サポートとレジスタンスレベルは、FXなどの金融市場での重要な概念の一つです。多くの取引戦略で使われ、何百何千というインジケーターやロボアドバイザーの基本となっています。では、具体的にはどのようなものなのでしょうか? そこで、基本概念と実際の使われ方について見ていきましょう。
主な定義
サポートレベルとレジスタンスレベルは、取引される価格帯の境界線です。境界線は、水平だけでなく、曲線もあります。境界線に到達すると、価格はよく軌道変更します。
サポートラインに到達すると、買い手の勢いが下落を防ごうとするため、しばしば反発して上昇します。逆にレジスタンスラインは、売り圧力が大きくなるため、しばしば反転して下落の原因となります。
これらの定義では、'しばしば' や'見込み' といった言葉が頻繁に使用されています。これは、これらのレベルの価格反転が確実ではないからです; なるかも知れないし、ならないかもしれない。価格はサポートレベルからの反発ではなく、突破して下落を続けるかも知れませんし、あるいは、レジスタンスレベルに到達して、上昇を続けるかも知れません。反発や突破の可能性は、上昇もしくは下落として部類されます。こちらについては、後ほど別の章で説明します。
サポート/レジスタンス圏内とレベルの違い
サポートとレジスタンスレベルはチャート上での線で表示されますが、サポートとレジスタンス圏内は価格帯で表れます。価格は、ある特定のポイントから軌道変更することは滅多にないので、これはより適切な概念だと思います。例えば、EUR/USD のレジスタンスレベルが1.1500 台だとします。しかし、価格は1.1500 ちょうどだけではなく、1.1485 (到達前) や1.1515 (突破せず)で反転する可能性もあります。 ±15 ポイントの幅を力学になぞらえて、 'スラック'と呼ぶアナリストもいます。
この価格帯の幅(もしくは、スラックのサイズ) は、特定の資産 (FXでは通貨ペア)や時間軸によって異なります。 長期チャートでは、この幅は広くなり、短期チャートではしばしば狭くなります。現在のボラティリティもこのパラメータに影響します。例えば、重要な経済ニュースの発表時には、ボラタリティが大きくなるため、価格帯の幅も大きくなります。この点について、いくつか説明します。
– 通貨ペア: 日足チャート (D1) の EUR/USD ペアの場合、サポート/レジスタンス 圏内の幅は20-50 ポイントです。イギリスポンド(GBP/USD)では、しばしば、ボラタリティがより大きくなるため、この圏内の幅も30-60 ポイント前後に広がります。USD/JPYでは、比較的狭くなり、15-40ポイントです。しかし、2021年以降FRBと日本銀行の金融政策の乖離が広がっているため、ボラタリティが急に大きくなり、このペアのスラックも広がっています。
– 時間軸:標準的な状況での日足チャート (D1)におけるサポート/レジスタンス圏内の幅は、通貨ペアにもよりますが、通常は20から60ポイントです。1時間足チャート(H1)では、幅が狭く5から15ポイント前後です。
– ボラタリティ: ボラタリティが大きい場合は、幅も広がる可能性があります。例えば、経済ニュースの発表時には、EUR/USD のバンドの幅は、70-100 ポイント以上に広がります。
これらの例は単なるガイドラインで、市場状況によってバラつきがあることに注意する必要があります。経験豊富なトレーダーは、その時々のボラティリティの要因を考慮して戦略をしばしは変更しています。
サポート/レジスタンスレベルの特定方法
つまり、サポート/レジスタンスの概念は、2つの要素-レベル自体とそれを取り巻く範囲から成り立っていることが上述からも明らかです。1.1000や1.5000のような心理的水準は、トレーダーがこの"付近" の水準でよく売買注文をするので、しばしばサポート/レジスタンスのレベルとなります。また、取引高の大きいレベルもしばしばサポート/レジスタンスとなります。これは、多くのトレーダーがこの水準に関心を示し、取引をしようとするからです。
複数回チャレンジして、価格"維持"をしているなら、より信頼されます。価格が特定の水準に何度か接近しているにもかかわらず、その水準が破られない場合、その水準が将来、強い レジスタンスや強いサポートになる見込みになります。
