日(金)に1.0833、1月20日(金)に1.0855、1月27日(金)に1.0875の週の終値を振り返ってみてください。これらの数値(100 ポイント以内)付近であるということは、市場が今後の方向性についての明確なシグナルを明らかにしていないことを示唆しています。このレビュー執筆時(2月3日金曜日夕方)、米ドルが高くなっています。

    シンガポールの金融機関UOBグループのエコノミストは、ユーロはまだ1.1120のレジスタンスに向かおうとせず、今後1-3週間は1.0820-1.1020での取引が見込まれると分析しています。 中央値予想では、アナリストの45%がユーロの上昇、同数(45%) がドルの上昇を予想しており、残り10%が中立の立場です。D1のインジケータでは様子が異なっています。オシレーター系の35%は、赤 (三分の一が売られ過ぎ圏内)、25% が上向き、40% がグレーです。トレンド系では、50%が買い推奨、 50%が売り推奨です。このペアの直近のサポートは、1.0740-1.0775、そして、1.0700-1.0710、 1.0620-1.0680、 1.0560 、1.0480-1.0500です。強気筋には、1.0800、 1.0835-1.0850、1.0895-1.0925、1.0985-1.1030、1.1120がレジスタンスとなり、その後は、1.1260-1.1360での段階的な足固めとなるでしょう。

    来週の予定では、ドイツの消費者物価指数の速報値とユーロ圏の1月小売売上高が発表される2月6日(月)が注目です。火曜日はジェローム・パウエルFRB議長の発言が予定されています。ドイツの最終インフレ率データ (CPI) と米国の失業率が2月9日(木)に明らかになります。そして、ミシガン大学消費者信頼感指数が2月10日(金)に発表されます。

GBP/USD: イングランド銀行からの謎解き 

  • 有名なロンドンの霧はイングランド銀行(英銀)の金融政策を立ち込め続けています。ECBと同じく、政府は、2月2日(木)に政策金利を50 bp引き上げ 4.00%にしましたが、同時にこのメッセージが著しい下落となりました。これにより、ポンドは2022年6月中旬以来の高値(1.2450)から1.2100水準に押し戻されました。 米国のNFP発表後、GBP/USD の週安値は、さらに下回った取引で1.2046、そして、ほぼ同水準の1.2050で5日間の取引を終えました。

    既に述べましたが、今後のイギリスの財政は先行き不透明です。2月3日(金)のタイムス・ラジオでのインタビューに応えた英銀のチーフエコノミストであるヒュー・ピル氏の発言から探ってみました。ここで、いくつか引用してみます。“私たちは、既に多くの事を成し遂げてきました” - “パイプラインにはさらに多くのステップがあります”。 “多くのニュースが最近、改善されています” - “私たちはショックに備えなければなりません”。 "今年、インフレ率が下がる確率は高いと確信しています" - "焦点はインフレ率がさらに下がるかどうかです"。 ケーキのアイシングのように、ヒュー・ピル氏の発言ではイングランド銀行は金融政策で"やり過ぎ"ないことが重要だと...

    正直なところ、この発言からでは、どこで"少ない"、 "多い" 、"やり過ぎ"の判断をするか線引きできません。そこで、コメルツ銀行のストラテジストの見解を紹介します。 “イングランド銀行の利上げサイクルが終わりに近づいていることは明らかです” と結論付けています。そして、こう続けています: “イングランド銀行は追加利上げの可能性を残していますが、為替市場の観点では不透明感が強いため、より積極的なアプローチが望まれています。このような状況から、ポンド安は想定外ではなく、さらなる下落の可能性が見込まれます”

    コメルツ銀行のエコノミストのこの見解は、GBP/USDのさらなる下落が"あり得る" と分析している55%のアナリストから支持されています。反対の見解は45%のアナリストが支持しています。D1のトレンド系では、75% 対25%で赤が優勢です。オシレーター系でも赤が優勢です: 85% 対15%。 しかし、赤では20% がこのペアの売られ過ぎを示しています。サポートレベルは、1.2025、 1.1960、 1.1900、1.1800-1.1840です。このペアが上昇すれば、1.2085、 1.2145、1.2185-1.2210、1.2270、1.2335、1.2390-1.2400、1.2430-1.2450、1.2510、1.2575-1.2610、1.2700、 1.2750 、1.2940でレジスタンスに直面します。

    来週のイギリス経済に関しては、2月10日(金)の2022年前期GDPデータに注目が集まるでしょう。第4四半期は多少の伸び(-0.3%から0.0%)があったものの1.9% から0.4%への落ち込みが予想されています。

USD/JPY: 非農業部門雇用者数が円安をもたらす

  • 全体的に先週の日本円はドルに対するユーロやポンドと同じような推移でした。しかし、ボラティリティは、ECBやイングランド銀行の影響を特に受けませんでした。これは、ドル (+4.75%)と円 (-0.1%)の金利差が要因でした。その結果、128.08で直近の安値をつけたUSD/JPYは、 FRBの会合後に横ばいで推移、金曜日の米労働市場のデータ(NFP)で300 ポイント急伸の131.18の高値となりました。投資家はドルから安全通貨の円へ移ることを止め、再び、安全通貨としてドルを選択することに決めました。USD/JPY の先週の終値は131.12でした。

