2022年2月14日‐18日のFXと暗号資産の予想

EUR/USD: 米国インフレによる津波

  • 2800年以上前の古代ギリシャでは、オリンピックの開催中は休戦宣言をしていました。EUR/USD の強気筋と弱気筋も、現在、北京オリンピック冬季大会が開催中なので同じです。少なくても週前半はとても商いが薄く、このペアは1.1400-1.1460の60ポイントを超えない狭い範囲でわずかな圧力を受けながら横ばいの推移でした。

    この静けさは、米国の最新のインフレデーターの発表後の2月10日(木)に小さな津波に襲われました。消費者物価指数が7.5%上昇する一方で、コアインフレは6.0% (先月は 5.5%)でした。どちらの数値も1982年以来観測されたことのない過去40年間で最も高い水準です。そして、市場を恐怖に陥れました。

    もっと正確にいうなら、これらの数字ではなく、これらの数字に対する米連邦準備制度理事会の反応です。投資家は、米国中央銀行がインフレ抑制のために予想以上に積極的になることを懸念していました。FOMC(連邦公開市場委員会)が3月に金利を50ベーシスポイント(bp)引き上げる確率は80%に跳ね上がりました。また、2022年に7回もの利上げを行う可能性があるという噂もあります。ゴールドマン・サックスのアナリストは、連邦政府の借り入れコストが2023年初めまでに2.0%に上昇する可能性があると予測しています。

    パニックの結果、ドルが上昇をはじめる一方で、株価指数 (S&P500、ダウ・ジョーンズ、ナスダック)と EUR/USD は下落しました。しかし、状況は素早く変わりました: 市場は、消費者物価の大幅上昇による全体的な経済リスクを恐れたのです。そして、1.1374水準に跳ね返されたこのペアは、およそ120ポイント急騰、1.1494の高値をつけました。その後は、もちろん、180度変わりました。

    連続3回の反転には、2つの理由がありました。まずは、全体的な経済リスクとは対照的に米連邦準備制度理事会がより積極的な利上げに向かう可能性があったことです。二つ目の理由は、クリスティーヌ・ラガルド総裁でした。ECB総裁は、先週、 急激な金融引き締めはユーロ圏の経済に悪影響を及ぼすと発言していました。これが高いインフレ率にかかわらず、政府が利上げに踏み切れないままである結果を示唆しています。そして、予想では25 bpの最初の利上げは2022年12月にならないと期待できません。

    FedとECBによる金融引き締めのペースが異なることは、常にドルにとって好材料です。今回も同じことが起こりました: EUR/USD は1.1500なることなく下落し、1.1329水準の局所的安値になりました。今週の取引終了の鐘は1.1340で鳴りました。

    このレビューを執筆している 2月11日(金)の夕方時点の過去2週間の推移では、D1のインジケーターは次のとおりになります。: オシレーターの65%は、緑、残りの 35%がニュートラルです。トレンドインジケーターでは25% だけが緑、残りの75% は赤です。アナリストについては、もちろん、全員が主に3月にあるFOMACの会合でどのくらい利上げがあるかについて取り上げることになるでしょう。しかし、既に55%がドル高でEUR/USD の下向きへの推移を支持しています。30% が上昇を支持、そして、残りの15%がこのペアの横ばいの推移を予想しています。

    直近のレジスタンスは1.1370、次いで1.1415、1.1480-1.1525、1.1560、1.1625 。サポート圏内とレベルは、1.1275-1.1315、1.1220、1.1185 、1月28日の安値1.1120。

    来週については、2月15日(火)にユーロ圏のGDPデーターが発表されます。翌日の2月16日(水)は、米国消費者市場の一部に関しての発表があるので、高いボラティリティの可能性があります。もちろん、2月のFOMC 議事録の公表も、この日、注目されるでしょう。

