この記事は主に初心者の方を対象としていますが、既に金融市場取引の経験のある方にも有益で興味深いものかも知れません。ここでは、取引戦略の選び方や取引の収益性の両方についての重要な要因を一つ検討していきます。通貨ペアについてもふれていきます。
通貨ペアと取引方法
通貨ペアはFX取引での主な手段です。これは、異なる二つの通貨からなり、取引時にトレーダーは一方を売り、もう一方を買うことになります。最初に表示されている通貨を基軸通貨、次に表示される通貨を決済通貨と呼びます。基軸通貨は常に決済通貨で測ることになります。反対に、決済通貨は1基軸通貨でのレートが表示されます。
FX取引はクローズドサイクルが含まれます。つまり、AAA/BBB 注文では、BBB 通貨で払うことでAAAを取得します。 それから、この取引で損益をだすために決済注文をします。つまり、逆の操作をする必要があります: AAAを売り、BBBを受け取ることになります。
EUR/USDのペアをたとえにしましょう。 トレーディングターミナルを開いたときの現在の相場が1.1500だとします。これは、買い建玉ならEUR 1をUSD 1.1500で購入することになります。そして、ある時点で相場が1.1600に上昇すれば反対の取引、つまり、ドルと引き換えにユーロを売ることになります。なお、1ユーロは1.1500ではなく、1.1600 USD なので、これに応じた利益を得ることになります。
売り建玉なら、すべてが反対になります: ユーロを売ってドル買いで、1USDに0.87 EUR(1/1.1500 = 0.87)を支払います。 なお、1.1600の時に決済をすると、1ドル0.87ではなく0.86 EUR (1/1.1600=0.86)のため、この時点では損失となります。
人気通貨ペアと不人気通貨ペア
FXにはたくさんの通貨ペアあります。今日、世界にはおよそ180種類の通貨が存在します。つまり、可能な組み合わせは16,110 種類になります。ISO(国際標準化機構)による承認や規制により、どのブローカーでも表示順序は常に同じです。現実には、流動性を継続的に維持することや現在の気配値の提供(ご自身のターミナルのチャートに何千ものスクリーンがあることを想像してみてください)することが価格面や技術面で難しいことから、16,110 種類のすべてを提供しているブローカーはありません。長い目でみれば、本来のトレーダーにとってこのようなものを誰も必要としていません。数十種類のペアだけがトレーダーに人気があり、下記の要因によりこの人気は左右されます。
例えばSZL/AWG (エスワティニリランゲニ対アルバフロリン)のようなペアは、実質的に取引がないため、すぐに検討対象から外されます。MetaTrader-4 (MT4)のトレーディングターミナルのトップ20通貨を参考にすると、2021年年度の人気は次のようになります(これらの数字は、過去の年の状況にも反映されているため正確です):
EUR/USD – 全体の取引量の27.95% 、USD/JPY - 13.34%、GBP/USD - 11.27%、AUD/USD - 6.37%、 USD/CAD - 5.22%、USD/CHF - 4.63%、 NZD/USD - 4.08%、EUR/JPY - 3.93%、 GBP/JPY - 3.57%、EUR/GBP - 2.78%、AUD/JPY - 2.73%、 EUR/AUD - 1.8%、EUR/CHF - 0.96%、 NZD/JPY - 0.93 %、GBP/AUD - 0.89%、 GBP/CAD - 0.81%、EUR/NZD - 0.78%、 AUD/CAD - 0.76%、 GBP/CHF - 0.73%、 AUD/CHF - 0.70%.
