EUR/USD: ECBの会合の後の連邦準備制度理事会の会合を控え
- 前回のEUR/USD のレビューのタイトルは、 先週の裏付けどおり“不安定な状態”でした。1.1643でスタートしたこのペアは、1.1581まで下げた後は、1.1691まで上昇し、その後は1.1560レベルまで下げ幅を更新して取引を終えました。
先週の主なイベントは、欧州中央銀行の会合でした。予想通り、金利は0%で据え置きです。そのため、金融政策におけるECBの運営陣のコメントに、大きな関心が寄せられました。米国連邦準備制度理事会(FRB)とイングランド銀行が金融刺激策(QE)の縮小開始時期を明らかにした後のため、投資家たちはECBからも同様の発表を期待していました。しかし、… 投資家たちは、期待していた発表を聞くことがありませんでした: 規制当局のプレスリリースは、実質的には9月の声明を繰り返しました。
ブルームバーグの内部情報によれば、現在、ECB理事会のメンバーは分裂しているようです。何よりもまず、この問題は、今後のインフレ率の見積もりによるものです。ECBのラガルド総裁は、最近の3.4%のインフレ率の上昇が一時的なものであると断言していますが、これはすべてに当てはまるわけではありません。まして、ドイツの28年ぶりのインフレ率 (4.6%)やスペインの37年ぶりインフレ率 (5.5%)では、疑わしいものです。2022年の利上げの必要性が分析では確認されていないという運営陣側の発言も怪しげです。
以上のことから、投資家たちはユーロ圏における金融刺激策の縮小は、2022年後半から2023年前半までは開始されないと感じています。このような背景では、欧州通貨は急落となります。しかし、チャートでは、EUR/USD の上昇を示しています: 10月28日のEUR/USD は、110ポイントの上昇でした。意外にも、本当でした!
主な理由としては、ECB総裁の記者会見が始まったのと同時に発表された米国のマクロ統計です。速報値では、第3四半期の米国のGDPは2.0%となり、前回の6.7%だけでなく、予想の2.7%も大きく下回っています。米国の経済成長率は、12.2%から4.9%に下がりました。この数字により、投資家の楽観的な見方は減り、ドル安が引き起こり、米ドル指数(DXY)は93.86から93.33に下落、ダウ・ジョーンズとS&P500の株価指数は、ほぼ市場の高値水準に戻りました。また、ガスや石炭の価格の下落もドル安の要因となり、欧州ではエネルギー崩壊の可能性が低くなりました。
週末の10月29日(金)、ドルは損失を取り戻すだけでなく、EUR/USDは3週の安値に押し下げました。来週の規制当局の会合に先立ち、ベージュブックとして知られる米連邦準備制度理事会の経済状況に関する報告書の発表が投資家の立場としてのカギでした。 “FRBの資産購入の縮小や柔軟さの動きが、将来の政策の重要なカギとなりやすく、リスク/リターンの比率はドルに優位となるでしょう” とTD証券のアナリストは説明しています。
また、リスク資産が前月比に対して増加したことや、債券利回りが1.672%(5月以来の高水準)に上昇したこと、米国の明るいマクロ統計:9月の基本的なPCE(個人消費支出)の上昇率は3.6%で維持しており、8月と同水準であったことなどがドルの支えとなりました。しかし、ヨーロッパの統計は、インフレの加速やGDPの成長率の急激な低下が投資家にとっての新たな不安となりました。
ここ数週間のEUR/USDの変動にもかかわらず、D1のトレンドインジケーターの100%が下を向いています。しかし、オシレーターでは様々です: わずか40% が下向き、30% が上向き、30% 横向きです。専門家の意見も一致していません。30%が上昇、55%が下落、15%が横ばいの支持です。サポートレベルは1.1520、1.1485、1.1425、1.1250。レジスタンスレベルは、1.1580、1.1625、1.1670、1.1715、1.1800、1.1910。
重要なイベントやマクロ経済統計の発表については、どちらも来週はたくさんあります。11月1日(月)には、ドイツの小売売上高と米国ISM製造業景況感指数の発表があります。11月3日(水)は、米国のISM非製造業景況指数やADPの雇用統計の公表があります。また、同日には、FRBの会合があり、金利決定に並んでFRBの金融政策に関する運営陣のコメントなど重要なイベントがあります。欧州中央銀行のクリスティーヌ・ラガルド総裁のスピーチが水曜日と木曜日に予定されています。
いつもどおり、第一金曜日の11月5日は、NFP(米国非農業部門雇用者数)などの重要な指標を含んだ米国労働市場のデーターが発表されます。また、同じ日に、ユーロ圏の小売売上高が発表されます。
GBP/USD: FRBとイングランド銀行の会合を控えて
- イギリス居住者の消費バスケットを構成する財・サービスを反映させ重要なインフレ指標となる9月の消費者物価指数(CPI)は、+0.3%(対+0.4%、8月は+0.7%)でした。 前年同月比では、イギリスのCPIは+3.1%(予想:+3.2%、8月:+3.2%)となりました。指標では9月のインフレ率は鈍くなってきていますが、アナリストは、エネルギー価格や公共料金の高騰、付加価値税の一部引き上げなどで10月にはインフレ率が急加速すると予想しています。
