EUR/USD: FRBは米国経済を鈍化させない
- 2月14日(火)に発表されたデータがインフレに打ち勝つには、まだ、まだ先であると示しました。コア消費者物価指数 (CPI)は、前月比+0.4%のままです。年間データの +6.5%に対して+6.4%であり、前回値を若干下回ったものの、予想の+6.2%を上回りました。 翌日の2月15日はもう一つ統計発表がありました。2ヵ月減少していたアメリカの小売売上高が12月の-1.1%から1月は+3.0%(予想の+1.8%に対して)へと急増、2年ぶりの高い伸び率を示しました。
これに対する反応では、まず、ドル高(DXYインデックスは、1月9日以来の高値で 104.1 ポイント)と株価指数の急落でした。市場関係者はこのようなマクロ統計がFRBにさらなる金融引き締めを積極的にさせると判断したのです。 金利のピーク値が 2 月初旬に 4.9% 、その後年末までに 50 ベーシス ポイント (bp) 低下する予測であれば、現在のピークは5.25%となり、2023年は25 b.p.だけ利下げされることが見込まれます。なお、3月、5月、6月とあと3回の追加利上げの可能性は50%です。
既に述べましたが、ドル高と株式指数の急落が最初の市場の反応でした。しかし、その後、おなじように急反転、投資家のリスク選好が戻りました。株式指数は上昇しました。米国経済がいとも簡単に積極的な利上げに対応できるなら、今後も対応できると市場関係者は判断したのです。小売だけでなく、ほかの経済指標でも現在の納得いく上昇を示しています。つまり、新規雇用者件数は51万7000人の増加、アトランタ連銀の先行指標では2023年第1四半期のGDPは2.2%どころか2.4%成長見込みです。
その後、市場センチメントがまた変わりました。失業保険の新規給付件数が予想外に減少、その一方で、1月の生産者物価(PPI)が7ヵ月ぶりの高水準になったことが明らかになりました。この状況で、市場は金融規制のさらなる連鎖が再び強まると予想しました。S&P500、ダウ・ジョーンズ、ナスダックは揃って下落の一方、DXYは6週間ぶりの高値 104.58となりました。その後は、米国の連休を前にドルインデックスが再び103.85 ポイントまで下落しました。
EUR/USDは、不安定なDXY の推移に伴った反応でした。その結果、先週は1.0679で始まり、1.0694で終了、つまり、ほぼ結果ゼロでした。この執筆時(2月17日夕方)、アナリストの80%がさらなる上昇期待、10% がユーロ高予想、残り10% が中立な立場です。
今回のD1のオシレーター系では、ほぼアナリストの意見と一致しています。80% が赤(このうち20%がペアの売られ過ぎを示しています)、残り 20%がグレーです。 トレンド系では、売り推奨が60%、買い推奨が 40%です。このペアの直近サポートは、1.0600-1.0620、そして、1.0560、1.0500、1.0440、 1.0370-1.0400です。強気筋は、1.0700-1.0710、1.0745-1.0760、1.0800、1.0865、1.0895-1.0925、1.0985-1.1030、1.1110でレジスタンスに直面後、1.1260-1.1360 で段階的な足固めとなるでしょう。
来週は、2月21日(金)にドイツとユーロ圏のサービス業購買担当者指数(PMI)の発表があります。2月22日(水)は、ドイツの調和消費者物価指数(CPI) が明らかになります。また、この日の深夜にFOMC (連邦公開市場委員会) の議事録が公開されます。2月23日(木)は、ユーロ圏のインフレ率や失業率、そして米国のGDPのデータ発表があるため、ボラティリティがあるでしょう。ドイツのGDP指標とアメリカ国民の個人消費に関する統計は取引週終わりの2月24日(金)に判明します。また、米国では2月20日(月)が祝日:大統領記念日であることも、トレーダーは覚えておく必要があります。
GBP/USD: イングランド銀行がポンドに衝撃を与える可能性あり
- ポンドは、先週の初め、一部の下げを取り返そうとしました。GBP/USDは、2月13日に 1.2030 の水準で跳ね返り、翌日には2週間ぶりの高値1.2270となりました。 そして、DXYインデクスのほかの通貨と伴にポンドはドルに対して再び下げ始めました。その結果、週安値は1.1915でした。その後は、始値に戻り、GBP/USD は1.2040で週の取引を終えました。
イギリスのインフレデータも失業率のどちらもポンドの助けにはなりませんでした(CPIは予想の+10.3%と12月の+10.5% に対して、一月は+10.1%に下落)。また、予想の-0.3%と先月の-1.2% に対して+0.5%だった1月の小売売上高も市場に影響しませんでした。英国とEUが長引くブレグジット交渉で良い結果を得たというニュースも、ポンドの動きに目立った影響を与えませんでした。
ポンド相場により重要だったのは米国のマクロ統計とイングランド銀行(英銀)の利上げサイクルが間もなく終了するのはないかという予測でした。コメルツ銀行のエコノミストによれば、“イングランド銀行が大幅な利上げにより経済が失速しすぎるようになると懸念していることは明らかです” と述べ、GBPの見通しについては弱気な見方であることを説明しています。シンガポールのユナイテッド・オーバーシーズ銀行もこれに同意見で、GBP/USD に関しては、今後、再び、 1.1900水準になるとのことです。