上記の数字は金融業界の平均です。なお、EUR/USD(ここではスプレッドはたいてい小さいですが)のようなとても人気のあるペアの取引を絶対やるべきだという意味ではありません。NordFX の統計ではイギリスポンドと太平洋地域の組み合わせをするトレーダーは、よく素晴らしい結果をもたらしています(GBP / USD、GBP / AUD、GBP / JPY、AUD / JPY、AUD / NZD)。これには、二つの要因によるところが大きいようです: 1) ポンドとのペアのボラティリテが大きいため、短期間で大きな利益が得られる、2) AUD/JPY やAUD/NZD のペアは世界的にこの地域に住んでいるトレーダーがより頻繁に使用するため地域と時間的な要因。
人気ペアの理由
ちょうど、二つ挙げました。地域によって違う特定のペアのボラティリティと取引頻度です。例えば、AUD/JPYやAUD/NZD はヨーロッパや米国が寝静まっているアジアの取引時間に非常に頻繁に取引されています。EUR/USD、EUR/GBP、EUR/CHF、GBP/USD、GBP/CHFなどはヨーロッパの取引時間でより頻繁に取引されます。そして、一番取引される時間帯がヨーロッパの取引時間とアメリカの取引時間が重なる時で、前者がまだ終了せず、後者が開いている時間帯 (15:00 UTC)に取引量レベルが最高になります。また、ここでは、たとえばUSD/CADのような取引もあります。
単一通貨ユーロが登場する前に、最もよく取引されていたのがUSD/DEMでした。これは、ドイツ・マルクが米ドルに次ぐ世界第二位の基軸通貨だったからです。消滅後は第2位にユーロが引き継いでいます。.
経済発展がすばらしい国の通貨に高い流動性があるのは理にかなっています。米国通貨とEUの通貨: 取引数の非常に多くがドルとユーロでおこなわれ世界のほとんどの中央銀行の外貨準備金の大部分を占めています。
このように流動性が高いということは、これらの通貨が非常に多くの中央銀行、商業銀行、ファンド、企業、個人投資家により必要とされていることから売買が簡単であることを意味します。つまり、米ドルとユーロだと低い取引コストで取引の売り手と買い手を簡単に見つけられます(エスワティニとアルバの相手を最低でも探してリランゲニとフロリンの交換を説得するのに多くの労力と費用がかかることを想像してみてください)。
つまり、最も高い流動性のペアがトレーダに最も好まれる取引条件になります: 最低スプレッド、最低スワップ(取引の翌日持越しのための手数料)、取引実行スピード、気配値の正確性。後半の要因は、気配値のギャップ避け、インジケーターの読みやエキスパートアドバイザーの動きが精度にプラスの効果をもたらします。
さらに、ファンダメンタルズ分析をするトレーダーは、定期的に専門家の分析レビューや主要通貨の見通しを入手することは問題になりません。しかし、リランゲニのようなエキゾチックな通貨については、不可能ではないにしても非常に入手困難です。さまざまなFXの取引書籍やガイドの取引戦略の説明にも同様のことが記載されています。
初心者が選ぶペア
前述でトレーディングを成功させるための主な要因をたくさん挙げました。多いですが、すべてではありません。また、トレーダーの知識や経験、心理的側面(落ち着きや興奮)、学習意欲や能力、取引につかえる時間的なことなども考慮する必要があります。これらすべてが戦略や取引スタイルに影響します: ピプシング、スキャルピング、デイトレ、中期取引、長期取引。また、トレーダーがテクニカル分析とファンダメンタルズ分析のどちらを選択するかも検討する必要があります。
それでは、どのペアを選んだらいいのでしょうか? 経験のあるトレーダーは、ここでアドバイスの必要はありません。既にわかっているからです。初心者については、いろいろな教材やマニュアルの分析からメジャーで流動性の高い人気のあるペアを注目して勧めている場合がほとんどです。このようなペアは不測の事態が起きることが少なく、選択した戦略をより深い歴史的な間隔でテストすることができ、すでに述べたように、最も有利な取引条件を備えているのです。
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いずれにせよ、どの通貨ペアでも、どのような戦略でも、デモ口座で取引スキルを鍛えてから、実際の資金での取引をはじめることを強くお勧めします。たとえポケットにリランゲニとフロリンしかなくても、これは本物の通貨であるため、失敗して失うことになれば非常に残念なことになります。
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