2022年2月21日‐25日のFXと暗号資産の予想

EUR/USD: 紛争と利上げを控え

  • 2月10日から14日にかけては、予想外の嵐に見舞われました。ロシアによるウクライナ侵攻に関する米国大統領をはじめとした各国首脳の声明が活発に議論を有力メディアが盛んに取り上げパニックムードになりました。ホワイトハウスは、侵攻される可能性のあるウクライナの首都キエフから大使館員をユーロ圏との境界に近いリビウへ移転させたくらいです。

    この背景にはFOMC(連邦公開市場委員会)の緊急会議召集という米連邦準備制度理事会の決定がありました。リファイナンスレートが50ベーシスポイント(bp)すぐに引き上がるという噂がたちまち広がりました。

    そのため、投資家はリスク資産の処分にパニックとなり、S&P500、ダウ平均、ナスダックの株価指数が急落しました。

    EUR/USD も下落しました。市場は、ロシア・ウクライナ紛争の"ホット" な局面がエネルギー価格のさらなる上昇を招き、欧州経済の回復を鈍化させることを恐れていました。JPモルガンのストラテジストによると、オイル価格が1バレルあたり150ドルに上昇した場合、世界の消費者物価指数(CPI)は7.0%に高騰する可能性があります。 また、キャピタル・エコノミクスによれば、先進国のインフレ率は4.5%に上昇する可能性があります。

    この結果、2月10日に1.1494でスタートした戦々恐々としたEUR/USD は、2月14日に1.1279で終わりました。つまり、欧州中央銀行の前回の会合後に行われたクリスティーヌ・ラガルド総裁のタカ派的な記者会見の間に、ユーロは上昇をはじめた地点に戻ったのです。

    FOMC の緊急会合の結果に多くのアナリストは困惑しました。利上げはありませんでした。おそらく、委員会のメンバーは、これ以上の大量株式の売却を引き起こしたくなく、ロシア・ウクライナ情勢の結果を待つことにしたのでしょう。しかも、平和的に解決する兆しがあります。

    投資家は少しずつ落ち着きはじめました。しかし、株式市場の新たな売り勢力の波を避けることはできませんでした。また、それは2月17日のジョー・バイデン米国大統領の"黙示録的"なスピーチの後に続きました。

    株式とは異なり、 EUR/USD は中立で5日間の取引セッションは1.1324で終わりました。これは、12月と1月のはじめの10日間で取引された1.1260-1.1400の範囲内です。

    欧州通貨は、特に米国からの多方面のマクロ統計によりさらなる下落を免れました。つまり、新規失業保険申請件数は248,000件で、予想の5,000件の減少はなく、23,000件の増加となりました。しかし、再申請件数は2,000件でなく、すぐに26,000件減少しました。

    今後の EUR/USD 推移は、ロシアとウクライナ情勢の先行きとヨーロッパ諸国やアメリカの関与の程度や指導者たちがどのような巧妙な発言をするかで、より影響を受けることになるのは明らかです。紛争がなければ、ヨーロッパのエネルギー問題のトピックは陰に隠れ、欧州通貨をサポートすることになるでしょう。

    ドルのサポートは、現在、Fedにより大きく左右されます。もちろん、FOMC のメンバー内での意見に相違はあります。しかし、金融政策の引き締めをするかどうかではなく、どの程度早くするか、どの程度おこなうかについてです。一部のメンバーのタカ派的な発言から、2022年に6回、あるいは7回の金融制限を実施するという推測があります。しかし、連邦準備銀行の指導者の多くは、あまりに積極的な措置は米国経済に打撃を与えかねないため、ゆっくりと、より慎重に行動することが必要だと考えています。

    執筆時点では、D1のトレンドインジケーターは90%が赤で、緑はたった10%です。オシレーターでは、20% が緑、50%が赤、30% は中立です。

    来週のアナリストの予想でも、非常に不透明: 40% は上昇を拭わず、50% が反対意見を固持、10% がニュートラルです。しかし、アナリストの65%は3月の予測でドル高を支持しています。

    レジスタンスは1.1385-1.1400、1.1480、1.1525、1.1570、1.1615のレベル。サポートレベルは、1.1300、1.1275、1.1220。これに続いて、1.1185と1月28日の安値1.1120。

    来週の経済指標カレンダーでは、2月21日(月)のドイツとユーロ圏の事業活動データー(マークイット)の発表に注目です。24日(木)には米国GDPの年間速報値、週終わりの金曜日には米国の耐久財受注がわかることになります。

GBP/USD: ペアの保ち合い、専門家のさらなる確信

  • 先週発表されたマクロデーターは、イギリス通貨をサポートしました。これは、労働市場と消費者市場の両方にあてはまります。イギリスの失業率は4.1%と変わらず、まさに予想どおりでした。同時に1月の失業保険給付申請件数は、51.6万件から31.9万件に減少しました。小売売上高は12月の4.0%減の後1.9%増となり、長期トレンドの水準を上回っています。これらすべてが、この国の経済回復に向けた前向きなシグナルです。

