2023年11月6日-10日のFXと暗号資産

EUR/USD: ドルにとって悪い一週間

  • 週を通じて、EUR/USD はドルインデックスDXYと伴に、波に乗った上下の推移でした。週明けは、、欧州の速報値の発表がありました。ユーロ圏の第3四半期のGDPは年率0.1%にとどまり、予想の0.2%にも前回の0.5%にも届きませんでした。また、10月の消費者物価指数(CPI)は2.9% (前年同月比)で、予想の, 3.1% や先月の4.3%にも届きませんでした。

    10月26日の欧州中央銀行の会合で理事会のメンバーたちは、想定どおりの4.50%に金利を据え置きました。今回、市場関係者は11月1日(水)のFRBの連邦公開市場委員会(FOMC)の決定を心待ちにしにしていました。FOMC前夜、中東における政治情勢の緊張感からドルは安全資産として支持されました。また、米国のマクロ経済指標が好調だったことでもドルは支持されました。米国の第3四半期のGDPは4.9%増で従来の2.1%増を大幅に上回りました。ほかにもADP民間部門の雇用データも予想外でした: 民間部門の雇用者数の変化は、前月の8万9,000人に対して11万3,000人に達しました。

    インフレ率が目標水準である2.0%には、まだほど遠いことから、市場関係者は、このような状況では連邦公開市場委員会(FOMC)が金融引き締めを継続する可能性が高いとの見方をしていました。こうした状況で、米国債10年利回りは、5.0% 水準に再び近づき、ドルインデックス (DXY)は 107.00に上昇しました。

    しかし、11月1日はドルの強気派に完全なる失望をもたらしました。FOMCは2ヶ月連続で政策金利を5.50%に据え置いたのです。さらに悪いことに、9月会合後、借り入れコストが年末までに5.75%に上昇すると市場が見込んでいた場合、現在、その可能性は14%に急低下しています。また、今回の会合後の記者会見でのジェローム・パウエルFRB議長の発言によってもドルは支持されませんでした。

    この状況は、恒例の毎月第一金曜日に発表される、つまり、11月3日の米国労働統計局(BLS)のデータによって是正される可能性がありました。しかし、10月の非農業部門雇用者数(NFP)は15万人増にしかなりませんでした。この数字は、市場予想の18万人増と33万6,000人増から29万7,000人増に調整された9月改定値の両方を下回りました。平均時給の変化で測定される年間インフレ率は4.3%から4.1%に低下しました。ドルの強気派の落胆する結果により、ドルインデック(DXY) が105.09に急落する一方で、EUR/USD は6週間ぶりの高値1.0718でした。

    週明けに発表されたISMサービス部門PMI指数によると、10月の米国サービス部門の企業活動の成長ペースは鈍化しました。9月のPMIは53.6から51.8へ下落しました。この値は市場予想の53.0を下回りました。  より詳細なデータによると、サービス価格指数(インフレ要因)は58.9から58.6へとわずかに低下、雇用指数は53.4から50.2に低下でした。これを受けて、ドルは下落を続け、このペアの今週の終値は1.0730でした。

    カナダのスコシアバンクのストラテジストによると、短期的にEUR/USD は1.0750に上昇見込みです。全体的な直近の見通しについては、次のように意見がわかれています: 45%がドル高支持で、60%がユーロ高支持です。 テクニカル分析では、D1のオシレーター系の35%が下向きを示し、このうち三分の一が買われ過ぎの状況を示しています。 トレンド系では、よりはっきりしています: 85%が上向き、下向きを示しているのは15%にしか過ぎません。 直近のサポートは、1.0675-1.0700付近で、これに続いて、1.0600-1.0620、1.0500-1.0530、1.0450、1.0375、1.0200-1.0255、1.0130、 1.0000です。強気筋は、 1.0745-1.0770、そして、 1.0800、1.0865、1.0945-1.0975、1.1090-1.1110でレジスタンスに直面します。

    この5日間と違って、来週の経済指標カレンダーでは、重要なイベントはかなり少なくなります。11月8日(水)、ドイツのインフレ率(CPI)とユーロ圏の小売売上高の発表があります。また、この日は、FRBのジェローム・パウエル議長の講演が予定されています。パウエル議長の講演は9日(木)にもあります。通常どおり、木曜日は米国の新規失業保険申請件数のデータも発表されます。

