EUR/USD: このペアは 1:1 のパリティになるのか?
- 2023年の米国経済は、積極的な利上げに事実上耐えてきました。市場が予想していた景気後退は今のところなく、FRBはタカ派的金融スタンスを維持できています。これにより国債利回りは急騰、米ドルはかなり上昇しました。国債10年利回りは、2020年3月以降46%も急落、米中央銀行による積極的な金融引き締めの中、1981年に見られた下落幅の2倍となりました。ドルインデック(DXY)に関しては、年間での重要な水準である100.00超えである一方は、EUR/USD は6月の高値から6.5%下落しました。
3月3日(火)の米国債10年利回りは、4.88%でした。多くの市場関係者は、5.0%の利回りが米国経済のターニングポイントとなり、FRBは ハト派的方向転換に迫られる可能性があると見ています。しかし、これは単なる予想で現実離れです。同じ日の火曜日に、クリーブランド連銀のロレッタ・J・メスター総裁は、インフレ率は2025年末までに目標水準である2.0%に達する見込みであると述べました。メスター総裁は、金利をすぐに引き下げる計画はなく、また、現在の経済の状況が安定すれば、次回の連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げを支持する可能性が高ことを述べました。
先週の前半に発表されたマクロ経済データは冷え込みを示していました。ADPレポートは、民間部門の雇用者数が2021年1月以来最も低く、予想の15万3,000人に対しわずか8万9,000人にとどまりました(前月の18万人から減少)。非製造業購買担当者景気指数は、9ヵ月連続の上昇でしたが、9月は54.5から53.6に落ち込み減速でした。製造業部門については、PMIは49.0で購買担当者景気指数は縮小傾向です。前回の47.6から改善したものの、景気縮小を示す50.0を下回ったままです。この結果、国債利回りは下落、EUR/USDは株価指数(S&P 500、ダウ・ジョーンズ、ナスダック) を伴って上昇に転じました。トレーダーは、通常どおり、毎月第一月曜日の9月の労働市場の報告(10月6日)を控え、ショートポジションの決済を選択しました。下に詳細があります。
米国の最新統計が印象的でなかったとすれば、ユーロ圏の数字はさらに悪いものでした。10月4日(水)のユーロスタットの公式データによると、8月の小売売上高は前月比1.2%減で、7月の0.1%減と比較して低下しました。市場コンセンサスでは0.3%の減少にとどまると予測していました。年ベースでは、小売売上高は2.1%減となり、7月の1.0%減と市場予想の1.2%減を超えています。ユーロ圏の月次生産者物価上昇率(PPI)は7月の0.5%から8月は0.6%に上昇しました。
欧州中央銀行(ECB)のフィリップ・レイン・チーフ・エコノミストは、ユーロ圏のインフレ見通しについて、" 2%のインフレ目標は、4%の目標ほど早くは達成できない" と慎重な見方を示しました。ECB理事会のピーター・カジミール委員はやや楽観的でした。"ユーロ圏のコアインフレは我々の予想を裏付けています" 、 "縮小傾向です。[ただし]、 インフレ率の低下にはもう少し時間がかかります" と同氏は述べています。カジミール氏は、9月のユーロの25ベーシスポイントの利上げが最後だと見方をしています。
今後の金融政策に関して、ECBの指導部ではコンセンサスがないことを以前にお伝えしました。これについて、ECB理事会メンバーのイザベル・シュナーベル氏は、最終的にはさらなる利上げが必要になる可能性があると述べて、ピーター・カジミール氏に反論しています。同氏は、ECBは現時点で深刻な景気後退の予想をしていませんが、今後の"景気後退の否定はできない"と付け加えました。
ユーロの借入コストが上昇するという見通しが不透明なままであれば、現段階での利下げは絶対にありえません。これは、10月5日(木)にECBのルイス・デ・ギンドス副総裁が利下げに関する議論は時期尚早だと述べたことによって確認されています。FRBもタカ派的なスタンスからハト派的なスタンスに転じる予定はないため、現在、ドルは5.50%、ユーロ4.50%でドルが優位となっています。ロイターの専門家コンセンサス予想では、EUR/USD は10月中に$1.0400 に下落、調査対象のアナリストの20人のうち1人は1:1 のパリティを予想しています。それでも、アナリストはEUR/USD が今後1年間で約6%上昇すると予測しています。
