2023年3月20日‐24日のFXと暗号資産の予想

EUR/USD: ECBは銀行危機に動じず

  • 先週は、EUR/USDが1.0759から1.0515の急落時に大陰線が出現しました。しかしも、それはECBの金利決定がある3月16日(木)ではなく、その前日でした。ユーロ安は、ほかでもないサウジアラビア国立銀行のトップによる決定でした。

    何が起きたかというと、アメリカのシルバーゲート、シリコンバレー、シグネチャーという3つの銀行破綻による銀行危機がヨーロッパにも及びクレディ・スイスに直撃したのです。こちらのスイス最大の金融コングロマリットは、モザンビークの汚職スキャンダルやブルガリアの麻薬王の資金汚染がメディアで報道され、長い間、深刻な流動性における課題を抱えています。そして3月15日(水)にクレディ・スイスの筆頭株主であるサウジアラビア国立銀行が課題のあるスイスに追加資金支援をしないことを決めました。

    クレディ・スイスの株価は30%以上も下落しました。しかし、これで終わらず、パニックの余波はヨーロッパの大手銀行にも及びました。ソシエテ・ジェネラルの株価は12%、BNPパリバは10%、コメルツ銀行は9%の下落となりました。こうした状況で、投資家はECBが50 ベーシスポイント(bp)の利上げを敢えてしないと判断しました。そのような利上げの可能性は90%から20%に下がり、ユーロ売りへとつながりました。

    よくあることですが、投資家は正しくありませんでした。木曜日になり、欧州中央銀行は先月の約束どおり: 50 bpの利上げをしました。また、金融業界への懸念も小さくなりはじめました。スイス国立銀行はクレディ・スイスの救済を発表、米国の財務省や連邦準備制度理事会は米国の銀行への支援を表明しました。また、民間銀行の11行は、救済のために300億ドルを預け入れました。これにより、嵐は静まり、EUR/USD は安定した1.0650圏内に戻り、市場関係者は水曜日の利上げ幅について話題をするようになりました。,

    米国連邦準備制度理事会の直近のFOMC(連邦公開市場委員会)が3月22日(水)に予定されていることに注目しましょう。ただ、パウエル議長や委員会メンバーのタカ派的な発言にもかかわらず、マクロ経済統計はFRBの金融政策の引き締めより、むしろ緩和を示唆しています。

    3月9日と10日に発表された米国の労働市場のデータは、明らかに米国経済の鈍化を示しています。つまり、失業保険新規申請件数は211,000件で、予想された195,000件や一ヵ月前の190,000件を上回っています。この指標は、初めて200,000件を超え、2022年12月以来最大です。非農業部門雇用者数 (NFP)は、311,000人で、一月の503,000より大幅に下回りました。失業率の3.6%(1月は3.4%)への上昇、小売売上高の伸び率の低下、銀行危機などが合わさって、FOMCメンバーのタカ派熱を冷ますことになるかもしれません。現在、3月22日にフェデラルファンドレートを25ベーシスポイント(現在の4.75%から5.00%へ)に引き上げる可能性は80%です。さらに、デリバティブでは、2023年末までに4%を下回ることが予測されており、これはドルにとって暗いニュースとなります。

    ただ、ヨーロッパ経済も堅調でないため、ECBが積極性に欠ける措置を講じる可能性があります。スワップ市場では、欧州規制当局が 5 月 4 日に3.00% から 3.25% に 25 ベーシス ポイントだけ利上する確率がほぼ 100% であると確実視しています。

    EUR/USD の先週の終値は1.0664でした。このレビュー執筆時の3月17日金曜日夕方、アナリストの40% がドル高予想である一方、同数がドル安予想、残り20%が中立の立場です。D1 のオシレーター系は、75%が緑、10%が赤、15%がグレーです。トレンド系では、90%が買い推奨、10%が売り推奨です。このペアの直近のサポートは、1.0590-1.0620、そして、1.5000-1.0530、1.0440、1.0375-1.0400、1.0300、1.0220-1.0255です。強気筋は1.0680-1.0700、1.0740-1.0760、1.0800、1.0865、1.0930、 1.0985-1.1030でレジスタンスに直面するでしょう。

    来週の大きなイベントには、3月22日のFRB会合、見通しの要約、その後のトップの記者会見があります。また、3月20日(月)は中国人民銀行の利上げ決定があり、DXYドルインデックスの推移に影響すると思われます。取引の週末、3月23日(木)は米労働市場から一部データ、3月24日(金)はドイツとユーロ圏の非製造業購買担当者指数(PMI)と米国の耐久財受注が発表されます。

