2023年2月13日-17日のFXと暗号資産の予想

EUR/USD: FRBのハト派が再びタカ派に変わる

  • 米連邦準備制度理事会と欧州中央銀行の会合後、2月2日のDXYドルインデックスは9ヵ月ぶりの安値更新で100.80に下落しました。これは、会合後の会見でジェローム・パウエル FRB議長がはじめて"デフレが始まった" と認めたハト派的気配の後のことです。市場は、これが終わりのはじまり、つまり、強気の終わりが近づいていると判断しました。

    しかし、気配は具体的な約束ではありません。米中央銀行のトップは特にです。そして、今、ジェローム・パウエル議長は、ワシントン経済クラブで利上げはインフレ抑制のために継続しなければならないと発言しています。そして、ピーク時の金利が市場予想を上回るかも知れないとタカ派であることをほのめかしました。12月に発表されたFRB予想よりも高くなります。

    パウエル議長のタカ派姿勢は、ニューヨーク連銀(FRB)のジョン・ウィリアムズ総裁、クリストファー・ウォーラーFRB理事、ミネアポリス連銀のニール・カシュカリ総裁から支持されました。 カシュカリ総裁は、インフレ抑制のためにやるべき事がまだあると発言しています。これは、金利が現在の4.75%から5.40%以上に引き上げられ、しばらくはその水準にとどまる見込みであることを意味します。

    今回、市場は早期金融緩和を待つ意味がないと判断、そして、ドル高が始まりました。2月7日(火)、DXYインデックスは、5週間ぶりの高値 103.96 ポイントでした。しかし、一気にかなり強いレジスタンスレベルまでになったため、それ以上は上昇しませんでした: 1) 50-日 SMA、2) 2021年以前のトレンドライン、3) 2022年11月から始まった下落傾向の上限と104.00台のレジスタンス。

    この5日間のマクロ統計は少ないものでしたが、アメリカとヨーロッパから政府関係者の発言は豊富でした(EU首脳会議は2月9-10日に開催)。 来週は、経済データの発表がたくさん予定されています。米国の消費者インフレ(CPI)に関する1月のデータは2月14日(火)に公表されます。予測では、1月の物価は0.4-0.5%  (12月は0.1%)の上昇が見込まれます。 また、年間データでは前回(6.2% vs. 6.5%)よりも下回るとされています。  CPI がインフレの不変を示しているのであれば、FRB関係者の直近の発言を裏付けしているものであり、ドルが支持されます(スコシアバンクのエコノミストはEUR/USD が1.0500-1.0600に下落すると予想)。インフレが着実に下落しているのであれば、米ドルは非常に大きな圧力を受けることになります。

    2月2日に高値1.1032 (2022年4月以来の最高値)をつけたEUR/USDは反転して、1.0679で一週間を終えました。レビュー執筆時点(2月10日夕方)では、アナリストの35%がドル高、残りの45% が中立の立場です。D1インジケーターでは異なります。オシレーター系では85% が赤(3分の1が売られ過ぎ圏内)である一方、残り 15%が緑です。 トレンド系では、40% が買い、 60% が売り推奨です。このペアの直近サポートは、1.0670、その後は、1.0620、1.0560、 1.0500、1.0440、1.0370-1.0400。強気筋は、1.0700-1.0710、1.0745-1.0760、1.0800、 1.0865、1.0895-1.0925、1.0985-1.1030、1.1110でレジスタンスに直面して、その後は 1.1260-1.1360 で段階的に足固めをしていくことでしょう。

    来週のイベントでは、先に述べたインフレデータの発表に加え、2月14日(火)にユーロ圏のGDPの速報値が発表されることに注目です (もちろん、2月14日は世界中の多くの国で一番ロマンティックな祝日のバレンタインデーであることも忘れずに。1500年以上も前から人々はこの日に愛の告白をしていました)。米国小売売上高は2月15日(水)に明らかになり、米国の失業関連のデータは2月16日(木)になります。また、2月16日には1月の米国生産者物価指数(PPI)もあります。

