2024 年2月12日‐16日のFXと暗号資産の予想

EUR/USD: ドルは下落したものの反発が期待される

● 先週は重要なマクロ経済データが乏しく、市場関係者は新たな材料を模索して米国労働市場の状況やFRB高官の発言を分析しました。

2月2日に発表されたデータによると、1月の米国非農業部門新規雇用者数は(Non-Farm Payrolls) は予想の180,000に対して353,000人に増加しました。この人数は12月の333,000人に続き増えています。 失業率は3.7%のままですが、アナリスト予想では3.8%の増加を見込んでいます。賃金上昇率は、年間ベースで4.5% に上昇、市場予想の4.1%を大幅に上回りました。2月8日(木)に発表された報告書でも米国の失業保険給付件数は、前回の22万7000件から21万8000件の減少を示しています。

つまり、FRBのジェローム・パウエル議長の懸念は取り越し苦労で終わりました。以前、パウエル議長は、労働市場が急激に冷え込めば、金融緩和政策がかなり早まることを示唆していました。しかし、冷え込んではいないため、FOMCメンバーはインフレ率が目標の2.0%に下回る確信となる裏付けを見るまではハト派的な方針転換には急がないかもしれません。

これに続き、FRBのメンバーの発言からも当面は金融緩和の可能性が低いことがわかりました。例えば、ボストン連銀のスーザン・コリンズ総裁は、労働市場と経済成長が良好であるため、利下げは現在のところ得策ではないと述べています。同じくメンバーのリッチモンド連銀のトーマス・バーキン総裁は、サービス業と賃貸業で物価上昇が続いていることから、インフレ低下ペースの持続性に大きな懸念を表明しています。上記の数字でも示されているように、賃金上昇率も上がっています。

メンバーたちのタカ派的な姿勢から、FedWatchツールによる3月の利下げの可能性は現在、わずか5.5%、5月では54.1%になっています。こうした状況により、ドルインデックスの強気筋の勢いが弱気筋よりもかなり勢いがあるように見られます。

● ユーロに関しては、最近の欧州中央銀行(ECB)高官のハト派的発言がユーロに大きく影響しました。ユーロ圏の弱い統計も金融緩和の早期開始を連想させます。古いものと新たなマクロ経済指標を比較すれば、十分理解できます。6.4%のユーロ圏の失業率に対して米国では3.7%です。ユーロ圏の第4四半期GDPは-0.1%から0%へとリセッション水準からほとんど変わりませんでした(これに対して米国では+3.3%増)。サービス部門購買担当者景気指数は48.8から48.4ポイントに下がっており、サービス部門と製造業部門の複合指数では 47.9ポイントです。 つまり、両方とも停滞(50.0未満)圏内のままです。ドイツでは12月の財の輸出が4.6%減少、輸入は6.7%減少でした。

一方、重要なインフレ指標である消費者物価指数(CPI)は、ドイツの消費者物価が前月比0.1%から0.2%へとわずかに上昇、初の利下げがECBではないかもしれないという期待を投資家に与えたことから、ユーロが少し支持されました。この結果、EUR/USD の終値は1.0785でした。    

● アナリストの多くが先週のドル安が調整の下げであり、ファンダメンタルの状況からしてドル高が続くとした考えです。このレビュー執筆時、2月9日(金)の晩、アナリストの70% が直近のドル高支持でこのペアの下落予想です。ユーロ高予想は15%に過ぎず、残りが同じ比率で中立の立場です。 D1のオシレーター系も同様の見方を示しています: 65%が赤で弱気、10%が緑で強気、25%が中立です。トレンド系の比率は、赤(弱気)対緑(強気)が 65%対35%です。このペアの直近サポートは、1.0725-1.0740に続き、1.0680、1.0620、1.0495-1.0515、1.0450です。強気筋は、1.0800-1.0820、1.0865、1.0925、1.0985-1.1015、1.1110-1.1140、 1.1230-1.1275でレジスタンスに直面するでしょう。

●来週の注目のイベントには、2月13日(火)の米国の消費者物価指数(CPI)の発表があります。市場関係者は、バレンタインデーである2月14日に発表される最新のユーロ圏のGDPを分析するでしょう。2月15日(木)は、製造業部門景気指数、失業保険申請件数、小売売上高といった米国の統計が注目されそうです。金曜日は、1月の米国生産者物価指数(PPI) が発表され、一週間を締めくくります。

 

GBP/USD: ポンド上昇要因と下落要因

● 2月2日(金) の米国労働市場からの強いデータによるドル高で、GBP/USD は1.2600-1.2800の横ばいの上値抵抗から下値支持まで押されました。この下落は一週間続き、2月5日には1.2518の安値をつけました。ポンドは下げを取り戻して、サポートからレジスタンスへ推移の1.2600をつけました。