    遡ること数年前の2007-2008の金融危機の後、小売売上高がトレンドラインを8年間下回りました。これがイングランド銀行の利上げに踏み切れない理由の一つでした。しかし、今では、インフレ率や労働市場の状態から金融引き締め政策で自由にできます。しかも、イギリス政府は大西洋の反対側より利上げを早くおこない、依然、リードしています。

    しかし、このリードが非常に揺らいでいます。売上高の増加は、経済状況の改善によるものではなく、COVID-19のパンデミック時の制限措置により、品不足のための需要が解消されたことかも知れません。つまり、イギリス政府の今後のステップは非常にバランスがとれるものになると思われます。2009年5月に利上げを急ぎ、景気回復を損ねたECBの二の舞にならないようにするためです。

    この予想の裏付けとして、イングランド銀行の委員会のメンバーの9人のうち4人が前回の会合で50bpsの利上げに賛成しなかったことを思い出せば十分でしょう。銀行のアンドリュー・ベイリー総裁をはじめ多くが、経済成長の鈍化を理由にわずか25ベーシスポイントの利上げを決定しました。

    経済指標では、ポンドは現在、米ドルの攻撃を上手く回避しており、GBP/USD は1.3600で持ち合いです。来週のアナリストの予想でも地固め: 25%が横ばいを支持。 40% が上昇、35%が下落予想です (月次予想では、下落の支持者が70%に増えます)。

    インジケーターの圧倒的多くが、D1で上向き方向です。オシレーターに関しては、 70%です。 20% が下落、残りの10%がドル側の立場です。トレンドインジケーターでは、90%が上昇、10%が下落です。

    サポートは、1.3570、1.3500、1.3425、1.3355 で、次の強力なサポートは100ポイント低くなります。レジスタンスレベルは1.3600、1.3650、1.3700-1.3740、1.3830、1.3900 。

    来週のイベントに関しては、2月21日(月)に発表されるサービス部門の事業活動データー(マークイット)と2月23日(水)のイギリスのインフレ報告書のヒアリングが注目です。

USD/JPY: 岐路に立つ投資家たち

  • USD/JPY の先週は、110 ピップス(114.78-115.86)以下のかなり狭い範囲での取引でした。前述のとおり、投資家は現在2つの課題について懸念しています:ロシアのウクライナ侵攻と米中央銀行のリファイナンスレートの利上げです。また、明らかに、安全通貨である円について現段階ではまだ決めかねています。

    一方で、米ドルの利上げはドルを押し上げるでしょう。

    他方では、ウクライナ紛争の激化が市場に経済危機とインフレの高騰を想定させるかもしれません。この場合、投資家のリスク選好は完全に消え、日本円のような安全通貨へ資金が流れることが予想されます。実際、非常に大きくはありませんが、現在、起きています: 株価指数とUSD/JPYのチャートを比較すれば十分でしょう。

    この関係は、米国と紛争の可能性のあるユーロ圏と異なるのでEUR/JPY のチャートを比較すれば、より明確です。

    来週のアナリストの予想は次のとおり: 25%は横ばい、 50%が上昇、 25% が下落の支持です。

    D1オシレーターについては、30% がニュートラルグレー、10%が緑、60%が赤 (このうち、四分の一が売られ過ぎ圏内)。トレンドインジケーターでは50-50の引き分け。 直近のレジスタンスゾーンは115.30、次に115.70。強気筋のメインゴールは、2017年以来の116.34 の高値更新です。サポートレベルは、115.00、114.80、114.15、113.75、113.45、113.20、112.55、112.70。

    来週、日本での重要な経済イベントの予定はありません。

暗号資産:暗号資産市場のブラックフライデー

  • BTC/USD は一ヵ月前の状態に戻っています。この2週間のチャートは、1月中旬のチャートに似ていました。フロントラインは$42,000レベルで、これに沿うように強気筋と弱気筋の攻防戦が繰り広がり、様々な成功収めていました。 前回は、$32.945の下落で終了しましたが、アナリストの多くは、今回も同様の結果になるだろうといいます。これは、ロシアのウクライナ侵攻の可能性による売りよりも米連邦準備制度理事会により左右されます。金融政策の引き締めと利上げは、暗号資産を含むすべてのリスク資産に打撃を与えるでしょう。

    ビットコインは、パンデミックス中のインフレからのプロテクターとしての役割をしていました。これは、上昇の原動力の一つでした。しかし、インフレ率が通常に戻ったら、誰がこのようなプロテクターを必要とするのでしょうか?

