EUR/USD: ドルは続落
- DXYドルインデックスは先週12ヶ月ぶりの安値を更新、これに反応して、EUR/USDは、2022年4月以来の高値更新(1.1075)でした。ドルは5週連続の下落: 2020年以来の連続期間です。
4月12日(水)の消費者物価指数(CPI)データと3月の米国連邦準備制度理事会FOMC(連邦公開市場委員会)の議事録の発表はドルに大きな影響を与えました。統計では、物価は抑えられ、米国のインフレ率は 9ヵ月連続で鈍化の一途をたどっており、前年比9.1%から現在の前年比 5.0%までになっています。その翌日に発表された米国の生産者物価指数(PPI)もインフレ率の低下を示しましたが、基本的な水準では物価上昇圧力は変わらずのままのようです。
FRB議定書に関しては、3月22日の会合で FOMCのメンバーが銀行セクターの問題から利上げを一時停止することについて議論しました。今年後半に米国経済が景気後退に見込まれるという情報についても議論されました。しかし、5月3日の次回の会合で再利上げの可能性が高いようです。 CME FedWatchの予測によれば、 25ベーシスポイント(bp) の追加で年利5.25%が見込まれています。
この利上げは既に市場相場に組み込まれているようでドルの支援材料になりそうもありません。また、5.25% が金利のピークとされる可能性が高く、年末まではそこから下落に転じることになるでしょう。先物市場では、フェデラルファンド金利が2023年12月には4.30-4.40%、2024年1月はさらに下がり4.12-4.20% と予想されています。
インフレ率の低下とFRBの金融引き締め策の終了がドルに圧力をかけ、DXYを押し下げています。 また、予想ではFRBと異なり、欧州中央銀行は今のところ引き締め策を継続するようです。このことは、ECB理事会のメンバーのドイツ連邦銀行のヨアヒム・ナーゲル総裁によって確認されました。4月13日(木)に総裁は、ヨーロッパのコア・インフレ率が非常に高いため利上げを継続する必要があると述べています。
週の取引最終日である4月14日(金)に米国の小売売上高の発表があり、若干ドルを支えました。売上高は減少でしたが、予想ほどではありませんでした。予想は-0.4%、前回は-0.2%でしたが、実際は-0.1%の減少でした。市場関係者がこの推移がドルに有利とみなしたため、先週のEUR/USD は1.0993で終了しました。このレビュー執筆時の4月14日(金)の夕方、アナリストの意見は同じくらいに分かれています: アナリストの45%はドルの続落、 45%がドル高を予想、残りの 10%が中立の立場です。 テクニカル分析では、D1のオシレーター系とトレンド系とも100%が緑です。このペアの直近サポートは、 1.0975、そして、1.0925、1.0865-1.0885、1.0740-1.0760、 1.0675-1.0710、1.0620、 1.0490-1.0530です。強気筋は、1.1050-1.1070、そして、1.1110、1.1230、1.1280、1.1355-1.1390がレジスタンスになります。
来週は、欧州からの多くの統計発表があります。例えば、欧州経済の主導力であるドイツの ZEW景況感指数が4月18日(火)に発表予定です。水曜日は、ユーロ圏全体のインフレ率 (CPI)の状況が明らかにされます。木曜日は、金融政策に関するECBの直近の会合の議事録の公表、4月21日(金)はドイツの製造部門や国内全体の購買担当者景気指数 (PMI)の発表があります。来週は米国からの重要なマクロ統計の予定はありません。
GBP/USD: 予想よりはるかに良い状況