GBP/USD: 上昇傾向。まだ、上昇中。

  • ECBがFRBに遅れをとっている一方で、イングランド銀行は大西洋を隔てた銀行より、いち早く利上げをおこなっています。つまり、ユーロと異なり、イギリスポンドは、先週、今のところ、地合いを維持し、1.3551で5日間の取引を終えました。ここでのキーワードは、"今のところ": "今のところトップ" と"今のところ維持" です。ドルに対するポンドの優位性は、非常に不安定であり、すぐに下がりはじめる可能性があります。

    イングランド銀行が利上げを中止して低い水準に据え置かざるをえない主な要因としては、GDPと労働市場の成長率が低いことに並んで個人消費の低い水準です。

    2月11日(金)に公表されたイギリスの2021年第4四半期のGDPの成長率は、予想の1.1%ではなく1.0%だけの上昇でした。また、来週、労働市場と消費者市場の状況が明らかになります: イギリスの失業率統計が2月15日- 物価水準は2月16日。

    イギリス政府の今後のステップについて考える際は、前回のイギリス銀行の会合で50 bps の利上について9人のメンバーのうち4人だけが支持したことを思い出すといいでしょう。アンドリュー・ベイリー総裁を含んだ多数のメンバーが経済成長の鈍化を理由に僅か25ベーシスポイントまでの利上げに踏みとどまりました。

    この政府が今後も非常に慎重な動きをすることについては、イングランド銀行のチーフエコノミストであるヒュー・ピル氏からも確認されています。同氏は、ロイターのインタビューで銀行は"すべてが計画通りに進めば、今後数カ月でさらに緩やかな引き締めを実施" することを想定しており、"利上げについては注意深くなる必要がある"と述べています。

    現時点では、多くのアナリスト (60%) は、ドル高支持、近いうちにGBP/USD は下落するという見方です。反対の立場は、アナリストの30% で、残りの10% は中立です。D1 インジケーターは、次のとおり: オシレーターの90% (このうち10%は買われ過ぎ圏内)は上向き、10%は下向きです。トレンドインジケーターでは、85/15%の比率で、ほぼ同じです。サポートは1.3500、1.3425、1.3365で、次の強いサポートは100 ポイント下になります。レジスタンスレベルは、1.3585、1.3600-1.3625、1.3700、1.3750、1.3835、1.3900。

USD/JPY: また、5年ぶりの高値を記録

  • 米国債とUSD/JPYの相関関係は誰もが知るところです。米国債利回りが上昇すれば、円に対するドルも高くなります。そして、日本円は先週、2重の打撃を受けました:10年債利回りが2019年8月以来の高値水準となり、2月10日のこの出来事の後、USD DXYインデックスも急騰しました。その結果、このペアは2022年1月4日に記録した数年ぶりの高値116.35に再び試みました。しかし、この記録を突破することなく、115.30で今週を終えました。

    現在、多くのアナリスト(60%) は、USD/JPY がこの高値更新に再び挑戦し、2017年以来の水準への上昇予想です。D1に関してはオシレーターの 100%とトレンドインジケーターの80% がこの展開を支持しています。直近のレジスタンス圏内は115.70。残りのアナリストの40%とトレンドインジケーターの20% は弱気サイドです。サポートレベルは115.00で、114.15、113.75、113.45、113.20、112.55、112.70が控えています。 

    2月15日(火)に公表される日本のGDP(第4四半期)のデーターは、円が支持される材料になるかも知れません。予想によれば、この国の国内総生産はマイナス0.9%からプラス1.4%に上昇が見込まれます。しかし、現在のコロナ状況下では、このような経済成長とは対照的に自国通貨を下げる可能性があり、長期マイナス0.1%金利を続ける日本銀行の超ハト派的政策が正しいことが確認されました。

暗号通貨: 調整、それとも、反転?

