EUR/USD: FRBとECBの会合を目前にして
- 米ドルインデックス(DXY)と、つまり、EUR/USD の推移の主な材料は、… 静けさでした。連邦準備制度理事会のトップの発言が最近の最も重要なマーケットガイドでしたが、4月21日からは静かです。 5月のFOMC会合終了後のジェローム・パウエルFRB議長の記者会見に向けて、関係者は沈黙を守るように指示されています。今後の金融政策に関する決定をするFOMC(連邦公開市場委員会)は5月2-3日に予定されており、あと数日です。また、5月4日(木)には金利決定をする欧州中央銀行の会合もあります。全体的に、この5日間は少なくても動きがないとは言えないでしょう。
もちろん、大西洋の反対側のマクロ経済データやイベントが先週のEUR/USD にある程度の変動をもたらしました。しかし、最終的な結果ではゼロに近いものでした: 4月21日(金)の1週間の終値は1.0988 、4月28日(金)はそれほど離れず、1.1015の水準でした。
注目のイベントの一つは時価総額が米国銀行トップ30にランクインしているファースト・リパブリック・バンク (FRC) のレポートでした。このレポートがきっかけで4月26日(水)はドル安、ペアは 100ポイント下がりました。
米連邦準備制度理事会の金融引き締め(QT)による銀行危機は消えつつあるように思われていましたが... ジャネット・イエレン米財務長官が銀行セクターの回復力を国民に保証したほどでした。ところが... ファースト・リパブリック・バンク (FRC) という新たな火種が発生しました。破綻を防ぎ、2023年第1四半期の流動性をサポートするため、複数の大手銀行がFRCに300億ドルの無保険預金をしました。JPモルガンはさらに700億ドルの支援をしました。しかし、これだけでは不十分でした: 銀行の顧客は離れ始め、FRCの株価は2日で45%の下落、今年に入ってからは95%の下落でした。3月だけでも顧客からの引出は1000億ドルでした。つまり、ファースト・リパブリック・バンク (FRC)は、大手米国銀行の倒産では4番目になる可能性が高くなります。そして、FRBがQTサイクルを止めなければ、5番目、6番目、7番目が登場する可能性が大きくなります。
しかし、前回のレビューで述べましたが、5月2‐3日の会合で政策金利は25ベーシスポイントのみの利上げ見込みです(この確率はCMEのFedWatchで72%)。その後は、米国中央銀行が据え置きにする可能性が濃厚となります。アトランタ連銀のラファエル・ボスティック総裁が述べたように、“一歩下がって、政策が経済に与える影響を見極めるにはあと一回の利上げで十分でしょう”。 25bpの利上げは、長い間、市場相場に織り込まれていたことに気に留めておくべきです。つまり、FRCのニュースや1.1095の急騰の直後、 EUR/USD 自体は適切な状態に戻ったわけです。
このレビュー執筆時、4月28日(金)の夕方、アナリストの見解は次のように分かれています: アナリストの35%はドル安でこのペアの上昇、 50%が下落、残り15%は中立の立場です。テクニカル分析では、D1のオシレーター系の85%は緑、15%がグレー、トレンド系では、90%が緑 、10%が赤です。このペアの直近のサポートは、 1.0985-1.1000、そして、1.0925-1.0955、 1.0865-1.0885、1.0740-1.0760、1.0675-1.0710、1.0620、 1.0490-1.0530です。強気筋では、1.1050-1.1070、その後、1.1110、 1.1230、1.1280、 1.1355-1.1390でレジスタントとなります。
来週は、上述のFOMCやECBの会合をはじめ、多くの経済データの発表が予定されています。5月1日(月)は、ISM製造景気指数があります。翌日は、同様にドイツのPMIが発表されます。5月2日(火)は、消費者物価指数(CPI)が発表されるため、ユーロ圏のインフレ状況が明らかになります。ほかにも、5月2、3、4日は、米国の労働市場データが相次いで公表されます。失業率や米国の非農業部門新規雇用者数(NFP)などの重要な指標は、いつもどおり、第一金曜日の5月5日になります。
GBP/USD: イングランド銀行 vs. FRB: 金利バトルの勝利はどちら?
