2023年7月24日-28日のFXと暗号資産の予想

EUR/USD: FRBECBの会合を控えて

  • 7月14日にDXYドル指数が2022年4月の水準(99.65)まで下落したとき、多くの市場参加者は米ドルの良き時代は終了したと結論づけました。インフレ率は目標に近づき、経済を抑え込まないようにFRBは間もなく金融緩和キャンペーンを開始すると。しかし、事態はそれほど単純ではありません。7月18日(火)に1.1275の高値を付けた後、 EUR/USD は反転して下落し始めました。

    総体的に米国からの弱いマクロ経済レポートにより、ドルはユーロに対して数十ポイント、あるいは数百ポイント戻す可能性がありました。6月の鉱工業生産は0.5%減で2ヶ月連続の減少となりました。 小売売上高は0.5%増の予想でしたが、0.2% (5月:0.5%増)のみの増加でした。フィラデルフィア連銀製造業景況指数はマイナスのままでした(-13.5)。不動産市場のデータも予測より悪い結果でした。例えば、米国の6月の新築住宅件数は前月の15.7%増から8.0%減と落ち込みました。建築許可発行件数も5月の5.6%増から3.7減でした。中古住宅販売件数は先月(6月:416万件、5月:430万件、予想:420万件)より減少しました。しかし、労働市場は予想よりやや好調でした- 新規失業保険申請件数は22万8千件 (先月: 23万71,000件、予想:24万2千件)でした。 これは、不安定な指標のため、実際の状況を反映していない可能性もありますが、この少し前向きな材料に市場は喜びました。

    全体的に発表されたマクロ統計が米国経済の冷え込みを鮮明に表しています。不動産市場の悪化は、高金利がこの重要なセクターに与える圧力を明確に示しています。米国の住宅ローン危機の2007-2008を振り返れば十分でしょう。

    このような状況で、FRBのタカ派路線は終わりを告げようとしているようです。ブルームバーグの専門家のほぼ全員が、7月26日に連邦公開市場委員会(FOMC)が金利を25ベーシスポイント引き上げて5.5%にすると予想しています。引き上げ幅は小さい可能性もあります:25ベーシスポイントではなく10 ベーシスポイント。その後は、年末まで規制当局の様子見が予想されます。先物市場では、2023年に5.75%への利上げ見込みが28%と予想されています。

    しかし、EUR/USD は米ドルのみではなく、ユーロの影響も受けます。修正された統計では、第1四半期のユーロ圏のGDPがほぼゼロで、経済は停滞しており、成長見通しはかなり悪いようです。この引き締めサイクルでのユーロの政策金利が0%から4.00%に上昇したことがマイナスの影響を及ぼしていることは明らかです。金融引き締めの遅延効果がますます顕著になっています。

    その一方で、400ベーシスポイントの利上げにもかかわらず、ユーロ圏のインフレ率(CPI)はかなり緩やかに低下してきています。- 6月のインフレ率は前年同月比5.5%、前月は6.1%です 。目標水準の2.0%には、まだ、程遠いようです。

    つまり、大きな物価上昇圧力がありながら、その一方でEU経済が困難に直面していることが見られます。このようなはっきりとしない状況では、欧州中央銀行の今後の動向も不透明です。7月27日(木)に開催される欧州中央銀行金融政策委員会で、今後の金融政策がより明確とされることが期待されています。少なくとも、これは市場参加者が期待していることです。

    米国労働市場の不安定なデータですらDXYを上向きにさせ、EUR/USD を下げる要因には十分でした。先週の終値は1.1125でした。直近の見通しについては、このレビュー執筆時点の7月21日夕方、上昇支持のアナリストは20% に過ぎず、下落支持は50% 、残り30%が中立の立場です。テクニカル分析のD1のトレンド系については、75%が上向き、 25% が下向きです。オシレーター系では、85%が買い推奨、残り15%が中立です。 このペアの直近のサポートは、1.1090-1.1110、1.1045、1.0995-1.1010、1.0895-1.0925、1.0845-1.0865、1.0800、1.0760、1.0670、1.0620-1.0635です。強気筋は、1.1145付近、そして、1.1170、 1.1230-1.1245、1.1275-1.1290、1.1355、1.1475、 1.1715でレジスタンスに直面するでしょう。