アナリストの予測中央値に関しては、70%がさらなる今後のポンド安を支持、10%が予想を控えています。アナリストの 20%だけがポンド高で、このペアの上昇支持です。D1のトレンド系でのパワーバランスは、赤が多く、85%対15%です。オシレーター系では、100% が赤となっています。このペアのサポートレベルは、1.1990-1.2025、 1.1960、1.1900-1.1915、1.1840、1.1800、1.1720、 1.1600です。このペアが上昇すれば、1.2085、1.2145、1.2185-1.2210、 1.2270、1.2335、1.2390-1.2400、1.2430-1.2450、1.2510、1.2575-1.2610、1.2700、1.2750 、1.2940でレジスタンスに直面します。
イギリス経済に関しては、サービス部門購買担当者指数(PMI)の発表が予定されている2月21日(火)に関心が集まるでしょう。
USD/JPY: QTへの期待は変わらぬまま
- 鈴木俊一財務相は、“日本政府は賃上げ構造を伴う安定したインフ目標を期待して学者である植田和男氏を新たな中央銀行総裁に起用しました” と述べました。そして、このことが円に有利になったようには見られませんでした。週の始値が131.39だったUSD/JPY の週高値は135.15、そして、5日間の取引の終値は134.17でした。
元東京大学教授の71歳の植田和男氏が四半世紀前の1998年4月から2005年4月まで日銀審議委員のメンバーであったことを思い出しましょう。2000年当時、植田氏は日銀がゼロ金利政策を導入しないことに反対表明をしていました。現在も、超緩和政策の縮小を急ごうとはしないようです。これを裏付けるように、2月10日に植田氏は現在の政府の政策は適切であり、継続が必要であると発言しています。
このような発言にもかかわらず、現在、新たなリーダーの下、この政策の先行きに疑問は残ったままです。大半のアナリスト(60%) は様子見です。15%が今後の USD/JPY は上昇、25% が下落予想です。3ヵ月後の見通しについて言えば、アナリストの10% は円安について話しており、25% が中立のままですが、植田和男氏の発言とは反対に65% が金融引き締め策(QT) と円高を期待しています。
例えば、ダンスケ銀行のエコノミストはUSD/JPY のレートは3ヵ月以内に125.00になると予想しています。BNPパリバ・リサーチのストラテジストも同じような見解です。 “ドル高の期間は短期的だと予想しています” と両社とも述べています。“米ドルは数年来の弱気トレンドに突入して、ポートフォリオフローでは通貨にとって、ますますマイナスになっていると思います” 。BNP パリバは日本のプラス利回りが現地投資家の資金回帰を促す可能性があるため、USD/JPY は2023年末には121.00 に下落すると予想しています。
D1のオシレーター系では、100% 上向きです(このうち、15%は買われ過ぎ圏内)。トレンド系では、75%が上向き、 25%が下向きです。 直近のサポートは、134.00、続いて、133.60、 132.80-133.20、131.85-132.00、131.25、 130.50、129.70-130.00、128.90-129.00、 128.50、127.75-128.10、127.00-127.25 、125.00です。レジスタンスは、134.40、134.75-135.10、135.60, 136.00、137.50, 139.35、140.60、143.75。
今週は、日本経済に関するマクロデータの発表予定はありません。また、日本では2月23日(木)が天皇誕生日の祝日であることも忘れてはいけません。
暗号資産: BTC上昇の5つの理由
- 昨年春以降、暗号資産市場の規制に関する話題が大きくなっています。多くのインフルエンサーが明確な規制の枠組みがあってこそ、機関投資家からの大量の資金流入が期待できると主張しています。マイケルストラテジー社の共同創設者であるマイケル・セイラー氏は、最近の発言の一つでこのように述べています。 “何が本当に必要かというと”、 “監視です[...] 議会からの明確な指導が必要です。米国SEC(証券取引委員会)の明確な業務規則が必要です” 。このような大資本家の発言が政府関係者の意識や行動に響かないわけはありません。例えば、エリザベス・ウォーレン上院議員は、暗号資産業界の規制を大幅に強化する自身の法案を支持するように既に保守党上院議員に積極的に働きかけています。
2022年は業界の代表的なリーダーたちが破産したことで、米国規制当局の動きが急激に活発になったことに注目です。政府は今年になって倍増で活動を始めました。まず始めに、クラーケン取引所を攻撃しており、この取引場はステーキングサービスの提供を禁止されています。ただ、追跡はそこで終わらず、SDP、PAXG、Binance のステーブルコインを取り扱うインフラ企業Paxosにまで及びました。この企業に対してはニューヨーク州金融サービス局(NYDFS)が調査を開始しました。後に、規制当局はBUSDステーブルコインの発行停止を命じました。SECはPaxosに対して起訴することも公表しています。
