EUR/USD: ドルが下落した理由
- 先週は上昇しませんでした。ドル安が続いたEUR/USD は7日前の取引である3月30日までの水準にまで戻りました。今週高値は1.0925、5日間の取引は1.0842で終えました。
投資家のリスク選好によりドル安が続いています: 3月中旬以降の欧米の株価指数は伸び続けています。アジア市場も遅れていません: 中国の製造業購買担当者指数 (PMI)でも支えられました。
米国のマクロ統計については、あまり良い印象がありません。2022年第4四半期の米国GDPは予想や前回値(2.7%)よりも低い2.6%増でした。しかし、対照的に失業保険新規給付申請件数は、予想の196,000件に対して191,000件から198,000件でした。これらの指数は、米国経済の鈍化を示しています。
また、アメリカのシルバーゲート銀行、シリコンバレー銀行、シグネチャー銀行、ヨーロッパのクレディ・スイスに打撃を与えた今回の危機は、FRBのタカ派的傾倒を落ち着かせ、より慎重になっていくことが市場関係者に明らかとなりました。この考えは、リッチモンド連銀、トーマス・バーキン総裁のクレディ・スイスの破綻により、50ベーシスポイント(bp)の追加利上げが選択肢からなくなったという発言で裏付けられます。
欧州のマクロ統計には、かなりバラつきがあることがわかりました。3月30日(木)、ドイツ調和消費者物価指数 (HICP) の3月の伸び率が前年同月比7.8%でした。これは、1ヵ月前(9.3%)を下回ったものの、予測値(7.5%)を上回りました。その結果、この数字に反応した市場は、ECBがインフレ対策として積極的な金融引き締めとユーロの利上げを継続すると判断しました。ドイツ国債利回りは米国債同様に堅調で、EUR/USD は週高値となりました。その一方で、金曜日の統計では、ユーロスタットの発表した3月のユーロ圏の調和消費者物価指数(HICP)が前年同月比で2月の8.5%から6.9%に低下した(予想7.1%)ことで、ドル安がある程度落ち着きました。
金曜日のこの発表やそのほかの統計発表(米国の個人消費支出指数など)に対する市場の反応ですが、2023年第1四半期の最終日と重なったこの日は既に多くの市場関係者が四半期決算をレポートに計上していることからやや軟調でした。
EUR/USDの中長期的見方については、バンク・オブ・アメリカ (BoA) のエコノミストが “市場は再び推進力の先を行き、FRB利下げを既に組み込んでいるため、短期的にこのペアの下落が見込まれる” と語っています。BoA の予想では、“ EUR/USDのレートは 、今年前半に1.05、年末までには1.10 、2024年末には1.15 まで上昇しますが、長期的均衡価格には下回ったままでしょう”。 “最近の銀行騒動の最悪のケースは免れたと思っていますが、ヨーロッパでの懸念が2つあります: 現在のウクライナ侵攻とタカ派的ECBのイタリア市場への圧力の可能性です” とBoA は説明しています。
この記事の執筆時点、3月31日(金)の夕方、55%のアナリストがさらなるドル安、35%がドル高予想で残り10%が中立の立場です。D1のオシレーター系は、 90%が緑、10%が赤です。 トレンド系では80% が買い推奨、20%が売り推奨です。このペアの直近サポートは、1.0800、その後は、1.0740-1.0760、1.0680-1.0710、1.0620、1.0500-1.0530です。強気筋は、1.0865、1.0925、1.0985-1.1030、1.1110、1.1230、1.1280、 1.1355-1.1390でレジスタンスに直面するでしょう。
来週のイベントでは、4月3日(月)に発表されるドイツと米国の製造業購買担当者指数 (PMI) が注目されます。この後、米国労働市場から次々と情報が明らかになります。4月4日(火)のJOLTS労働求人移動調査、水曜日はADPから非農業部門の就業者推移、木曜日は失業保険新規申請者件数です。4月7日(金)は、失業率と米国の非農業部門新規雇用者数(NFP)のデータ発表があります。4月7日は、ヨーロッパ、アメリカなどの国々では、グットフライデー(聖金曜日)により休日となるため、これらのデータの反応が翌週の4月10日(金)となることを覚えておきましょう。
GBP/USD:このペアの上昇は続くのか?
