EUR/USD: 1.0600 圏内で一休止
- 3月2日(火)のDXYドルインデクスは、再び、 105.00ポイント台を突破しましたが、ここで留まりませんでした。通常なら、ドルは米国債利回りの上昇によって支持されます。10年債利回りは11月10日以来の高い水準で4.09%、2年債利回りでは2007年以来の高い水準を更新して4.91%でした。2022年第4四半期の米労働市場統計の改定値やISM製造業景況感指数(PMI)も米ドルを支持しました。一方で、ドルは中国のマクロ経済統計の状況で高くなっている元に押されました。中国の製造業PMIは2012年以来の高水準です。非製造業部門も好調で、中国の不動産市場は安定しています。
しかしながら、米ドル推移の主な材料はインフレ抑制を試みるFRBの今後の動向であることに変わりはありません。1月の消費者物価指数 (CPI) が予想以上に上昇して6.4%となったことから、市場関係者は3月に25ベーシスポイント(bp)ではなく、すぐにでも50ベーシスポイントの利上げがあると言い出しはじめました。(現在、CMEのFedWatchツールのこの確率は23%と予測)。
この予想は、FOMC(連邦公開市場委員会)の一部メンバーのタカ派的発言によって裏付けられます。アトランタ連銀のラファエル・ボスティック総裁は、2024年まで最終的な政策金利を5.00-5.25%に維持するべきだと述べました。 ミネアポリス連銀のニール・カシュカリ総裁は3月の25bp 若しくは50bpの利上げ支持について決めかねていますが、FRBのドットプロットが上がる可能性を示唆しました。その一方で、両総裁はインフレ対策の必要性を強調し、強い労働市場と米国経済が 中央銀行の積極的な金融政策の圧力に耐えることができると主張しています。しかし、その後のラファエル・ボスティック総裁のタカ派ムードが和らぎ、夏には利上げサイクルを中断する可能性を述べました。その後、ドルは上昇からやや下がりました。
中にはUSDの金利のピークが9月には5.5%、もしかしたら6.0%もあり得ることを否定しないアナリストもいます。年末に下がることは全く信じられません。なお、これらの予想が米ドルに影響を及ぼしたことが先物市場で見受けられました。しかし、EUR/USDについての話題では、FRBの動向だけに注目するわけにはいきません。大西洋の反対側も寝てはいません。欧州の多くの国のインフレデータは、ECBの従来の予想よりもタカ派的立場を長く維持せざるを得ません。中国経済の見通しが米国だけでなく、欧州にも圧力となり、両政府のインフレ抑制を難しくさせる可能性があります。つまり、市場関係者は欧州中央銀行のさらなる金融引き締め策を予測しており、現在のこのペアは1.0600 圏内です。
先週は1.0632で終わりました。このレビュー執筆時 (3月3日夕方)、アナリスト予想はEUR/USDのフラットな相場のように不透明です: アナリストの50%は中立の立場で30% がドル高、残りの20%がユーロ高予想です。 D1のオシレーター系では、50%が赤、15%が緑、35%がグレーです。トレンド系では、35%が売り推奨、65% が買い推奨です。このペアの直近のサポートは、1.0575-1.0605、続いて、1.5000-1.0530、1.0440、1.0375-1.0400、1.0300、1.0220-1.0255です。強気筋は1.0680-1.0710、1.0740-1.0760、1.0800、1.0865、1.0930、1.0985-1.1030でレジスタンスに直面するでしょう。
来週は、経済統計やイベントが目白押しです。ユーロ圏の小売売上高は3月6日(月)に発表されます。火曜日と水曜日にFRBのジェローム・パウエル議長の議会証言があります。3月8日(水)にはドイツの小売売上高、ユーロ圏のGDP、米国の雇用統計のデータも発表されます。米国の新規失業保険給付件数や中国のインフレ率(CPI)が木曜日に明らかになります。3月10日(金)は、ドイツの消費者物価の状況が判明します。同日は、いつもどおり、失業率や非農業部門雇用者件数 (NFP)を含めた米国の労働市場からの重要な統計の一部発表があります。
GBP/USD: センチメントカラーは赤
- GBP/USD は2週連続横ばいの流れですが、ボラティリティはやや高めになっています。変動幅 (1.1942-1.2147) は、200ポイントを超え、先週の終値はこの幅の中間である1.2040でした。 ドル高については前述のとおりです。英ポンドは先週、北アイルランド議定書について英国とEU間で合意に達したとの情報があり支持されました。現在、貿易紛争が解決されたことはイギリス経済全体にとってプラスですが、多くのアナリストは、この合意によるポンドへのプラス効果は短期的なものと分析しています。