このような状況によりステーブルコインから大量の資金が流出しました。多くの利用者はBUSDから USDTに移し替えました。しかし、問題は半分のままです。心配になった利用者の中にはバイナンスの利用を単に止めた人もいます。2月14日だけでも、この取引所からの純資金流出額は8億3100万ドルにもなり、FTXの破産以来の記録でした。
バイナンスのチャンポン・ジャオCEO は米国政府の圧力に対して業界関係者に他国の移住を検討するように述べました。同氏はドバイ(UAE)、バーレーン、フランスが規制に寛大な候補地として挙げています。バイナンスのCEO はUniswapの創設者であるヘイデン・アダムス氏によって支持されました。 “暗号業界を取り巻く中で米当局の動きを見ることは残念です” “革新的な企業は、さらなる利益を求め海外に進出します。まるで30年前に政府がインターネットの発展を禁止したようなものです” と同氏は記述しています。
意外にも、このような単純に言えば、ネガティブな状況でビットコインの相場は上昇、2月16日には$25.241 をつけました。前回、BTC/USD がここまで上昇したのは、2022年8月中旬のことです。今回の上昇には、いくつか理由があります。
まず、一つが、逆説的にNYFDS とSEC がクラーケンとPaxosに関する調査を話題にしたことです。 米国規制当局は、PoSコインをステーキングによる受動的収入(利益期待)のため有害資産として扱っています。これに基づけば、法的な影響を受けるこのようなコインは証券類として取り扱われます。一方、ビットコインはまだマイナーの産物のままで似たような運命(少なくても今のところは)を回避できます。 ネットワークのハッシュレートは記録更新中です。
デジタル“ゴールド”の相場上昇のもう一つの理由は、株式市場( S&P500、ダウ・ジョーンズ、ナスダック)との相関関係です。
3つ目の理由は、2022年にビットコインが売られ過ぎたことにより、生産コストが市場価格を下回ったためです。多くのマイナーは運営費や買掛金の支払いのため保有していたBTCを売却しなくてはならなかったのです。
次の理由は、1月末に開始されたオーディナルプロトコルで、ビットコインのネットワーク上で金融取引を行うだけでなく、画像、音声、動画ファイルなどあらゆるデジタルオブジェクトを転送できるようになったことです。残高のないウォレットの数が新記録更新となり、マイナーたちは1ヵ月足らずでコミッションとして$876,000 の追加収入を得ました。
BTCの上昇が始まったことで、短期投機筋はショートポジションを解消せざるを得ず、それがさらにビットコインの上昇を促すことになりました。これが5つ目の理由でした。
グラスノードの専門家によると、ビットコインの適正価格は$33,000です。これはビットコインが目指す数字になります。 ツイッターのフォロワー数が56万3000人の人気アナリスト、Kaleo は$30,000 と同じような数字を挙げています。Kaleoのイーサリアムに対する予想はかなり楽観的です。Kaleoの計算では、ETH/USD の目標水準は$3,000付近です。元ゴールドマン・サックスCEO、ラウル・パル氏のイーサリアムの予測でも、$10,000付近の目標設定にしています。ただ、もちろん、このような上昇には、より時間がかかることになるでしょう。
有名なアナリストであるウィリー・ウー氏によれば、3年後にはビットコインユーザーの数は現在の3億人超から10億人に増加します。これは、世界人口のおよそ12%相当です。ウィリー・ウー氏はビットコインがまず1,000 ユーザーとなるまでに6ヵ月かかりました。その数が100万に増えるまでに5年でした。ネットワークが現在の3億人以上の数字を達成したのは、ジェネシスブロックが誕生した13.8 年後です。
ヘッジファンドのスカイブリッジキャピタルの創設者であるアンソニー・スカラムッチ氏は、2023年はビットコインにとって“回復の年” と述べています。しかし、同氏の予想では、かなり控えめなようです。同氏の見解では、BTCの相場は、おそらく、今後2、3年で上限 $50,000の2倍 “だけ”見込めるとのことです。
もう一人のインフルエンサーで金持ち父さん貧乏父さんのベストセラー作家のロバート・キヨサキ氏は、ビットコインが2025年までに驚きの$500,000 に上昇すると主張しています。“大きな崩壊が迫っています。恐慌もあるかもしれません。FRBは見せかけの何十億もの紙幣を印刷することになりました。2025年までに金は$5,000、銀は $500、そしてビットコインは $500,000”とキヨサキ氏は記述しています。また、金と銀は神々のお金であり、ビットコインは庶民にとってのドルのようなものだと付け加えました。
先週、リスク資産は大きく下落しました。株式指数に続いて、暗号資産相場も下落しましたが、かなり早く回復しました。このレビュー執筆時 (2月16日金曜日夕方)、BTC/USD は$24,600 圏内の取引です。暗号資産市場の時価総額は1.106兆ドル(1週間前は1.010兆ドル)です。Crypto Fear & Greed インデックスは、1週間で 48 から 61 ポイント上昇で中立から強欲ゾーンに移りました。
NordFX Analytical Group
注意: この内容は金融市場への投資推奨やガイドラインではなく情報提供のみを目的としています。金融市場の取引には、リスクが伴うため入金した資金のすべてを失う可能性もあります。
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