    間違いなく、来週の重要なイベントは、7月26日のFRBの会合と7月27日のECBの会合、そして、その後のこれに伴う規制当局の記者会見です。7月24日(月)には、ドイツ、ユーロ圏、米国から、多くの非製造業景況感指数 (PMI) の速報値も明らかになります。翌日は、ユーロ圏の銀行貸出調査が発表され、米国の消費者信頼感指数も公表されます。木曜日には不動産と失業統計に加え、米国から耐久財受注の発表もあります。週の取引最終日である7月28日(金)は、ドイツのインフレ率(CPI)速報値と米国の個人消費支出の発表があります。

GBP/USD: 50 ベーシスポイント、それとも、結局は25ベーシスポイント?

  • イングランド銀行(BOE)の次回会合は8月3日に予定されています。市場参加者の中には、この会合で、50ベーシスポイント(bps)の追加利上げで5.50%になるという見通しの傾向があります。フランスの金融コングロマリット、ソシエテ・ジェネラルのエコノミストは、イングランド銀行がこの措置をとる理由を3つ挙げています。

    まず、サービスセクターと賃金のインフレ率が6月にピークとなりましたが、両方とも残念ながら高いままです。消費者物価指数(CPI) は、前月の8.7%から7.9%(予想は8.2%)に低下したましたが、目標水準の2.0%には依然ほど遠いままです

    次に、ソシエテ・ジェネラルが分析しているように、イギリスではインフレが続いているため、投資家はイギリス国債を敬遠しています。このように高水準なままのインフレ率は、米国債やドイツ国債と比較して、より高い対価が必要となります。投資家を安心するためには、現段階で厳格な金融政策を継続しなければなりません。

    三つ目がイングランド銀行のアンドリュー・ベイリー総裁が金融緩和政策路線に固執しすぎたため、過剰に高いインフレ率となったと激しく批判されていることです。そして、現在、イングランド銀行は 、批判が間違っていることを証明したいがために、やり過ぎてしまう可能性があります。これが、大幅な利上げなどのような積極的な動向になることもあります。しかし、この代わりにイングランド銀行がより控えめな25ベーシスポイントを選択するかもしれないことを考慮する必要もあります。

    実際、フランスのエコノミストの意見に誰もが同意しているわけでもありません。例えば、 同業のドイツ・コメルツ銀行のエコノミストは、6月のイギリスの消費者物価(CPI)上昇率が予想より、かなり低かったと示しています。つまり、市場で盛り込まれている利上げは、あまりにも高く、下方修正が必要だと予想しています。これが、要するに、ポンド安につながることになります。同様の見解は、最高で25ベーシスポイントの利上げであると予想しているオランダの最大手金融グループであるINGのストラテジストからも示されています。

    上記のCPIデータは7月19日(水)に発表されました。ただ、これに加えて、イギリスの国家統計局(ONS)も7月21日(金)にイギリスの小売業データを発表しました。この結果、6月の小売業販売額は前回予想の0.2%増と前月の0.1%に対して、前月比0.7%増ということが判明しました。自動車燃料販売を除く小売売上高の指標は、5月の0%と予想0.1%に対し、前月比0.8%の増加でした。イギリスの6月の小売売上高は年率-1.0%で、予想の-1.5%、5月の-2.3%に対し減少、ベースでは-0.9%で、予想の-1.6%、前回の-1.9%に対し減少でした。

    このような好調なデータ発表後、ジェレミー・ハント英財務相は、"インフレ率を半減する計画を厳しくしていけば、成果が見え始めます"と発言しました。財務相の言葉は、イングランド銀行のタカ派的政策のさらなる引き締めを支持すると解釈できます。しかし、市場はこれを実際には無視して、ドル高でGBP/USDを押し続け、5日間の取引は1.2852 で終了しました。