このペアの相場は、中央銀行の動向により決定しています。イングランド銀行(英銀)のアンドリュー・ベイリー総裁は、3月1日(水)の発言で、課題は深い霧の中でイングランド銀行の金融政策の見通しは最終決定に至らず、政府は市場を脅かすことなく、今後、数ヶ月は柔軟に対応すべきであると述べています。
アナリストの中央値予想は次のとおり: 70%がポンド安の GBP/USDを支持、10%だけが このペアの上昇を期待、20% が予想を控えています。D1のトレンド系では、65% 対35%で緑が多くなっています。 オシレーター系では様子が異なります。赤が圧倒的で70%、緑が10%、中立が20%です。このペアのサポートは、1.1985-1.2025、1.1960、1.1900-1.1925、1.1840、1.1800、1.1720 、1.1600です。上昇すれば、1.2055、1.2075-1.2085、1.2145、1.2185-1.2210、1.2270、1.2335、1.2390-1.2400、1.2430-1.2450、1.2510、1.2575-1.2610、1.2700、1.2750、1.2940でレジスタンスに直面することになるでしょう。
来週の経済カレンダーについては、3月10日(金)に予定されている1月のイギリスGDPと鉱工業生産データーの発表まで重要なマクロデータはありません。
USD/JPY: 耐える、ただ耐える
- 3月2日(木)に米国の経済データ発表後、USD/JPY は137.10に上昇しました。これは、2022年12月以来の高値です。FRBと日銀政府の乖離や3月に入って米国債10年利回りが2022年11月以来の高水準となったことが円に立ちはだかりました。
日本銀行(日銀)の新総裁に植田和男氏が任命されたことは円にとってのもう一つの打撃でした。同氏のポジションが政府の金融政策の変化を期待していた人にとっては、失望感をさらに大きくしたのみでした。投資家はDXYの上昇や10年債利回りの上昇といった状況で既に下げていた円の投機的需要を促していた明らかな"タカ派" シグナルを新総裁の発言で拾うことができませんでした。
2月初めのUSD/JPY は130.08でしたが、現在、3月3日の終値は135.84です。 しかし、多くのアナリストは円高予想を捨てきれていません。“ドルは9月末にピークを迎えたため、円は1月末にG10通貨の中で2番目にパフォーマンスが良い通貨であった” と MUFG銀行のエコノミストは記述しています。 - このような状況での多少の下落は、かなり理解できます。しかし、インフレが低下して世界での利回りがピークに近づけば、とりわけ、日銀の政策も変わり円は回復を示すと考えられます”。
金融コングロマリット最大手であるHSBCのストラテジストも同意見です。“中期的には円高のまま”、 "ただ、日銀により円高になるまでには、ある程度、耐えることが必要です。今のところ、USD/JPY はリスクバランスがドル安に傾いているように見える米国の影響が及ぶ可能性が高くなるでしょう”と予想しています。
次回の日本銀行の会合は3月10日(金)です。黒田東彦総裁による最後の開催で、今後は植田和男新総裁にバトンタッチされます。JPモルガンのアナリスト(他の多くのアナリストと同様)は、この会合で日銀の政策変更や調整があると想定していません。黒田総裁の退任後、ドアが大きく閉じられるとは考えづらいでしょう; 金利はマイナス水準の-0.1%で据え置きの見込みです。 したがって、円の支持派は、HSBCのアドバイスに従って耐えるだけとなります。
すなわち、すでに述べたように、多くのアナリストが今後はかなりの円高になると予想しています。上記のMUFG銀行とHSBCのストラテジストに加え、BNPパリバ・リサーチも同じ見解を示しており、ダンスク銀行のエコノミストは、USD/JPYが3ヶ月以内に125.00のレベルまで下落すると予測しています。専門家たちの意見によると、金融政策の引締めで日本のプラス金利が現地の投資家の資金回帰を促し、結果としてUSD/JPY は2023年末に121.00付近になるとのことです。しかし、 60%のアナリストがこの見方をしているものの、かなり不明瞭な見通しのままです。 直近の予想では、アナリストの10%だけがこのペアの下落支持、45%が反対支持、残り45が中立です。