    米国の中央銀行が、すでに40年ぶりの高水準であるインフレを抑制しようとするのは間違いないでしょう。しかし、その効果のほどは専門家によって様々な見解があります。ビットコインの支持者は、上値の無限性と深刻な金融不安の先にあるものとして、みんなに(まずは、自分たち自身)に説得を続けています。

    パララックス・デジタル社のロバート・ブリードラブCEOによると、ベネズエラの通貨と同じことがドルにも起こりうるとい。います。米ドルは2035年までにハイパーインフレとなり、その時のドルベースのBTCの価格は1コインあたり天文学的な数字になるでしょう:100万ドル、500万ドル、1000万ドル。

    伝説的な投資家であり、ミラーバリューパートナーズの創設者であるビル・ミラー氏も、現在、資産のほぼ半分が暗号資産であるとして、ビットコインを擁護しています。“ビットコインは保険のようなものです。家が燃えてしまわないように、大事故に遭わないように、万が一のために毎年保険料を払っているのです” とビリオネアは説明しました。

    分析会社のFundstratの共同設立者であるトム・リー氏は、CNBCのインタビューでビットコインの目標価格は$200,000であると答え、目標達成を促す人々について説明しました。そして、その人たちは機関投資家ではなく、個人投資家です。アナリストによると、米国の世帯の純資産総額は141兆ドルを超えています。人々は、インフレで貯蓄を失わないように今後10年間保護する方法を探すことになるでしょう。そのため、暗号資産への資金流入は、 “巨額”になるとリー氏は述べています。

    ビットコインの大量導入の弊害はこの資産が高額であることです。そのため、リー氏はビットコインの100万分の1であるサトシに切り替えるアイデアを推奨しています。

    資産運用会社最大手のフィデリティ・インベストメンツのグローバル・マクロ経済担当ディレクター、ユリエン・ティマー氏も楽観的です。同氏は、ビットコインの価格はアップルの市場価格の上昇を繰り返すことになると確信しています。“ビットコインのネットワーク効果とアップルのネットワーク効果を比較してみました。アップルの収益が上がれば、その株価は指数関数的に上昇します。これが、ビットコインが同じ道をたどると信じる理由です。この暗号資産の価格は、需要が増加するにつれて上昇するのです” 。そして、ティマー氏によれば、2023年には$100,000になるといいます。

    こちらのアナリストは、ビットコインがほかの暗号資産と大きな違いがあることから大きな恩恵を受けているという見方をしています。“おそらく、ほかのデジタル通貨は、ビットコインと比べて、よりスケーラビリティがいいように見えますが、同時に分散化されていない可能性も高くなります。私にとって、ビットコインは金のようなもので、ほかの暗号資産はベンチャーキャピタルのようなものです”。

    アナリストのウィリー・ウー氏は、インフレ中の米ドルの先行きは依然わからないとした見方です。ビットコインの時価総額は現在1兆ドルを下回っており、これを突破すると反発し、今後5年間は上昇していくでしょう。さらに11兆円ぐらいまではスムーズに上昇し、その後は減速していくことになります。最終的な数字として、ウィリー・ウー氏はビットコインの時価総額が40兆ドルまで上昇する可能性があると考えています。

    当面の見通しについてアナリストのニコラス・メルテン氏によると、現在、さらなる上昇のシグナルがあり、 “時価総額は、2022年10月‐12月に4兆円になる可能性がある” といいます。つまり、前回の過去最高値に対して、220%の上昇を示すことになります。前回の上昇率は392% で、それ以前は359%でした。

    “これは、本当に素晴らしいシグナルです” とメルテン氏は言います。“過去のレジスタンスレベルが上向きサポートになりつつあります。投資家は、益々、注目し、市場は新たな上昇トレンドの形成に戻る態勢です”。

    BTC/USD が10日間で50-移動平均線を超えたことは、まさにトレンドの反転のように見えました。$48,000の200日移動平均線の突破で次のことが確認できました。投資家は、Crypto Fear & Greed インデックスの上昇でも勇気づけられました。ビットコインの価格が同じで1ヶ月前に20ポイントのレベルで非常に恐怖のゾーンにあったのが、2月17日(木)には52ポイントでした。

    しかし、2月18日に強気派のほぼ勝利に一石を投じたのがブラックフライデーの大きな売りです。Crypto Fear and Greed インデックスは、恐怖ゾーンに入り30まで下がりました。50日移動平均線は、サポートからレジスタンスに変わり、暗号資産市場の時価総額は、重要な心理レベルである2兆ドルを超えて足場を固めることは出来ず、執筆時点では1兆815億ドルです。

    最後に、Fundstratのトム・リー氏の言葉を引用しましょう。 “水晶玉がなければ、暗号資産の正確性をだすのは難しい” と予想について冗談を言っています。ことわざによると、すべての冗談に真実あり。この場合、これは50%以上明らかにあてはまります。

 

NordFX Analytical Group

 

注意: これらの資料は、金融市場への投資推奨でもガイドラインでもなく、情報提供のみを目的としています。金融市場での取引には、リスクがあるため投資資金を全て失う可能性があります。

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