アナリストは、イングランド銀行(BOE)が年内に利下げに踏み切るかもしれない期待からポンドは支持されたままだとした見方をしています。2月1日のイングランド銀行の会合で政策金利を前回の水準である5.25%に据え置いたことには注目です。ただ、ポンドは イングランド銀行の金融政策委員会のメンバー2人が引き続き25ベーシスポイント(bps)の利上げに賛成したことで支持されました。翌日、キャサリン・マン委員は、コア・インフレ率の低下が短期的に続くとは確信できないことから賛成したと説明しました。もう一人の委員である、ジョナサン・ハスケル氏は、インフレ圧力が緩和している可能性を認めたものの、利上げの見通しのスタンスを変更する前に追加的な裏付けが必要だと述べました。

さらに、GBP/USD は、S&P500、ダウ・ジョーンズ、ナスダックなどの株価指数に見られるように、市場関係者のリスク選好に大きく影響されます。この結果、イングランド銀行の委員によるタカ派的発言やリスク選好が上向いたことでこのペアの下げを戻すことになりました。

● ポンド安に振れているはインフレ圧力が実際に緩和しているためです。KPMG とThe Recruitment & Employment Confederationのイギリスの雇用レポートによると、1月の賃金上昇率が56.5 ポイントから55.8ポイントに下がり、2021年3月以来の最も遅いペースを示しています。 つまり、インフレ低下の兆しはイングランド銀行が利下げを開始する根拠となります。前述の前回の会合で委員の2人が借入コストの引き上げに賛成、8人が据え置き、引き下げに賛成は1人だけでした。しかし、3月21日の会合でハト派が1人だけでなく、2人や3人となれば、GBP/USD の積極的な売り要因となるかもしれません。

● このペアの先週の高値は1.2630でした。直近のアナリストの中央値予想では、アナリストの50%が下落支持、 15%が上昇支持、残りの35% が予想を控えています。D1のオシレーター系では、50%が下落を示しており、残りの50%が横ばい、上昇を示しているものはありませんでした。トレンド系は状況が違い、ポンド支持がやや多く、– 60%が上向き、 残り40%が下向きです。このペアが下落した場合、サポートは1.2595、1.2570、 1.2495-1.2515、1.2450、1.2330、1.2210、1.2070-1.2085となります。上昇した場合、レジスタンスは1.2695-1.2725、1.2785-1.2820、1.2940、1.3000、 1.3140-1.3150です。

● イギリス経済に関しての来週の注目予定では2月12日(月)にイングランド銀行のアンドリュー・ベイリー総裁による講演があります。2月14日(火)は、イギリス労働市場から重要な統計発表が予定されています。2月15日(水)の消費者物価指数(CPI)に続いて、2月16日(金)にはイギリスGDPの発表があります。イギリスの小売売上高が2月16日に発表され、今週の統計発表が終わりとなります。

 

USD/JPY: このペアは月へ向かって上昇中

● FRBメンバーのタカ派的な言い回しのおかけで、USD/JPY は先週上昇を続け、心理的なレジスタンスレベルの150.00に近づきました。これを突破する可能性もありましたが、市場関係者は、2月13日に予定されている米国の1月消費者物価指数(CPI)の発表を控え、慎重な姿勢を見せています。

● 日本銀行(日銀)のハト派的姿勢が続いていることで、円は引き続き下げています。投資家は日銀か利上げに踏み切らないままとした見方です。2月8日(木)、日銀の内田眞一副総裁は、"今後の金利動向は経済と物価次第 "であり、日本経済の金融政策状況は、勢いのよいインフレは予想されず、極めてマイナス基調であると述べました。翌日、植田和男日銀総裁は、"マイナス金利を止めたとしても緩和的な状況が維持される可能性は高い"と述べました。

このことから、市場では金融政策に変更があったとしても、非常にゆっくりで、時期は不明という結論になりました。投資家の反応は、USD/JPY チャートにあります: 先週の高値は149.57 で終値は149.25でした。

● 直近の USD/JPYの見通しについてのアナリストの意見は、等しく分かれています:3分の1が上昇、3分の1が下落、残りの3分の1が中立です。D1のトレンド系とオシレーター系は上向きで強気感情を示していますが、オシレーター系の25%は買われ過ぎを示しています。 直近のサポートは、148.25-148.40、147.65、146.85-147.15、145.90-146.10、144.90-145.30、143.50、142.20、140.25-140.60です。レジスタンスレベルは、149.65-150.00、150.75、151.70-151.90です。