D1のオシレータ系では、85% が上向き、残り15% が反対向きです。トレンド系では、65% が上向き、35% が下向きです。直近のサポートは、134.90-135.20、続いて、134.40、134.00、133.60、132.80-133.20、131.85-132.00、131.25、130.50、129.70-130.00です。レジスタンスは、136.00-136.30、136.70-137.10、137.50、139.00-139.35、140.60、143.75です。
来週のイベントは、上述の日本銀行の会合に加え、3月9日(木)に2022年第4四半期のGDPデータ発表が予定されています。
暗号資産: 新たな材料を待つビットコイン
- 前回のレビューの最初の一文は: “ビットコインは押されていますが、持ちこたえています”ということでした。今回のレビューを始めるにあたっては、これを繰り返すだけで、ビットコインは押されていますが、持ちこたえていますということになります。それでは、グローバルなニュースにいきましょう。良いニュースでは、米政府が暗号資産を完全には禁止にしないことです。悪いニュースは、政府のこの業界への圧力が今後も強まるということです。
暗号資産市場の規制は、G20の財務相と中央銀行の代表が議論したテーマの一つでした。その結果、ジャネット・イエレン米財務長官が暗号資産市場の規制が重要であるとした一方で、ワシントンでは完全な禁止を検討していないと述べました。“信頼できる政府の枠組みをつくることは非常に重要です。我々は、[これに] ついて他の政府機関と一緒に取組んでいるところです” と米財務長官はロイターのインタビューで語っていました。IMFのクリスタリナ・ゲオルギエヴァ専務理事もこれに同意見です: こちらの組織もデジタル資産の適切な規制を推奨しており、完全なる禁止には反対しています。
ここで注目すべきは、政府の管理を強め多くの参加者を快適な空間から締め出すことで、最終的にFTXの破綻のような衝撃を緩め、業界にプラスの影響が見込まれることです。さらに明確な規則により、多くの機関投資家を惹きつけ、暗号資産市場の時価総額は前例のない大きさとなることでしょう。
しかし、これは未来についてです。現在は、クジラ(1,000 BTC以上)の“群れ”が減少を続け、この3年で一番少ない1,663 となっています。2021年2月のピーク時には2,500 弱でした。多くの参加者やアナリストが予想した以上に2023年の初めに暗号資産市場が良い結果を示したにも関わらずです。これらは、バンク・オブ・アメリカのリサーチャーの調査結果です。
現在、ビットコインの相場は主に中小の投資家に支えられています。分析会社のグラスノードによると、1BTCのウォレット数は常に更新されており、100万に近づいています。30日の市場への資金流入が9ヶ月ぶりに資金流出を上回り、"緑" のゾーンに戻りました。正味実現可能額のポジションの累計も2022年4月以来の初めてプラスに転じました(この指標は、過去9ヵ月マイナス)。長期ホルダーの貯蓄も4ヶ月ぶりに高水準を更新です。
ところで、グラスノードの分析によれば、クジラの数の減少はプラス要因として捉えることができるそうです。これは、資産がより分散され、一握りの大口ホルダーが少なくなったことを意味するからです。このオプションは、限られた参加者による市場操作の可能性を排除できるためエコシステム全体として望ましいことになります。
一部専門家によると、もう一つのプラス要因は、暗号資産の米国株やマクロ経済指標の相関関係が弱まっていることです。ビットコインは、先週、ほぼ$23,000-24,000 という狭い取引幅での推移で3月3日(金)だけ僅かに下げました。おそらく、これは暗号資産業界の代表的な企業であるカルフォルニア(米国)のシルバーゲートバンクが倒産の危機にあるというニュースによる下落でしょう。
資産運用会社のバーンスタインのアナリストによれば、ビットコインとナスダック複合指数の相関関係は0.94 から0.58に2月の上旬以来弱まっています。バーンスタインによれば、 市場は強気と弱気の間でバランスを保ちながら、"さらなる材料を待っている"状態で、従来の金融業界の出来事の影響については"今までとは違うことです" 。