GBP/USD: 英国財務省がポンドを押し上げる

  • GBP/USD も170ピップスとやや少ないものの大陰線を示しました。しかし、週末までに、ポンドは完全に回復して、3月10日までと比べても高い1.2175で終わりました。これは、英国経済の見通しに対する楽観的な見方が強まったことによるものです。イギリスのジェレミー・ハント財務相は、今年度の予算を発表、主な目的がイギリス経済の安定化であると発言しました。今年のイギリスのGDPは、これまで予想されていた 1.5% から 0.2%の減少にとどまり、テクニカル・リセッションは回避されると予想されています。また、インフレ率は2023年末までにピーク時の10.1%からおよそ3.5倍低い2.9%下がるべきであるとしました。さらに、大臣は人手不足を補うための個人向けの政策や手当を発表しました。

    来週の米連邦準備制度理事会の金利決定から、18時間後にはイングランド銀行(英銀) でも発表があります。英銀のアンドリュー・ベイリー総裁は、3月1日にイングランド銀行が金融政策の見通しに関する最終決定には至っておらず、市場の混乱を避けるために今後数ヶ月は柔軟に対応すべきであると曖昧な表現をしていることに注目すべきでしょう。現在、規制当局の警戒は大西洋の反対側で起きた銀行危機でさらに大きくなるでしょう。以前、市場関係者は現在の4.00%から少なくても25ベーシスポイント (おそらく50ベーシスポイントまで)を確信していましたが、現在は疑わしいと思っています– もし、英銀が状況を見極め、間違いがないように一時停止を決定したらどうでしょうか?

    現在、大半(50%) のアナリストはドル再度で、10%だけがポンド高の支持、残りの40%が様子見です。 D1のオシレーター系のパワーバランスは次のとおり: 85%が緑(4分の1が買われ過ぎ圏内)で 15%が赤です。トレンド系では、明らかで100%が緑です。サポートは、1.2145、1.2075-1.2085、1.2000-1.2025、1.1960、 1.1900-1.1920、1.1800-1.1840、1.1720、 1.1600です。このペアが上昇すれば、レジスタンスは1.2200-1.2210、1.2270、 1.2335、1.2390-1.2400、1.2430-1.2450、1.2510、1.2575-1.2610、 1.2700、1.2750、 1.2940となるでしょう。

    イギリス経済関連のイベントは、イングランド銀行の会合に加え3月24日(金)に小売売上高と非製造業購買担当者指数の発表があります。

USD/JPY: 金利はさらに下がる?

  • 現在の円は、アメリカやヨーロッパの銀行危機の影響が全くないどころか、金融の嵐から避難できる港として魅力が増しています。黒田東彦日本銀行(日銀)総裁の退任時の既にマイナス0.1%である金利をさらに下げる可能性の発言ですら、投資家をがっかりさせていません。この結果、USD/JPY は2月上旬の131.80で取引終了となりました。

    今後の見通しに関しては、今のところ、アナリストの50%が上昇、25%が下落、残りの25% が予想を控えています。D1のオシレーター系は、90%が上向き (3分の1が売られ過ぎを示しています)で、10%が反対の下向きです。 トレンド系の全てが下向きです。直近のサポートは、131.25、続いて、130.50、129.70-130.00、 128.00-128.15、 127.20です。レジスタンスは、132.80-133.20、134.00-134.35、135.00-135.35、 135.90-136.00、137.00、137.50、 137.90-138.00です。

    来週は、日本経済に関する重要なマクロ統計の発表予定はありません。しかし、3月21日(火)が日本では春分の日で祝日であることを知っておく必要があります。もちろん、米連邦準備制度理事会のFOMC会合が3月22日に予定されていることも忘れないようにしましょう。

暗号資産: 銀行にとって悪いことが、ビットコインにとって良いこと

  • 前回のレビューでは、暗号資産市場にネガティブな影響を与える要因をいくつか挙げました。その中には、財務省、SEC、連邦準備制度理事会、司法省、上院、さらにはバイデン政権を含む米国の規制当局による暗号資産への弾圧が含まれています。しかし、アルトコインの問題や今後の税制改正ですら、アメリカの銀行業界の危機の比にはなりません。3月8日に暗号資産銀行のシルバーゲートが事業閉鎖を発表、続いて、暗号資産企業が法定通貨のやり取りとして積極的に利用していたシリコンバレー銀行 (SVB) やシグネチャー銀行が任意清算を発表しました。先週は、上述したヨーロッパの銀行もリストに追加されました。

