2023年6月19日‐23日のFXと暗号資産の予想

EUR/USD: ドルに対してユーロの勝利

  • 先週の大きなイベントは6月14日(水)に開催されたFRBの連邦公開市場委員会(FOMC)と15日(木)の欧州中央銀行による金融政策委員会でした。これらの会合の結果は、ドルに対してユーロの勝利となりました。

    COVID19の大流行時、FRBが大量に増刷した価値の低い紙幣が市場に流入されました。 これがインフレに拍車をかけ、最終的にはこの40年で最も高い水準となりました。パンデミック終了後、アメリカの規制当局は金融政策を全く反対の量的緩和(QE)から量的引き締め(QT)に移しました。これまでの10回の会合でインフレ抑制に向けてFRBが政策金利を引き上げたことによって、最終的には2006年以来の最高水準である5.25%に達しました。

    6月13日(火)に発表されたデータでは、5月のコアインフレ率(CPI)が前月の5.5%から5.3%(前年同月比)であることを示しました。確かに、進歩しましたが微々たるもので、目標の2.0%には、程遠いままです。しかし、経済問題や継続する銀行危機の影響を回避するために、FRBの主導陣は会合で金利据え置きを決定しました。

    これは市場にとって驚くことではありませんでした。FRBのフィリップ・ジェファーソン副議長やフィラデルフィア連銀のパトリック・ハーカー総裁も金融引き締めの一時停止の必要性について述べていました。FRBのトップであるジェローム・パウエル議長でさえ、停止の可能性を述べていました。そのため、会合前夜の市場関係者の間で前回の水準での金利据え置きの可能性は95%と予想されました。

    さらに、6月15日(木)に公表されたデータでは、米国の5月の鉱工業生産は0.2%減少、失業給付申請件数は前回の水準である26万2千件をかたくなに維持したままです。この弱い統計が現在のFRBの停止を長引かせるではないかという市場予想が強まりました。FOMCが発表した長期予想では、委員たちの見方によるとピーク時の金利は5.60%で、その後は下がるべきであり、1年後には4.60%、2年後には3.40%、そして、さらに2.50%まで下がるといいます。

    つまり、FRBが6月の会合で借入コストを据え置いたのに対し、欧州中央銀行は3.75%から4.00%へと25ベーシスポイント (b.p.) 引き上げました。また、ECBのクリスティーヌ・ラガルド総裁は、金融引き締め政策は7月も続くと述べました。これに加えて、インフレ予想は賃金の上昇とエネルギー価格の高騰により情報修正されました。これに基づき、市場は来月だけでなく9月にも25b.p.の利上げを予想しています。ECBのタカ派的なスタンスでドイツ国債利回りは急騰する一方、米国債利回りは下落でした。これにより、ドルインデックス(DXY) が下落する一方で週明けからEUR/USD の上昇の勢いが続きました。6月12日(月)での取引は1.0732でしたが、16日までには1.0970となり、心理的に重要なレベル1.1000に近づいています。

    EUR/USD は、1.0940で5日間の取引を終えました。このレビュー執筆時の6月16日(金)夕方の直近の見通しでは、 大半のアナリスト(65%) が上昇トレンドの継続を予想しており、下落支持は25%、10%が中立の立場です。D1のトレンド系では、 100% が強気で、オシレーター系は3分の1が買われ過ぎを示していますが90% が緑です。残り10% は赤になります。このペアの直近のサポートは、1.0895-1.0925、それから 1.0865, 1.0790-1.0800、1.0745、1.0670、最終的には5月31日の安値1.0635です。強気筋は、1.0970-1.0985付近、それから、1.1045、そして、1.1090-1.1110がレジスタンスとなるでしょう。

    来週のカレンダーの注目は、FRBのジェローム・パウエル議長の議会証言が予定されている6月21日と22日です。米国の最新の失業データも木曜日に発表されます。一週間の取引最終日はドイツとユーロ圏全体と同じように、米国のサービス業購買担当者景気指数(PMI)も公表されます。また、トレーダーは、6月19日(月)が米国の祝日: ジューンティーンスであることを覚えておいてください