また、昨年8月-9月にかけて株式市場との相関が弱まり、その後は強まったことが確認されています。現在の株式指数とBTCの“関連弱体化”が一時的な現象である可能性はかなりあります。すべてのリスク資産に対する主な懸念が米国連邦準備制度理事会による政策金利の継続的な引き上げに関連していることは明らかであり、BTC/USDの弱気傾向が再び始まる材料となります
トレーダーとして知られるEightのマイケル・ヴァン・デ・ポッペCEOは、ビットコインが現在、最も割安な資産である見方をしています。同氏は、今年、ビットコインが$40,000 に上昇すると予想した自身の動画レビューを公開しています。なお、暗いマクロ経済データやFRBの金利予想がポッペ氏の楽観的な見方を小さくすることありませんでした。同氏の視点では、週足チャートで強気のダイバージェンス現象が既に底を示しました。現在、200週移動平均線に跳ね返され、保ち合いの状態です。同氏によれば、この段階では横ばいとなる可能性が最も高くなります。最悪の場合、BTC/USD は、$18,000台の安値まで下落、この下落が大きな投資チャンスとなります。
ヴァン・デ・ポッペ氏によると、現時点では景気後退はありませんが、債券市場や不動産市場の崩壊が始まる可能性はあります。しかし、通常はFRBの大幅な利上げの6-12ヵ月後に危機が発生するので、そうなる前にビットコインは$40,000に上昇する可能性があります。新たな強気上昇の始まりのシグナルは中国でのマイニングの解禁、あるいは、香港での暗号資産の普及のどちらかでしょう。
ベストセラーの金持ち父さん貧乏父さんをはじめ多くの投資関連の本の著者であるロバート・キヨサキ氏も世界的金融危機を予測しています。同氏は、以前からFRBの金融政策を批判しており、ドル通貨の引き下げを懸念していました。そして、経済作家である同氏の現在の見解では、この偽のドルが米国の衰退につながると大胆な発言をしています。このキヨサキ氏の姿勢がビットコインの利点を示すものとして、暗号資産コミュニティから賛同の声が上がっています。専門家は、BTCのような暗号資産は適切なアルゴリズムにより供給量があらかじめ制限されているため法定通貨のようにインフレの圧力を受けないことに注目しています。
キヨサキ氏が最近ビットコインの価格が2025年までに$500,000に上昇すると予測していることに振り返ってみましょう。 “大きな崩壊が来ています。恐慌もあるかも知れません。FRBはまやかしのお札を増刷せざるを得ません。2025年までに金は$5,000、銀は $500、ビットコインは $500,000” と同氏は記述しています。そして、金と銀は神々のお金であり、ビットコインは一般人にとってのドルのようなものだと付け加えています。
Bitwiseの最高投資責任者、マット・ホーガン氏は、最近のインタビューで、“今後3年間は非常に楽観的” と語っています。同氏の考えでは、2023-2025年に暗号資産が大幅に普及され、価格が上昇する“ということです。この強気市場サイクルが利用者の普及という点でも、市場資金の増加という点でも、私たちが関心のあらゆる事柄と言う点でも最大のサイクルとなるでしょう” と同氏は述べています。 “しかし、完全な上昇や横ばいということはないでしょう” 。また、 “私は、規制について、実は、楽観視しています” とマット・ホーガン氏は付け加えました。
Appleの共同創業者であるスティーブ・ウォズニアック氏も先週、強気な発言をしています。同氏の意見では、ビットコインは大きな可能性を秘めており、今後数年で価値が上がり、$100,000になるとのことです。
その一方で、このレビュー執筆時 (3月3日、金曜日夕方)、 BTC/USD は$22,250 圏内で取引されています。暗号資産市場の時価総額は、1兆2400億ドル(1週間前は1兆5900億ドル)です。Crypto Fear & Greed インデックスは一週間で53から 50 ポイントに下がり、中立圏内のど真ん中です。
そして、最後に、暗号資産ライフハックによるニュースです。このレビューの冒頭で述べた規制ニュースを好まない人に関するものです。つまり、アラブ首長国連邦の一つであるラス・アル・ハイマ(RAK)政府が暗号資産業界の企業を対象としたフリーゾーンの計画をしていることが明らかになりました。発表によると、RAK Digital Assets(RAK・デジタル・アセット・オアシス) は規制のない業界活動の拠点となり、早ければ2023年第2四半期に申請が始まります。
NordFX Analytical Group
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