  • この3週間は下方調整なのか、新たな上昇へのはじまりなのか、疑問が残るところです。暗号資産相場は、S&P500、ダウ・ジョーンズ指数と同じように上昇、若干、これらより上がりました。

    同様な現象が数ヵ月前にもありました。しかし、その後、デジタル通貨は、ほぼ2ヵ月間で上昇から崩壊へと移りながら株式をしのぎました。BTC/USD は、2021年11月10日の高値を付けて、それから下落に向かいました。S&P500については、2022年1月4日が高値でした。そして、こちらは論理的で: 相関関係があるにもかかわらず、株式市場は暗号資産市場より、依然、はるかに安定しています。しかし、両方とも米連邦準備制度理事会の金融政策に左右されます(また、中央銀行に左右されることもあります)。

    印刷機を稼働させた刺激策は、安いドルで米国経済を浸し、リスク資産を増加させました。Fedは、現在、政策を締め付けています。この理論に基づくと、暗号資産に対する投資家の興味が特に下がることが想定されます。

    既に述べましたが暗号資産の相場推移は、ほんのいくつかの政府や中央銀行の感情によって近い将来(既に左右されていますが)が左右されます。しかし、専門家コミュニティでは政府機関の対応がどうなるかについて今のところ一致した意見がありません。

    例えば、KuCoin 仮想通貨取引所のジョニー・リューCEO は、政府が暗号資産の利点について徐々に理解していくという見方で“明るい方”を取り上げています。同氏によれば、暗号資産は国レベルの普及傾向で政府は合法化途中であるため、いかなる規制も一時的に過ぎないとしています。

    反対の見解は、ブリッジウォーター・アソシエイツの創業者でビリオネアのレイ・ダリオ氏で、この資産クラスが多くの政府により禁止される可能性が高いとしています。

    メキシコの富豪の一人で、サリナスグループの創設者であるリカルド・サリナス・プリエゴ氏も政府は最初の暗号資産が分散化型のため売買高をコントロールすることが非常に難しいことからビットコインに興味を示さないだろうという見方をしています。

    パララックス・デジタルのロバート・ブリードラブCEOも同じ意見で、政府は暗号資産を金融システムの脅威となるクラスとして暗号資産の可能性を非常に難しくさせるだろうと述べています。このため、政府はあらゆる手段を使ってデジタル資産を可能な限り規制することを目指すでしょう。これは、最近、中国やロシアで見られたことです。

    ある程度の楽観的な見方としては、かなり多くの大企業の代表者たちが暗号資産のメリットを認識して既にデジタル資産を支持していることです。すべての企業が今すぐ、この市場に本格的な資金を投じる準備ができているわけではありません。前述のビリオネアであるレイ・ダリオ氏は、 “現金はゴミ” という立場をとる一方で、同氏の個人投資ポートフォリオには“わずかな割合” のデジタル資産を組み入れていることを認めています。また、一般的に暗号資産市場が小規模のため、"過剰に注目されている"と指摘しています。

    市場規模については、ロバート・ブリードラブ氏がビットコインの市場時価総額がこの数年で飛躍的に伸び5兆円を超えるという見方をしています。米国のインフレは、現在、40年来の高水準です。そして、パララックス・デジタルによると、ベネズエラの通貨と同じことがドルでも起きる可能性があります。米国通貨は、2035年までハイパーインフレとなり、この時点でのドルに対するビットコインの価格は天文学的数字:1コインあたり100万ドル、500万ドル、もしくは、1000万ドルになるでしょう。つまり、連邦準備制度理事会の紙幣の増刷がビットコインに対してこれ絶大なサポートをすることになるわけです。しかし、ロバート・ブリードラブ氏によると、これに対して政府からの最大の脅威がやってくることになります。

    2月4日の金曜日夕方、このレビューの執筆時点で暗号資産市場の全てのインジケーターは、より控えめのようです。市場の時価総額は、ほぼ2兆ドルに近づいていますが、1.9兆ドル (1週間前は1.85兆ドル)であり、ビットコインドミナンスインデックスは42.46%です。BTC/USD は、$42,500 圏内の取引でCrypto Fear & Greed インデクスでは、非常に恐怖のゾーンを移動し急騰、市場の中立な状態を表す50ポイントになりました。