    市場は、現在、日本銀行(日銀)の黒田東彦総裁が開催する3月10日の最後の会合を控えています。現総裁の権限は4月8日に終了して、4月28日の日銀会合は新総裁により開かれます。市場が政府の金融政策の変更を見込んでいるのはこのことによります。それまでは、2022年10月‐11月のような日銀の介入を円の下落を食い止めるために度外視することはできませんが。

    今までのところ、アナリストの予想は指針が明らかになっていません。: 40%が強気筋、 40% が弱気筋、20% が全く予想をしていません。

    D1のオシレーター系では、75%が上向き (15% が売られ過ぎ)、15%が下向き、 10%は横ばいです。トレンド系では、50% が上向き、全く同数が反対向きになっています。直近のサポートは、-130.85 続いて、130.50、129.70-130.00、 128.90-129.00、128.50、127.75-128.10、127.00-127.25 、125.00です。レジスタンスは、131.25、131.65、132.00、132.80、133.60、134.40 、そして、137.50です。

    日本経済に関する重要なイベントは今週、予定されていません。

暗号資産: BTC はリスク回避資産となる

  • 先週は、特にビットコインのような主要な暗号資産が独立したものではなくなっていることが改めて証明されました。これらの相場は全体的に米連邦準備制度理事会の決定によって大きく関連しています: 米ドルはBTC/USDの反対となります。安くなれば、ビットコインは高くなり、その逆もあります。もちろん、ECBや中国人民銀行のようなほかの政府による決定が 暗号資産の相場に影響を与えることもあります。また、FTXのような業界内部からの崩壊にも揺さぶられることもあります。しかし、BTC/USDの傾向をつくりだすのは主にFRBです。

    ビットコインは、やはり、すごい資産です。昨年は、よく言われるように二兎を追う者は一兎も得ずでした。一方で、株式市場、株価指数、S&P500、ダウ・ジョーンズ、ナスダックとの相関関係がリスク資産として分類されることもあります。しかし、他方で、暗号資産メディアサイトのアナリストによると金、銀... との暗号資産の相関関係は、古代から続いてきたインフレやほかの金融リスクに対する保険と考えられていると注目されています。CryptoSlate によれば、2022年2月以降の二つの資産の推移の一致は、およそ最大で83%です。ビットコインはリスク資産であると同時に保護資産でもあることが明らかです。よく言われるように、見知らぬ中の友人と友人の中の見知らぬ人です。

    ゴールドマン・サックスのエコノミストによれば、リスク調整後のビットコインは金、株式市場、不動産部門での収益を大きく上回っており、それは、現在も続いています。ビットコインは、は、2013年1月以来の好スタートを切りました。伸び率は51%、先月は40%でした。これには、ドル安が背景にあります。 “また、上昇背景の85%は米国からの投資家絡み” と暗号資産取引サービスを提供しているMatrixportのリサーチ責任者、マーカス・シーレン氏は述べています。米国企業の強気姿勢は、シカゴ・マーカンタイル取引所に上場するビットコイン先物のプレミアムが更新されていることでも確認できます。シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)のBTC先物の建玉は、前月比77%増の23億ドルと価格を大きく上回っています。 “これは、素早い機関投資家やヘッジファンドが暗号資産市場の最近の下落で積極的に買戻していると解釈されます”とシーレン氏は述べています。

    Deutsche Digital Assets は、コインベースプレミアの増加は熟知した米国の機関投資家の買い意欲が増えている現れだと1月20日に既に同じような見解を示していました。

    投資顧問会社deVere グループの調査では、2022年の課題があるにもかかわらず、富裕層の82%が暗号資産投資を検討していることを示しています。こちらの企業の調査対象の120万ドルから610万ドルの投資資産を保有している10人中8人が暗号資産投資に関するアドバイスの問い合わせをしています。

    deVereグループのCEO兼創設者のナイジェル・グリーン氏は 、調査対象グループが“一般的にかなり保守的” である一方でビットコインのコアバリュー:“デジタル、グローバル、ボーダレス、分散型、不正アクセルからの安全"により関心を引いていると分析しています。フィデリティ、ブラックロック、JPモルガンのような3社でも業界にとって良い兆しだと見ています。同氏は、従来の金融システムの変化が2022年の “暗号資産の冬”の雪解けとなり、関心の勢いが増していくと予想しています (参考ですが、2022年6月のプライスウォーターハウスクーパースのレポートでは、調査対象の89社の伝統あるヘッジファンドのおよそ3分の1がすでにデジタル資産に投資していることを示しています)。

    Pureprofileのアナリストからも同様の結果が報告されています。この調査は、米国、EU、シンガポール、アラブ首長国連邦、ブラジルの 投資機関や資産運用会社の200社を対象に実施されました。回答した企業の運用資金総額は2兆8,500億ドルでした。今回の調査では、10社中9社の回答企業が2023年のビットコインの上昇を支持、23% がBTCの年末の価格が$30,000を超えると予想しています。長期的には、回答企業の65%はビットコインが$100,000を突破する見方で一致しています。