    このペアの推移は、もちろん、7月26日のFRBの決定と発言で決まってきます。間違いなく7月27日のECBの会合もEUR/GBPを介してポンドに影響することになります。しかし、これらすべてはこれからのことです。 このレビュー執筆時の現時点でのGBP/USDの中央値予想では、ほぼ同数のようです: 上昇支持は3分の1、下落が3分の1、中立が3分の1。D1のオシレーター系では、35%が緑、40%が赤です。このペアが下落すれば、1.2800-1.2815、そして、1.2675-1.2695、1.2570、1.2435-1.2450、1.2300-1.2330、1.2190-1.2210がサポートになるでしょう。上昇すれば、1.2940、続いて、1.2980-1.3000、1.3050-1.3060、1.3125-1.3140、1.3185-1.3210、1.3300-1.3335、1.3425、1.3605がレジスタンスとなります。

    FED とECBの会合を除いた来週の注目イベントは、7月24日(月)のイギリスの幅広いセクターからの非製造業景況感指数 (PMI)の速報値の発表です。

USD/JPY: 二歩前進、一歩後退

  • ロシアの革命家ウラジーミル・レーニンは1904年に"一歩前進、二歩後退" という本を書きました。この3週間の円は、"二歩前進、一歩後退"というタイトルになるでしょう。7月の第2週まで、円は上昇、そして、3週目で上昇分の半分を下げました。 そして、ユーロとポンドがドル高により、下落する一方で、USD/JPYでは、要因となったのが米ドルではなく、日本のインフレ率の低下が大きな打撃でした。

    前回の予想時では、円安支持派が円高予想より3倍(45%対15%)でした。そして、大方、正解でした。7月21日(金)に発表されたインフレレポートにより円は急落しました。USD/JPY は1% 以上の上昇でした。日銀の超ハト派的政策とマイナス0.1%のマイナス金利にもかかわらず、消費者物価上昇率は低下していることが判明しました。3.5%の予想にもかかわらず、実際には6月のインフレ率(CPI)は3.3%でした。食品とエネルギーを除く消費者物価指数は、前回の4.3%に対し4.2%に低下しました。

    完全ではないにしろ、このデータにより、日本の中央銀行の金融政策引き締めに対する長い間の期待が葬り去られました。さらに、前日の岸田文雄総理の発言は現在の金融政策を支持するものでした。つまり、7月28日(金)の会合では高い確率で日本銀行は金利を据え置きにするでしょう。そして、自国通貨の路線維持のために、必要であれば、以前と同様、為替介入をするでしょう。

    その一方、円安を止めるために、神田真人財務官が"口先介入"に踏み切りました。とりわけ、 "為替介入に限界は感じない"として、介入の際には、"弾切れ"とならないようにあらゆる手段を検討すると述べました。

    神田真人財務官の発言後は、状況が落ち着き、USD/JPY の先週の終値は141.80でした。このレビュー執筆時、アナリストの25%が今後数日も上昇継続、55% が下落傾向を支持、20%が中立の立場です。 D1インジケーターでは、次のとおりです:オシレーター系では、25%が赤、 50%が緑、25% がグレーです。トレンド系では、明らかに緑が90%と多く、逆は10% だけです。直近のサポートは、141.40、続いて、140.45-140.60、139.85、138.95-139.05、138.05-138.30、それから、137.25-137.50、135.95、133.75-134.15、132.80-133.00、131.25、130.60、129.70、128.10、127.20です。直近のレジスタンスは、142.20、続いて、143.75-144.00、145.05-145.30、146.85-147.15、148.85、そして、最終的には2022年10月の高値 151.95です。

    来週は、日本銀行の会合以外は日本経済関連の重要な発表予定はありません。

暗号資産: ライトコインの半減期- ビットコインの半減期のリハーサル

  • 観測筋は2023年のDXYドル指数の高値がビットコインの谷とほぼ一致していることに着目しています。これは驚くことではありません: BTC/USD は天秤のようなものです。ドルが重くなれば、ビットコインは軽くなります。先週の米ドル高がビットコイン安につながりました。ビットコインは$29,850のサポートにしがみつき、6月の安値$25,000を回避したことは注目です。

    BTCと USDの関係は理論的には理解できます。しかし、暗号資産愛好家の中には、ビットコインを主な資産と位置づけ、ドルは後を追うようなものだと見解しています。例えば、根拠としては、ビットコインが昨年の半ばまでに横ばいとなった一方で、ドル指数が数週間後に追いついたからです。よく見れば、チャート上にそのような瞬間がたくさんあります。ただし、私たちの意見では、ビットコインを過大評価すべきではありません。