- ドルはユーロだけでなく、イギリスポンドでも安くなっています。GBP/USD は、3月8日から、わずか3週間で600 ポイント以上も上昇しています。1.2425-1.2450 圏内の大きなレジスタンスだけが上昇を止める可能性となります。しかし、ポンドは、これからも上昇していくのでしょうか?
3月23日、イングランド銀行(英銀)は政策金利を25bp引き上げの4.25%としました(ちなみに、米連邦準備制度の現行金利は5.00%)。なお、この国のインフレは改善されていません。この一年イギリスだけが、唯一先進国の中でほとんどインフレ率が下がっておらず、ここ数年で2桁という高さです。3月の主要消費物価指数 (CPI)は 10.4%、ベーシックCPIは 6.2%でした。そのため、多くのアナリストは、英銀の次回の会合での主な措置の一つが利上げであると予想しています。しかも、イギリス経済を脅かすことになりかねないにもかかわらず、当局は長期にわたり高い金利を維持せざるを得ません(GDP成長率は現在、ゼロに近い水準です。つまり、3月31日に発表されたデータは2022年第4四半期が0.1%増だけを示すものでした)。
経済におけるプレッシャーが多くのアナリストにポンドの限界について話題にさせています。しかし、これにもかかわらず、多くのストラテジストは景気後退を避け、利上げがポンドを押し上げると予測しています。ANZ 銀行のエコノミストは年末には1.26までこのペアが上昇すると見通しています。同業のフランスのソシエテ・ジェネラルの予想は、より大胆です: 同行の見方は、GBP/USD がEUR/GBPに続いて、徐々に1.30まで上昇するというものです。
先週のこのペアは、1.2330で取引を終えました。現在、アナリストの45%はドル側、同数 (45%)がポンド側の支持、残りの 10%が様子見です。D1のオシレータ系のパワーバランスは次のとおり: 85%が緑、15%がグレーです。トレンド系では、緑が100%です。サポートは、 1.2270、1.2200、1.2145、1.2075-1.2085、1.2000-1.2025、1.1960、1.1900-1.1920、 1.1800-1.1840です。このペアが上昇すれば、1.2390-1.2425、1.2450、1.2510、1.2575-1.2610、1.2700、1.2750、 1.2940がレジスタンスとなります。
イギリス経済の統計は4月3日(月)にイギリスの製造業部門購買担当者指数(PMI)があります。 非製造業PMI や複合指数も水曜日に公表されます。金曜日はイギリスの休日であることを覚えておきましょう。
USD/JPY:日銀は夏に方針変更?