- イングランド銀行(BOE)会合は、FRB会合の1週間後である5月11日(木)に予定されています。多くのアナリストは、ポンドの利上げサイクルが終わっておらず、イギリス通貨をサポートしていると考えています。
3月のインフレ率の最新データが予想の一因です。年間消費者物価指数(CPI)が予想の9.8%を上回り、再び、2桁の10.1%となりました。この指標が心理的に重要な10.0%を下回るには、イングランド銀行がFRBの例に引き続き従う可能性が濃厚です。市場関係者は、政府が5月11日に金利を50ベーシスポイント引き上げ、4.25%から 4.75%にすると見込んでいます。今のところ、インフレ抑制の手段はほかに考えられていません。このまま高止まりが続けば、消費者市場とイギリス経済全体の両方に悪影響を及ぼすことになります。
4月に入ってから、横ばい傾向が見られます。しかし、GBP/USD は想定外に上値抵抗線を突破して1.2566 で5日間の取引を終えました。おそらく、急騰の理由は月末に取引ポジションを決済したことです。現在75% のアナリストはドルを支持、25%のみがポンド側です。D1のオシレーター系についてのパワーバランスは次のとおりです: 85%が緑(このうち3分の1が買われ過ぎ圏内)、残り15% がグレーです。トレンド系では、緑が100%です。このペアのサポートは、1.2450-1.2480、1.2390-1.2400、1.2330、1.2275、1.2200、1.2145、1.2075-1.2085、1.2000-1.2025、1.1960、1.1900-1.1920、 1.1800-1.1840です。上昇すれば、1.2510-1.2540、1.2575-1.2610、1.2700、1.2820、 1.2940がレジスタンスとなります。
来週のイギリス経済の状況を示す重要な統計に関しては、5月2日(火)に製造業購買担当者景気指数(PMI)があります。そして、5月4日はサービス部門PMIとイギリス全体の複合指数が明らかになります。トレーダーは、5月1日(月)がイギリス国内の銀行の休業日であることも忘れないようにしましょう。
USD/JPY: 日本銀行- さらなる金融緩和政策に向かう
- 日本銀行(日銀)の金利予想はかなりシンプルで、あまり面白くありません。念のために言うなら、現在はマイナス水準の-0.1%で、最後に変更があったのは、かなり前の2016年1月29日で20ベーシスポイントの引き下げでした。今回の4月28日の会合で政府は-0.1%の据え置きとしました。
しかも、これだけではありません。多くの市場関係者は日本銀行の植田和男新総裁就任で最終的には引き締め方向への変更を期待していました。しかし、こうした期待とは反対に、4月28日の新総裁の初会合の後の記者会見で、植田総裁は、"必要であれば躊躇なく金融緩和を継続する" と述べています。どの程度緩和するのか疑問になりますが、現在の-0.1% が限界ではないということがわかります。
日銀総裁の発言の反応はチャートに示されています: わずか数時間後に、USD/JPY は、133.30 から136.55へ急騰、325 ポイントの円安となりました。もちろん、2022年10月のピークには、未だに程遠いですが、137.5水準までの上昇は、もはや全く非現実的とは思えません。
このペアの5日間の終値は136.30 でした。直近の見通しに関しては、アナリストの意見は次のように分かれています: 現在、アナリストの25%だけがこのペアの上昇を予想、 65%が反対に円高で下落予想、10%が予想を控えています。D1のオシレーター系では、85%上向き(3分の1が買われ過ぎ)である一方、残り15%は中立です。トレンド系では、 90%が上向き、10%が下向きです。直近のサポートレベルは136.00 付近です。次に、135.60、134.75-135.15、132.80-133.00、132.00-132.40、131.25、130.50-130.60、129.65、128.00-128.15、 127.20が控えています。レジスタンスは、137.50、 137.90-138.00、139.05、 140.60です。
来週は、日本経済関連の状況に関するイベントは予定されていません。なお、日本では連休がはじまります: 5月3日は憲法記念日、5月4日はみどりの日、5月5日はこどもの日です。このため、USD/JPY の推移は、太平洋の反対側の米国での出来事に左右されるでしょう。
暗号資産: 2024年の半減期を控えて
- 4月24日(月)のBTC/USD は続落、$27,000のサポートを突破して$26,933に下落しました。市場関係者は既にビットコインが$26,500水準の強力なサポートを下回ることをすでに覚悟していました。しかし、予想に反して、4月26日は$30,020に急騰しました。ビットコインは、今まで、幾度となくドル安に助けられ、そして、これからも、また、そうなるでしょう。衝撃の原因は、暗号資産に強い銀行の連鎖倒産による先に述べたファースト・リパブリック・バンクの問題です。
暗号資産と銀行業界の関係は次のような連鎖で起こります: 1) 連邦準備制度理事会の金融政策の引締めが銀行に打撃を与え、銀行の資産価値を下げ、サービスの需要を減らし、顧客離れを引き起こす。2) このような状況が一部の銀行に深刻な困難をもたらし、破綻につながる。3) これがFRBに利上げサイクルを停止させるか、引き下げさせることになる。また、政府が銀行の流動性を支えるために紙幣の増刷を再開するかも知れない。4)低金利や新たな価値の低い通貨がドルの価値を下げることになり、このことが投資家に株式や暗号資産などのリスク資産へと資金を向かわせ、相場の上昇をもたらす。すでにCOVID-19のパンデミック時に目にしましたが、近いうちに再びあるかも知れません。