GBP/USD: 来週: ボラティリティは確実

  • 先週、ポンドは一部の下げを取り戻そうとしました。GBP/USDは、1.1961 (1月6日以来の最安値水準)から2月6日に反発、2月9日に週高値の1.2193 をつけました。その後、ポンドはDXYインデックスのほかの通貨と伴に、ドルに対して徐々に安くなっていきました。その結果、GBP/USD の週終値は、1.2055で、ほぼ始値(1.2050)と同じでした。

    ニュース背景が曖昧で不確かなままです。経済問題がイギリス通貨に圧力をかけ続けています。2月2日にイングランド銀行(英銀)がインフレ対策のため、50 bp の利上げで4.00%としましたが、このメッセージが同時に大きく下落させました。これは、2022年6月中旬以来の高値(1.2450)から250 ポイント以上の下げ幅となりました。

    市場関係者は、イングランド銀行が急激な追加利上げを懸念していると見ています。この利上げがインフレにどのような影響を及ぼすかは別問題です。しかし、経済、特に建設業がかなり厳しくなることが見込まれます。2月6日(月)に発表されたイギリスの1月の建設業景況感指数は48.8から48.4 ポイントに低下しました。イギリスの国家統計局が2月10日(金)に発表した12月の経済全体の予想では-0.3%減でしたが、実際は、-0.5%減でした (11月は0.1%増)。第4四半期のGDPは、前四半期の-0.2%減の後、0%減で低迷しています。GDPは年換算で+1.9%増から +0.4% 増へと縮小しました。

    このような状況でのジェレミー・ハント財務大臣の勝ち誇った報告と楽観的予想がいささか奇妙に聞こえます。大臣は"イギリスはG7の中でも最も速い経済成長を成し遂げ、リセッションも回避した"と述べました。これは、 "多くの人が懸念しているよりも経済に回復力があることが証明された"ということを示しています。そして、“今年のインフレ率を半分に抑えるという目標通りとなれば”、“ヨーロッパのどの国よりも優れた成長の見通しを確信できる” と ジェレミー・ハント財務大臣は続けました。

    ハント財務大臣と異なり、コメルツ銀行のストラテジストはイギリス経済の今後の不透明性は依然として高いと見ています。2月15日に発表される消費者物価指数の推移と値は、ある程度、明らかにさせます。 イングランド銀行の今後の金融政策を決定する重要な指標となるのがCPIだからです。前日の2月14日(火)に発表される労働市場の状況や2月17日に明らかになる小売売上に関するデータも重要です。

    これら全てのマクロ経済統計により、GBP/USDのボラティリティが大きくなるのは確実です。それまでの間は、アナリストの40%がポンド安、同数が予想を控え、指標の発表を待っています。 アナリストの20% だけが、ポンド高でこのペアの上昇を支持しています。D1のトレンド系では、 75% 対25%のバランスで赤優勢です。オシレーター系では、赤が100%ですが、このうち 10%がこのペアの売られ過ぎを示しています。このペアのサポートレベルは、1.2025、1.1960、1.1900、1.1800-1.1840。このペアが上昇すれば、レジスタンスは、1.2085、 1.2145、 1.2185-1.2210、 1.2270、 1.2335、1.2390-1.2400、1.2430-1.2450、1.2510、1.2575-1.2610、1.2700、1.2750 、1.2940となるでしょう。

USD/JPY: 日銀トップは新しいが政策は古い

  • 日本円はDXYと同じように、先週の米連邦準備制度理事会のタカ派発言と米国債利回りの変動に反応しました。しかし、ボラティリティをかなり大きくしたのは、内閣が日本銀行(日銀)の新総裁に71歳の植田和夫氏を起用したという報道でした。

    東京大学の元教授は金融政策の専門家として非常に知られています。植田氏は、四半世紀前の1998年4月から2005年4月まで日銀政策委員会に在任しています。植田氏は2000年に日銀のゼロ金利政策の放棄に反対表明をしており、同氏の起用はおそらく、超緩和金融政策の縮小を急がせない日本銀行総裁を起用したいという政府側のおそらく意向でしょう。これは、植田氏自身が政府の現在の政策が適切であり、今後も引き続ける必要があるとした発言からも確認できます。