    クジラだけでなく、小口投資家も昨年の大きな出来事にも関わらず、楽観的のままです。統計では、ビットコインまたはイーサリアムが$1,000以上あるデジタルウォレットの数は2022年に27%増加しました。調査では、暗号資産取引所のバイナンスの88%の利用者が今後も暗号資産投資を継続する予定で、3.3%だけが予定していないと答えています。ビットコインが大きく占めている資産のままで、調査対象の21.7% が保有しています。

    昨年、デジタル資産を投資目的で購入した人は40%を超えています。ほかの購入目的としては、ビットコインが下落傾向であること、全体的に弱気トレンドであることです。購入目的のおよそ8%が世界政治情勢を挙げ、11.5%が従来の金融システムの不信感を理由にしています。40.8%が従来の投資(株式購入、不動産投資、投資信託)をしていませんが、32.4%は従来の投資をしています。同時に、79.7%が世界経済での暗号通貨の成長の必要性を確信しており、回答者の59.4%は暗号資産の預入は時間の経過と共に銀行の預入に代替えできると考えています。

    ギャラクシーデジタルホールディングスの創設者であるビリオネアのマイク・ノボグラッツ氏は厳しい2022年を乗り越え、米国テキサス州にあるヘリオス社のマイニング施設を6500万ドルで買い取り長期的なビットコインのマイニング投資に乗り出しました。また、“Stock-to-Flow”で知られる人気のアナリスト通称Plan Bは、ビットコインの価格が2025年までにマイク・ノヴォグラッツ氏のコスト回収を上回る100万ドルになると予想しています。今年に関しては、Plan Bは、$100,000以上になると予想しています。また、1月のビットコインのパンプは4年サイクルの底は過ぎたことを裏付けているとも述べています。

    Matrixport 専門家の過去の観測からすると、一月のビットコイン相場がチャート上“緑”であれば(緑でした)、通常、価格上昇はその年の翌月以降も続いていました。これに基づけば、ビットコインは2023年のクリスマスには$45,000が見込まれます。

    暗号資産トレーダーで有名なピーター・ブランド氏は強気派が喜ぶには少しだけ早く、直近予想では弱気な見通しを固持しています。同氏が注目するのは、多くのトレーダーや投資家は現在、より良い価格での市場参入のために引き戻りを待っているということです。同氏は、ビットコインが近いうちに$25,000 水準になり、その後は$19,000付近の調整に入ると予想しています。しかし、中期的には、ブランド氏は、楽観的なままで、ビットコインは年内中頃には$65,000になると予想しています。

    暗号資産アナリストのベンジャミン・コーウェン氏は、ビットコインには “長い一年” が先にあると述べ、時期早々の嬉しさにも注意を促しています。同氏によれば、ビットコインは大きな上昇のように見えますが、実際は基本的に長い横ばいレンジの過程が見込まれます。コーウェン氏は、横ばいの推移は、ビットコインの上昇指標とは限らず、相場の下落を示すこともあります。

    同氏はトレーダーに弱気サイクルが通常は一年続くことを思い出させました。つまり、2015年に上向きは3回ありましたが、本当の上昇は最後の一回だけでした。2019年も相場上昇の期間がありましたが、その後は大きな下落となり、最高値更新はこの後でした。コーウェン氏は、2023年は貯蓄の年と見ており、投資家がこの時期に手持ちのビットコインを増やせるチャンスだと述べています。また、同氏は米連邦準備制度理事会の金融緩和が暗号資産上昇には欠かせないと考えています(政府の前回の会合では、これに対する希望を与えています)。

    このレビュー執筆時(2月3日金曜日夕方)、BTC/USD は$23,400圏内の取引です。暗号資産時価総額は1兆8200億ドル(1週間前は1兆600億ドル)です。ビットコインに対するコミュニティの一般的な心理を示すCrypto Fear & Greedインデックスは、60ポイント(先週は55ポイント)で2022年3月30日以来初めて貪欲の圏内に入りました。しかし、暗号資産投資家たちの確信が強まっていることがビットコインの強気な上昇を再開させることを直接示しているわけではないことに注目しましょう。事実、恐怖や非常に恐怖が絶好の買いチャンスを示していることもあり、あまりにも高い貪欲は市場が下方修正に向かうこともあります。

    そして、レビューの最後は半分ジョークとも言える暗号資産ライフハックのコラムです。今回は、BTCホルダーにナイジェリアに注目してもらいたいと思います。そこで稼げたことがわかったのです。ニュースが現地で人気のあるNairaEX 取引所のビットコイン相場が世界的市場相場よりも70%以上高い$40,000前後に上昇したと報じました。最終的には、この差額がナイジェリアの中央銀行によるATMの引出制限によるものだとわかりました。つまり、皆さん、裁定取引でも収益が得られることを忘れないでください。要するに、何を、どこで、いつ、いくらで買って、そして、売るかということです。

 

NordFX Analytical Group

 

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