元ゴールドマン・サックスのトップマネージャーでマクロ投資家のラウール・パル氏によると、米連邦準備制度理事会(FRB)は利上げサイクルを終えた可能性が濃厚です。なお、政府は“軌道修正”を余儀なくされ、紙幣の増刷により市場を支えることで景気後退を迎えるとも予測しています。この場合、同氏はリスク資産に"必然的に流動性の波 "が訪れると考えています。この資金流入で新たなイノベーションを伴った暗号資産業界が"啓蒙" され、デジタル資産の利用者は現在の3億人から10億人以上に増加することになるでしょう。
イギリスの銀行スタンダードチャータードによれば、ビットコインは2023年に"避難ブランド" の地位を確立したことで、現在は"暗号資産の冬"を終えたことを示しています。スタンダードチャータードは、最近の銀行セクターの混乱、FRBの利上げサイクルの終了によるリスク資産の落ち着き、暗号資産マイニング業界の収益の増加がBTCをさらに上昇させるといいます。また、暗号資産市場規制のためにEUでの初の構想が欧州議会で可決されたこともビットコインをサポートしました。これから迎える半減期もBTCに影響を及ぼし、2024年末には$100,000になる可能性があります。
半減期の話題が益々盛り上がっていることに目を向けましょうBitcoin Archive プレスサービスが2023年4月24日時点では2024年4月6日に予定されており、1年を切っていると述べています。しかし、これは最終的なものではなく、以前と同じように変更することがあります。
市場関係者の一部は、このイベントがビットコインの将来の相場に非常に重要であるといいます。暗号通貨のサイクルは一貫しており、BTC相場は今までのサイクルで起こったように、半減してから1年か1年半で史上最高値を更新すると考えているからです。市場の状況が変化したという意見もあります。ビットコインが巨大現象となり、現在は"暗号資産に対する法律や規制"で、マイニング報酬の半減だけでなく、ほかの要因が決定材料となります。
注目は、ブルームバーグ・インテリジェンスのアナリスト、ジェイミー・カッツ氏などの専門家の第2グループが2024年4月前にビットコインが$50,000 になると予測していることです。"ビットコインの価格は半減期の12-18ヵ月前に底を打ちます。現在のサイクルの構造は以前のサイクルと似ています。しかし、多くのことが変わりました: ネットワークは大幅強化され、ビットコインは長引く景気後退を経験していません" とカッツ氏は述べています。同氏の予想が正しければ、昨年11月の半減期前の安値から220%前後の資産価値となります。
ドクタープロフィットとして知られるアナリスト兼トレーダーがビットコインの底値は$15,400で、これ以上の下落は考えにくいと以前発言していました。2022年11月の大暴落はビットコインのマイナー、コインや設備を売らざるを得ない人を含め完敗でした。ドクタープロフィットによれば、BTCは現在蓄積段階にあり、強気相場でも弱気相場でもないとのことです。また、同氏は中国が暗号資産を解禁して合法化することで、暗号資産の価格は長期的に非常にプラスとなると考えているので、中国株式とビットコインの相関関係に注視するようにとトレーダーに向けてアドバイスしています。
DonAltというニックネームの別のアナリストも、BTC/USDが2022年11月の安値を下回ることを除外しています。なお、$20,000の下落調整はあり得るとして、ビットコイン準備金の流入には適した水準だと考えています。
Stock-to-Flow (S2F)で知られる人気アナリストを久しぶりに引用してみます。同氏は、このモデルがいつも予想どおりであると主張を続けています。"半減期前にビットコインは$32,000、それから、 $60,000と予想できます。そして、[半減期後]100,000ドル は最安値であり、最高値は100万ドルの見込みです。しかし、平均すれば、次の半減の後のBTC 相場は$542,000になるはず" とPlanBは書き込んでいます。また、暗号資産市場にS2Fが完全に対応しているため、批判には根拠がないとも強調しています。
伝説のウォーレン・バフェット氏から "殺鼠剤を2乗にしたもの"と 呼ばれているビットコイン相場を超楽観視しているのがPlanBだけではないことに注目です。貧乏父さん、金持ち父さんの著者のロバート・キヨサキ氏は、ビットコインが2025年までに$500,000になると考えています。 そして、 Ark Investでは、10年先を見据えて、1コインあたり、100万ドルという数字を挙げています。
4月28日(金)の夕方、BTC/USD は$29,345の取引です。暗号資産市場の時価総額は1兆205億ドル(1週間前は1兆153億ドル)です。Crypto Fear & Greed インデックスは7日間で50 から64ポイントに上昇して、中立から強欲圏内となりました。
NordFX Analytical Group
注意: この内容は金融市場への投資推奨やガイドラインではなく情報提供のみを目的としています。金融市場の取引には、リスクが伴うため入金した資金のすべてを失う可能性もあります。
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