    USD/JPY の先週の終値は131.39で、2022年12月20日以来、何度もいたところです。多くのアナリスト(55%)は、3ヵ月後に多少の円高になる見込みがあるとしたものの、ここでのターゲットの幅はかなり広くなると見ています。最終的にはFRBがハト派に戻り、USD/JPYが120.00になると予想する人もいれば、127.00-128.00 が下落の限界だと考える人もいます。

    短期的には、アナリストの20% だけが、このペアの下落、30% が上昇を支持、50% は全く予想がつかないとしています。D1のオシレーター系では、80% が上向き、10%が下向き、10%が横向きです。トレンド系では、40% が上向き、反対方向の60%が下向きです。直近のサポートレベルは、131.25 、これに続いて、130.50、129.70-130.00、128.90-129.00、128.50、 127.75-128.10、127.00-127.25、125.00。レジスタンスは、131.85-132.00、132.80-133.00,、133.60、134.40 、そして、137.50。

    日本のGDP速報値は来週、2月14日(火)に発表です。日本経済の2022年第4四半期は+0.5%増 (前四半期 -0.2%減)が予想されています。既に発表されているデータもプラスのようです。 1月の銀行融資は予想(+2.6%)を上回り、実際は+3.1% (12月は+2.7%)増でした。Eco Watchers Current Situation インデックスも1月末までに47.9 から48.5 ポイントに上昇しています。

暗号資産: ビットコインは一休止すべき?

  • ビットコインと株式市場(S&P500、ダウ・ジョーンズ、ナスダック) やほかのリスク資産との相関関係で目新しいものはありません。しかし、先週のビットコインは予想外にも米ドル通貨に対して逆相関ではなく相関関係でした。これは、BTC/USDEUR/USD のチャート見ると明白です。両方の資産が同時に下がったり、上がったりしました。天秤で例えるなら、両方の天秤皿が同時に上下するという物理的なパラドックが観察されました。物理の法則が再び戻ったのは週の終わりでした: ドルが少々高くなり、ビットコインが下がりました。

    ビットコインの2022年11月の安値$16,272から2023年2月の初めの数日の$24,244の上昇の勢いは徐々に小さくなってきました。BTC/USD は、1月の後半までに戻り、この3週間半の結果はゼロに近いと考えられます。

    著名なトレーダーであり投資家であるトーン・ベイズ氏が指摘するように、ビットコインは “非常に速く、かなり上昇” しており、$25,000 付近での大きなレジスタンスに直面しています。こちらの専門家は、この資産が最終的にはこのレジスタンスを突破することになるが、おそらく"今は、小休止すべき" と考えています。ベイズ氏は、狭い幅での調整、もしくは、小さな引き戻しのどちらかになるという予想を明らかにしました。

    こちらの専門家の評価だけではありません。統計では、暗号資産コミュニティメンバーのメディアフォーキャストでは、この6ヵ月で最大で75%の確率になるビットコインの予想を毎月末にしていました。Finboldアナリストは、1万5千人以上のトレーダーを対象とした最新の調査結果と、機械学習アルゴリズムの予測結果を発表しました。人間は、BTCの相場が2月28日までに $20,250 に下落を予想、人工知能では$24,342を示しています。

    このような小さな (ビットコインの標準では) 取引幅は、ベイズ氏が示した“一休止”にかなり正確に対応しています。現在の市場の状況はかなり不透明で、短期保有者が利益圏内にいる一方で、長期保有者(6ヵ月以上) はレッドゾーンのままです。前回の弱気局面では、すべての指標が緑に代わるまで291日かかりましたが、現在は、まだ268日しか経過していません。