GBP/USD: ポンドにとって良い一週間

  • 各国の中央銀行の会合の結果を見ると、世界的な金融引き締めの流れに終止符が打たれた感じです。ECBやFRBも金利据え置きです。 11月2日の会合で、イングランド銀行(BoE) も同じように政策金利を2回連続で5.25%に据え置きました。規制当局によると、このような決定はイギリスの経済と雇用の回復になるはずだといいます。短期インフレ予想は上方へと修正されました。しかし、中央銀行の指導者たちは、第3四半期のインフレ率が6.7%に低下で8月の予想を上回り、目標水準である2.0%は2025年末までに達成される見込みであることを述べました。

    イングランド銀行が金利据え置きにしたにもかかわらず、中央銀行指導部の9人中3人が利上げに賛成したので市場はこの決定をタカ派的と受け止めました。 さらに、イングランド銀行のアンドリュー・ベイリー総裁は、利下げを検討するのは時期早々であることを伝えています。総裁は、"金融政策は長期にわたって限定的であり続けるだろう" と述べました。投資家は、このようなフォワード・ガイダンスを中央銀行が市場に影響を与えるために使うことを知っているので、規制当局がすぐに金融緩和政策に切り替える可能性は低くいでしょう。もちろん、インフレ率が目標水準に向かわない場合は、イングランド銀行が約束を守る保証はありません。しかし、現在のとこと、市場はアンドリュー・ベイリー総裁を信じており、それがイングランド通貨を支えています。

    11月3日の米国の労働市場統計発表後、ポンドに突然、最も強い強気の勢いが起こりました。その瞬間、GBP/USD は急騰、その後も上昇は続き、1.2380で今週を終えました。スコシアバンクのエコノミストによると、イギリスポンドの短期的な取引モデルは有望だそうです。同行では、7月中旬以降のポンド安の中でポンドに対する需要が増加していることに注目しており、GBP/USD が1.2450水準に上昇することも否定していません。今後の中央値予想では、35%のアナリストが上昇を支持、 50%が1.2000ターゲットに向かっての推移の見方で、残り 15%が中立です。 D1のタイムフレームでは、トレンド系の75%が上昇の緑を示しており、残りの25%が赤になっています。オシレーター系も同じです: 75% (4分の1が買われ過ぎ圏内)が上昇、25%が下落支持です。下落の場合、サポートは1.2330、1.2210、1.2145、1.2040-1.2085、1.1960、 1.1800-1.1840、 1.1720、1.1595-1.1625、1.1450-1.1475。上昇になれば、1.2390-1.2425、1.2450-1.2520、 1.2575、1.2690-1.2710、1.2785-1.2820、1.2940、 1.3140がレジスタンスになります。

    11月8日に予定されているイングランド銀行のアンドリュー・ベイリー総裁の講演と11月10日の第3四半期のGDP速報値はイギリス経済関連のイベントとして注目されます。

USD/JPY: 円にとって平凡な一週間

  • ECB、FRB、イングランド銀行が金利据え置きなら、日本ではどのようなことが期待されるのでしょうか?もちろん、日本銀行(日銀)は10月31日(火)の会合で金融政策のパラメーターを維持する決定をしました。 日銀は長い間、この姿勢を貫いてきました。マイナス0.1%の金利水準だけでなく、10年国債(日本国債)も据え置きにしました。市場関係者の一部では、インフレ率が上昇した後、日銀が利回りの上限を1%から少なくとも1.25%に引き上げるのではないかと期待をしていました(ちなみに、同様の米国債の利回りは5.0%に近い)。しかし、日銀はインフレ圧力の上昇の明らかな兆しを無視し続けました。東京都では、10月のCPIは 2.8%から3.3% に上昇しました(前年比) 。また、鉱工業生産の伸び率が重要であると当局者によって確認されていたにもかかわらず、指数は年率換算で-4.4%から-4.6%に低下しました。

    これら全てにより、USD/JPY は 151.71の高値に上昇しました。FRBの会合結果や米国の労働市場のデータがなければ、このままだったでしょう。この結果、週明けの始値は149.63 で終値は149.34でした。このペアのボラティリティの大きさを考慮すると、この結果は妥当だと思われます。

    オランダ最大の銀行グループであるINGのエコノミストは、円相場は150.00にそれほど遠くないところで年末を終えると見込んでいます。直近の見通しについては、アナリストの65% が円高予想、35%が中立、このレビュー執筆時では、151.00を超える予想はありませんでした。 テクニカル分析では、今回、かなり混沌としています。D1のタイムフレームでは、トレンド系の50%が緑、同数が赤です。オシレーター系では、3分の1が上昇、3分の1が下落、3分の1が中立です。直近のサポートは、148.45-148.80、に続いて、146.85-147.30、145.90-146.10、145.30、144.45、143.75-144.05、142.20です。直近のレジスタンスは、150.00-150.15、に続き、150.40-150.80、151.90 (2022年10月の高値)、 152.80-153.15となります。

