予想: 2024年のユーロとドルで予想されること

 

当社では、例年、年の瀬に世界的な大手金融機関による為替予想を公表しています。これを数年続けていることで、来年の見通しだけでなく、専門家の過去の予想を振り返り、正確性を評価することができます。

 

2022: はじめ

世界がコロナウィルスによる隔離状況の生活に慣れてきた頃には、戦争が始まりました。2022年2月にロシアのウクライナへの武力侵攻が始まり、これに続くロシアへの制裁が紛争地域から遠く離れた国々を含めた多くの国の経済問題を悪化させ、インフレに拍車をかけました。

EU諸国は紛争地域に近く、ロシアからの自然エネルギーに大きく依存していたため、また、核の脅威や紛争が自国の領土にまで脅かされるリスクにより、EU圏内の経済は大きな打撃を受けました。こうした状況で、欧州中央銀行 (ECB) は全面的な崩壊を避けるために、最大限の注意を払った対応に迫られました。米国はかなり有利な状況となり、FRBはインフレ圧力抑制に向けて3月16日に利上げサイクルを開始しました。これがドル高を促進させ、7月14日のEUR/USD は20年ぶりに1.0000のパリティラインを下回り、9月28日には0.9535の安値をつけました。7月中旬には、欧州中央銀行も徐々に利上げを始めました。その結果、EUR/USD は1.0700で2023年の新年を迎えました。

 

2023: どの予想がより正確だったか

コロナウィルスのパンデミックスが落ち着き始めた5月5日にWHOは COVID-19 が既に世界的な緊急事態ではないと宣言しました。徐々に、多くの国々で規制解除をはじめました。ウクライナの軍事闘争は長期化しました。インフレ抑制は徐々に成功の兆しを見せ始め、経済は利上げとエネルギー価格の高騰になんとか適応しました。世界的な大惨事は回避され、米国経済と考えようによってはユーロ圏経済のソフトランディングを予想する声が大きくなりました。

2022年の EUR/USD の最大変動幅は1,700ポイントでしたが、2023年は、この半分の828 ポイントでした。このペアの高値は7月18日に1.1275まで上昇しました。安値は10月3日の1.0447で、12月は1月の数字とそれほど離れていない1.0900-1.1000 圏内 (このレビュー執筆時)で終了しています。

では、アナリストたちの2023年の予想はどのようなものだったのでしょうか? 一番現実と離れていたのが、インターナショナル・ネーデルランデン・グループの予想でした。INGは 2022年のすべての圧力要因が2023年も続くと確信していました。エネルギー価格の高騰は引き続き欧州経済に大きな負担になるはずでした。また、FRBがECBよりも早く増刷すれば、さらなる圧力となっていました。このドイツの大手金融グループのアナリストによれば、1ドルあたり0.9500 ユーロが2023年第1四半期で、その後、上昇して、第4四半期は1.0000 のパリティの見込みでした。

経済予測機関のアナリストのEUR/USD 推移の第1四半期の読みは正確でした: 1.1160 (実際には、1.1033の上昇)の上昇を見込んでいました。しかし、その後は、着実に下落して、第3四半期には1.0050、今年は、 0.9790.で終わると予想していました。これは、大きく異なっていました。

しかし、的中しなかったのは弱気筋だけではなく、ユーロ/ドルの強気派も同じです。 例えば、フランスの金融コングロマリットのソシエテ・ジェネラルはドル安でこのペアの上昇支持でした。しかし、第1四半期末までに1.1500を上回るとした同行の予想は大きすぎました。ドイツ銀行のストラテジストは、1.0800-1.1500での変動予想でした。しかし、この見解では、FRBが2023年後半に金融緩和を開始した場合にのみ1.1500の上昇見込みであるということでした(現在、金融緩和がなかったことを知っていますが、金利は7月から5.50%の据え置き)。

最も正確な予測をしたのはバンク・オブ・アメリカとドイツのコメルツ銀行でした。バンク・オブ・アメリカの基本的なシナリオによると、米ドルは2023年の初めまでに高止まりして、その後は徐々に安くなり、FRBの一時停止後にEUR/USDは1.1000 に上昇するというものでした。コメルツ銀行の示したシナリオでは、"FRBの金利変更されることが見込まれていることとECBが利下げを 控えることを考慮すると[...], 2023年の EUR/USD のターゲットは1.1000," とこちらの銀行のストラテジストは述べていました。