- ドル安を背景にGBP/USD は高いままで、4月14日(金)の午前中には1.2545の高値更新でした。ポンドがこのような高値で取引されるのは2022年の6月初め以来です。しかし、その後、米国の小売売上高が発表されるとドルは持ち直し、このペアは1.2414で5日間の取引を終えました。
イギリス経済自体に関しては、4月13日(木)に発表された2月のGDPが予想の0.1%と前回の0.3%に対して0.0% の経済の停滞を示しました。また、2月の製造業生産高の伸び率は、予想の0.2%と5月の-0.1%に対して0.0%である一方、鉱工業生産高は予想の0.2%と先月はじめの-0.5%に対してマイナスのままの-0.2% でした。年換算では製造業生産高は予想の-4.7%を上回った-2.4%でした。鉱工業生産高は予想の-3.7%と前回の-3.2%を下回って-3.1%に減少でした。 イギリスの貿易収支も先週は明らかとなり、2月は予想の170億ポンド、前回の160億9300万ポンドを上回った175億3400万ポンドでした。
これらの数字は何を意味するのでしょうか? 4月3日に発表されたサービス部門購買担当者景気指数(PMI)は50ポイント以上で、すべての統計が投資家にイギリス経済が景気後退を避けられるという期待を与えています。これが、つまり、通貨の支えとなります。これは4月13日のジェレミー・ハント英財務相の経済の見通しが予想以上に明るいという発言で裏付けられています。“措置で景気後退は避けられる”と断言しています。
イングランド(英銀)のチーフエコノミスト、ヒュー・ピル氏のコメントも、かなり楽観的 でした。同氏によれば、"インフレ率の経過は予想どおりとはいかないかもしれない"が、中央銀行は今年第2四半期のCPIが低下すると予測しています。"直近の数字はやや残念" 、"しかし、昨年末のイングランド銀行の予想よりはるかに良い" とピル氏は述べています。また、イングランド銀行の金融システムが健全で回復力があり、インフレの推移がイングランド銀行の金融政策決定の重要な要因であるとも述べています。
現時点では、75%のアナリストがポンドの支持で、このペアの上昇を期待、残りの25%がドル側です。D1のオシレーター系パワーバランスは次のとおり: 65% が緑(10%が買われ過ぎシグナル)、10% が赤、25%がグレーです。 トレンド系では、緑が多く、65%、反対が35%です。このペアのサポートは、1.2390-1.2400、1.2330、1.2275、1.2200、1.2145、 1.2075-1.2085、1.2000-1.2025、1.1960、1.1900-1.1920、1.1800-1.1840です。上昇すれば、1.2440-1.2455、1.2480、1.2510-1.2540、1.2575-1.2610、 1.2700、1.2820 、1.2940でレジスタンスに直面するでしょう。
来週のイベントについては、4月18日(火)に最新のイギリスの失業率データの発表がカレンダーにあります。水曜日に消費者物価指数(CPI) 、金曜日にイギリスの購買担当者景気指数(PMI) が発表されます。
USD/JPY: 日本銀行は安定感のあるアイランド
- 昨年の12月以来、USD/JPY は129.00-138.00の広い取引幅です (例外として、1月中旬に127.15までの一時的な円高がありました)。先週のこのペアの終値は、ほぼ中央値の133.75でしたが、これはどちらかに進む十分なパワーがないことを示しています。