では、実際にはサポートやレジスタンスレベルはどのように特定されるのでしょうか? これらのレベルを特定する簡単な方法が表示された価格チャートの分析です。トレーダーは、過去に資産価格が下げ止まって反転したところを探します。これらのポイントがサポートやレジスタンスレベルになる可能性があります。しばしば、レベルの特定のためにこれのポイント上に水平線が引かれます。場合によっては、線が互いに平行に引かれ、資産価格が振れる取引の流れが形成されます。また、この取引の流れは水平が下り坂となります。また、この流れの境界線は直線か曲線となります。レベルと流れの構成を簡単にするために、MetaTrader-4 トレーディングターミナルではグラフツールと 特化したインジケーター が備わっています。
サポート/レジスタンスレベルの強弱
強いレベルと弱いレベルとは? テクニカル分析に携わるトレーダーにとって、この違いを認識することは効果的な 取引戦略 を高めるために重要となります。偽のシグナルを回避し、取引を成功させる確率を高めるからです。
つまり、これらが強いレベルを示す要因になります:
– 複数回の確認: 強いレベルはしばしば何度も試されます。その水準が頻繁に維持され、阻止しているとなると、より強いことが考えられます。
– 取引高: 強いレベルの場合、取引高が大きくなり、多くのトレーダーの関心が寄せられていることが示されます。
–ヒストリカルな視点: 強いレベルは今までのデータから特定され、しばしば心理的レベル (四捨五入など) と一致します。
– ファンダメンタル要因の一致: サポートやレジスタンスレベルの強さは、重要なファンダメンタルズ指標やニュースイベントが重なるとさらに強まります。
弱いサポートレベルやレジスタンスは、一般的に試される頻度が少なく、通常は価格維持ができません。レベルに達したとしても、取引高の変化はわずかです。また、過去のデータが定まっていないことが多く、ファンダメンタル市場指標と一致することはほとんどないため、市場ノイズに影響されやすくなります。
サポートレベルとレジスタンスレベルを特定するインジケーター
将来のトレンドを予測するために、過去の値動きの統計分析の基礎となる動作原理の人気のあるインジケーターをいくつか紹介しましょう。効果を高めるために、経験豊富なトレーダーは、インディケーターの組み合わせ、テクニカル分析やファンダメンタル分析など手法やツールと組み合わせています。
– 移動平均 (MA). 特定期間の価格データを集計して平滑化することでトレンドを特定します。資産価格が移動平均より上回れば、サポートゾーンとなります。下回れば、レジスタンスゾーンです。例えば、200 日移動平均は、強気トレンドにおける強力なサポートレベルになることが、しばしばあります。
– フィボナッチリトレースメント. このインジケーターはフィボナッチ数列を使用して、サポートレベルとレジデンスレベルの可能性を水平線で表します。チャート上に潜在的なサポートレベルとレジスタンスレベルの23.6%、38.2%、50%、61.8%、および 100% のレベルの 2 つの重要な点 (高値と安値) を通る線が引かれます。
– ピボットポイント(PP). ピボット・ポイント(PP)を決定する単純な方法は、何十年もの間ウォール街で使用されてきました。特定期間の高値、安値、終値を3で割ってPPを算出します。
– ボリンジャーバンド. このインジケーターは、3本のラインで構成されます: 中央ライン(MA) と中央のラインからの標準偏差として計算される2本の外側のライン。外側のラインは、サポートとレジスタンス圏内になります。価格が上のラインに近づけば、レジスタンスで、反対に下に近づけば、サポートレベルを示すとされています。
サポート/レジスタンスレベルを使用した戦略
– "安値で買って、高値で売る": トレーダーはサポートレベルに近づいたときに購入して、レジスタンスレベル付近で売却します。
– «ブレイクアウト/ブレイクダウン取引»: この戦略は、価格がサポートまたはレジスタンスレベルを突破して落ち着いた状況の時だけ、それぞれその下または上でポジションを注文します。
– «バウンス取引»: この取引手法では、価格がサポートやレジスタンスで反発したときにポジションを建てます。
– «偽ブレイクアウト戦略»: トレーダーは、価格の反転を意味する"偽ブレイクアウト"を予想して、サポートまたはレジスタンスで買い注文もしくは売り注文をします。
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要するに、サポートやレジスタンスのレベルや圏内を理解すること、これらを正確に特定する能力や利用することは、利益を生み出す効果的なツールです。しかし、金融市場のほかの取引方法同様に、成功を100%保証することはないので、慎重な分析、ほかのツールとの組み合わせなど細心のリスク管理が必要です。
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