エリオット波動理論はテクニカル分析の非常に重要なツールとして、金融市場取引で大きな効果をもたらしています。多くのトレーダーやアナリストがこの理論の原理を利用した値動きの予想で新規注文や決済をしています。この理論に基づいた多くの取引戦略や幅広い取引システムが展開され、FX、株式、暗号資産市場で成功しました。では、エリオット波動理論とは、どのようなものであり、どのようにして登場して、どのように利用するのでしょうか?
ミスター・エリオットの波動理論について
ラルフ・ネルソン・エリオットは1871年、米国カンザス州生まれです。幼少期や教育についての詳細は不明ですが、会計士としてキャリアをスタートしたことは知られています。1890年代の半ば、若きエリオットは中央アメリカやラテンアメリカの鉄道会社の会計部門で働いていました。
1903年、エリオットは、メキシコでの長期勤務に同行していたメアリー・エリザベス・フィッツパトリックと結婚しました。内乱より、二人は米国に帰国しました。最終的にエリオットたちは、ニューヨークに落ち着き、エリオットはコンサルト業を始め大成功を収めました。
1924年、エリオットはアメリカ国務省から、当時のアメリカの支配下にあったニカラグアの会計責任者に任命されました。その後、すぐに、自身の経験から“Tea Room and Cafeteria Management(ティールームとカフェテリアの経営)” と “The Future of Latin America(ラテンアメリカの未来)”の2冊を執筆しました。
エリオット波動理論の誕生
エリオットはキャリアのほとんどは財務会計や管理でした。この分野でのエリオットの仕事は、後に株式市場での自身のリサーチのためになった膨大なデーターベースの入念な研究と分析に基づくものでした。株式市場に関心を持ったのは、1930代初めです。病を患い、専門的な現役生活から身を引いたエリオットは、何日も何時間も株式市場や株式指数の研究に費やしました。30分から1年までの間隔の相場チャートを75年分集めた市場データを分析して体系化しました。
エリオットは、市場の値動きがランダムではなく、一定のパターンや"波動"に従うことを特定しました。1938年、エリオットはチャールズ・J・コリンズと共同で、市場行動に関する観察と理論を詳述した3冊目の著書である"The Wave Principle(波動原理)"を出版しました。この著書で、エリオットはランダムで予想不可能に見える株価が、実際は特定の法則に従い、フィボナッチ数での計算や予測が可能であるとしました。市場価格は、"波動"というサイクルを繰り返す中で動くということを導きました。 "The Wave Principle(波動原理)"が出版されるとすぐに、"フィナンシャル・ワールド"という雑誌がエリオットに市場予想メソッドに関する12回の連載を依頼しました。
エリオット波動理論は、エリオットが存命中、あまり関心が寄せられませんでした。しかし、1940年代、エリオットはこの理論に磨きをかけ、普及させ、さらなる展開のために複数の記事や本を発行しています。1946年のエリオットの最後の著書、"Nature's Law – The Secret of the Universe(自然の法則-宇宙の秘密)"で、波動理論が株式市場だけでなく、人生のほかの分野にも適用できることを試みました。ラルフ・ネルソン・エリオットは1948年に亡くなりました。この理論については、現在も論争されていますが、テクニカル分析 の基本的な概念の一つであり、金融市場での取引では今も影響があります。
波動理論の基本原理
1. 波動の構造: エリオットは市場価格が大きなトレンドに向かう5つの波動(インパルス波)とその後にトレンドに逆らう3つの波動(コレクティブ波)があることを特定しました。
2. インパルス波とコレクティブ波: 大きなトレンのインパルス波は1から5の数字で示され、コレクティブ波は、A、 B、 Cで示されます。インパルス波は、上昇または下落させますが、コレクティブ波は一時的に反転します。
3. フラクタル: 波動は、各波動は同じ構造パターンに従うより小さな波動からなるフラクタルな特徴があります。
4. フィボナッチ: エリオットはフィボナッチ数列に従って各波動サイズが関連していることが多いことに気がつきました。例えば、調整後のリトレースメントは、前の動きの 61.8% に達することがよくあります。
5. 市場心理: 波動理論は市場関係者の大衆心理に反映します。インパルス波は楽観的で投資意欲に反応、コレクティブ波では不透明性や利確願望に反応します。
エリオット理論のさらなる研究と発展
科学者は立ち止まりません。時と共に、多くのアナリストやトレーダーがエリオット波動理論の発展に貢献して、この原理を現在の市場状況に導入しました。予想の正確性を高めるために、さまざまインジケーター(指標) やアルゴリズムなどの多くのバリエーションの追加で発展させてきました。それでは、このプロセスで大きな貢献をしてきた重要人物を挙げてみましょう:
– ロバート・プレクター: 波動理論の支持者の中で有名な人物の一人、1970年代にこれを利用して人気になりました。1978年にA.J.フロストと共著で出版された"エリオット波動理論: 市場行動の鍵" など、エリオット波動理論を題材とした著書が数冊あります。プレクターは、トレーダーやアナリストの間にこの理論の認知度をかなり向上させました。
– A.J. フロスト:ロバート・プレクターと "エリオット波動理論" を共著したカナダ人のアナリストです。この本は、波動理論に関する最も権威ある著書の一つとされ、人気と認知度に大きく貢献しました。
– グレン・ニーリー: エリオットの考えを発展させた"二ーリー波動原理" を説明しました。ここでの原理では、特に波の構造と時間比率の観点から、エリオットのオリジナル理論を明確にして補足を加えました。
– ビル・ウィリアムズ:トレーダーであり、取引心理学、テクニカル分析、金融市場取引でのカオス理論についての著書があります。ウィリアムズは波動理論の概念を自身の分析システムに組み入れ、トレーダーがエリオットの波動パターンを特定して取引できるようなアプローチに展開させました。ウィリアムズによる6つのテクニカル指標は、MetaTrader-4ターミナルの標準設定にあります。
– ピーター・ブラント: "ウォール街の伝説" としてよく知られている経験豊富なプロのトレーダーです。ブラントはエリオット理論原理を自身の取引戦略でよく利用しています"Diary of a Professional Commodity Trader(プロのコモディティ・トレーダーの日記)" というブラントの著書では、波動理論の実践的なトレーディングの利用の仕方について説明されています。
– スティーブ・ニソン: 日本のロウソク足チャートの専門家としてよく知られていますが、エリオット波動理論をローソク足分析と組み合わせた新規注文と決済をより正確に決定することで、エリオットの波動理論の普及でも大きな貢献を果たしました。
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エリオット波動理論は、市場行動についての独自の見方です。しかし、その主観性と適用の難しさから度々批判があります。エリオット波動論をマスターするには、多くの時間と労力、そして長期にわたって慣れる必要があります。主な課題は、特定の波動の始めと終わりを正確に見極めることに並んで正確な予想が難しくなる市場環境の変化です。これにもかかわらず、エリオットの理論は、多くの市場関係者によって頼られているツールであり、市場の動きをよく理解して反転の可能性やトレンドの継続を特定したい人々にとっては貴重な情報源です。ロバート・プレクターの言うように、"エリオット波動理論は、単なるルールやガイドラインではなく、市場行動に対する新たな見通し方"なのです。
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