来週は、FRBの会合だけでなく、11月4日(木)にイングランド銀行の会合もあります。多くの専門家によれば、9月のインフレ率が減少していることで、イングランド銀行が今後の数ヶ月中にカギとなる金利(現在 0.1%)引き上げを止める可能性は低くなりそうです。
GDPの成長が低い中でインフレ率が上昇するスタグフレーションの脅威は、ブレグジットの影響で依然、圧力をかけられているイギリス経済に非常に危険なものとなっています。イングランド銀行の専門家によると、年間のインフレ率は、2022年4月までは5%前後まで加速し、2022年末に、ようやく目標の2%までに低下するとしています。これは、非常に早いペースであり、イングランド銀行のアンドリュー・ベイリー総裁は、最近、このような速さでは、予定よりも早く金利を引き上げざる負えないかもしれないと述べています。
現在、多くの投資家は、ポンドの金利は2021年末には0.45%、2022年6月には0.95%になる可能性があり、これがポンド高につながると考えています。しかし、現在のような低水準の状況では、物事はそれほど単純ではなく、金融刺激策の縮小は、イギリス経済の悪化、危機の深刻化、イギリス住民の生活水準の低下につながるかも知れません。国家統計局が発表している小売売上高(燃料費を除く)は、3ヶ月連続で前年同月比-0.9%から-2.5%の減少を示しており、人々が貯蓄を始めていることがわかります。
ここ一週間半を見てみると、9月30日から始まったGBP/USDの強気筋の動きは止まり、EUR/USDの記述と同じような要因により、ポンドは1.3685 で今月の取引を終えました。
現在、米連邦準備制度理事会とイングランド銀行の段階的縮小に関する計画に対して市場がどのように反応していくか興味のあるところです。しかし、来週の水曜日と木曜日に開催される両政府の会合に、非常に関心が寄せられるのは間違いなく、高いボラティリティになると言っていいでしょう。同時に、40% の専門家は弱気筋の勝利、30%はD1のグラフィック分析に従い強気筋を支持、残りの30%は中立の立場です。
オシレーターの50%がニュートラルグレーです。残りのオシレーターは、均等に分けられています: 赤25%、緑25%。D1のトレンドインジケーターでは、赤が80%と圧倒的に優勢。サポートレベルは、1.3765、1.3675、1.3600、1.3575、1.3525、1.3400。強気筋のレジスタンスレベルとターゲットは、1.3725、3770、1.3810、1.3835、1.3900、1.4000。
USD/JPY: 円は独自の道を経過中
- 過去2週間半のチャートを見ると、USD/JPYも上昇の勢いがなくなってきています。ただ、GBP/USDの場合は、9月末以来、ドルがポンドに対して安くなっているのに対して、円には高くなっていることです。
日本通貨は、投資家にとっての安全通貨です。最近の円安は、円レートと市場のリスク選好の高まりとの安定した逆相関関係があることが論理的に合致します。また、エネルギーや金属価格の高騰により、日本の貿易収支が輸入にシフトしたことも、きっかけとなりました。そして、もちろん、米国債利回りは USD/JPY の相場に、影響する要因であることは無視できません。ただし、それは市場のリスク回避にも直接関係しています。
USD/JPY は、10月20日に4年ぶりの高値更新で2017年11月に非常に近い114.70でした。その後は、強気筋の勢いが収まり、113.95で今週の取引を終えました。
現在のところ、70%のアナリストは、まず113.00台に戻り、その後、11月末までには111.00-112.00の圏内まで下がると予想しています。残りの30% のアナリストは、反対の見解で、数年来の高値を更新で115.00-116.00圏内までの上昇を予測しています。
レジスタンスレベルは、114.35、114.70、115.50で、強気派の長期目標は2016年12月の高値118.65。直近のサポートレベルは113.85、113.40、113.25、そして112.00と111.65。
来週のイベントとしては、11月2日(火)の日銀金融政策決定会合の報告書の発表が注目されます。しかし、市場の反応はかなり冷静なものになると思われます。とりわけ、この日銀の会合が、すべての投資家や投機家が注目する米連邦準備制度理事会の会合の1日前だからです。
安全通貨: イーサリアムが最高値更新
- 10月20日のビットコインの$66,925 史上高値は、まだ、破られていません。高値を付けた後の目前の調整では、強気派と弱気派の激しい接戦でした。両者は、ほぼ対等でした。その結果、$57,590—63,645範囲での動きでしたが、10月29日(金)には7日前とほぼ同じ、$62,000 圏内に戻りました。暗号通貨市場の時価総額も2.6兆ドルと変化はありませんが、ビットコインのシェアは、やや減少しています: ドミナンスインデックスは、45.94% から 44.15%へ下落。これは、アルトコイン、主にイーサリアムへの資金流入によるもので、一週間で18.72% から 19.61%へと増加しました。 The Crypto Fear & Greed インデックスは、依然、70ポイント(先週75 ポイント)でGreed (強欲)のゾーンです。