    現在も多くのアナリストやインフルエンサーたちが、ビットコインの明るい未来を描き続けています。 目標とする大台は、時代とともに違ってきており、時には数十倍にもなります。例えば、スタンダード・チャータードのエコノミスト、ジェフ・ケンドリック氏は最近、ビットコインの市場価値についてさらに楽観的な予測をしており、2024年末までの目標を$120,000と述べています。

    これに対して、BBCワールドのアナリスト、グレン・グッドマン氏は、$120,000 を"正当な数字というよりは空からわいた数字のように思える" と記述しています。同氏は、このような予想の著者は強気筋側につき、重要な要因を考慮していないとした見方をしています。その中で最も重要なのが、米国の金融当局が暗号資産業界の取り締まりを強化して、訴訟や調査で参加者が押し寄せることです。さらに、グッドマン氏は、来年は不況が長期化する結果、デジタル資産市場を含む金融市場の活動が深刻な影響を受ける可能性があるとする米国のエコノミストたちの予想に言及しています。

    グレン・グッドマン氏とは異なり、リアルビジョンのCEOで元ゴールドマン・サックスのトップマネージャーのラウル・パル氏は、経済問題、銀行業界の混乱、不動産市場の危機のような状況でビットコインが防御資産として恩恵を受けると分析しています。ラウル・パル氏によるビットコインの強気ラリーは必ずあり、BTCは今年の後半には $50,000台にすぐになると述べています。

    一方でPlanBというニックネームの有名なアナリストは、2024年4月の半減期前にビットコインが大きな上昇をするとは考えていません。同氏の予想では、インジケーターとしてMA-200を利用しています。 このラインは月平均$500 の上昇なので、9ヵ月後は$32,000 台となります。PlanBによると、この価格の50%を上回る上昇見込みもありますが、 この場合でも$48,000にしかならないとのことです。

    ベンチャー企業Eightの創業者であるマイケル・ヴァン・デ・ポッペ氏は、先週の自身の予測を明らかにしました。同氏は現在のトレンドが最低ラインを突破する可能性があり、その結果、ビットコインは$29,500、さらには、$29,000に落ち込むと予想しています。しかし、このような相場の推移は強気ラリーの前に先行する可能性があり、ビットコインは、まず、$32,500に上昇してから、 $34,000、続いて、$38,000に急騰するといいます。

    短期的、中期的な予想から長期的な予想に移ると、アーク・インベストのキャサリン・ウッドCEOの見解を挙げることができます。同CEOは、$38,000、さらには、 $120,000への急騰には興味がなさそうです。同CEOは、インフレや銀行危機を背景に7年後には、ビットコインは1コインあたり、$1,500,000 もしくは、$625,000で最低取引されるようになると再度、自身の予想を示しました。

    キャサリン・ウッド氏の境界のない楽天主義に対して従業員が米国の1,000人の暗号資産投資家の調査をしたCryptoVantage のデータは、冷や水を浴びせるようなものでした。ビットコインの相場が来年に史上高値の$68,917 になるとした回答者は23% だけでした。47%は、5年以内にビットコイン価格がこの水準まで上昇すると予想しています。78%は、 BTC が最終的には史上高値までに戻ると予想していますが、将来的には不透明です。そして、9% は決してこのようなことは再び起きないと予想しています。

    前回のレビューでは2024年4月の半減期に大きく注目してきました。ここで、ライトコインの半減期が今年の8月2日と、かなり近い時期に予定されていることをお知らせします。ブロックのマイニング報酬は6.25LTCと減少します。ライトコインはビットコインのフォークであり、その総発行数量は8,400万コインが上限であることを考えると、ライトコインの価格変動を基にして予定されている半減期後のビットコインの価格予想をしようとすることは興味深いでしょう。

    このレビュー執筆時である7月21日(金)の夕方、BTC/USDは、$29,850で取引されています。暗号資産市場の時価総額は、 1兆2020億ドル(先週は1兆1980億ドル)です。Crypto Fear & Greed インデックスは、50ポイントで中立の圏内です(先週の60 ポイントから下がりました)。

 

NordFX Analytical Group

 

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