EUR/USD: 9月13日と14日- 今週の注目日
- 米ドル指数(DXY)が8週連続で上昇の一方、EUR/USD は下落しています。この通貨ペアは3ヵ月の水準まで戻り、1.0700 圏内で落ち着きました。9月8日(金)、ドルの強気派が今までの利益の確定を始めたことで、さらなる下落を防ぎました。
ファンダメンタルでは、米ドルに有利な状況が続いています。サービス業PMIで測定される企業活動は一貫した上昇を示しています; 予想の52.5に対して52.7 から54.5に増加。 また、9月8日に発表されたデータは米労働市場が少なくとも十分に機能していることを示しています。新規失業保険申請件数は21万6,000件で、予想の23万4,000件と前回の22万9,000件を下回りました。
同じ日の欧州の統計は明らかに暗いものでした。例えば、第1四半期の成長率と市場予想が0.3%だったにもかかわらず、第2四半期のEU経済成長率はわずか0.1%に過ぎませんでした。年換算でも0.6%予想を下回り、実際には 0.5%でした。ドイツの7月の鉱工業生産量は、予想の-0.5%減に対し-0.8%減となりました。一方、ドイツのインフレ率は低下の努力にもかかわらず、変わらずでした。9月8日(金)に発表された消費者物価指数(CPI)は、前月比0.3%(前月比)、前年比6.4%(前年比)にとどまりました。
多くのアナリストによれば、欧州中央銀行(ECB)は苦境に立たされています。一方においては、インフレ率抑制のために利上げの必要があり、他方では、経済を支えるために利下げをする必要があります。9月14日(木)の会合ではECBが利上げを一時停止して政策金利を4.25%に据え置く可能性は十分にあります。現在のところ、このような決定の可能性については35%とされています。
9月20日に予定されている米連邦準備制度理事会の連邦公開市場委員会(FOMC)に関しても、市場関係者は規制当局の金利据え置きを支持しています。しかし、理由は異なります。ユーロ圏が景気後退とスタグフレーションの瀬戸際であるのに対して、米国は"ソフトランディング" しつつあります。ニューヨーク連銀のジョン・C・ウィリアムズ総裁が断言するように、"金融政策は良好な状態" なのです。もちろん、9月13日(水)に発表されるアメリカのインフレ・データによって、そのバランスがどちらかに傾く可能性はあります。
とはいえ、9月の一時停止は金融引き締めサイクルの終了を意味するものではありません。CME のFedWatchでは、11月の25ベーシスポイント(b.p.)の利上げ確率は37%です。仮に、この利上げがなかったとしても、ドルに悪影響となる可能性はあまりありません。市場は長い間、米国経済の景気後退とそれに伴う連邦準備制度理事会の金融緩和を予想してきたため、ネガティブなセンチメントの多くはすでに米ドルに織り込まれているからです。現在、ハト派な移行の可能性は低いことは明らかであり、政策金利は最低でも最高水準の5.5% に長期間とどまることになるでしょう。
EUR/USD は8週間前の7月18日の高値1.1275 から下落を始め、576ポイント下げた1.0699で今週の取引を終えました。このレビュー執筆時の9月8日の晩の時点では、アナリストの45% が直近の上昇を支持しており、同じく45%が下落予想、残り 10%が中立の立場です。テクニカル分析に関しては、この1週間変わらずです。D1のすべてのトレンド系とオシレーター系では、100% が米ドル支持のままで赤くなっています。しかし、既に直近のインジケーターの30%が、このペアの売られ過ぎを示しています。直近のこのペアのサポートは、1.0680付近に続いて、1.0620-1.0635、1.0515-1.0525、1.0480、1.0370、1.0255となります。強気筋は、1.0730-1.0745付近に続いて、1.0780-1.0800、1.0835-1.0865、1.0895-1.0925、1.0985、 1.1045、1.1090-1.1110、1.1150-1.1170、1.1230、1.1275-1.1290でレジスタンスに直面するでしょう。
米国の消費者物価指数(CPI)が発表される9月13日(水)は、来週のカレンダーで要注意です。9月14日(木)は欧州中央銀行(ECB)の金利決定が発表されます。もちろん、その後の中銀指導部の記者会見も大きな関心を集めるでしょう。同じ日に、恒例の米国の新規失業保険申請件数と小売売上高と生産者物価指数(PPI)があります。
GBP/USD: ピーク金利は引き続き低下