ほとんどのアナリストは、BTC/USD の上昇傾向は続くと考えています。これは統計でも裏付けられています。Glassnodeによると、取引所からのコインの流出が再開しました。ビットコインネットワークのハッシュレートも50%まで落ち込んだ原因であった中国のマイニング禁止の後、ほぼ回復しています。同時に、ビットコインの供給量は、かなりの減少です: マイナーや投資家は、さらなる価格上昇の期待を込めて保持しているからです。
マクロ経済的にも良好です。ニューヨーク証券取引所では、ビットコイン関連のETFの上場が続いています。確かに、米証券取引委員会(SEC)がValkyrie(ヴァルキリー)のレバレッジのあるETFの申請を拒否する情報があります。また、現在SECで検討されている40件の申請のうち、ビットコイン先物を対象としたETFの申請以外は、承認されないだろうとされています。しかし、承認されるものは、インフレから資金を守る投資家からこの分野に資金を確実に流入させるには十分です。
ビットコインにとって良いニュースは、決済大手のMastercardが近々、自社ネットワークで暗号通貨のサポートを実施する発表です。これには、ビットコインウォレット、クレジットカードやデビットカード、ポイントをデジタル資産に変換できるポイントプログラムが含まれます。
また、世界最大の小売チェーンを展開する米企業のウォルマート社も、ビットコインに注目し、店頭でのビットコインの販売を試験的なプログラムで開始しました。
Altcoin Sherpaとして知られる暗号トレーダー兼アナリストは、ビットコインは$54,000圏内を下回らず、強い支持で、そこから押し戻され、11月には$80,000越えの史上高値になると確信しています。
もう一人、別の有名なアナリストのPlanBも、パラボリックに上昇すると予想しています。念の為に思い出していただきたいのですが、PlanBはビットコインの価格を予測するS2F(Stock-to-Flow)モデルの生みの親であり、8月と9月のBTC価格を正確に予測していました。そして、ビットコインがこのモデルに従えば、11月に$98,000、12月に$135,000です。 “つまり、今年は、本当に良いクリスマスになるだろう” とPlanBは、言い切っています。同時に、専門家は、ビットコインが周期的な上昇サイクル毎の大規模調整から逸脱できる可能性は低いと考えています。
別の人気のある暗号通貨のアナリスト兼トレーダーのラーク・デイビス氏は、“今後6カ月間で、ビットコインと暗号通貨は、超クレイジーになりそうだ! あなたたちの多くが、ものすごく経済的な運命を変えることになるでしょう”と予想し、ツィートしました。
デイビス氏は、投資家に現在の状況での投機的なアルトコインやNFTを勧めて、実績のあるコインを勧めています。“勝者を勝たせ、ポジションを2倍、3倍にして、敗者を減らしていきましょう。 容赦なくやってしまいましょう、怪しい資産は持っていても意味がありません” とデイビス氏は記述しています。
彼の見解では、BTC は、今後10年間で投資家の資産を20倍に増やすことができますが、個々のアルトコインなら、もっと早くに同程度のリターンを得ることができます。 “アルトコインはお金を生み出すものであり、ビットコインは保全のためのものです” と説明しています。
イーサリアムは、ラーク・デイビス氏の言葉どおりのようでした。ビットコインが$60,000-61,000前後で推移している間、イーサリアムは過去最高を更新し、10月29日には$4,447の高値になりました。前回に記録された$4,360は、 5月に遡ります。
ETH/USD は、5週連続上げており、9月21日から65%以上の上昇です。この上昇の理由には、ETHトークンを流通させないコインバーニングプロセスにあります。また、このコインを押し上げたもう一つの要因は、ビーコンチェーンのイーサリアム 2.0 アルタイル(Altair)のアップデートの実装予定がわかったニュースで、ETH 2.0の完全なる開始の時が、さらに近づいたことです。
そして、自分の将来だけでなく、子供たちや愛する人の将来に向けて考える人に興味深いニュースです。ロシアの保険会社、Renaissance Life とInDeFi SmartBank は、デジタル資産の相続のためにスマートコントラクトの共同開発を始めました。暗号通貨市場の成長と伴い、このような財産の課題は、かなり深刻です。暗号通貨は分散化されているため、所有者が死亡した場合、相続人は暗号通貨のウォレットにアクセスできなければ、故人の財産を処理することができません。開発中のスマートコントラクトは、クライアントが死亡した場合に相続人がデジタル資産を処理ができるようにする問題の解決になるはずです。
NordFX Analytical Group
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