- “同じような”DXYと違い、日本通貨はドルに対して全く反対の推移です。先週のユーロとポンドは上昇しましたが円は下落でした。私たちの考えでは、理由が二つあります。一つは、3月31日が四半期末だけでなく、会計年度末であることから円が押されたことです。二つ目は、既に何度も述べていますが、日本銀行(日銀)の超緩和政策です。
4月9日に就任する植田和男新総裁は、前任の黒田東彦総裁のハト派方針を継続することを繰り返し述べています。もちろん、このような発言が自国通貨の魅力に貢献することはありません。
2022年11月から、金融不安の懸念から安全通貨としての円買いが増しています。しかし、ソシエテ・ジェネラルのストラテジストが記述しているとおり、"安全な港" にも変化が必要です。USD/JPYは、大きな下落調整のために日銀からより多くの措置が必要となります。中央銀行が何もしなければ、USD/JPYはさらに上昇することが見込まれます。ソシエテ・ジェネラルのアナリストは、6月に日銀の金融政策が変更となり、このペアが125.00 水準に上昇することを予想しています。米連邦準備制度理事会の政策が急に緩和されることで円を助ける可能性もあります。
ANZ銀行のエコノミストのコメントも同じような見方です。“短期的には、 [日銀] 政策の変更は見込めません”と同行では記述しています。 “変更があるとすれば、今年の第2四半期後に予想され、日本円は有利な利回りの差により上昇していくでしょう。USD/JPY は、年末までに徐々に124.00 まで下落すると予測しています”。
しかし、ここでは、3月29日(水)の日本銀行の内田眞一副総裁の発言を考慮する必要があります。副総裁によれば、国債利回り管理のための金融政策調整は、経済状況と価格の安定が改善されたときにのみ可能で金融刺激策の段階的縮小において妥当となります。
そのため、USD/JPY が124.00-125.00 に下落することについては、懐疑的なままです。先週は132.80で終了しました。当面の見通しに関しては、アナリストの40%が、このペアの上昇支持、30%が下落支持、 30%が予想を控えています。 D1のオシレータ系では、15%が下向き、40%が反対の上向き、35%が中立です。 トレンド系では、40% が上向き、60% が下向きです。直近のサポートは、131.25、続いて、130.50、129.70-130.00、128.00-128.15、127.20です。レジスタンスは、133.00、133.60、134.00-134.35、135.00-135.35、135.90-136.00、137.00、137.50 、137.90-138.00 です。
今週は、日本経済に関する重要なマクロデータの発表はありません。2023年第1四半期の短観指数の発表が4月3日(月)にあることだけが注目されるだけです。
暗号資産: Binanceの今後?
- シルバーゲート、シリコンバレー銀行(SVB)、シグネチャーの破綻、クレディ・スイスを襲った危機が分散型金融の目的を思い出させ、暗号資産市場を助けました。しかし、米国や欧州での銀行危機の余波に対する投資家の恐怖は段々と薄らいでいます。これはBTC/USD チャートを見れば明らかです。3月10日から17日の急騰で、デジタル資産は約45% の上昇、直近2週間では重要な$29,000 のレジスタンスを突破することに失敗しています。ビットコインは上昇だけでなく、この水準での足固めが必要です。そして、多くのアナリストによれば、ここから始まって次の目標の$35,000になることがあります。その間、BTCは$26,500でサポートされるでしょう。
このサポートは、CFTC (米国商品先物取引委員会) が 3 月 27 日(月)に未登録の先物・オプション取引、規制を回避した米国顧客へのサービス、違法行為(多くの国でテロ組織と認定されているハマスへの支援を含む)、市場操作でバイナンスを提訴した時でさえありました。
最後の告発関連についてアナリストのコーリー・スワン氏は仮想通貨取引所Binanceの創設者チャンペン・ジャオ(CZ)がビットコインを$12,000に大暴落させようとしたこれまでの弱気筋であったことを理論づけました“。CZは BTCの大口の短期ポジションで$12,000を期待して、無担保のBUSDや無担保のアルトコインで同氏個人の大口取引のために支払いに充てた”と同氏は記述しています。
現時点では、Binanceの今後についての意見は分かれています。暗号資産業界全体を崩壊させるため、このような巨大な埋葬を望む人は誰もいないと考える人も一部います。また、CFTCが同取引所に対して最も厳しい処分を求めると確信している人もいます。裁判の前に和解が成立しても数十億円の罰金や米国での営業禁止に直面するでしょう。これにもかかわらず、裁判となり、Binanceとその経営陣が有罪になれば、世界中の多くの顧客や金融取引相手がBinanceから背を向けることになります。