黒田東彦日本銀行総裁の退任後も日本銀行(日銀)は、 “黒田総裁の適切かつ得策を続ける”と私たちは繰り返しお伝えしました。このことは、9日に就任した植田和男新総裁によって改めて確認されました。新総裁はG20 会合で現在の超緩和金融政策を支持していくと述べています。また、新総裁は、現在およそ3%だけの日本のコア・インフレ率は今年度の後半には 2%を下回る見込みであるとも述べています。これらの発言で市場関係者は日本銀行が利上げで抵抗することを意図していないため、日銀の金利が反転することは期待できないと結論付けました(ソシエテ・ジェネラルとANZ銀行のエコノミストは、6月頃にどこかで変更があるかもしれないと予想していたことを振り返ってみてください)。
USD/JPYの直近の見通しについては、アナリストの意見は次のように分かれています。現在のところ、アナリストの40%はこのペアの上昇を支持、50% が逆で10%が中立です。D1のオシレーター系は、75% が上向き(三分の一が買われ過ぎ圏内)、10%が反対向き、 15% が中立です。トレンド系では、85% が上向き、残り15% が下向きです。直近のサポートレベルは、132.80-133.00、それから、132.00-132.40、131.25、130.50-130.60、129.65、128.00-128.15 、127.20です。レジスタンスは134.00、134.90-135.10、135.90-136.00、137.00、137.50 、137.90-138.00です。
今週は日本経済の状況に関する重要な統計発表の予定はありません。
暗号資産: ドル安はビットコイン高
- 4月11日(火)にビットコインは2022年以来初めて$30,000 を超えました。これは、銀行セクターの不安定さと主にFRBのような大国の利上げが中断される予想によるものです。MSCI Worldインデックスは 4月14日(金)まで2月上旬以来の高値です。これは、国際的な投資家が今後アメリカなどの主要国の中央銀行による量的引き締め策(QT)を期待している状態を裏付けています。このような状況からビットコインは金や原油などの主な資源を上回るパフォーマンスを続けています。また、BTC は推移からも多くの主な暗号資産よりも上回っています。
週半ばに、弱気筋が$29,000のサポートに戻すチャンスがありました。しかし、FRBに、また助けられました:3月のFOMC議事録の公表と米国のマクロ統計がドル安をもたらし、ビットコインに有利な展開となりました。
BTCの価格上昇が暗号資産市場全体を引き上げました。暗号資産市場時価総額は2023年の初めに入ってから55% 以上も上昇して1.2兆ドルを超えています。しかし、これでも、2021年11月の 史上最高の2.9兆ドルを大きく下回る水準にとどまっています。
4月11日の出来事について、複数の専門家が同時に意見を述べました。有名なストラテジストで投資会社Eight の創立者であるマイケル・ヴァン・デ・ポッペ氏は、ビットコインが見事に$28,600 を通過して $30,000のレジスタンスを突破したと述べました。ニックネームPlanBで有名なアナリストは、2022年10月の設定目標に、今、到達したとツィートしました。当時、こちらのアナリストは、BTC の相場が$21,000、$24,000、そして、$30,000を突破すると予想していました。もう一人、人気のブローカーでアナリストのラーク・デイビス氏は、ビットコインを$30,000以下で購入することが、今、BTCを$3,000で購入するくらい素晴らしいことだと思える日がすぐに来ると主張しています。
この執筆時の4月14日(金)の夕方、BTC/USD は$30,440で取引されています。暗号資産市場の時価総額は1.276兆ドル(1週間前は1.177兆ドル)です。Crypto Fear & Greedインデックスは7日間で64から68ポイントの上昇で強欲圏内のままです。しかし、次はどうなるのでしょう?