GBP/USD: このペアの上昇は続くかもしれない

  • ドル安により、ポンドは一週間を通してかなり上昇しました。月曜日の安値が1.2486 だったGBP/USDは反発して、金曜日には362ポイント上昇の1.2848の高値となりました。先週の終値はやや下げた:1.2822でした。ポンドがこれほど好調だったのは、一年以上前の2022年の4月でした。

    また、イングランド銀行(BOE)が6月22日(木)の金融政策決定会合で金利を4.50%から4.75%に引き上げる決定に伴ったタカ派の遠回しの発言と金融引き締め策の継続の約束による期待が強気筋の投資家心理を支えています。

    その結果、スコシアバンクのエコノミストは、GBP/USDがまもなく1.3000まで上昇する見込みであることを予想しています。オランダ最大の銀行グループである同業社のING もこの予想に同意見です。"チャートを見ると" 、 "現在のレベルと1.3000の間には重要なレベルはないようなので、それほど遠くではないでしょう"と記述しています。

    総体的なアナリストの予想中央値はより中立的に見えます。強気感情がアナリストの50%、弱気感情が40% 、10%がコメントを控えています。テクニカル分析については、トレンド系とオシレーター系の両方で100% が上向きで、オシレーターの4分の1は買われ過ぎゾーンです。このペアが下落の場合、1.2685-1.2700、1.2570、 1.2480-1.2510、1.2330-1.2350、1.2275、1.2200-1.2210でサポートが控えています。上昇であれば、1.2940、1.3000、1.3050、 1.3185-1.3210でレジスタンスに直面するでしょう。

    来週は、前述したイングランド銀行の会合の前日の6月21日(水)にイギリスのインフレ統計が発表されます。消費者物価指数(CPI)が8.7%から8.5%に低下すると予想されます。しかし、このようなわずかな低下では、中央銀行のタカ派的スタンスを抑えることはできないでしょう。また、製造業購買担当者指数(PMI)速報値が発表される6月23日(金)にも注意が必要です。この日は、ドイツ、ユーロ圏、米国でも発表があるので、各国の経済状況が鮮明となり、比較が可能になります。

USD/JPY: 地球に戻りたくても、戻れなくなっているペア

  • 米ドル指数(DXY)と米国債利回りが低下したので、円高となり、I USD/JPY がついに方向転換するのが理論的でした: 月へ向かって飛ぶのではなく、地球に向かって着地。このような動きが6月15日(木)にありました。しかし、それは日本銀行(日銀)会合までの1日だけしか続きませんでした:政策金利は再びマイナス-0.1%の水準に据え置き (日本銀行が2016年1月からこの金利を変更していないことを思い出しましょう)。また、新たな決定の一部として、規制当局は"必要な"量の国債を購入して10年債の利回りをゼロに近い水準にする目標を継続すると発表しました。

    MUFG銀行のエコノミストは、日本銀行とほかの中央銀行の金融政策の乖離がさらなる円安を招く要因となると分析しています。"日本とほかの国とのイールドスプレッドの拡大や為替相場のボラタリティを伴ったレートの低下が[...] 円の過小評価の一因です" とMUFG のアナリストは記述しています。

    同業社のコメルツ銀行のアナリストは、FRBが新たにドルの利上げの可能性を2回示せば、円の下落は続くであろうと分析しています。フランスの金融コングロマリット、ソシエテ・ジェネラルのアナリストは、米国でもう一度、追加利上げがあれば、USD/JPY は145.00まで上昇すると見ています。

    日本銀行が超緩和政策の終了に向けて最終的に第一歩を踏み出す期待だけが日本円の下落を抑えられます。例えば、BNPパリバのエコノミストは、"FRBの最終的な金利引き上げとその後の日本銀行YCCの拡大を考慮してUSD/JPY の予想では上方修正しましたが、USD/JPYは引き続き下落にあると予想しています"と記述しています。年末までの目標レベルは 130.00 で、2024年の年末は123.00です。