● 日本経済関連の注目のイベントとしては、2月15日(木)の国内GDPデータの発表が極めて重要です。2月12日(月)は祝日となります: 建国記念の日の振替休日です

 

暗号資産: ビットコインの上昇理由

● 前回のレビューのタイトルは、"半減: 悲しみか、喜びか?" で質問の投げかけでした。これに関する討論は収まるどころか、4月に近づくにつれて白熱しています。

1月10日のビットコインスポットETF 承認後の利確は終了しました。しかし、現在の市場には、新たな脅威が広がっています。この脅威とは、マイナーです。有名なトレーダー、投資家、ポッドキャスト"The Wolf of All Streets"のホストであるスコット・メルカー氏は次のように著しています: "ビットコインの半減期は2024年4月にマイニングされたブロック数が840,000に達した時であり、その時点でのブロック報酬は6.25 から3.125 BTCに減少する。基本的には、つまり、新たなコインの発行が半分になるということだ。マイニングで稼ぐことの難しさは2倍になる"。

半減期は、暫定的に4月19日とされており、つまり、残り約2ヶ月になります。ビットコインの価格がこの間に上昇しなければ、多くのマイナーは、すぐに資金不足に直面します。すなわち、資金不足の穴埋めのために、手持ちのBTCを積極的に売り始めることになり、市場に大きな圧力をかけることになります。

試算では、ビットコインのマイナーはまだ約850億ドル相当(現在の価格)の約180万BTCを保有しています。そして、現在、CryptoQuant がマイナー企業の準備金が2021年7月以来の最低水準に落ち込んだことを発表しました。現在、マイニングプールのウォレットにあるビットコインの数は、マイナーが中国からユーラシア諸国や北米に移動した、いわゆる"大移動"以来の最低水準となっています。 コインはマイナーのウォレットから取引所に流れています。

Bitfinexもマイニング企業関連の取引所アドレスにビットコインが流れていることを観測しています。アナリストは、ある時点で懸念している大規模なコインの流出があると見ています。しかし、マイナーは受取取引手数料が減っているにもかかわらず、今のところ、蓄えを維持したままです。CryptoQuantによれば、マイナーの1日あたりの売上は減少しており、現在は300 BTC以下です。

マイニング企業の状況は、新たなコインの生産量の減少によっても複雑になっています。TheMinerMagによると、 米国からのBTC のマイニング量は、電気料金の29-50%の値上げにより、1月は史上最低水準に落ち込みました。高い電気料金は2024年第1四半期末まで続くと予想されています。つまり、この傾向が続けば、ビットコインの需要が増える中、半減する前に供給困難となります。また、需要増加は、1,000 BTC 以上のBTC保有者の"クジラ"が急増していることに注目しているSantimentのアナリストによって確認されています。 当然ながら、これはBTC/USD を押し上げます。

● 2月7日から9日のビットコインは急騰して、$48,145の高値をつけました。この上昇は、前述の理由に加え、大手投資家のリスク選好が世界的に高くなったことが大きな役割を果たしたように見られます。株式市場への資金の流れも暗号資産市場に貢献しました。IntoTheBlockによると、1月末のビットコインとS&P 500 は負の相関関係でしたが、現在は元に戻っています。ビットコインのもう一つの上昇理由が中国の旧正月が近づいているからだという一部のアナリストもいます。ビットコインの相場は旧正月に近づくにつれて、通常上昇しています。

● 全体的には、2024年の多くの予想がかなり楽観的です。例えば、スコット・メルカー氏は半減期によりビットコインが$240,000に上昇すると信じています。 "前回の半減期のあと、BTCの価格は$20,000 から250%上昇の $69,000に高値更新した" と同氏は著しています。"つまり、この状況が今回も繰り返されるなら、$69,000 の次の高値は$240,000だろう" 。"大げさのように思われているのはわかる"とメルカー氏は続け、 "このサイクルは過去にあった。失敗 [今回]を見るまでは、ビットコインが$200,000を超えることに賭けてみたい"とあります。

●ARK インベストのキャシー・ウッドCEOによれば、ビットコインのスポットETFが登場したことで、投資家は金からビットコインにシフトし始めています。"ビットコインは金と比較して上昇している。金からビットコインへシフトが本格化している。これは、続くと思われる..." とCEOは述べていました。

キャシー・ウッド氏の意見に同調するのは、人気ブロガーでアナリストのPlanBです。"今度の半減の後、ビットコインは金や不動産よりも希少になる"とあります。"これは、ビットコインが$500,000前後になることを連想させる"。 Stock-to-Flowモデルだと、ビットコインの市場時価総額は実際の金を超えるかも知れない–10兆ドル以上だ。ただし、この水準と2,000 万コインの供給制限に近づけば、この価格になる。PlanBは、この価格に到達するまでの期間を示しませんでしたが、PlanBの意見では、ビットコインはこれを下回らないということです。PlanBによると、BTC の価格は今まで200-週移動平均線を下回ったことがありません(このレビュー執筆時の200WMAは $32,000前後)。もう一人、 ali_chartsで知られるアナリストは、現在の重要なサポートレベルは$42,560と信じています。