先週のハイライトは米国の雇用統計でした。ブルームバーグの専門家は、9月の新規非農業部門雇用者数(NFP)は8月を下回ると予想していました: 前月の18万7000人に対し7万人。実際には、この数字は 33万6000 で、予測のほぼ 2 倍でした。 一方、失業率は3.8%で横ばいとなりました。
米国雇用市場の健全性を裏付けるこのデータの発表後、EUR/USD は当初下落しましたが、その後すぐに持ち直し、さらに上昇しました。この結果、このペアの終値は1.0585レベルでした。このレビュー執筆時である10月6日の晩現在、1週間前と同じでアナリストの意見は等しく分かれています: 3分の1がさらなるドル高予想のEUR/USDの下落、3分の1が上方調整、残りの3分の1が中立です。
テクニカル分析では、D1チャートのトレンド系の 65%が弱気(赤)で35%が 強気(green)支持です。ほとんどのオシレーター系 (60%) では、引き続き米ドルの支持で赤になっています。ユーロ支持は10%に過ぎず、このうち半数は買われ過ぎの状況を示しています。残りの30%は中立の立場です。
このペアの直近のサポートは、1.0550-1.0560付近、続いて、1.0490、1.0450、1.0375、1.0255、 1.0130、 1.0000です。強気筋のレジスタンスは1.0600-1.0615付近、そして、1.0670-1.0700、 1.0745-1.0770、1.0800、 1.0865、 1.0895-1.0930と続きます。
来週は、10月11日(水)にドイツ(CPI)と米国(PPI)のインフレデータが発表されます。同日に、前回のFOMC議事録が公表され、今後の金融政策に対する委員の見解が投資家に示されことになります。10月12日(木)は、米国の消費者物価指数(CPI)が発表されるため、ボラティリティが大きくなる見込みです。また、木曜日は、通常通り、米国の失業保険新規申請件数が発表されます。今週は、10月13日のミシガン大学の消費者信頼感指数が発表されて終了となります。また、10月9日(月)はコロンブス・デーのため米国の祝日となります。
GBP/USD: 9月のワースト通貨
- 9月のイギリスポンドはG10 の中で最悪のパフォーマンスでした。10月5日(木)にイングランド銀行(BOE)がイギリスの賃金が大幅に上昇していることを示す報告書を発表しました。また、今後1年間の賃金上昇に対する予想も8月に比べると高くなっています。
確かに、最近のインフレ率の落ち着きは好ましいことです。しかし、ドイツのコメルツ銀行のエコノミストは、賃金上昇の動きはインフレがイングランド銀行の予想よりも頑なである可能性を示していると述べています。
同じく10月5日に発表された調査結果によると、多くの市場関係者はイングランド銀行が物価上昇に対処する十分な措置を講じていないとした見方をしています。一方、日本の三菱UFJ銀行のストラテジストは、"イングランド銀行が既に金融政策の引締めをやり過ぎていること" を主張しており、"他の主要先進国と比べて金利が下がる可能性がある" と述べています。意見が異なっていることは明らかですが、どちらもイギリスポンドへの圧力は続くとした意見については一致しています。少なくても、インフレ率の下落が安定するとした説得力のある証拠が見つかるまではです。
先週のGBP/USD の始値は、1.2202 レベルで、10月6日(金)の米国雇用統計の発表を前に、ほぼ同じポイントまで戻りました。堅調な非農業部門雇用者数(NFP)データで一時的なドル高となりました。
今週は、ユーロが強く、このペアの終値は1.2237でした。しかし、この2週間のチャートでは、横ばい傾向が示されています。このペアの直近のアナリストの予想は次のとおりです: 40%が強気、 40%が弱気、残り 20%が 中立です。D1チャートのトレンド指標では、65%が赤の一方、 35% が緑です。オシレーター系では、40%がこのペアの下落を支持、 10% が上昇を支持(全てが買われ過ぎ圏内)、残り50%が中立です。
下落推移では、このペアのサポートは1.2195-1.2205、1.2100-1.2115、1.2140-1.2150、1.2085、 1.2040、1.1960、1.1800です。上昇すれば、 1.2270、1.2330、1.2440-1.2450、1.2510、1.2550-1.2575、1.2600-1.2615、1.2690-1.2710、1.2760、 1.2800-1.2815でレジスタンスに直面します。
10月12日(木)にイギリスの最新のGDP が発表予定です。7月は-0.5%の減少でしたが、8月は前月比0.2%の増加となる見込みです。イギリス関連のそのほかの重要な経済イベントについては、来週の予定はありません。
USD/JPY: 本当に介入だったのか ?