    141.89の今週の高値をつけたペアは、141.82でこの5日間の取引を終了しました。アナリストの 70%はDXYの下落により、すぐに下落調整されるとした一方で、残りの30% は目標を143.00の高値にしています。D1のトレンド系の100%も上向きです。オシレーター系の90%(3分の1がこのペアの買われ過ぎを示しています)は上向き、残り10% がグレーです。直近のサポートは、1.4140圏内、引き続いて、 140.90-141.00、1.4060、139.45、1.3875-1.3905、137.50です。直近のレジスタンスは、142.20、そして、強気筋は、1.4300、143.50 、144.90-145.10を克服していく必要があります。そこからは、2022年10月の高値151.95まで遠くありません。

    来週は、日本経済に関する重要な経済情報の発表は予定されていません。6月21日(水)の日本銀行の前回の会合の報告書は例外かもしれませんが、この報告書から市場関係者が新たなことを見つける可能性は低いでしょう: 6月16日の記者会見で既にすべてを述べていました。

暗号資産: FRBECBがビットコインの破滅的状況を防ぐ

  • BTC/USD は、4月14日に2022年6月以来の高値$30,989 をつけました。それ以降、9週連続で弱気感情が市場を支配しています。先週は例外なく、投資家を喜ばせることはありませんでした。ベンチャー企業Eightの創設者マイケル・ヴァン・デ・ポップ氏は、 "これは皆さんが見たかった状況ではない" と述べています。同氏は、200週移動平均(200WMA)のサポートを突破するということは下降トレンドの継続を示していると指摘しています。

    このシナリオは、米国証券取引委員会(SEC)がBinanceとCoinbaseに対して、プラットフォームが未登録の資産を販売しているとして訴訟を起こした後、明らかだと思われました。一方、法廷文書では、SECは十数種類のトークンを証券として名指ししています。専門家によれば、規制当局の勝利がこれらのコインの上場廃止につながり、ブロックチェーンの潜在的な発展が制限される可能性があるといいます。

    裁判所は先週、バイナンスの米国部門の資産凍結を求めるSECの要請を却下しました。しかし、監視者の一部が信じているように戦いは終わっていません。規制当局のトップであるゲイリー・ゲンスラー氏が最近、仮想通貨は本質的にはまったく必要ないと述べたことには注目です。引用: "これ以上、デジタル通貨は必要ありません。既に、デジタル通貨があります。それは、米ドルと呼ばれるものです。ユーロもしくは、円と呼ばれるものもあります。今は、これらすべてがデジタルなのです"。

    JPモルガンのストラテジストによると、米国のビットコイン取引所はブローカーとしてSECへの登録を迫られる可能性が高く、すべての暗号通貨は証券として分類されることになります。多くがこれを業界の終わりの始まりと見る一方で、楽観的な意見もあります。例えば、JPモルガンは新たな規制が、"業界から悪い習慣や不誠実な業者を追い出し、業界を成熟させ、より積極的な機関の参入が見られるためには必要なことです"と述べています。

    Blockstreamのアダム・バックCEOは、市場参加者を落ち着かせようとしました。現在の暗号技術や暗号資産業界の第一人者である同氏の主張はモルガンの主張と真っ向から対立するものでした。こちらの有名な専門家は、暗号資産市場は水のようなもので、障害があれば、流れを変えるだけだと述べています。つまり、米国での規制圧力により顧客へのサービス提供の運営が難しくなった主要な仮想通貨取引所は、最終的に出口を見出すということです。ビットコインのトレーダーは、ほかの法域に移動して別の通貨で取引をはじめます。そして、アダム・バックが述べていることは正しいようです: 米国からの撤退は既に進行しています。分析プラットフォームのグラスノードのデータでは、アメリカの取引者人数の割合は、2022年半ばから11%減少しています。なお、アジア地域では9.9%増加しています。