    昨年末は、ほとんどの投資家は赤字でした。つまり、ビットコインに長期投資しているマイクロストラテジーの貸借対照表では損失(含み損)が13億ドル(約1,000億円)に計上されています。その一方で、同社の経営陣ではデジタル資産の運用停止予定がありません。昨年の混乱に関するコメントで、マイクロストラテジーの共同創設者であるマイケル・セイラー氏は一種のダーヴィン理論とした見方をしていると述べています: 弱小や悪質な参入者が市場から退いたことで、長期的には業界を押し上げることになります。同時に、セイラー氏によれば、暗号資産は、企業が一定の基準を遵守し、顧客を保護するための明確な規制の枠組みを必要としていると述べています。 “本当に必要なものは、監督です。この業界独自のゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレー、ブラックロックが現れるためには議会からの明確な指導が必要です。米国のSEC(証券取引委員会)の明確な業務規程が必要なのです”。

    しかし、例えば、Metaブロックチェーンの元エクゼクティブでPayPalの元社長は、議会がそのような規制を早急に策定できるかについては疑問視しています。これを踏まえ、同氏は2023年の暗号資産企業は危険とリスクを冒しながら"バキューム"を続け、昨年のショックから市場が回復する2025年に暗号資産の冬が終わると述べています。

    意外なことに、暗号資産支持者だけでなく、猛反対の人々も規制圧力の強化を主張しています。つまり、ウォーレン・バフェットのアソシエイトでバークシャー・ハサウェイ持株会社の副社長のチャーリー・マンガー氏は、ビリオネアが投資をギャンブルになぞらえるビットコインを潰すように米国当局に要求しています。同氏は、ウォールストリートジャーナルのインタビューで暗号資産業界は世界の金融業界の安定を弱体化させていると述べています。しかも、BTCには価値がないため、資産と見なすことはできないとも述べています。 C

    マンガー氏は、この見解について、この数年表明していました。そして、今、同氏は米国当局に暗号資産市場の壊滅的な打撃を要求しています。同氏の見解では、最終的に業界を追い込むような厳しい規制の枠組みが必要とのことです。

    なお、チャーリー・マンガー氏が99歳であることが、おそらく、過激な保守派であることの説明になるでしょう。若い世代のビジネスマンは、かなりデジタル・イノベーションに忠実です。金融コンサルティング会社deVere Groupが実施した調査結果を思いさせば十分です。

    2022年の課題にもかかわらず、大富豪の82%がデジタル資産への投資を検討していることが示されました。deVere Groupグループのナイジェル・グリーンCEOによれば、従来の金融システムが変化すれば、こうした関心も高まるとのことです。

    Morgan Creek のマーク・W・ユスコCEOは、良好なマクロ経済により、早ければ2023年第2四半期に強気相場始まることになると考えています。同CEOによると、今後、米連邦準備制度理事会が政策金利を引き下げる見込みは低いとのことです。しかし、このプロセスの減速や一時停止さえも暗号資産を含むリスク資産には前向きなシグナルとして受け取られます。Morgan CreekのCEOは、暗号資産市場上昇のほかの理由として、暫定的な2024年4月19-21日のビットコインの次回の半減期の期待を挙げています。ユスコ氏の計算では、デジタル資産の回復は、通常、この半減期の9ヵ月前に始まるため、今回は2023年の夏の終わりから上昇することを意味します。

    ARK Investの代表であるキャシー・ウッド氏は、今後についてかなり楽天的で、ビットコインが保護資産として最適だという考え方のままです。同氏の見解では、 貧しい人々も裕福な人々も、すべての層がデジタルゴールドの使用により利益があるそうです。同代表の言葉を裏付けるように、Ark Invest アナリストは、宇宙的な予想をしています。同社の悲観的なシナリオでのBTCの価格では、$259,000までの上昇、楽観的なものでは1コインあたり- 150万ドルの上昇を想定しています (チャーリー・マンガー氏は、これをどう思うのでしょうか?)

    このレビュー執筆時(2月10日金曜日夕方)、 BTC/USD は $21,600 圏内での取引です。暗号資産市場の時価総額は、1.010兆ドル(1週間前は1.082兆ドル)です。Crypto Fear & Greed インデックスは、1週間で60から48ポイントに下がり、ほぼ中央のニュートラルで終わりました。状況は不透明で、おそらくビットコインのトレーダーは “一休み”?

 

NordFX Analytical Group

 

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