- 前回のレビューでは、150.00が"マジック"ナンバーとして日本の金融当局の為替介入のシグナルになるだろうと述べました。確かに、10月3日(火)のUSD/JPY は、150.15の高値を付けた後、数分以内に300 ポイントの急落、そして、147.28で下げ止まりました。
市場の一般的なセンチメントでは、日本銀行(日銀) が遂に口先介入ではなく、実際の介入に踏み切ったということです。興味深いことに、日本の鈴木俊一財務大臣は、実際に為替介入があったかについてはコメントを控えました。財務大臣は、"為替市場での推移が行き過ぎたものかどうかについては多くの要因によるものである" や"政府がこれらの問題にどのように対処するかについての変更はなし" と単に曖昧な発言をしました。要するに、好きなように解釈すればいいということでしょう。
もちろん、重要な水準である150.00を突破した際にストップ注文が大量に発動された可能性は否定できません(このような "ブラックスワン" は以前にも見られています)。しかし、日本の金融当局の介入がなければ、このような事態はなかったと思われます。
急落後、相場は反転して、現在は 下から上昇トレンドラインに近づいています。日銀の介入 (実際に介入したとしても)が目標を達成したかどうかはわかりません。昨年秋の同様のシナリオでは、このような措置は一時的に影響するだけで、市場の状況は2、3ヵ月で元の状態に戻りました。しかし、今回の動きがUSD/JPY 強気派のかなりの抑止力となり、日本円は取り戻すことができるのでしょうか? 特に規制当局が積極的に介入して、150.00レベルまたはそれ以上への上昇を阻止するなら、可能性はあるでしょう。
このペアの今週の終値は 149.27 レベルでした。10月10日のイベントで活気づいた調査対象のアナリストの100% は、さらなる円高のこのペアの下落を支持しました (このように全員が同一意見であっても予想には保証がないことに注意しましょう)。D1 チャートのトレンド指標では、反対の見方です。100%が緑のままです。 オシレーター系では、やや少なく、90%が緑で10%が赤です。 直近のサポートは、149.15付近、 そして、148.80、 148.30-148.45、147.95-148.05、146.85-147.25、145.90-146.10、145.30、144.45、 143.75-144.05、142.20、140.60-140.75、138.95-139.05、 137.25-137.50と続きます。直近のレジスタンスは、149.70-150.15、そして、 150.40, 151.90 (2022年10月の高値)、 153.15です。
来週は、日本経済関連の重要なデータ発表の予定はありません。なお、10月9日(月)は、スポーツの日で祝日になります。
暗号資産: アップトーバーのターゲットは$30,000
- 第3四半期が終了した9月30日、BTC/USD の取引では12% の下落を目にすることになりました。7月と8月は下げたものの、ビットコインは2016年以来のプラスで、1ヶ月で$26,012から$26,992へと上昇しました。 TradingViewデータでも 暗号資産セクターの市場時価総額が6.1%上昇して、 9月初めの約1兆2900億ドルから月末には1兆9200億ドルになったことを強調していました。
Crypto Banterの創設者で経験豊富なトレーダーのラン・ノイナー氏は、9月のビットコインの好調なパフォーマンスの重要性を主張しました。 同氏は、2015年のような半減イベントの前の年には、歴史的に9月に利益が出た後、第4四半期に70%の急騰が続いていると指摘しました。Bitfinexのアナリストもこれに同意で、9月が緑色であった場合、10月に強気トレンドが発生することが多いことを述べました。
Bitfinex Alpha レポートでは、先物市場指標を引用して、10 月の楽観的な予測をさらに裏付けています。データは、現在の価格が短期保有者と長期保有者のバランスによって維持されていることを明らかにして、経験豊富な長期投資家がコインをしっかりと保有していることを示しました。また、6ヵ月から12ヵ月間保有されているビットコインは休眠状態で、3年以上経過したBTCの供給は2023年2月以降活動がないままです。
ネットワーク分析会社のSantimentは、10から 10,000 BTCを保有するクジラやシャークと知られる大口ウォレットは、ビットコインやテザー (USDT)をこの6ヵ月静かに蓄えています。これらの総保有量は現在、2023年の最高値である1,303万BTCとなっており、ビットコインの長期的な見通しが明るいことを示しています。