● 有名なトレーダーであり、投資家、MN トレーディングの創設者であるマイケル・ヴァン・デ・ポッペ氏は、PlanBと同様、ビットコインが$500,000になると見込みだといいます。ポッペ氏は、多くの要因がビットコインをかなり大きく上昇させると強調しています。これには、市場の現在の状況、BTC ETFの開始、機関投資家からの資金流入などがあります。半減期は重要な要因であるとされ、その後はビットコインの大きな上昇が予想されます。ポッペ氏は、機関投資家の市場参入や業界発展の全体的な流れにより現在のサイクルはやや長くなる見込みであると示唆しています。

ポッペ氏は、ビットコインが重要なレジスタンスレベルである$48,000になるシナリオの可能性が高いと述べています。この後に、もう一回調整があり、20%下落の$38,400に落ち込むことになります。そして、 半減期の後にBTCは、再び上昇して、秋までには直近高値となるでしょう。

● イーロン・マスク氏の会社xAIが開発した人工知能Grokは、ビットコインの競合であるイーサリアムに関して2つの予測をしました: 1) 2024 年末までにETH は$4,000 から $5,000になる; 2) 年内にETHは$6,500の高値をつける。Grokは、イーサリアムのエコシステムの更新とDencunのアップデートを高く評価しています。 このアップグレードにより、ETHブロックチェーンのスケーラビリティレベルは向上、取引処理コストは大幅削減となります。Dencunの更新は、1月17日にGoerli テストネットワークと1月30日にSepolia テストネットワークで実行されました。メインネットワークのDencunの実装日は、3月13日です (このアップデートが長期間ウォレットから動かすことのなかった多くのETHホルダーが動かし始めた理由の一つです。最近、このような"クジラ"が8年以上休眠していたウォレットから110万ドル以上 相当の492 ETH を移動させました)。

Grok は、スポットイーサリアムETFが5月までに承認されるかもしれないという可能性がアルトコインの上昇要因につながるかもしれないと示しました。米国の大手企業6社は、米国証券取引委員会(SEC)にデリバティブの申請書を提出しています。

しかし、状況はそれほど単純ではありません。SECのゲーリー・ゲンスラー委員長の以前の発言では、スポットETF関連の前向きな決定はビットコインをベースにした取引商品でした。ゲンスラー委員長によれば、この決定は、"証券である暗号資産の上場基準を承認する準備を示すものでは決してない" ということです。規制当局は、ビットコインをコモディティとしている一方、"委員長の見解では、暗号資産のほとんどが投資契約(すなわち証券)"です。

先週、SECがインベスコとギャラクシーの申請に対する決定を延期したことが明らかになりました。以前も、申請審査日を延期したことがあります。"現在のところ、スポット ETH-ETFで重要なのは5月23日だけです。この日がVanEck 申請期限である" とブルームバーグは著しています。

投資銀行TD Cowen のアナリストは、ECが2024年後半までに何らかの決定を下す可能性は低い見方をしています。" ETH-ETFの承認前に、SECはビットコインでの同様の投資商品で経験を積みたいだろう" とTD Cowenワシントングループの責任者であるジャレット・セイバーグ氏はコメントしています。TD Cowenは、 SECが イーサリアムETFの議論に戻るのは、2024年11月の米大統領選挙の後だとした見解です。

JPモルガンのシニアアナリスト、ニコラオス・パナギルツォグロウ氏も、スポットETH-ETFがすぐに承認されることはないとした考えです。SECに承認されるには、イーサリアムが証券ではなくコモディティとして分類される必要があります。しかし、 JPモルガンは、そのように扱われる見込みは当面、低いとした見方をしています。

● 先週の暗号資産市場は、極めて大きく上昇しました。2月9日の晩、 BTC/USD は$47,500 圏内、ETH/USD  $は2,500圏内で取引されています。暗号資産市場の時価総額は1兆7800億ドル(1週間前の1兆6500億ドルから増)となりました。Crypto Fear & Greedインデックスは、72 ポイント(1週間前の63 ポイント) に上がり、貪欲圏内のままです。

 

NordFX Analytical Group

 

注意: この内容は金融市場への投資推奨やガイドラインではなく情報提供のみを目的としています。金融市場の取引には、リスクが伴うため入金した資金のすべてを失う可能性もあります

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