 

2024: 来年に迎えるにあたって

来年の2024年のユーロとドルに待ち受けているものとは? このところの数多くの"サプライズ" と将来的な未解決の課題により予想は大きく変化することに注意することが重要です。 政治情勢、連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)の金融政策の方向性やペース、経済と労働市場の状況、インフレやエネルギー価格の上昇をどの程度コントロールすることが可能か、11月の米国大統領選挙では誰が選ばれるのか、ウクライナでのロシア侵攻や現在進行中のイスラエルとハマスの紛争はどのような結末をもたらすのか、米中のパワーバランスの疑問が残ったままです。これらの疑問の答えは、まだ、わかりません。不確定な材料が多いため、専門家の意見は一致していません。

最近のジェローム・パウエルFRB議長のハト派的発言やECBのクリスティーヌ・ラガル総裁のややタカ派的発言で市場はFRBが2024年に金融緩和政策と利下げを先にすると見ています。もし、市場が別の見方をするなら、米ドルへの圧力は続くでしょう。ソシエテ・ジェネラルは、ドル指数(DXY)が現在の102.50から100を突き抜け、97 ポイントまで下落する可能性があると見込んでいます。ロイターのアナリスト世論調査でも、来年は米ドル安が進むとされています。Investing.comのレビューでは、さまざまな政治情勢やマクロ経済の状況によりEUR/USD は1.1500になる可能性があると示しています。

UBSウェルス・マネジメントの基本シナリオでは、米国の経済成長の鈍化、インフレ率の低下、利下げ予想が株や債券を下支えするといいます。EUR/USD について、UBS は1.1200水準予想です。ドイツのコメルツ銀行の予想も1.1200です。同行のアナリストは、一時的にユーロ高になった後、下落すると予想しています。2024年6月までに1.1200まで上昇、その後2025年3月までに1.0800まで低下する見通しをしています。

INGのエコノミストは、2024年後半にもEUR/USDは1.1800に向けて上昇すると予測しています。しかし、この予想はFRBとECBの政策の方向性に基づいています。同行では、"金利差だけがEUR/USDの推移を決定する唯一の要因ではない " と述べています。ユーロ圏の低成長率と安定・成長協定の再導入に関する不安定な政治情勢は、今年のEUR/USD を1.0600付近で終わらせると伴に、2024年の高値水準が1.1800よりも1.1500付近になることを示唆しています。

フィデリティ・インターナショナル、JPモルガン、HSBCのエコノミストは、ECBやイングランド銀行などがFRBに先駆けて金融緩和をするとしたシナリオを否定していません。  

ゴールドマン・サックスのストラテジストは、2024年にドルの見通しが悪化する可能性はあるものの、強く安定した米国経済が通貨の下落を抑えると見込んでいます。ドルの価値は依然として高く、投資家は"長きにわたる強い" ドルに傾き、下落は取るに足らないものになるだろうと記載しています。2024年に150ベーシスポイントもの利下げをするには、米国経済は強すぎます。

ダンスク銀行、ウェストパック、HSBCも、2024年末までにドルはユーロと英ポンドに対して高くなると予想しています。ABN Amroの来年末の予想は 1.0500で、経済予測機関は1.0230の予想です。

***

中国の古い兵法書、"兵法三十六計 " では"すべてを予見しようとする者は警戒心を失う" と記しています。確かに、すべてを予測しようとすることは不可能です。しかし、確実に言えることが一つあります: この12ヵ月同様に、今後の12ヵ月も想定外の出来事が多いだろうということです。つまり、警戒を怠らなければ、幸運はあなたに味方をしてくれます。

2024 年の新年おめでとうございます! ご多幸をお祈り申し上げます。

 

NordFX Analytical Group

 

注意: この内容は金融市場への投資推奨やガイドラインではなく情報提供のみを目的としています。金融市場の取引には、リスクが伴うため入金した資金のすべてを失う可能性もあります

戻る 戻る
このウェブサイトではクッキーを使用しています。詳細は、クッキーポリシーをご覧ください。 クッキーを受け入れる