知ってのとおり、9月の次は10月で、多くの投資家が期待を寄せています。統計によると、この8年、ビットコインが10月をマイナスで終えたのは2018年だけです。それ以外の年の月間利益は5.5% から48.5%でした。ビットコインの歴史的全体で見ると、10年中8年が10月は平均22%のプラスで終わっています。この時期的現象は、"アップトーバー"と呼ばれています。
10月の初めに、今まで通りに "アップトーバー" が2023年も続くだろうという期待が生まれました。10月2日(月)、ビットコインは$28,562前後の高値となりました。しかし、トレーダーの利確により、同じ日の後半には$27,500圏内までの下落で失望することになりました。ブルームバーグのストラテジスト、マイク・マクグローン氏は、この反落は避けられなかったとした見方をしています。デジタル通貨が積極的に上昇すると、圧力が高まる傾向があります。大きなボラティリティは資産の急騰による売り手側の活発さが伴なっています。
マクグローン氏は、ビットコインが近い将来に$30,000を達成するかについては懐疑的です。ビットコインのさらなる上昇の妨げとなっている要因は、米国当局の厳しい方針です。証券取引委員会(SEC)の抑圧的な動きが、機関投資家の暗号資産業界の参入を妨げています。世界的な景気後退リスクもリスク選好意欲を低下させています。このようなシナリオでの株式市場は上昇しないと強調しており、これを受けて、デジタル資産も苦境に立たされると付け加えています。
QCPキャピタルのアナリストも、BTC/USD のレジスタンスレベルは、$29,000から$30,000という見方をしています。同社では、季節的に良好であるにもかかわらず、再び$25,000 への水準も否定できないと述べています。
しかし、誰もがこの見解に同意というわけではありません。例えば、ハンドルネーム"Bluntz"というトレーダーは、ビットコインが"公" に強気領域に突入したので、$24,000への下落予想はすべて根拠がないと確信しています。同氏の見解では、ビットコインの$27,000 を上回る上昇が、ビットコインが現在強気相場にいることを裏付けています。"弱気の偏見を捨てる時期が来たと思う" とBluntzは述べています。
別の有名なトレーダー、アナリスト、そしてベンチャー企業Eightの創設者であるマイケル・ヴァン・デ・ポッペ氏は、10月だけでなく、2023年第4四半期全体についても楽観的です。この最終四半期の成長により、ビットコインは$40,000台に上昇すると予想しています。しかし、過去のデータでは10月はかなり良好ですが、ビットコインの四半期ごとの推移については、それほど明確なものではありません。例えば、デジタル資産は2017年に142.2%上昇しましたが、翌年は3ヶ月でほぼ半分の価値を失いました。
前回のレビューでは、CoinCodex の人工知能がビットコインはハロウィン(10月31日)までに$29,703になると予想したことをお伝えしました。 今回は、別のAI、PricePredictionsのプラットフォームの予想からも同様の結果が得られました。 分析によると、ビットコインの価格は10月31日に心理的に重要なマークである$30,403 付近での推移になるようです。この予測は、移動平均収束ダイバージェンス(MACD)、相対力指数(RSI)、ボリンジャーバンド(BB)などの主要なテクニカル指標が使われています。
ビットコインの競合相手として知られるイーサリアムについては、Dave the Wave として知られるアナリストが少なくとも2023年末までビットコインに対して下落となると予想しています。Dave the Wave は、ETH/BTCのトレンドチャートを公開して、イーサリアムの下落を示す下降三角形を強調しています。
2017 to 2018, Dave the Waveは、2017年から2018年にかけてのトレンドとの比較から、イーサリアムはビットコインと比べて、特にビットコインの堅調な上昇により、大幅な切り下げを迎える可能性があると断言しています。イーサリアムの上昇の可能性は、ビットコインの価格がピークになった後ではじまると予想される"アルトコインシーズン"と呼ばれるものに限定されるようです。
このレビュー執筆時の10月6日(金)の晩、 BTC/USD は $27,960、ETH/USD は$1,640、そして、, ETH/BTCは 0.0588で取引されています。暗号資産市場の時価総額は1.096兆ドルで、1週間前の1.075兆ドルから増加しています。ビットコインのCrypto Fear & Greedインデックスは、この1週間で2ポイント上昇して、50ポイントの中立です。
NordFX Analytical Group
注意: この内容は金融市場への投資推奨やガイドラインではなく情報提供のみを目的としています。金融市場の取引には、リスクが伴うため入金した資金のすべてを失う可能性もあります。
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