- 現在、イングランド銀行(BOE)を含む多くの中央銀行にとっての中心的な課題は、インフレの抑制と景気後退の防止のどちらを優先させるかについてです。実際にイギリス経済は後者の方向に向かっているようです。8月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は43.0にとどまり総合PMIは、39ヵ月ぶりの低水準に落ち込みました。直近のデータでは、サービス業PMIが49.5に落ち込み、1月以来、初めて50.0の基準値を下回って縮小圏内となりました。
では、インフレ率についてはどうでしょうか? イギリスの年間インフレ率は7.9%から6.8%(2022年2月以来の低水準)に低下したものの、G7諸国の中では依然として最も高いままです。さらに、コア消費者物価指数(CPI)は前年比6.9%にとどまり、2ヵ月前のピークをわずか0.2%下回っただけに過ぎませんでした。
9月7日(木)にイングランド銀行の月次意思決定者パネル(DMP)が実施した最新の調査によるとイギリスの企業は来年のCPIが前年比4.8%まで低下すると見積もっています。なお、イングランド銀行は今年末までに消費者物価指数を5.0%近くにすることを目指しています。
調査によると、現在の状況において国の指導者はインフレ抑制よりも経済救済を優先しています。 イングランド銀行のチーフエコノミストであるヒュー・ピル氏は、インフレに関しては十分ではないとしつつも、より長期的な金利安定を維持したいと述べました。また、9月21日のイングランド銀行の会合では、現行の5.25%の維持を支持するとも付け加えました。
ロイター通信によると、市場では現在、年末までに1回か2回の利上げで最終的な金利が5.75%になる見込みは85% だとしています。この見積もりは、7月に予想したピーク金利6.5%をはるかに下回っています。将来のポンドの5.75%は、現在のドルの5.50%よりわずか25ベーシスポイント高いだけであり、このギャップは明らかに英ポンドには有利ではありません。なお、FRBでは 25-50ベーシスポイントの追加 利上げをする可能性があります。
GBP/USD の先週の終値は1.2465でした。シンガポールのユナイテッド・オーバーシーズ・バンク・リミテッド(UOB)のエコノミストは、今後1-3 週間でこのペアは1.2400 水準の強力なサポートに挑戦する可能性があると予想しています。しかし、同行では短期的な売られ過ぎの状況がさらなる下落ペースを加速させる可能性があると見ています。アナリスト予想はEUR/USDと同じように、意見が2つに分かれています: 45%は上向き調整、45%が下落の継続、残り10% は横ばい予想です。D1チャートのオシレーター系では、100%が赤で 15% は売られ過ぎの状態を示しています。トレンド系では、90%対 10%で赤が優勢です。このペアの下落トレンドでは、1.2445、1.2370-1.2390、1.2300-1.2330、1.2270、1.2190-1.2210、1.2085、1.1960、、1.1800がサポートレベルとなります。上昇トレンドでは、1.2510、1.2560-1.2575、1.2600-1.2615、1.2690-1.2710、1.2760、1.2800-1.2815、1.2880、1.2940、1.2995-1.3010、 1.3060、1.3125-1.3140、1.3185-1.3210でレジスタンスに直面します。
イギリスの主要経済データに関しては、9月12日(火)の失業率が特に注目されます。また、9月13日(水)に発表される7月のイギリスのGDP統計も 注目でしょう。
USD/JPY: 弱気筋の為替介入予想に警戒する強気筋
- 日本に関しては、"経済かインフレか" という疑問は議論の対象にはなりません; 答えは、間違いなく経済だからです。9月6日(水)、共同通信は匿名の情報として、日本政府が10月に新たな経済刺激策を打ち出す予定であると報じました。ロイターは、景気刺激策の主な目標を"企業の賃上げ支援と電気料金の軽減" と日本メディアから引用しています。"岸田文雄総理が、これらの措置のための追加予算案[…]の作成(責任者)を指示することが予想される" とレポートにはあります。ロイターはまた、発表された景気刺激策によって日本の債務負担が増加するという分析についても紹介しています。試算によると、すでにGDPの2倍にもなっている日本の債務は、来年度には過去最高の112兆円(7600億ドル)に達するといわれています。
このような状況では、インフレ率が上昇していくことは明らかです。一方で、USD/JPY は上昇が続き、9月7日には10ヶ月ぶりの高値147.86 をつけました。9月8日(金)、日本の鈴木俊一財務大臣は日本当局が"行き過ぎた為替変動には、あらゆる手段で対応する"と述べました。しかし、長年の-0.1%金利を考慮すると、利上げを信じる市場関係者はいません。投資家の間では、財務省や日本銀行(日銀)が最終的に口先介入ではなく、昨年秋のように実際の為替介入をするのではないかという懸念が高まっています。同じくロイターの報告によると、神田真人財務官は日本銀行当局が"投機的"動きを終わらせるために介入を検討している述べました。