PlanB は、ビットコインが非常に大きな弱気圏内から抜けて新たな強気市場の始まりにあると指摘しました。PlanBによれば、自身が開発したthe Stock to Flow (S2F) モデルが関連しています。同氏は、ビットコインのファンダメンタルズは最終的には2021年11月の史上最高(ATH)の$69,000 を超える上昇になると主張しています。PlanBは以前、2024年の半減期後にビットコインが$100,000から$1,000,000に上昇すると予測しました(BTCの価格を予想するS2F (stock-to-flow ratio) モデルが供給可能量と生産量の関連を測るもので暗号資産コミュニティのメンバーから繰り返し批判されていたことを思い出してください)。
ボストンを拠点とするEquity Management Associatesのマネージングパートナーであるラリー・レパード氏も、長期的な見通しについては非常に楽観的です。同氏によると、今後10年はドル安で、人々は暗号資産、金、不動産投資を始めます。 ビットコインの供給量は限度があるため、デジタル資産は投資対象として注目され、法定通貨の下落により支持されます。 “私はビットコインの価格が大幅に上昇すると信じています。一コインあたり、まずは、$100,000、そして、 $1,000,000、最終的には、$10,000,000に上昇すると思います。たった1枚のビットコインの所有者が大金持ちになることに私の孫は驚くに違いありません” とレパード氏はインタビューで語りました。
この予想に関連して、同氏は政府が暗号資産業界に介入してデジタル資産の人気を抑えようとしていると述べています。例えば、ビットコイン売買収益の課税強化、この業界の新規参入の規制強化です。しかし、レパード氏は、ビットコインがこれらの困難を乗り越え、長期的には成し遂げると確信しています。
多くのアナリストは長期的なマクロ背景によりBTCの上昇に同意見です。しかし、予想は現在の上昇との関連性についてかなり控えめです。これは、ビットコインの流動性が昨年の同時期よりも大幅に低下したためです。ビットコインの価格のバラつきが大きいことからもこれは明らかです (前回のレビューで取引量が増加している一方で流動性が低くなっていることをお伝えしました)。
もちろん、今年の見通しはFRBを筆頭とする主要な中央銀行の動きによって左右されますが。2021年11月の暗号資産市場の史上最高の時価総額も価値の低い紙幣を経済に溢れさせた政府の措置によるものだったことを思い出してください(M2 は歴史的にも稀な39%の上昇)。さらに、当時の金利がほぼゼロであったことから、株式やデジタル通貨のリスク資産市場はバブルとなりました。その後、40年ぶりの最速利上げと共にFRBは量的緩和(QE)から量的引締め (QT)に代わり 、そして、... バブルは崩壊しました。
ビットコインの見通しに関して言えば、バブルで最終的には崩壊するとした見方をする人々に触れないわけにはいきません。Wermuth Asset Management のエコノミスト兼パートナーであるディーター・ヴェルムス氏は先週、ビットコインがなければ経済はより良く、よりシンプルになるだろうと述べました。同氏の見解では、こうしたリスクの高い投資は社会的コストを伴い、暗号通貨そのものが世界の繁栄に貢献することはありません。ビットコインが通貨となると、ボラタリティが大きく、実際には利用されていないことからBTCは失敗で終わります。このことから、ビットコインを完全に見限ることが理にかなっています: 暗号資産投資は無駄であり、全体的な経済成長から資金を奪うため繁栄にはいいことでしょう。さらに、ビットコインは社会の不平等を生み、マネーロンダリングや脱税を可能にさせ、マイニングにはエネルギーを非常に消費します。ディーター・ヴェルムス氏は、“気候変動の最大要因”とも言っています。
暗号資産反対派は… 想定外にも人工知能から支持されました。ChatGPTが景気後退に強いポートフォリオ形成について答えました。Gold IRA Guideが発表した資料によると、金などの貴金属に20%を割り当てることを推奨していました。残りの仮定に基づいたポートフォリオでは、債券(40%)、"安定" 株式 (30%) 、現金(10%)でした。このチャットボットが暗号通貨に触れなかったことにビットコイン批判で有名な金の支持者である ピーター・シフ氏は大喜びでした。 “要するに、人工知能は、結構賢いということです。ビットコインを推奨していません” と同氏は記述しています。
ちなみに、現在最も有望な暗号資産は何かという問いにChatGPT はビットコインではなくイーサリアムと応えました。もちろん、人工知能は最近の出来事は知りませんでしたが、的中したようです。前回のレビューでは、バリデーターが過去3年間にネットワークに投資してロックした凍結ETHコインを利息と引き換えに引き出すことができるようになるシャペラ(上海)ハードフォークについて伝えました。投資家やトレーダーは、アンロックが大きな売り圧力となり暴落するのではないかと懸念していました。しかし、逆の流れのままです: 4月13日、ETH/USD は$2,000を超えて、4月14日(金)は$2,100 圏内で取引されています。
NordFX Analytical Group
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