    ビットコインの需給量の推移を観察している多くのアナリストは、現在のビットコインの上昇基盤が弱いことを警告しています。アナリスト達の見解では、結果としてBTC/USD は1ヵ月以内に$40,000 圏内に戻り、中期的には、$29,000にさらに下がる可能性があるという見方です。

    "マネーの進化史"の著者であり、経済史の研究者であるニーアル・ファーガソン氏は、さらにもっと悲観的な予想をしています。同氏は、ビットコインの今までの変動推移が繰り返されるなら、2022年11月までには$11,515の安値に下がるという見方をしています。これは、2021年11月のビットコインの高値から83% 下回る水準です。

    同時に、ファーガソン氏は、暗号資産市場のボラティリティと2007-2008の米国の不動産市場崩壊を関連付けるノーベル賞経済学者のポール・クルーグマン氏の考え方に異論を唱えています。ご存じのとおり、その後、世界的な経済危機が起こりました。

    ニーアル・ファーガソン氏は、 “極渦や氷河のサイクロンを待つ意味はない。また、ビットコインの価値が2010年代の安値まで下落することは、まずありえない。しかし、暗号通貨の冬の寒さがそれほど寒くないことを意味するものではない”という考えです。

    もちろん、もっと楽観的な予想があります。金融調査会社FSInsightのアナリストであるショーン・ファレル氏によれば、アルトコインに対するビットコインの優位性は揺るがず、1月の“不安定な相場”にもかかわらず、ビットコインは2022年の後半に$200,000 をつけるとのことです。

    FSInsight のレポートでは、イーサリアムプラットフォームも過小評価されており、年内に$12,000 になる可能性があると記されています。ショーン・ファレル氏は、イーサリアムのプルーフ・オブ・ステークへの移行について楽観的な見方です。プロセスがスムーズに進めば、 “ビットコインのパフォーマンスに関係なく” 、エコシステムへの資本流入が増加すると考えています。また、KuCoin 仮想通貨取引所のジョニー・リューCEO は、ほとんどの革新的なプロジェクトがイーサリアム上ではじまるため、長期的にはBTCの先を行くだろうと考えています。

    BTC/USD が今年の年末もしくは2013年のはじめに$100,000台をつけるだろうということがDave the Waveというニックネームの暗号資産トレーダーに予測されています。しかし、このシナリオでは、 “適切な調整”の意味になります。トレーダーは、$100,000サイクルのカーブがサポートレベルとしてではなく、ビットコインが大まかに従うことができる平均価格の軌道であると解釈すべきであるとしています。

    今後について、Dave the Waveではビットコインの 月次チャートが弱気のままのように見えるかも知れないが、明らかな強気シグナルが週間チャートに表れていることに注目しました。加えて、ビットコインが狭い下落方向をなんとか抜け出したことも、また、上昇傾向を示しています。

    そして、レビューの最後は、いつもどおり暗号資産ライフハックです。今回は、とてもおもしろいトレーディングアルゴリズムを共有したmacromule というニックネームのトレーダーを紹介します。こちらのトレーダーによると、ポジションを開くシグナルは、ビットコインに懐疑的で金を支持するピーター・シフ氏によるビットコインについてのツィートです。このようなツィートの後にビットコインを購入後、72時間後に決済することを勧めています。Macromuleは、昨年の5月からこの戦略で203 回の取引をおこない、65% がプラスとなり、年間およそ1,000% の収益をもたらしました。

    もちろん、私たちは"この戦略"の利用を推奨できません。しかし、もし、試してみたい人がいれば、実際のお金をリスクにさらさないデモ口座アカウントが利用できます。

 

NordFX Analytical Group

 

注意: これらの資料は、金融市場への投資推奨でもガイドラインでもなく、情報提供のみを目的としています。金融市場での取引には、リスクがあるため投資資金を全て失う可能性があります。

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