DXYドルインデックスが3月以来の高値水準である105.00付近を維持している状況では、ある程度の円高にするには日銀の介入しかありません。しかし、一部のアナリストによれば、円安の主な理由は、国内政治家の金融政策をめぐる意見の相違にあります。
先週の終値は147.79でした。UOB グループのストラテジストは上昇の勢いが続けば、数週間のうちにUSD/JPY は149.00 水準に押し上げられると予想しています。コンセンサス予想では、ドルの可能性と上昇を信じたままのアナリストは20%に過ぎません。弱気筋は80%に支持されています(特に日本円に関しては、100%のコンセンサスでも予測の正確性を保証するものではないことに注意してください) 。D1チャートのトレンド系とオシレーター系では100%が緑ですが、40%は買われ過ぎの状況を示しています。直近のサポートは、146.85-147.00圏内で146.10、 145.55-145.70、145.30、144.90、144.50、143.75-144.05、142.90-143.05、142.20、 141.40-141.75、140.60-140.75、139.85、138.95-139.05、138.05-138.30、137.25-137.50です。直近のレジスタンスは148.45で、148.85-149.10、150.0と続き、最終的には2022年10月の高値151.90となります。
日本経済の現状に関する重要なデータの来週の発表予定はありません。
暗号資産: 市場における恐怖と疑念
- 市場は、3週にわたり静かです。暗号資産ミリオネアのウィリアム・クレメンテ氏の観測によると、デジタル資産の総取引量は2020年以来の最低水準にまで落ち込んでいます。H1とH4のBTC/USD チャートは、ほとんどがアリの足跡のようで昆虫の細く切れ目のない線となっています。
この状況がグレースケール事件の判決で活気づきました。暗号資産運用で世界をリードする投資会社が米国証券取引委員会(SEC)に勝訴しました。これを受けて、8月29日にビットコインは$26,060から$28,122へ3時間もしないうちに急騰 、この12ヵ月での最大の伸び率でした。しかし、これは束の間の興奮で、SECはビットコインETFのスポット登録申請の検討を10月まで延期する決定で反撃しました。このため、ビットコインは$25,500のサポート圏内に戻りました。
テクニカル分析に目を向けると、このサポートは0.382のフィボナッチレベルに相当します。このレベルを下回れば、$21,700: フィボナッチレベルの0.618に下落につながる可能性があります。Fairlead Strategiesのアナリストは、 8月末にビットコインの月足チャートにはストキャスティックス・オシレーターで買われ過ぎ圏内から抜け出したことが確認され、強気筋の失望になると述べています。アナリストは、このようなシグナルが2017年末や2021年はじめに見られたように一時的なピークを示すことが多いと見ています。"下落[ストキャスティックス・オシレーターでの]は、底値が長引くかもしれないことを示している。一目均衡表の雲の上にレジスタンス(~$31,900)があることを考慮すると、特にこの傾向にある" とFairlead Strategiesのレポートで述べています。
通称Tolberti というアナリストによれば、BTCチャートに "三尊天井" が現れているので、さらなる価格下落の恐れがあります。また、ビットコインが200週移動平均線(MA)の下で取引されていることも、弱気トレンドを裏付ける根拠です。そのため、Tolberti はビットコインが$10,000まで下落して、2024年3月に反転する可能性があると予想しています。
コインテレグラフのアナリストもマイナス予想です。事実、ビットコインのデリバティブは弱気な傾向を見せ始めています。BTC の価格チャートを見ると、グレイスケールの勝訴後も投資家のセンチメントは向上していないことに疑いの余地はありません。そのため、アナリストはビットコインの相場がこの数週間で$22,000 まで下落すると予想しています。
コインテレグラフは、ビットコインのスポットETFの立ち上げ延期だけでなく、Binance やCoinbase のような取引所に対する米国の規制措置も影響しているとした見方をしています。複数の情報筋は、米司法省(DOJ)が世界最大の取引プラットフォームを告発し、犯罪捜査を開始する可能性が高いと断言しています。容疑はマネーロンダリング支援とロシア企業に対する制裁違反関連です。