    多くのインフルエンサーたちが暗号資産の終わりを予測している一方、ビットコインを例外にしていることには注目です。例えば、Into The Cryptoverse の創設者であるベンジャミン・コーウェン氏は暗号資産市場の流動性は、だいぶ前から枯渇しており、アルトコインが"清算を迎える一方で、ビットコインの支配的立場は高まっていくでしょう"と述べています。 トレーダーのギャレス・ソロウェイ氏も同様の意見で暗号市場を常にドットコムバブルと比較してきたと述べています。同氏によれば、2000年代はじめに起きた崩壊が、この業界でも繰り返されるということです。繁栄のために、"システムにはゴミを取り除くことが必要" と同氏は断言して、全トークンの95%が"ゼロに向かってもがくことになる"と述べています。

    "市場の謎の魔術師"とよく呼ばれているピーター・ブラント氏も、ビットコインの賞賛のコーラスに加わっています。こちらの伝説のトレーダー兼アナリストもビットコインを除くすべてもコインを比喩的に"埋葬した" と述べています。"ビットコインがこのマラソンを完走できる唯一の暗号資産です。イーサリアムなどを含めてほかのすべては偽物か詐欺です" と同氏は記述しています。暗号資産コミュニティの多くのメンバーは、尊敬されているアナリストが時価総額第2位のイーサリアムも詐欺的なプロジェクトに仲間入りさせたことに動揺しました。これに対して、ブラント氏は、"ETH が生き残る見込みはありますが、真のレガシーはBTCでしょう"と反応しました

    ARK Invest のキャッシー・ウッドCEO はビットコインの予測を倍増させ目標は1コインあたり、100万ドルと述べています。ウッド氏によれば、現在の世界経済環境でビットコインの信頼度が高まっているそうです。"世界経済がより不安定でボラタリティが大きくなるほど、これからもインフレのリスクヘッジとしてビットコインの信頼度が高まっていく"と述べています。

    ギャラクシーデジタルのCEOであり、創設者のマイク・ノボグラッツ氏も世界経済から支持を期待しています。具体的には、FRBが10月に利下げをすることで、暗号資産市場の流動性が急増につながると同氏は予測しています。10T Holdings やGold Bullion Internationalの共同創設者のダン・タピエロ氏は、より具体的な見通しで"爆発的" 上昇の予想を示しています。"おそらく2024年後半と2025年には新高値更新となるでしょう。そして、この強気局面で暗号資産市場の全体の時価総額は6兆ドルから8兆ドルになると思います"と同氏は述べています。

    楽観的な長期見通しにもかかわらず、直近の見通しでは投資家を動かしません。ブルームバーグのストラテジスト、マイク・マクグローン氏は、ビットコインの値動きに反映されるブルームバーグ・ギャラクシー・クリプト総合指数の大幅な下落について否定していません。投資家向けのレポートでは、今後数ヶ月は弱気傾向に支配されると警告しています。シティバンクのストラテジスト、フィオナ・シンコッタ氏も、ビットコインの価格が強力なサポートである$25,000を下回れば、売り圧力が大きくなり、さらなる下落を引き起こすかもしれないと注意を呼び掛けています。

    有名な予測モデル Stock-to-Flow (S2F)の開発者であるPlanBは180万人のフォロワーに6月末のビットコイン価格の予想を聞いてみました。多くの人が、夏のはじめの月は$24,000-25,000 レベルでビットコインは終わるだろうと回答しています。$30,000以上の上昇を示した回答者はごく一部でした。PROFIT BLUEというユーザーネームをもつ別のアナリストは、BTC は$25,000圏内を維持できず、次の目標は$23,700 水準になると予測しています。一番悲観的な予想がアナリストWhaleWireで、周期的な安値が再来することを否定していません。WhaleWireによれば、BTC は$12,000に向かう様子です。 $15,000レベルを突破は、この夏にあると確信しています。

    この7日間と3日間の安値は$24,791でした。ビットコインは、 連邦準備制度理事会と欧州中央銀行の金利決定の後のドル安で救われました。このレビュー執筆時である6月16日(金)の夕方、BTC/USD は今週の下げを取り戻して、$26,400で取引されています。暗号資産市場の時価総額は1兆6400億ドル(1週間前は1兆1002億ドル)です。Crypto Fear & Greedインデックスは、中立圏内のままですが、この7日間で 50 から47ポイントに下がりました。

 

NordFX Analytical Group

 

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