    来週は、日本経済に関する重要な経済データの発表予定はありません。

暗号資産: 過去と未来への重要な洞察

  • 最初に、この1ヶ月について少し述べます。一つ目は、 10月31日(火)はビットコインの誕生の日でした。2008 年のこの日、サトシナカモトというペンネームの何者かが"ビットコイン: A Peer-to-Peer Electronic Cash System " のタイトルの文章を発表(公表)しました。また、ビットコインは2009年1月3日に仮想通貨として市場に登場しました。その日、ブロックがマイニングされ、タイムズ紙に短い文章を抜粋した記事が紹介されました: "タイムズ紙2009年1月3日号 首相は銀行救済の2度目の瀬戸際"。 2009年1月12日、ナカモトはネットワーク上で開発者のハル・フィニー氏に暗号資産を送るといった初めての取引をしました。同年、ビットコインはニューリバティ・スタンダート取引所に上場されました。当時は、1309 BTC (現在の5500万ドル)を$1で購入することができました。

    2つ目の重要な出来事は、10月の最終日ではなく、丸1ヵ月でした。"アップトーバー効果" (英語の "アップ" と "オクトーバー"を掛け合わせた造語)です。CoinGeckoの専門家による観測によると、過去10年のうち8年間の暗号資産市場では前月と比較して10月に上昇をしています。平均で"アップトーバー効果"により、 デジタル資産の時価総額は14%上昇、2022年の7.3%から2021年の42.9%に上昇しています。例外は、1ヶ月でそれぞれ12.7%と8.3%下落した2014年と 2018年です。

    今年は10月1日に$27,000でスタートしたビットコインは、10月24日に $35,000 をチャレンジして、およそ30%の上昇を示しました。10月のビットコインの終値は$34,545でした。ソラナ(SOL)やチェーンリンク(LINK)などのアルトコインのいくつかも大幅な上昇をしました。これらのすべての暗号資産は、USDペアになっており、NordFX でも取引可能です。

    最近、ビットコインが逆相関や直接相関にならず、米ドルや主要なリスク資産からも"分離"していることは既に述べました。これは、先週も同様でした。デジタルゴールドは、米ドルの上昇とともに上昇してきましたが、S&P500のような株価指数の上昇に反応しませんでした。その結果、 BTC/USD は、緩やかに上昇を示した7日間でした。

    ベンチャー企業Eightの創業者であり、MN TradingのCEOであるマイケル・ヴァン・デ・ポッペ氏によると、ビットコインは正式に強気相場局面に入ったといいます。同氏は、$50,000に上昇後、調整を経て、史上高値 (ATH)になると信じています。 ヴァン・デ・ポッペ氏は、ビットコインが$38,000でレジスタンスに直面するものの上昇を続け、2024年1月には$45,000-50,000 になると予想しています。しかし、同氏は、ビットコインの$33,000 への下落の可能性も残っており、ロングポジションを建てる絶好のチャンスだと見ています。情報リソースLook Into Bitcoinのクリエーターも $34,000の相場レベルを超えれば、 強気相場の初期段階が始まったと考えています。次のターゲットは、$41,900と $65,050です。

    今後、そう遠くはない未来において、暗号資産市場に大きな影響となるものは何でしょうか?重要なものを挙げ、その多くが米国内で起きていて、もしくは、起きるであろうということに注目しましょう。

    まず、一つが米連邦準備制度理事会 (FRS)の金融政策です。デジタルゴールドの"黄金期"は、COVID-19 が大流行した時に文字通り、米国の規制当局が経済を支えるために安価な紙幣を市場に流し込むことで、その一部が暗号資産のようなリスク資産にも流れてきたことです。2020年3月に$6,500で始まったBTC/USDは、1年後の2021年4月には900%の上昇を示し$64,800の高値となりました。その後、米国政府が引き締め政策や利上げに舵を切り、2022年までには、このペアは$16,000付近で取引されました。現在、暗号資産はFRBが再び緩和へ移ることを待ちわびており、来年に切り替わってほしいと願っています。

    米国政府の規制機関は最近、暗号資産業界に大きなマイナス圧力をかけています。おそらく、2024年にホワイトハウスに新大統領が誕生すれば変化があるかもしれません。少なくても、候補者の何人かは、この業界の支援を約束しています。今のところは、SEC(証券取引委員会)に注目が集まっています。SECのトップであるゲーリー・ゲンスラー氏は、ビットコインだけを商品として認めても構わないと繰り返し発言しており、すべてのアルトコインは証券法の下で規制されるべきだというのが同氏の意見です。この圧力で、例えば、イーサリアムは価格推移でビットコインに大きく離されています。今年、このレビュー執筆時、 ETHは約 52%上昇でしたが、 ビットコインは2倍の約102%の上昇です。