    シルバゲートは、破綻した仮想通貨取引所のFTXの負債により、SVBとシグネチャーは積極的な利上げやバランスシートの縮小などの連邦準備制度理事会の金融政策により経営困難となりました。"18位の大手銀行[SVB] が破綻しました。私たちは米国債の記録的な売れ行きが銀行業界に何十億ドルの含み損をもたらしたことを学びました。つまり、部分準備制度には債権者で預金者ではないことを示す一つの例です" とイベントでThe Bitcoin Layer はコメントしています。FDIC データによると、米国の銀行の含み損は昨年だけで30億ドルから6520億ドルに増加しました。

    そこで、規制当局は、まず、銀行を底に追い込み、それから救済に乗り出しました。SVBやシグネチャー銀行は連邦預金公社の管理下に置かれました。シグネチャー銀行は、財務省や連邦準備制度理事会と共に、SVBおよびシグネチャー銀行の全額預金保護を表明しました。また、連邦準備制度理事会は、同様の問題に直面する可能性のある銀行に金融機関向けの資金支援策 (BTFP)を創設、このために250億ドルを割り当てることを発表しました。

    こうした状況に、金持ち父さん貧乏父さんのベストセラー作家であり、起業家のロバート・キヨサキ氏が、再度、金、銀、ビットコインに投資することを呼びかけました。同氏の見解では、"病的経済" を救うために、政府は"さらに多くの偽札" を刷るといいます。"自分の身は自分で守りましょう。緊急着陸寸前です" とキヨサキ氏は記述しています。

    市場アナリストTedtalksmacro は、FRBによるこの動きを非公式量的緩和の始まりと呼んでいます。BitMEXの元CEO、アーサー・ヘイズ氏は、より具体的でした: "リスク資産の急騰に備えましょう。増刷が始まります! – 同氏は記述しています- 金融破綻した銀行の預金者の救済は、1年以上の流動性だけの経済に資金を注入することです。これはリスク資産にとって絶好の燃料となります"。

    3月の初めに規制当局に怯えた機関投資家による積極的な資金引出しを目にしたことを振り返ってみましょう。わずか1週間でビットコインの払戻額は2億4400万ドルという記録的な数字でした。そして、現在、すべてが変わりました: BTCの価格は30%以上に跳ね上がり、暗号資産市場の時価総額は、再び、1兆ドルを超えました。市場関係者は、資産保護ツールとしての暗号資産の可能性やビットコインがこのような衝撃に耐えるために存在することを記憶しています。観測者は、2013年キプロス危機との類似性を指摘しています。この危機では分立準備制度の欠点が浮き彫りとなり、中央集権的な銀行に対抗する分散型ヘッジに注目が集まりました。

    一部の専門家によれば、今回の出来事は、ビットコインにとって格好の宣伝となり、価格の急騰が予想されます。しかし、疑問視する声もあります。例えば、CNBCのマッド・マネーの司会者であるジム・クレイマー氏は、ビットコインを"奇妙な生き物"と呼び、暗号資産業界の批判を続けています。同氏の意見では、大規模な金融機関や裕福な投資家が裏で暗号資産を操作しているといいます。"すべてが、自然に起きていると思わないでください"とクレイマー氏は視聴者に警告して、自身がビットコインを信じていないと付け加えました。

    有名なマクロアナリストでトレーダーのヘンリック・ゼバーグ氏の予想をまた、暗いようです。同氏は、米国の失業水準、NAHB住宅指数、株式市場指数、暗号通貨の相関関係を判断して、現在の状況が1929年の危機と酷似していることに注目しています。同氏によれば、すべての市場が、"非常に過熱"していて、これから数年にも及ぶ経済危機に近づいているとのことです。差し迫っている景気後退は2007‐2009年よりもかなり深刻かもしれません。同氏は、暗号資産市場も大きな被害を受けて、多くのデジタル資産が圧力に耐えられないといいます。

    ゼバーグ氏は、エリオット波動理論に基づくマクロ経済の景気後退予想を発表しました。リサーチによれば、波動4は2024年前半に最大レベルに達する見込みです。その後、主な金融市場が崩壊する運命にあります。こちらのスペシャリストは、この市場サイクルの最後の“強気”期間になるかもしれない2023年第3四半期と第4四半期の経済指標にすべての注目が向けられるべきだと強調しました。

    このレビュー執筆時の3月17日金曜日夕方、BTC/USDは $27,50付近での取引です。暗号資産市場の時価総額は、1週間で0.937兆ドルから1.155兆ドルに増加しました。Bitcoin fear and greed インデックスは7日間で34 から 51ポイントの上昇で恐怖圏内から中立圏内に移動しました。

 

NordFX Analytical Group

 

注意: この内容は金融市場への投資推奨やガイドラインではなく情報提供のみを目的としています。金融市場の取引には、リスクが伴うため入金した資金のすべてを失う可能性もあります。

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