現在、市場関係者は途方にくれており、何が起こるかわからない状態にいます。規制当局の不確実性は弱気筋には有利です。コインテレグラフによれば、デリバティブ市場は恐怖と疑心暗鬼に満ちており、下落に賭ける者にとっては好都合だといいます。
私たちは以前、中長期的な市場成長の大きなきっかけが、ビットコインのスポットETFの立ち上2024年4月に予定されているビットコイン半減期であるとお伝えしました。
この夏、大手金融機関8社がビットコインETFを介した暗号資産市場への参入をSECに申請しました。ブラックロックのほか、インベスコやフィデリティといったグローバルな資産運用会社も含まれています。ある試算によると、ETFの立ち上げ後の6ヵ月までに暗号資産の新たな需要は50億ドル-100億 ドルにもなる見込みでBTC の1コインあたりが$50,000-120,000 まで上昇する可能性があります。
SECは申請の審査を秋までに延期する決定しましたが、承認される可能性はかなりあります。何しろブラックロックは雑魚ではなく世界的な巨大投資会社であり、米国当局との関係も良好だからです。2020年にFRBがアメリカ経済を支援するためにETFを通じて証券を購入することを決定したとき、その大半がブラックロックファンドに流れたことは注目に値します。
興味深いことに、この会社自体が承認される可能性が高いと見通しています。これは、同社がビットコインとマイニング企業の株式の両方を購入していることからも明らかです。8月中旬にブラックロックは主要なマイニング企業4社の株式を総額億ドル以上費やして取得したことがわかりました。ブラックロックのCEOであるラリー・フィンク氏は、ビットコインはデジタル・ゴールドであり、潜在的にインフレから保護するための国際的資産であると述べています。
Altana Digital Currency Fundの最高投資責任者であるアリスター・ミルン氏は、スポットビットコイン上場投資信託(ETF)が承認されなくても、ビットコイン価格は$100,000になる可能性があるとした見方をしています。同氏の見解では、ETFの話題は市場関係者の注意をそらすだけだといいます。ミルン氏は、米国の銀行セクターの問題、連邦準備制度理事会の利上げ終了に伴うリスク資産の安定化、暗号資産マイニングセクターの収益性の向上がビットコインの価格を上昇させると確信しています。
仮想通貨取引所 BitMEXの設立者であるアーサー・ヘイズ氏も銀行セクターの問題により、ビットコインは大きく成長すると思っています。同氏によれば、連邦準備制度理事会が特にシリコンバレー銀行の"救済" を含んだ銀行セクターを安定させるために250億ドルのプログラムを開始した後、強気局面が始まりました。ヘイズ氏は、このような状況がトレーダーをビットコインのような供給が限られた資産に集中させたと言い切っています。現在、このことを考慮している市場関係者はごくわずかに過ぎませんが、その数は増えて、今後6-12 ヵ月にはビットコインは新たな上昇を迎えると確信しています。
2つめのきっかけである半減期については、ブロガーでアナリストのラーク・デイビス氏がビットコインの現在の価格がこのことにより、500-600%上昇の $150,000から$180,000あたりになる可能性があると信じています。しかし、半減期まで7ヶ月以上ある中で、投資家のリスク資産に対する意欲に大きな影響を及ぼす可能性のある2つのイベントが控えています。9月13日(水)の米国のインフレ・データ発表と9月20日のFRBの会合です。
このレビュー執筆時である9月8日(金)の晩のBTC/USD は$25,890付近で取引されています。暗号資産市場の時価総額は1兆4300億ドルで、1週間前の1兆4800億ドルからわずかに減少しました。ビットコインのCrypto Fear & Greedインデックスは、'恐怖' 圏内のままで、1週間前の40ポイントから46 ポイントとなり、'中立' 圏内に近づいています。
最後は、人工知能からの予想です。移動平均収束ダイバージェンス(MACD)、相対力指数(RSI)、ボリンジャーバンド(BB)などの複数のテクニカル指標を使用したPricePredictions プラットフォームのAIの計算だと9月30日のビットコインの価格は$26,228です。このような人工知能が信頼できるものかどうかは、近いうちにわかることになります。
NordFX Analytical Group
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