    SECと暗号資産業界の代表たちとの裁判も注目を集めています。最近、ロイターとブルームバーグはSECがグレイスケール・インベストメンツに有利な判決を不服として控訴しないと報じました。また、SECがリップル社とその幹部に対する法的手続きを終了するという情報もあります。しかし、大手仮想通貨取引所のバイナンスとその代表との冷戦は継続中です。これを受けて、スポット市場でのバイナンスの株価は今年に入り55%から34%に下落しています。 米司法省がSEC側のより厳しい告発に協力すれば、暗号資産市場に大きな打撃となります。

    スポット BTC-ETF の出現も SEC 次第です。 JP モルガンの専門家によれば、このようなファンドのはじめての登録に関するSECの承認決定は、 "数ヶ月以内" と期待されています。"承認のタイミングは [...] 明かされていないままだが、[...]ARK インベストと21 Co.の申請最終期限-2024年1月10日前となる見込みだ。これは、SECが対応しなければならない様々な最終期限の中で最も早いものである" とJPモルガンの専門家は述べています。また、委員会が公正な競争を支援するために、すべての申請を一度に承認する可能性があるとも指摘しています。

    米国でBTC-ETFのスポットが間もなく開始されるとの期待は機関投資家の暗号通貨への関心を煽っています。ある試算によると、この関心は約15兆ドルで最終的にBTC/USD は$200,000に上昇する可能性につながります。スカイブリッジ・キャピタルのストラテジストは、さらに大きく、$250,000という数字を挙げています。しかし、アーンスト・アンド・ヤングのアナリストによれば、SECの壁により、機関投資家の関心はほぼ先送りです。

    ユーロ・パシフィック・キャピタルのCEOであり、著名な金の崇拝者であるピーター・シフ氏は反対の見解です。同氏によれば、スポットビットコインETFの最終承認は暗号資産の強気相場の終焉を意味します。現在、ビットコインは、投機家が規制当局の承認決定に賭けて価格がつり上がっているため、$35,000 前後での取引です。決定されてしまえば、このような投機の余地はなくなり、その前にビットコインが暴落しなければ、上昇はピークに達します。シフ氏の意見によると、暗号資産トレーダーは自分たちのコインの売却を始めており、SECが決定を下す前に利確をするとのことです。

    規制当局に左右されないものとしては半減期があります。2024年4月にブロック報酬が半減され、6,250BTCから3,125BTCに減少し、発行量の減少が予想されます。一部専門家によると、これは供給不足を招き、ビットコインを上昇させる強力なデフレ要因です。コイン供給量には限りがあるため、モルガンクリークデジタルの共同設立者であるアンソニー・ポンプリアーノ氏は、ビットコインの強気な展開に楽観的な見方を示すだけでなく、"世界で最も規律を守る中央銀行" と呼んでいます。Arkインベストの楽観的な予想によれば、2030年にBTC 50万ドルまで上昇する可能性があります。

    しかし、MNトレーディングのCEOであるヴァン・デ・ポッペ氏は、ビットコインが新高値を更新する前に、まず、4月の半減期後に長期にわたる調整や横ばいがあると予測しています。もっと、悲観的なのが通称Rekt Capitalというトレーダー兼アナリストで、BTC/USD は2024年3月に急落すると予想しています。半減期後に、こちらの専門家も調整があり、$24,000-30,000という低い取引幅の横ばい予想で、その後にようやく、このペアは6桁の水準に向かう放射線状の上昇局面に入るというのが、同氏の意見です。

    このレビュー執筆時の11月3日(金)のBTC/USD は$34,590で取引されています。暗号資産市場の時価総額は、1兆2900億ドル(先週が1兆2500億ドル)。Crypto Fear & Greed インデックスは72から65ポイントで強欲のままです。

    レビューの最後は不定期で面白いヒントをお伝えしている暗号資産ライフハックです。暗号資産のマイニングで発生する熱はどこで利用できるでしょうか? 正解はサウナです。ニューヨークのブルックリンにあるサウナでは、給湯のためにマイニング機器から発生する熱の利用をはじめました。サウナはアメリカで益々人気が高まっており、公共施設や企業活動の議論についての追加根拠としてマイナーに利点となります。そして、これは、北緯40度付近のニューヨークでのことです。このライフハックがノルウェーのような北の国でどれほど役立つかを想像してみてください!

 

NordFX Analytical Group

 

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