業界のインフルエンサーを対象としたCNBCの調査によると、現段階ではビットコインの今後の強気姿勢は崩れていません。つまり、Tether CTOのパオロ・アルドイーノ氏は、ビットコインが史上最高値の$69,000に“再挑戦”すると考えています。 そして、Gemini 仮想通貨取引所の戦略ディレクターのマーシャル・ビアード氏は、今年にコインが$100,000 になるかもしれないと予想しています。同氏の見解では、ビットコインが前回の最高値を突破したら、 “さらなる上昇に時間はかからない” ということです。しかし、新たな強気ラリーには経済とニュースの両方で新たなきっかけが必要です。しかし、前者も後者も今のところ見られません。
ブルームバーグのストラテジスト、マイク・マクグローン氏は金やビットコインは2023年の投資家にとって最も人気のある商品になると考えています。貴金属が最も安全な資産というステータスが確立されます。金の1トロイオンスは$2,000を超えるでしょう。また、従来の銀行システムから独立した商品としてビットコインの人気は高まります。マクグローン氏の用意したメモには世界経済が悪化するにつれ、BTCや金だけでなく、国債で資金を維持することを好む投資家が増えていくとあります。
銀行業界の破綻は1929年の恐慌を彷彿させるため、FRBは金融政策を引き締めています。直近の利上げ後はビットコインの投資が増加しますが、多くの観測者は下落すると予測していたとブルームバーグのストラテジストは強調しています。
同氏の考えでは、BTC の反発は世界的不安定の中で暗号資産の購入を続けるトレーダーが増えていることからポジティブなシグナルとして捉えることができます。
Place Holder partner やArk Investの元代表であるクリス・バーニスケ氏はマイク・マクグローン氏と同じで、このような危機的状態のために作られたビットコインやイーサリアムを今こそ購入する時だと考えています。
ベンチャーキャピタリストで億万長者のティム・ドレイパー氏は似たようなアドバイスをしています。ドレイパー氏は起業家向けのレポートに一つの銀行や一つの規制当局に"もはや頼ることができない" と記述しています。 “久々に、政府が債務超過に陥るリスクのある銀行を引き受けています。ビットコインは金融ドミノ倒しや不適切な運営に対する管理のヘッジになります”。
ドレイパー氏は6ヵ月以内に短期預金を国内銀行と海外銀行に分けることを提案しています。同氏の意見では、組織はビットコインなどのデジタル資産に給与資金相当額を2本立てにするために移し替えるべきといいます。億万長者は、経営は"危機的な状態時ですら"給与の支払い責任があるので、こうした不測の事態に備えたクッションの重要性を主張しています。
もちろん、いつもどおり、"暗号資産の墓穴を掘る人々"という声も聞こえてきます。例えば、Grinding Poetというニックネームのアナリストは、“2018年の安値到来は避けられず” 、 “新たな目標は$3,150” と考えています。有名な金の虫でビットコイン批判のピーター・シフ氏は、自分の立場を貫き続けています。遡るところ、2017年、シフ氏はビットコインの価値が完全になくなると断言しました。6年経っても、同氏の考えは変わらずにいます。現在、2023年3月、同氏は、 “ビットコインのゼロへの下落が少し長引いただけ”と述べています。
ジョンズ・ホプキンス大学の応用経済学教授であるスティーブ・ハンケ氏は、ビットコインの根本的価値はゼロと再び批判しています。教授は、ビットコインが経済的価値や有用性がない投機性の非常に高い資産であると述べてています。
Cake Defiのジュリアン・ホスプ CEOは、ビットコインに議論の余地はあるが確かに価値はあると述べています。ホスプ 氏によると、ビットコインを必要としている人が確かに存在するのだから、ビットコインに根本的な価値がないとするのは誤りだと主張しています。
レビュー執筆時である3月31日(金)夕方、BTCは確かに価値を持ち、1コインあたり$28,375という具体的な数字があるので私たちはホスプ氏の意見に賛同傾向です。先週の暗号資産の時価総額は、1.169兆ドルから1.185兆ドルでやや増加しました。Crypto Fear & Greed インデックスも7日間で61から 63ポイントの上昇で強欲圏内のままです。
NordFX Analytical Group
注意: この内容は金融市場への投資推奨やガイドラインではなく情報提供のみを目的としています。金融市場の取引には、リスクが伴うため入金した資金のすべてを失う可能性もあります。
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